君に敬意を

担当午睡丸
出発2019/07/04
種類ショート 日常
結果大成功
MVPレナ・アルバスティ(da1615)
準MVPチロ・チロリン(da0572)
ソル・ラティアス(da0018)

オープニング

◆口論
「……おいタズラン! あれはまたお前の仕業か! この悪戯者め!」
「よぉゲズラン、どうした髭面を震わせて。ああ……今頃気付いたのかよ、相変わらず鈍いねぇ」
 ローレックの街、職人街。
 たまたま通りかかったハウンドたちが突然の怒号に振り返ると、そこでは二人の男がいがみ合っていた。


登場キャラ

リプレイ

◆道端
「仲裁ねぇ……どうにもこういうのは面倒くさくて敵わねぇんですがねぇ」
 目の前で続く諍(いさか)いに、ソル・ラティアスは煩わしそうに表情を曇らせた。
「まぁそう言うな。衣服も防具も日頃から世話になってるものだからな……。ならば、その職人同士の諍いなど無いに越したことはあるまい」
 一方でソーニャ・シュヴァルツはこの仲立ちに前向きだ。
 職人への敬意もさることながら彼女自身の性質(たち)もこうした不和を見過ごせないのだろう。
「そんなもんですかねぇ……なんだか、聞いてる限り似た者同士って気もいたしやすが」
 子供じみたケンカの様子に呆れ顔のソル。
 だが本当に面倒に思うならこの場を立ち去ればいいだけのことで、そうしないからには彼なりに何か思うところがあるのかも知れない。
「……私もソーニャの意見に同意だな」
 ベル・キシニアは場の動向を見守っていたが、静かに自分の意見を口にした。
「私は戦士だ。だから防具には何度も命を助けられているし、それを生み出す鍛冶職人には感謝しかない。もちろん、だからといって靴や衣服を軽んじるつもりはないが……」
「うん、それは僕もわかるな。どっちが大事っていうより、どっちも大事だよね!」
 リザ・アレクサンデルがベルの言葉に我が意を得たりと瞳を輝かせた。
「それに好きの反対は無関心ですから、何だかんだで腕は認め合っているのではないでしょうか? どうにか二人が協力できるよう……せめて、お互いの仕事を尊重しあえるように話してみましょう」
 チロ・チロリンの言葉に皆が頷いた。
 それぞれが一家言もつ職人である。ハウンドとはいえ行きずりに説得されて関係が急に改善するとも思えないが、長い目で見ればこれが契機になるかも知れない。

「まーまー、落ち着けって。意見の相違があるってこたぁアレだろ? お互いに想像力の範囲も広いってことだろ?」
 二人の間にグラナート・ミストファイア割って入るが、その言葉に彼らが疑問符を浮かべた。
「……? それは……」
「どういう意味だよ?」
「……さぁ?」
 三つに増える疑問符。
 どうやら自分でも何を言っているのかよく分かっていないらしい。
「「分かってないのか!!」」
 息の合った怒鳴り声が返ってくる。
「うおっと! 怒んなよ、要するにアレだ、お互いさまってやつじゃん?」
「まったく、何かと思えば……」
「……ま、そうだな。いつもみてえにがなり合っててもしょうがねぇか」
 呆れたことでクールダウンしたのか二人は口論を止めた。グラナートの怪我の功名である。
「よぉゲズラン。せっかくハウンドさま御一行がこうして足を止めてくれたんだ。ここは一つ、忌憚のない意見ってのを聞かせて貰おうじゃねぇか」
「よかろう。お前の巫山戯た性根を叩き直す良い機会だ」
 二人は近くの工房に声を掛けて人数分の腰掛けを調達してくる。
 こうして、職人街の片隅で井戸端ならぬ道端会議が始まったのだった。

◆衣服
「……私、ライトエルフなので金属製の防具が不得手、というか、そもそも身に付けることができないので、鍛冶屋さんには縁が無いというかですね……す、すみません」
 婉曲な言い回しで弁明するクレシーダ・スカイイーストだが、ゲズランからジロリと視線を向けられて縮こまった。
「だとよ、残念だな?」
「ふん……まぁエルフならしょうがあるまい」
 エルフが金属製の武具をほとんど扱えないのは歴然たる事実であり、それはゲズランも十二分に理解している。
 睨んだように見えたのは気分を害したのではなく彼の常態であった。
「そ、それでですね。私が防具の代わりに見つけたのがこの修道女服です」
 クレシーダが身に纏っているのは女神教の修道女(シスター)服だ。一般的なものと差異は無いように見受けられるが、彼女はちょっと誇らしげに続ける。
「これは良いモノです! なかなか防御力がありますし、女神様のご加護も高められていますからシスターである私にはピッタリです。さらに言うなら一点物であるというのが良いです」
 クレシーダが立ち上がって構えると左足が露出した。ワンピースの左脚部に大きくスリットが設けられているのだ。
「なるほどな、動きやすいうえにそのレザーブーツもよく映えるってワケだ。そりゃエルフ族の品だろ?」
 靴職人らしくタズランがエルヴンブーツに目ざとく気付いた。
「はい。この服は、他の人には無い私の個性になっているんです」
 あくまで正業であるハウンドの実用性を第一に求めながらも、シスターというアイデンティティも主張するのがクレシーダの拘りであった。

「見てみてー、これが私の戦いの衣装! かわいいでしょー!」
 続いて語るのはレナ・アルバスティだ。立ち上がってくるりと回ると赤いスカートと緑のケープがふわりと舞った。
「ずっとこんな感じで戦ってきたんだよ! かわいいだけじゃなくて、なかなか動きやすい!」
 身軽な動きをアピールするレナ。どうやらお洒落と同時に戦いでの動きやすさも重視しているようだ。
「解ってるねぇ……ハウンドってなぁ泥臭いハンターや無骨な騎士とは違うってワケだ。なぁゲズランよぉ?」
「ぐぬぬ……わ、若い娘がそんな軽装で戦うなど! 傷でも負ったらどうするのだ!」
 タズランに煽られて思わず世話焼きオヤジみたいなことを言い出すゲズラン。
「それなら大丈夫! こういう便利な物があるからね!」
 レナが示したのはメタルバンドやプロテクトリングといった装飾品だ。
 確かに、装備者の防御力を高めるこうした品々があれば、戦闘スタイルに合わせた装いを比較的自由に選択可能だろう。
「可愛さを追い求めるのは少女の性(さが)! だけど、動きやすくないと実戦では使えないのも事実だからねー。時には儚げに魅了して敵の隙を作り、時には疾風の如く敵陣で舞い踊る! そうやって、これまで山賊を沢山やっつけたんだよ!! 丈夫な鎧も頼りになるけど、こんな戦い方はできないでしょ?」
「ぐぬぬ……確かに……」
 身の守り方も人それぞれだ。実戦を経験したハウンドの言い分を軽視するわけにもいかず、小さく唸るゲズランであった。

◆防具
「では、このへんで防具の大切さもアピールしなければいけませんね」
 そう言ってチロが道端に落ちている石を拾ってくる。そして。
「……はっ!」
 手にした湾刀で斬りつけた。
「「あだーっ!」」
 粉砕された石の欠片が運悪くゲズランとタズランの額を直撃した。
「あ、すみません。……えー、このグリーヴァタチの凄さをご理解いただけたと思います。しかもこの刀は使いこなせれば石どころか鉄にすら斬れ味を保つそうです。そうなったら並の防具では……分かりますよね?」
 無論、使いこなせたところで分厚い鉄板を斬れるとは限らない。だが生半可な防具で防げないのは明白だ。
 いわんや、布や革の衣服では文字通りの一刀両断だろう。
「分かったが……なら真っ二つにできる物を斬るべきだったんじゃねぇのか……」
 額を押さえて頷くタズランだが、刃の威力は身をもって知ったのである。

「……実感してもらったように、我々はこんな危険といつ遭遇するやも知れない。いや、オーディア島に生きるコモンなら誰もが覚悟しているだろう」
 ソーニャがレザーアーマーに付いた石片を払いながら言った。プロテクトリングも装備していたので被害は無い。
 ただ、ちょっとビックリしたのは秘密だ。
「名工の作った防具には魂が宿るともいわれている。職人が渾身の技で生み出した防具の存在は多くの人々を救う生命線になるだろうな」
「……聞いたかタズラン? さすがハウンドは解っているぞ!」
「うぐぐ……」
 逆風から一転、鼻息を荒くするゲズラン。
「実際、この鎧やアームガードがあってこそ、私はいまここにいられるわけだしな」
 ベルが実感のこもった口調でソーニャの言葉を継いだ。彼女は咄嗟にアームガードで石片をガードしたらしい。
「モンスターの牙、山賊の剣……防具は色々な危険からこの身を守ってくれている。戦いが至上の楽しみである私には、やはりより良い防具が必須だな。良い戦いを長く楽しむことができる」
「……ま、姐さん方の言い分には俺も納得するしかねぇ」
 現実に命を張っている者の言葉には実感が伴っており、それを否定するほどタズランは愚かではないようだ。
「だがタズランの言う事ももっともだ。我々は仕事の為だけに生きるのではない。人生には楽しみが大事だ。実のところ服装で男の反応は変わるからな。落とす為に大事なことだ」
「その通り、靴や衣服も日常という名の戦場を彩る重要な装備だ。至高の逸品であれば、その優雅さは人の心を釘付けにする魔性ともなろう」
 こうしてベルとソーニャは女性の視点から衣服についても語ったのである。

「そもそも、服と防具ってどっちだけって物じゃないよね。だって、同時に身に付けるならそれが前提の作りになるじゃない?」
 リザが自身の服装を示しながら言った。彼もまたレザーアーマーを基本とした軽装備だ。
「防具を付けるのが前提の服と、服を着ていることが前提の防具があって初めて成り立つわけで、これが噛み合わないと大変だよ、あちこち擦れたり蒸れたりして」
 確かに、直接肌の上に付けるには向かない金具などもあるだろう。
「ん? そうか? 俺は見ての通りだが平気だぜ。質実剛健が一番ってやつだ!」
 グラナートが不思議そうな表情を浮かべる。彼はまさに裸の上半身に防具を直接装着しており、その点では対照的な装いといえる。
「そ、それは人それぞれ、かな……? 何にしても、実用性を妨げない範囲で装飾性も重視するのが僕のスタイル、だね。この防具なんか気に入ってるけど補修が結構大変なんだよね。でも『壊れるから安いので』よりも『壊さないように頑張ろ!』って思った方がやる気は出るよ」
「なるほどな。戦いにもお洒落心を忘れねぇってのは、俺は好きだね」
 頷くタズランに笑ってリザは語り終えた。装いがモチベーションに影響するという好例だろう。
「俺の場合はアレだ。服には機能性がありゃいいけど、見た目が強そうであればなおよし、だな。この商売、ハッタリだって必要だしよ。つっても、どっちも俺が作れるもんじゃねぇから職人さんたちには感謝してるんだぜ?」
 豪快に笑って感謝の言葉を口にするグラナートに、二人の職人は少し神妙な表情を浮かべるのだった。

◆職人
「……俺だけダンマリって訳にもいきませんや。ただ俺ぁ戦わねぇんで、そのあたりはご容赦願いますぜ?」
 聴きに徹していたソルだったが、自分以外が語り終えると漸くに口を開いた。
「服っても、旅芸人としちゃ着てて楽で目立ちさえすりゃいい訳でして……となると、あとはコイツぐれぇなんで」
 ソルが示したのは愛用の黒いリュートだ。
「ですが俺は大抵の楽器なら弾くし、拘りがあるわけじゃない。……ただ、コイツは譲り受けたもんなんでさぁ。生きていく為の、ただ一つの術(すべ)としてね」
 そこでソルはリュートを無造作にかき鳴らした。
「……もちろん、そんな事ぁ言われなきゃ知りようがない。見た目、誇り、歴史……拘るのは大いに結構でぃ。でも、世の中のあらゆる物事には知らねぇもんが詰まってるもんでさ。で、その詰まってるのを知ろうともしねぇなら、正直どっちも言えたこっちゃない。この世に罵られる仕事なんぞ、そうそうありゃしやせんぜ、旦那方」
 ここまで一息に語ったあとで、ソルは少しバツが悪そうに頭を掻いた。
「……やっぱ、どうにもガラじゃねぇな……とりあえず、一曲いっときますかい?」
 そのまま照れ隠しのように演奏を始めるのだった。

「……こうまで語られては仕方もあるまい。『靴などどれでも同じ』と言ったのは取り消そう」
 しばらく黙考していたゲズランが声を絞り出した。さすがに頑固なドワーフにも思うところがあったのだろう。
「だが、遊び呆けるのを容認したわけではないからな!」
「しつっけぇ髭面だな……まぁいいや。俺も鍛冶場に悪戯すんのは止めて、別の所にしてやるよ」
「悪戯自体を止せというのだ!」
「へっ、やなこった」
 結局、口論を再開する二人だが、少なくとも互いに一歩譲歩したのは間違いない。
「やれやれ、ですねー」
「そうだな。だが、これがちょうどいい距離感なのだろう」
 クレシーダとベルは呆れと感心が同居するような視線を向けた。
「まぁ……なんだ、いつも良い物を作ってくれて、ありがとう。二人のような職人には心から感謝している」
「ソーニャ……あの二人、聞こえてないよ」
 律儀に頭を下げるソーニャだが、リザが見る限り二人は口論に夢中だ。
 あるいは、これも照れ隠しの一種かも知れないが。
「……そうだ。折角だし剣の修理と鎧の意匠、二人でやってくんねえ?」
「あ、いいね! 私も強くて可愛い服を二人で力を合わせて作って欲しいーー!!」
 グラナートの発案にレナが乗っかかってくる。
「では僕も。防具にクッション性が欲しいのですが、お二人で知恵を出し合っていただけませんか?」
「そいつぁいい。いっそ手を取り合えば、もっと良いもんが作れるかもしれやせんぜ?」
 チロがさらに乗ってきてソルが囃し立てるようにリュートを鳴らすと、二人の職人はついに口論を止めてハウンドたちへ向き直った。

「「断る!!」」

 その日一番、息の合った叫びが職人街にこだまする。
 はたしてハウンドたちは注文を受けて貰えたのか――それは、また別の機会に。



 11

参加者

b.コーデネートはこーでねーと、なーんてな?!
グラナート・ミストファイア(da0006)
♂ 24歳 人
z.どっち…どっちかねぇ、これ。
ソル・ラティアス(da0018)
♂ 24歳 人
b.シスターらしく、シスター服についてかたりますよー。
クレシーダ・スカイイースト(da0034)
♀ 20歳 ラ
c.衣服も防具も、どちらも世話になってるからな…。
ソーニャ・シュヴァルツ(da0210)
♀ 19歳 カ
a.好きの反対は無関心ですから、いっそ……。
チロ・チロリン(da0572)
♂ 24歳 カ
c.あれもこれも大事だよね!
リザ・アレクサンデル(da0911)
♂ 18歳 人
c.まぁ、何度も助けられているからな
ベル・キシニア(da1364)
♀ 24歳 人
b.つよかわ衣装求む!
レナ・アルバスティ(da1615)
♀ 15歳 人


職人街にて

ローレックの街、職人街で口論を目撃したハウンドたち。思わず仲裁に入ったものの、なかなか厄介な二人のようで……!?