穴だらけの街道

担当Toro
出発2019/11/21
種類ショート 冒険(討伐)
結果成功
MVPリザ・アレクサンデル(da0911)
準MVPリーリエ・アルベール(da0816)
サーシャ・エラーギナ(da0168)

オープニング

◆グラスター街道の異変
 ローレックの街から南東、ウラート街道とテーム河を挟んで南側を走るのがグラスター街道だ。
 主な行き先はローレックの街とグラスター村、そしてそこに属する穀倉地帯。つまりは食料の供給上、そこそこ重要な場所ということになるが……近頃、ちょっとした問題が発生していた。
 街道のメインや中心部など、大勢に影響する位置ではないが、どうやら街道の際や中途半端な位置にたびたび穴が空いていることが増え、通行に多少なり支障をきたしているらしい。
 それどころか、近頃はそこを通ったはずの商人や食料を運ぶ農民などが姿を消す事案が増えたのだという。
 要するに、「街道へ向かった農民」「ローレックの街から穀倉地帯へ向かう商人」などの目撃情報はあっても、目的地に着いたという情報がないのである。

登場キャラ

リプレイ


「長い肉塊……ウォーム……」
「ウィール、なにか言った?」
 ベドウィール・ブランウェンは、突如として地面から這い出した肉塊……ラージウォームを眺めた後、ぽつりと呟く。すかさず反応したリザ・アレクサンデルはよもや、ベドウィールがあらぬ考えに思考を割いているなどとは思うまい。相手の考えに想いを巡らせる前に、そもそも襲われる危険性を勘案する必要があるのだが。
「いえ、なんでもありませんよ?」
「体は長くて遠くまで届く……地上で相手するには骨が折れる相手やわ」
 とぼけた様子のベドウィールはさておき、エリアル・ウィンフィールドは早々に箒を用いて空中に逃れ、ラージウォームの射程圏外を飛び回る。空から俯瞰すればよく分かる。長大な体をくねらせるアレは、大きさに反し動きが素早い。質量を受け止めるのも一苦労……接近戦は、なにか一案がなければ不利に思えた。
「なかなか厄介な奴等が一気に現れやがったな! 肉塊は任せるぜ!」
 ハヤト・アステールはオフシフトを早々に成就させると、大蜘蛛、すなわちグランドスパイダーへ向かって身を躍らせる。数は相当数、回避に長けた彼であっても1人で対処するには骨が折れることは間違いない。牙を躱し、糸を頭一つ分の距離で避け、数匹を引きつけるとシールドソードで斬りつけて距離を取り、詠唱時間を稼ぐべく動く。だが、敵もさるもの。左右と背後をとる形で彼を包囲し、尻から糸を吐くべく身構えた。
『ロズ、正面の一体を叩いて。ハヤトさんなら左右は捌いて下がれるから』
『ありがとう、リリィ』
 だが、ハヤトの背後に回った個体はさらに背後、馬上のロザリー・アルベールの放ったグリーヴァオニキリの一突きにより行動不能となり、いきおい、馬の頭の高さまで吊り上げられたそれは地面に打ち捨てられると絶命。リーリエ・アルベールが俯瞰からの状況把握に徹し、ロザリーを誘導したがゆえの完璧なタイミングであった。
「ふむ……御世辞にも足場が良いとは言えんな。街道の端には近寄れぬか」
 ノワール・トゥーナインは包囲を抜けたハヤトと入れ違いに前進すると、僅かに緑に染まったグリーヴァオオダチを横一閃に振り抜く。一撃絶命とまではいかぬが、大蜘蛛の機動力を削ぐには十分な威力だ。
「その無駄に多い脚を断たせて貰うのである!」
「なるほど、足ね!」
 ノワールの声に応じたサーシャ・エラーギナは淡く土色に染まった剣を振るい、飛びかかってきた相手の足を斬り飛ばさんとする。深々と裂け、皮一枚残した一本をみやりつつ、返す刀と放たれた牙は盾でいなして距離を取る。
 総数で2桁に及ぶ敵勢を相手取る以上、深追いすれば囲まれる。糸を飛ばしてくるとなればなおさら脅威となる。
 居並ぶ面々にとって相性悪し、とまではいかずとも、十分に警戒する必要があった。
(アははっ、斬り飛ばし甲斐がありそうネ)
 ソレイユ・フォリーは心中でほくそ笑むと、大鎌を構えて一気呵成とウォームへ切り込んでいく。斬り甲斐があり、簡単に斬れる。彼女の推測はあながち、間違ってはいない。現実として、ウォームの胴は鎌の一振りでざくりと裂け、その断面を晒したからだ。
 だが浅い。肉体の大きさ故にか、はたまた彼女の踏み込み故にか。ウォームは彼女の姿を認めると、真っ直ぐ先端を向けて突っ込んでくる。そのまま口ごと切り裂こうとした彼女は、しかしずらりと揃った牙の鋭さと、街道の人々が消えた理由とを、自らが体感するまで気付くことが叶わなかった。
「なっ……フォリー!?」
 ソレイユ・ソルディアスは別のウォームを押し留めつつ、その一部始終を視界の隅に収めていた。
 飲み込まれた。防具を貫いた牙が開かれるのと、大口がそのまま圧し潰すように振り下ろされるまでは一瞬。フォリーは、ウォームの体内に囚われてしまったのだ。
 だが、当たり前ながら動揺している暇はない。明日は我が身、そして死ねば終わり。レイピアを握る手に汗が滲むが、呼吸を整えた彼の動きをもってすれば、ウォームの動きを捌くのは難しくないのだ。
「大丈夫よ。飲み込まれたら内側から捌いてあげるだけだから。あの子もそうするわ」
 アザリー・アリアンロッドはこともなげに告げると、打ち漏らしで近付いてきた大蜘蛛を盾で押しやるとグリーヴァタチで一閃。ミタマギリの籠められた武器による斬撃は、たちまちのうちに大蜘蛛の意識を刈り取り、無防備な腹を彼女の前にさらけ出させた。
「アザリー、お前なあ……!」
「言い合っている場合じゃなかろう! 駆逐すれば済む話じゃ!」
 ソルディアスは抗議の声を上げかけたが、ソーン・イワオの太い声、そして飛び来たった火矢がソルディアスの激情を押し留めた。彼が狙ったのはフォリーを飲み込んだ個体。対して、ソルディアスとアザリーは別個体を相手取っている。
 そして、宙を舞うエリアルが塩の結晶像のガガを具現化させたところだった。
 リザとベドウィールも互いに魔法を成就させ、今や遅しと斬りかからんと身構えている。
 一同が取れる選択肢はふたつにひとつ。
 彼女を信じて己の領分を守り、敵を各個撃破するか。
 はたまた、急ぎフォリーを飲み込んだ個体へ攻撃を仕掛け、彼女を救出するか。
 一瞬の逡巡のあと、彼らが選んだのは……。


「あの糸、滅茶苦茶飛ぶじゃねえか……!」
 スカイランニングを成就させたハヤトは、上空に逃れて竜殺矢(ドラゴンアロー)を構え、大蜘蛛目掛けて振り下ろす。
 竜殺矢は手槍として扱えはするが、投擲槍として扱うことは不可能である。出来て落とすだけ。
 細かな精度を期待する、増して膂力に任せて加速させるなど不可能だ。さらに言うなら、大蜘蛛との戦いの経験の少ないハヤトが、糸の射程、その長さに舌を巻くのも無理はあるまい。
 大蜘蛛の身から槍3本分ほど右に逸れた竜殺矢と、彼の脇を抜けてゆうゆう10m程度打ち上がる蜘蛛の糸。避けるのは容易いが、彼のプライドをいたく傷つけたのは想像に難くない。
 だが、大蜘蛛とて命の危機を前にして動きが硬直するのは当然だ。一瞬だが、隙が出来る。
「ハヤト、上出来よ! こいつは私が!」
 その隙を狙って直刀を突き立てたサーシャは、そのまま竜殺矢を回収して離脱する。未だ命の残るそれにとどめを刺したのは、ノワール。
「数は順調に減ってるから、足止めに使えばなんとか……それか、ハヤトさんの真下においつめるとか……?」
 そして、一度外れたとはいえハヤトの手法は全くの悪手ではない。リーリエの言葉通り、十分な連携と下準備さえ整えば命中させられるかもしれないし、撹乱に使うだけならアリだろう。
『リリィ、動きが止まれば大丈夫なんだよね?』
『う、うん……なんとか……!』
 ロザリーはリーリエに耳飾り越しに念押しのように確認すると、口元を覆うフェイスガードに軽く手を触れた。悪魔の形相のようなそれを確認すると、乱戦状態にあった大蜘蛛達目掛けて恐ろしい咆哮を吐き出した。

 ハウンド達が一斉に向かってくるのを見たウォームは、素早く身を翻すと地中へと一気に潜り込んだ。
 ……潜り込んだのだが。それで逃れられたのは、何も飲み込んでいない一体だけだ。フォリーを飲み込んだ側はリザのローレライに斬りつけられ、ベドウィールの成就させたミタマギリの影響で意識を刈り取られる。
 魔力を根こそぎ奪われた相手の末路など語るべくもない。如何に体力が膨大だろうと、集中攻撃をかければ一堪りもないのだ。
「こやつには魔力もほとんど無いうえに特殊な肉体というわけでもないようじゃな。これなら我が輩の弓も届く」
 ソーンは、動けなくなったウォームに繰り返し刃を突き立てながら周囲に油断なく視線を送る。彼の得意分野は弓術。火矢が通じるなら、それに越したことはない。
「こいつは任せた! 俺は隠れた方の足止めをする!」
 ソルディアスは剣を構えると、空中を旋回するエリアルに視線を送る。彼女は再度具現化させたガーゴイルをソルディアスに随行させ、確実に先手を打つべく狙いを定めた。
 ソルディアスは冷静だった。フォリーが息も絶え絶えながら生きているという事実もある。戦局が相応に有利なのも理由にはある。だがそれ以上に、ウォームと大蜘蛛の犠牲になった人々を思えばこみ上げる怒りは仲間か、それ以上には湧いている。
 『だから』、冷静なのだ。
「飲み込まれても、内部から掻っ捌いてあげるわ……来なさい」
 アザリーの声に応じたわけでもなかろうが、ウォームは彼女の僅か横から地上へ、一直線に伸び上がる。大口を開けて彼女を飲み込もうとしたそれは、しかしホルスで間合いを詰めたソルディアスの刺突により軌道をずらされる。
「お前は、俺達の仲間を殺し過ぎたんだ」
「わらわの仲間に痛い目みせてくれはったんやから、そちも痛い目に遭うのはとうぜんやわ」
 エリアルはぽつりと呟くと、塩人形に触れられ、力なく崩れ落ちるウォームの姿を冷たく見据えた。睡魔の魔法を流し込まれ、抵抗も虚しく動きを止めたのだ。
「ダメ押しで斬っておけば、もう起きられないわよね?」
 アザリーはグリーヴァタチをウォームに突き立てれば、相手はびくびくと何度か蠕動(ぜんどう)してから動きを止める。彼女もまた、得物にミタマギリを付与していたのだ。
「図体が大きい分、倒し切るのに手間ですね……リザ、ローレライはまだ保ちますか?」
「全然問題ないよ。2匹仕留め終わってもお釣りがくる位」
 ベドウィールはリザの回答に満足げに頷くと、処理を任せて自らは大蜘蛛の群れへと向かっていく。なにせ、リザのローレライの威力なら、そして仲間がつけた傷からすれば、ものの30秒とかからず息の根を止められるのだ。心配する余地など、どこにあろうか。

「さ、左右からロズとサーシャさんが追い込んで、ノワールさんが街道の下流から! エリアルさん、まだガガが動くなら遊撃を……!」
「勿論。任されましたえ」
 リーリエは早口に指示を飛ばしながら、絶えず変化する戦局を見逃すまいと動く。ウォームのいずれもが動きを止めた時点で、大蜘蛛の残りは6体ほど。半分まで数を減らした格好だ。
 ハヤトはサーシャと連携し、竜殺矢を放っては回収し、飛び上がりを繰り返す。
 接近戦を挑む仲間達は回避に長けているが、さりとて完全に避けきれるわけではない。徐々に、だが着実に蓄積する手傷は危険域の一歩手前でリーリエが治療し、ノワールが身代わりになって前に出て避け、ロザリーが戦闘馬でかき回す。
 役目を終えたエリアルがすぐさま対大蜘蛛へとシフトしたのも、事態を優勢に傾けるには十分。
「うるぁ! 大人しく縫い付けられとけ!!」
 ハヤトの咆哮一閃、地上へと何度目かの竜殺矢が降り注ぐ。深々と突き立てられたそれは大蜘蛛を縫い止め、続くリーリエのサンダーアローの射撃的と成り果てた。
「領域を侵せば排除される。人も魔物もかわらぬ」
「違いありませんね。お互い、侵されざる部分というものがあるのです」
 ノワールが大蜘蛛の糸を回避すると、彼の後ろから前進したベドウィールが斬りつけ、意識を刈り取る。続けざまに牙を剥いた一体は、横合いからロザリーが貫く。残り2体。
「一気に片付けるぞ、ハヤト!」
「おうよ!」
 ソルディアスの叫びにあわせ、ハヤトは地上へ急降下する。ホルスの転移からの斬撃が一体を捉え、ハヤトの両手の槍、さらに蹴りがもう一体の大蜘蛛を串刺しにする。
 かなりの苦戦であったのは間違いないが、結果としてハウンド達は、最小限の被害で勝利を収めたのだった。

「……で、ハヤトが槍で掘り返した街道の修繕もあるわけね」
 戦闘終了から1時間後。
 サーシャがぼやく脇でハヤトは低く唸り、リザは街道の脇にこっそりとローレライの水を吸わせていた。
 彼が運んでいるのは、探索によりあちらこちらに散らばっていた遺品の数々である。
「ウィール、手が空いてるならこのぼろ布をなんとか元の形に繕ってよ? 出来ない?」
「いえ、布地同士がつながってるなら出来る……と思いますが」
 リザの問いに、ベドウィールは神妙な顔で応じる。出来ないことはない。家事に長けた彼ならば、ボロ布が継ぎ接ぎと隙間の多い服程度には修繕が利くだろう。それも全体の中でほんの一部だが。
「戦いの後だって休んではいられないわ。……でも、ここまでボコボコにされると直すのも一苦労よね」
 アザリーは7割ほど埋め戻した街道を見て、やれやれと息を吐く。
 埋め終わってもある程度均して通りやすく、轍もそれなりに整えないと……とにかくやることが多いのである。
「終わったらウィルコックスさんの店で腹いっぱい食べるぞー!」
「俺もしこたま食うぞー!」
 ハヤトとソルディアス、年頃の男子2人の叫びが響いたのは……仕方ないというか、なんというか。



 11

参加者

a.私はこっちを受け持つわ!
サーシャ・エラーギナ(da0168)
♀ 16歳 人
a.んじゃ、俺もまずはこっちから始末しに行くぜ!!
ハヤト・アステール(da0375)
♂ 19歳 カ
b.見栄えに欠ける形ね。私の刀で整えてあげる。
アザリー・アリアンロッド(da0594)
♀ 25歳 人
a.沢山のひとが使う街道、守らないと……被害をここで止めよう、リリィ!
ロザリー・アルベール(da0704)
♀ 17歳 人
b.的がデカけりゃ、それだけ狙いやすいからな!
ソレイユ・ソルディアス(da0740)
♂ 17歳 人
a.ゆ、行方不明の人達が出てて、血痕がって……放っておけないよ、ロズ……!
リーリエ・アルベール(da0816)
♀ 17歳 人
b.どっちもひとクセありそうだけど、僕とウィールはまずこっちいくね!
リザ・アレクサンデル(da0911)
♂ 19歳 人
b.まずは、こちらを落としにかかりましょうか。
ベドウィール・ブランウェン(da1124)
♂ 22歳 人
b.よろしくお願いします。
エリアル・ウィンフィールド(da1357)
♀ 48歳 ダ
a.皆で連携すれば、難しい任務ではないのである
ノワール・トゥーナイン(da1749)
♂ 25歳 カ
b.よろしくお願いします。
ソレイユ・フォリー(da1795)
♀ 18歳 カ
b.如何なる状況でも勝つ…それが我が輩の流派じゃ!
ソーン・イワオ(da1804)
♂ 35歳 カ


街道修復依頼

グラスター街道が最近、でこぼこして走りづらい。魔物もあらわれるというし、対策してくれないだろうか?