【PF06】オールドマン

担当野間崎 天
タイプグランド 授業(島外)
舞台ハイチ(America)
難度やや難しい
SLvC(紛争地域、島内)
オプ
出発2018/09/09
結果成功
MDP大世宮典人(pa0940)
準MDPタキ・バルツァ(pa1565)
大神隼人(pa0137)
鈴鳴雪花(pa2285)
林秀玲(pa1187)
アガーフィヤ・コスィフ(pa0970)
アデライン・エルムズ(pa1094)
ユウキ・ヴァルトラウテ(pa1243)
エルミーネ・クロイゼル(pa1729)

オープニング

◆UNICOの動き
 ダブルオーの影と、クラーケンの脅威。
 進行を感じる麻薬絡みの陰謀。
 これらについて、UNICOとローゼンナハトは、さらなる調査を行なっていた。
 そこで、2つのポイントが判明する。クラーケンの拠点と思われる地下施設と、メガッピーの工場である。


登場キャラ

リプレイ

◆洞窟を進め
「おー、お疲れ」
 海底洞窟の入り口の一つを抑えていたソーニャ・グリンスカヤは、しょっぱなから敵に追われていた3人を迎えて、淡白に言った。
「くそっ。散々だったぜ」
「こんなことでリタイアするとはな」
 体力や道具を使い果たした3人は、悪態を付きながらも、水中用の装備に変え、離脱の準備を始める。と、そこでニコ・オークスがAiフォンを取り出した。
「あ、メール来てたね。えっと、雪花君から――『ドンマイ』」
 学友からの励ましに、少しだけ気分を持ち直してお礼のメールを打ち返し、ここまでの道を示して逃亡を助けてくれたエルミーネ・クロイゼルにお礼を言った。
「エルミーネ君もありがとう。おかげで逃げ切れたよ」
「皆様の報告があったおかげですわ」
 海上からの通信機越しでもその物腰の柔らかさが伝わってくる。だが、まだまだ探索開始したばかりで少ない情報から、安全なルートを即断できる推理の腕は、確かだった。
「他の皆は、順調かな?」
「皆様いくつかのグループや個人で行動しておりますけども、まだ、これからのようですわね」
「そっか。それじゃ、戻るね」
 そう言って、ドジ踏んだ組は撤退していった。

「まったく、ニコは何やってんだか」
 エリアス・ツヴァイクが、ニコが無事に撤退したと聞いて、改めてぼやいた。
「まぁおかげで仕掛けがあることがわかったと言えばお手柄とも言えなくはねぇが」
 落とし穴をひょいひょい避けながら、進む。事前情報なしでも彼なら気づけたかもしれないが、あるとわかっていた方が、見落としは無くせる。
 エリアスと同じところだけを踏んで、石動詩朗がついていく。
 他にも、僅かな色や質感の違いから、加工されているか、人工物と置き換えられている場所を見極め、トラップを回避していった。
 そして、Y字路に差し掛かった時、エリアスは身振りで止まらせた。
「右側からコネクターが来る」
 今ならまだ接触を避ける事ができるかもしれない。だが、
「……案外、ここにいる奴らが罠解除の鍵ももってたりしてな」
 そういう希望もあれば、ただやり過ごすのはもったいないかもしれない。
 詩郎も、敵巡回兵をそのままにしておくつもりはない。
「怪盗は怪盗らしくなァ…」
 エリアスと石動は声を出さずに笑い合うと、それぞれ左と右に別れた。

 別のルートでは、ファントム達が狭い道で、ドロイド達と出合い頭にぶつかっていた。
 6体のペンギンが口を開き、鈍色の銃口が向ける。と同時に、対峙したドゥエイン・ハイアットの銃が先に火を吹いた。
 45口径の弾丸は、早さに正確さも伴ってペンギンの口元を撃ち抜き、吹っ飛ばす。
「今のうちに、先に行きたまえ」
 そう背中で語りながらドゥエインは2発。3発。と続けざまにペンギン達をぶち抜いていく。が、どいつも一発では致命傷にはならぬようで、2度3度と立ち上がってくる。
「ありがとう。無事を祈るわ♪」
 鈴鳴雪花と陳華龍が先を急ぐ気配を背中で感じながら、ドゥエインは物陰に隠れる事もせずその場でリロード。
 その隙に、物量で押すペンギン達の銃弾がばらまかれ、ドゥエインの身体を数発捉えるが、ドゥエインは防弾衣と防弾ネクタイでこらえる。
(一発一発は、大した事はないな)
 撃ち返してペンギンを倒すが、倒したはしからすぐに援軍がやってきた。
「水族館でデート、とはいかないものだな」
 残り少ない弾をペンギンにくれてやりながら、ドゥエインは走り出した。
 目的は、敵ドロイドの排除もだが、一番は味方に行かないように引きつけることだ。

 そういう意味では、李紅花が、文字通り一枚脱いで、敵へ魅力を振りまいてドロイド達を惹きつけていた。
「アヒャヒャ! 壊し放題なんだろ? なら私にやらせなよ」
 豪語する紅花の元には、カニからペンギン、ヒトデまでわらわらと集まってきていた。
 彼女のひらひらした紐ビキニに誘われてきたカニの群れを、ロシア製アサルトライフル――通称アバカン――でなぎ払い、弾丸の雨をたまたまくぐり抜けてきた奴は、蹴飛ばし、踏み抜き、美しき御御足を見せつけた。
 一度見つかれば、次々と増援がやってくるのは、スニーキングする者にとっては悪夢だが、逆に、囮にとってはとてもありがたい。
 防弾性能の高いスーツを着ておきながら、自らはだけたり脱いだりしてまで注目を集めた彼女は、追手が増えれば増えるほど、動きはキレと力強さを増していった。
「可愛いヤツもいるねぇ、壊し甲斐があるよ!」
 肉薄したペンギンの首をチョークスリーパーで潰し、へし折り、投げ捨てて紅花は高らかに笑った。

 一方で、ドロイド勢となるべく真正面からやり合わずに対抗しようとしている者もいた。
 日暮真央人が壁沿いを警戒しながら慎重に歩みを進め、ドロイドの行動パターンを探る。
 手にトランクケースを提げているのは、今回の肝。
(たぶんあのヒトデとか、電波通信でコネクターと連携してるんだと思うんですよね)
 トランクに収納された超科学的な電波妨害装置でジャミングしながら進む。
 すると、緩いカーブの先から現れたのは、10体程のカサカサとうごめくカニの群れ。
 それぞれが真央人に一直線に向かってくる様子はなんだか機械的。
 ギアのローラーブレードを使うには、地面の凹凸が大きく向かないが、それを抜きにいても、機動力は真央人に分がある。
 足首を狙って突き出されたカニバサミを、脚を上げて避け、ついでにそのまま振り下ろして踏み潰す。
 次々寄ってくるカニを順番に踏み潰していきながら、真央人は確信していた。
 やはり電波遮断することで、敵の連携は潰す事ができるようだ、と。
 カニを潰し終えた頃に、同じ方向からよちよちとやってきた1体のペンギンも、おそらく敵を発見して駆けつけてきたわけではなく、ただのお散歩……いや、巡回ルートだった為だろう。
「動く壁とか変な罠も作動する様子ありませんし、ラッキーでしたね」
 たまたま自分の選んだ道に、そういう仕掛けが元からなかった可能性もある。味方からの通信も阻害され、他の場所の仕掛けや罠の作動する頻度がわからないため、判断ができなかったから。
 だが、元からなければそれはそれでやはりラッキーだろう。
 真央人は、ペンギンの放つマシンガンを、金のブレスレット付きの防御強化型アームギアで受け流し、ペンギンを叩き壊すべく接近した。

「一部の奴と連絡つかないな」
「侵入者の妨害か……ちとやっかいだな。こっちは何も居なさそうだし、早めに潰しに行くか」
 巡回ルートを二人並んで進む黒服――コネクター――は、侵入者達の事を話しながら洞窟内を警戒していた。
 電波の通じぬ範囲は約100m。その中心に妨害装置があるのだろうから、潰しに行こうと回れ右したコネクター達は、すぐにもう一度振り返った。
「ところがギッチョン!」
 極力気配を消して潜んでいた詩郎がコネクターへ奇襲をかけたのだ。が、詩郎の高周波ソードの一振りは、コネクターも腕で受け止めた。
 直刃の長剣と化していたコネクターの腕と、詩郎のソードが火花をちらして互いの刃を削る。
 もう一人が近距離から拳銃を打ち放つと、詩郎の鼻先をかすめ、洞窟の壁の一部を崩す。
 さらに一合切り合った詩郎は、次弾を放たれる瞬間にバックステップを踏んで射線から外れた。
 同時に追撃しようと一歩前へ踏み出しかけた直刀のコネクターは、詩郎が何かを落としたことに気づき、正体に気づいた時には、遅かった。
 詩郎の落とし物――手りゅう弾が地面に落ちて炸裂すると、強烈な閃光が洞窟内を照らし、直視した二人のコネクターの義眼を白で塗りつぶした。
「われらにこんな手が……!」
 だが、言い終わる前のセリフを爆音が遮った。コネクターの視界が一瞬なくなった隙にソードからコンシールド拳銃に持ち替えた詩郎が至近距離から撃ち込んだのだ。
 その弾は、非殺傷用のエレクトリック弾。痺れたコネクターが倒れるのを見届ける前に、詩郎は次の獲物をにらむ。
 すでに相手の拳銃は自分の頭部をポイントしており、自分の拳銃はまだだ。
 コネクターの口角がわずかに上がり、引き金に掛けていた指に力を込めようとした瞬間!
 詩郎の目からビームが放たれ、コネクターの拳銃がはじかれた。正確には、詩郎のゴーグルに内蔵されたレーザーガンなのだが、不意を突かれたコネクターにはそうとしか見えなかった。
「そういうのは、われわれのネタだろう!」
 驚いたコネクターが勢いよく両腕を飛ばして詩郎に殴りかかるが、それらをすり抜けた詩郎の踏み込みからのローキックが義足をとらえ、コネクターはガクッと崩れ落ちた。
「下手に人に似せっから、こういうのが決まンだよ」
 キックを決めた靴からは、暗器の刃が生えていた。脚から伝わった毒は体中を巡り、麻痺毒によってコネクターは倒れたのだ。
 倒れた二人を拘束すると、詩郎は次の獲物を求めて先を急いだ。
「戦いは生き甲斐なンでね」

 詩郎の生き甲斐が戦いであれば、風磨玉響ことエラ・ウォーカーの生き様はニンジャだ。
 洞窟の狭くてぐねぐね曲がってて床もでこぼこして滑りやすい道を颯爽と駆け抜けていくエラと忍犬の虎徹。
「さあさあ! 逃げなさい!」
 追手のコネクターの腕は突撃銃。いくら忍びの者でも、この狭い一本道が続く場所では忍者刀の間合いに入る前に蜂の巣だ。
(分岐が全部消えてるネ)
 敵が有利になる場所に誘い込まれたか。
 だが、ニンジャの本領はここから発揮される。
 コネクターは少しずつ距離を離されていく侵入者に、少し驚きながらも頭の中でこの先に用意されている物を思い浮かべた。
(この先には、巧妙なくくり罠がいくつも仕掛けられているのよ。無様に宙吊りにされているところを、いたぶってあげるわ)
 突撃銃のコネクターは、嗜虐的に笑い、足を速めた。
 可愛らしい娘が必死に逃げる姿が好き。抵抗する姿が好き、惨めに悪あがきする姿は最高。罠にかかった獲物を想像するだけでもそそられる。
 トラップ地帯に踏み込んだコネクターは獲物の姿を探す。
 自分は当然罠の位置は知っているので、そこは跳び越えて進もうとして――着地点に苦無が投げ込まれのを回避しようとして、着地の姿勢が崩れた。
 態勢を立て直そうとたたらを踏んだコネクターは、もう一つ余計な物を踏んでしまい、突如世界がひっくり返った。
「ポチッとな! ですヨ」
 通路の影から顔を出したのは玉響と虎徹。「下ろしなさい!」と怒鳴るコネクターを放って、一人と一匹は先へ進んだのであった。

「どこも派手にやってんじゃねぇか」
 もうひとりの忍び、天翔ける紅き狼こと大神隼人は、仲間の現況を聞いて思わず笑みがこぼれた。
 仲間がドロイドもコネクターも共に引きつけてくれているおかげで、隼人が敵と出会うことがない。戦う準備は万全だというのに。
 代わりというわけではないが、壁から鉄槍が飛び出る仕掛けのトリガーとなるワイヤートラップを解除して、後続にOKサインを出した。
 イーノク・オルティス陳晶晶がすばやく近づくと、再び隼人が先行して安全を確かめる。
 人並み外れた視覚、嗅覚、聴覚で何か見つければ慎重に近づき、解除できる物は解除し、そうでなければ回避できる道を探った。
 一人がやっとくぐれるような、戦闘になったら対処しにくい場所、一度水中に潜って確かめねば先に進めるのかどうかもわからない場所。そういう場所にも隼人は率先して進んで罠の解除に勤しんだ。
 水中戦を想定した装備の後輩二人を無事に奥にあるであろう潜水艦とクラーケンのところまで連れて行く為に、先輩は露払いを続けたのだった。

◆寄り添うオーケストラ
「この音はパイプオルガンかな」
 随分いい趣味してるね。と敵のことながらセンスを認める発言をしたのは、マティアス・リブラン
 斧箭鎌刀の操作するノートPC……怪盗御用達のハイクオリティな品のスピーカーから聞こえてくる音を聞き分け、楽器を特定した。
「単品でいけばこれに敵う楽器はそうないけど……添うことも反することもできるとなるとオーケストラかな」
 その提案に、小林三代が疑問を投げかけた。
「オーケストラ、ですか? バイオリンならありますけど、パートが足りないのではないですか?」
 今、海上でセッションの用意をしているのは電脳担当の鎌刀を除いて4人。楽器は、催眠効果のあるバイオリンがいくつか持ち込まれていた。
 一般的にイメージされるオーケストラに比べて明らかに人数が不足していた。全てのパートを埋めようとすれば、今回の秘密ドッグ攻略作戦の参加者全員集めたところで、やっとか?
 だが、マティアスは問題ないと言う。
「足りないパートは音楽ソフトの疑似再生でフォローしよう」
 これなら、人数の不足も、パートの被りも心配いらない。DTM(デスクトップミュージック)では想いがこめられない、なんて言い出す者もいなかった。
 そうと決まれば。と言わんばかりに、三代――助手三世は、刹那の早着替えでバイオリニストの正装へと姿を変えた。
「形から入るのも気分の盛り上げにはいいものです」
 ハイチの海に浮かぶボートの上でも、それだけでこれから演奏するものがオーケストラだと、自分たちに言い聞かせるのには、効果があった。
 早速準備完了した助手三世。だが、鎌刀は少し待つようにお願いした。
「マティアス先輩がミキシングする用意と、僕がその音を拡散する準備にもう少しかかります。秀玲先輩はどうでしょう?」
「もがぁっ!?」
 魔改造されたカロリーミールを食べていた林秀玲は、突然話しを振られて驚き、喉に詰まらせた栄養食品を慌てて水で流し込んだ。
「空腹で中断とかしなくていいよう、栄養補給は済ませておく必要がありますからね」
 少し頬を赤く染めて、秀玲は言う。
 なお、ボーカル担当の彼女の選んだ衣装は、助手三世の物とは真逆で、アジアンテイストが素敵なビキニ。相手を魅了してやるという、こちらも決意の現れだ。

 その後、曲の方針を話し合い、先にオルガンの曲に添う方で始めることにしたファントム達。
「じゃー、僕はちょっと待ってるね」
 ショコラ・ブラマンジェはAiフォンで自分が演奏する曲を選びながら一歩引く。
 そして、今度こそ助手三世と秀玲が並び立ち、助手三世はバイオリンを、秀玲はマイクを手にスタンバイ。
 マティアスと鎌刀も、並んで座り、それぞれ音楽アプリと配信の準備を整えた。
 指揮棒が振り上げられる代わりに、鎌刀のPCからパイプオルガンの音が流れ、そこに、マティアスのPCから新たなパートが加えられる。
 続けて助手三世のバイオリンが哀悼の音を重ねれば、秀玲が即興で考えた詞を歌い上げた。
 秀玲がまず歌うは、大いなる海を称える賛歌。
 一瞬、オルガンの音が微かに震えた。だが、その後は平然と演奏が続けられる。
 だが、そこに先程までなかった意志のようなものを感じ、秀玲は感じたままに歌詞を変え、次に歌うは海の男の歌。
 助手三世も、オルガンの音に乗って流れてきているであろうメッセージを、秀玲の歌詞も参考にして自分なりに読み取る。
(これが、彼にとっての海と男の理想像……海の秩序を乱す者への反発……)
 リフレインするように演奏する。相手に自分の音色を浸透させるように。
 マティアスは、二人の歌と演奏を支え続けられるように、メロディのパターンをときには徐々に、ときには大胆に変えていく。
 演奏はある程度自動化しているとはいえ、何十パート分を一人で担当するのだ、一つのパートのミスが全体に響くオーケストラゆえ、一切気が抜けなかった。

 一方で、鎌刀はPCでハッキングを続けて曲を敵の元へ送りながらも、それとは別窓を開いて、覗き込んだ。
(マッピングは上手くいっているのでしょうか?)

◆トラップ発動!?
「へっくしっ!」
 急に出た自分のくしゃみに、思わず周囲を見回して敵影を探した美の騎士――ジェームズ・クレイトン――は、周囲に敵の気配がないことに胸をなでおろした。
 後ろをついてきていた澤渡龍兵が、心配して声をかけた。
(おい、大丈夫か?)
(ああ……ちょっと身体冷えたか?)
 半分水没した道を通ったばかりで、お互い服もまだ濡れていた。ジェームズは少し身体を震わせると、念のためにと、ズボンのポケットの中に入っている発信機を確認した。
 予算の都合で使い潰せなくなった発信機は、落とすことなくここまで来られていた。無事に働いてくれていれば今頃、鎌刀のPC上で、ジェームズが通ったルートが一本の線で描かれているはずだ。
 おとぎ話の兄妹のように、道標を落としていかずとも、帰り道は電波さえ通じれば、鎌刀やエルミーネに誘導してもらえるはずだ。
 ジェームズは、気分を高騰させるために、某考古学者のテーマを脳内再生しながら進む。
(トラップの先に謎がある! あ、いや、今回はこの先に何があるのかは分かってるんだが、この場合は気分だな、気分!)
 ジェームズは、ちょっと長い一本道を見たら全力で迂回路を探し、崩れそうな場所では落とし穴を警戒して慎重に一歩ずつ踏み込む。
 床スイッチも当然警戒。床が濡れていたり、先程のように水没している道は、思わず手をつきたくなる壁の方にも注意は怠れない。
 これまで培ってきた洞察力をフルに活かして、ジェームズは罠を事前に回避しつづけた。
 この活躍には龍兵も音を鳴らさずに拍手してたたえる。
「絶好調だな。これならキャプテンにインタビューするところまで楽できそうだ」
「あ、おだてたって物理は無理だぞ。物理は」

 こちらは、序盤で詩郎と別れたエリアス。別れ道を何度か選んだ先で、行き止まりにぶつかり、来た道を引き返す途中で、再びコネクターの気配を感じた。
 隠れられるような場所はない。エリアスは戦闘服の光学迷彩により透明化して敵の目をごまかそうとするが、敵もコネクター。目は特別製だ。
 見えないはずのエリアスの方へ突撃銃の腕を突きつけられると、エリアスも覚悟を決めて両腕を前で構えた。
 連射された銃弾を、次々と受け流す。レッグギアを掠める物はしかたないと諦め、たまの避けそこねが胴にあたった分も、痛みに耐えて受けに集中し続ける。
(しかし、このままじゃ……)
 ジリ貧だ。だが、エリアスはまだ逆転の一手を隠していた。
 激しく身体を振ってフェイントをかけると、横っ飛びで一瞬敵の射線から外れると、人差し指で相手を指した。すると、特殊なレーザーが照射された。
 なんと、そのレーザーに捉えられたコネクターの射撃は止み、悔しそうな表情で固まったのだ。
 エリアスのつけた腕輪……ゼロエネルギーな腕輪のレーザーは、捉えた者を最長1分行動不能にする。
 その間に、エリアスは照射しながらコネクターに近寄り、ポケットをあさって鍵を抜き取ると、脇をすり抜けて逃げ出した。
 ついでに、わざとトラップを発動して壁を動かすことで、コネクターを通路に閉じ込めた。
「コラ! 出しなさいよ!」
 壁越しに叫ぶ声が聞こえたが、構わずに、エリアスは逃げ出した。
「ふん! 見てなさい。すぐにオールドマン様が開けてくださるわよ……オールドマン様? オールドマン様!?」

 最初にドジを踏んだ3人以外は割と順調に進んでいるように思えたが、もう一組、全くの予想外の事態に見舞われた者達がいた。
「まさか、クラーケンのところまでアブソルートで行けないとはね」
 洞窟内を一歩一歩進みながら、九曜光がやれやれと首を振る。
 彼女が今回のミッションに選んだ愛車、アブソルートRB3は、ボンドカータイプB仕様。マリンモードがあり、水中航行が可能であるこの車は、海上から海底洞窟内へ、人員を送り込むのに役立った。
 更には、小型魚雷をも搭載している為、水中戦が予想される、対クラーケンで活躍できるはずであった。
 が、クラーケンがいるであろう、最奥までの道は、狭い。
 人が一人通るのがやっとのところを、ミニバンで通り抜ける事は、ドライバーの腕に関係なく、普通に考えれば物理的に無理だろう。
 そんなわけで、車から降りて、歩いて奥を目指す光の傍らには、雷撃手を担当していたビリー・ウィリアムズも並んでいた。
 幸い、車から降りても、光はアイルトンとして、仲間を目的地まで運ぶ事はできそうであった。
 冒険に関する知識や技術は高く、特に水域には強い。
 生身で水中に潜る為に酸素を発生させるオキシガムも用意している。
 なんとしても、仲間を、ビリーをクラーケンの元まで、必要とされる戦場まで連れて行く。
 されど、アイルトンの矜持を見せる光の進路を塞いだのは、ひとつのでっぷりとした影。
「きゅ~~~~♪」
 かわいい鳴き声で彼女を誘惑するのは、アザラシ。
 つぶらな瞳で見上げてくるその姿に、光の中の張り詰めていたものがほぐされ、思わずフラフラと近づいていってしまう。
「おい、どうしたんだ?」
 ビリーの制止の声も聞こえず。このままでは、隙だらけの中で的に援軍を呼ばれて袋叩きにあってしまうかもしれない。
 このピンチを救ったのは、近くを通りかかり、助けに入ったアガーフィヤ・コスィフだった。
(……あれに対抗するには……これしか……ありません)
 二人と一匹を視認したアガーフィヤは状況を察知し、慎重に岩の陰やくぼみを利用して近づき、光に抱きついた。
 驚いた光がアガーフィヤを払おうとした瞬間、至近距離かつ上目遣いでアガーフィヤは光におねだりした。
「なでて……ください……」
 次の瞬間にはアガーフィヤの頭を光は全力でやさしく撫でていた。
「ありがとう……」
 アガーフィヤの微笑みが光に向けられ、光は――
「はっ、僕は一体」
 正気に戻った。
 アザラシの魅力にアガーフィヤの魅力が勝利したのだ。
 アザラシ自体は動きがそれほど早くなく、その分皮下脂肪的に装甲が厚く、ここでは倒すよりは無視してしまう方が良いという判断がくだされ、逃走。
 駆けつけた敵の援軍のドロイド達も、アガーフィヤがしっかりと対処した。
 小さなカニが後ろからわちゃわちゃと追いかけてくれば、手榴弾でなぎ払い、ペンギン相手には一人囮になり、惹きつけている間にビリーが仕留めた。
「こいつで……おしまいです」
 さらに、飛んでいたヒトデを投げ縄で捕まえると、散弾銃を撃ち込んで黙らせた。

◆変調
「――はい。かしこまりましたわ。では、北東に向かっていただけますか? はい。その先も未知の領域、慎重にお進みください」
 エルミーネが、光達とアガーフィヤの合流を聞き、新たに探索する方向を指示した。
 そうして、また新たな情報がもたらされる度に、また次の指示をそれぞれのチームへ出す。その繰り返しが何度となく行われ、探索が進んでいった。
 そんな刻々と変わっていく洞窟の状況と同じように、海上のファントム達の演奏も、次第に変わっていた。

「子豚が飛んで♪ カレーが煮えた♪」
 流されているのは、陽気なバカンスを思わせるノリノリなナンバー。秀玲が歌うのも、真面目に聞いていると頭がおかしくなるような、リズム重視のもの。
 段々と、オールドマンの曲へ反発する曲を入れるようになってきていたのだ。
「ジャワジャワジャワ♪ バモバモバモ♪ ボンボンボン♪」
 そして、とうとう秀玲の頭の中の歌詞の泉も枯れ果てて、オーケストラにスキャットを混ぜるという暴挙に出る。音楽としては、ギリギリ成り立っているレベルで混沌としてきていたが
「ドロイド同士の連携がちぐはぐになってきているそうですわ」
「トラップの発動も、明らかにタイミングがずれてきているようです」
 エルミーネと鎌刀が、効果のほどを演奏している者達へ告げる。
 対話としてはどうかしていても、妨害工作という点では、効果的であったようだ。
 そして、演奏しっぱなしである助手三世と歌いっぱなしである秀玲に疲れが見え始めたところで、交代。
「それじゃ、今度は僕の番だね」
 ショコラもバイオリンを手に取り、立ち上がる。伴奏はAiフォンから音楽配信アプリを通じて流すことにしたので、マティアスに預けた。
 ショコラは、きどることなく自然体でバイオリンを構えると、大きく息を吸い、叫んだ!
「僕の歌を聞けー!」
 叫び声を合図にマティアスが再生ボタンを押すと、Aiフォンから流れたのは、明るく楽しい雰囲気の曲。
 伴奏に合わせてショコラの指が細かく動き、弓を時に激しく、時に優雅に動かし、重厚な響きを生み出していく。
 水分補給しながら、秀玲が「あっ」と声を上げた。
「あ、これ、あのアニメのテーマ曲ですね」
 有名な怪盗アニメのテーマ曲だ。細かく言えば、劇場版のアレンジバージョン。
 ショコラの演奏に、思わず秀玲も口ずさむ。
 一曲弾き終われば、次は最新アニメの主題歌をメドレーしていく。
 ショコラの、バイオリンを弾きながらのハミングに、こちらも秀玲が一緒にハモる。
 擬人化労働アニメから熱血スポーツもの、定番の女児向け変身ヒロインから直球のものと変化球的な2つの怪盗もの。
 それぞれの歌で描かれる世界観や込められたメッセージは別々なれど、一曲一曲愉快な気持ちで弾いてキャプテンへとぶつけていった。

 さて、キャプテンの心境や如何に。

◆戦い抜くもの達
 ユウキ・ヴァルトラウテを先に行かせると、ベリエス・デルラは拳を握って胸の前で構え、タキ・バルツァは忍者刀をおもむろに抜き放った。
 仄暗い道の奥から近づいて来たのは、二人のコネクター。
 一人が手の甲に大きな鉄の爪のついた太い義肢をはめたパワー型。もう一人が、シュッとしたシルエットで、右手に拳銃、左手にアーミーナイフを握った技巧派か。
 臨戦態勢万全のコネクターを見て、ベリエスはハッと笑った。
「ハッキリ言ってさぁ、俺はタコ野郎にも幽霊船の船長にも興味は無ぇんだわ。でもよ、アンタらには興味がある訳だ」
 ベリエスの語りに、コネクターは足を止めて警戒感をあらわにした。
「俺と同じだからな、強ぇんだろ? その腕も、脚も、目も、滅茶苦茶にしたら気持ちイイんだろうなぁ……」
 パワー強化型ギアの力に任せて殴りかかるベリエス。臆する事なく突っ込んだベリエスの義肢の拳は鉄爪のコネクターの顔面を殴り、打ち返される鉄爪付きの拳を、猫のようなしなやかさでかわした。
 振り切った隙を狙ってタキが忍者刀で斬りかかるが、これには敵が上手く反応して転がるようにして避けた。
 起き上がりの援護するように技巧派のコネクターが拳銃を連射して弾幕を張る。銃弾はファントム二人の身体を貫くが、二人の防具がその威力の大半を削いだ。
 勢いを衰えさせずに突っ込んで殴るベリエスと、狭い通路内で壁を利用した立体的な動きで死角をつくタキの忍者刀の攻撃。
 狭い中での即興のコンビネーション。
 ベリエスの身体にも鉄爪の傷が刻まれるが、ベリエスの腕は、腕時計から超科学的な薬品を使ってパワーを上乗せしている。傷つけられる以上のペースで敵のボディを痛めつけた。
 そして、コネクターが突然腕を引っ張られたかのようにバランスを崩してたたらを踏んだ。
 引っ張られた方の腕をよく見れば、鋼糸が巻きつけられていた。
 ハッとして糸の先を負えば、タキの手元に。タキがアームギアに内蔵されていたワイヤを巻き付けたのだ。
 力自慢に振り回されれば、逆にタキがピンチになった可能性もある。だが、その前にベリエスがその腕を掴んでへし曲げた。
「くそっ! 同類とはいえ、なんてパワーしてやがる!」
「ハッハァー! どうした!? もうお終いか!? 冗談じゃないぜ!」
 左手一本でまだ殴りかかってくるコネクターへ、そうでないととばかりにベリアスが全力で一撃見舞う。
 その一撃で顎を打ち抜いて敵を沈めると、ベリエスはスッキリした顔で次の獲物へ視線を向けた。
 銃弾で牽制しながら一旦引こうとする相手の足を、タキがワイヤーで絡め取り、転倒したところを一気に接近して鳩尾へ深く突き入れる一撃。その一打で気絶させると、ダクトテープで身体を縛り上げた。
「おい、もうお終いか? まだまだ満足してねぇぞ!?」
 不満がるベリエスだったが、利き腕がだらりとしていた。タキは、軽く首を振った。
「無理はしないほうが良い。傷の手当は、戻るまでできないんだから」
 胸から流れ落ちる血を見て、タキは言う。普段は他者の自由と多様性を尊重する彼ではあるが、自他の生命の危機へ鈍感なわけではない。
「かつて出荷されたものか……或いは未だ『生産』されているのか」
 どちらであったとしても、彼らも、自分たちも、生身のところが傷つけば、命が危うい人なのだから。
 渋々納得して、パワー型のコネクターを担ぎ上げて来た道を戻るベリエスに、タキももうひとりを担いでついていった。

 一刀繚乱とフェイスレス――月羽紡リュディア・ラヴィオラ――もペアとなり、進んでいた。
 一刀繚乱はコネクターを、特に、あるコネクターを探して洞窟内を堂々と進んでいた。その後ろを3歩引いてフェイスレスが続く。
 刀が得物の前衛の一刀繚乱と弓や銃が得物の後衛のフェイスレス。罠や仕掛けへの対処も一刀繚乱の方が得意なので、一刀繚乱が前を行くのは不思議ではなく、フェイスレスの他人と距離をとる癖が悪目立ちする事はなかった。
 そして、いたずら好きな運命は、いくつかのハズレとしてドロイド戦を彼女らに強要した後、待望の邂逅を果たしてくれた。
「イタゾ! シンニュウシャタチ!」
「さっきの奴らとは違って手強そうだから、油断するなよ!」
 ニコらを見つけてコントをしていた二人組だ。
 比較的広い空間で対峙したファントムとコネクター。
 コネクター達は既にカタコトの男が義手の回転ノコをフル回転させ、ツッコミ役の兄貴分が大口径の2丁拳銃の銃口を二人それぞれへ向ける。
 されど、一刀繚乱は落ち着き払って、口を開いた。
「まずは自己紹介でしょうか……月羽紡、またの名を『一刀繚乱』です」
「え? あ、えっと……あたしは、フェイスレス」
「オレは、ジョーン・オニオン。マタノナを『玉葱野郎』だ!」
 一刀繚乱の優雅な一礼と、突然の事に慌てて頭を下げたフェイスレスに、回転ノコの男が名乗り返すと、男の頭に兄貴が一発雷を落とす。
「何のんきしてんだ! おまえはいつもいつもいちいちべらべら喋ってんじゃねえ!」
 その様子に、思わず一刀繚乱はクスリと笑った。
「そっちも何笑ってんだ!?」
「いえ、こんなコントをしてる方々でも、鍵を任されているなら、コネクターとしての能力はかなり高いのでしょう。戦うのが楽しみで」
 興奮が抑えきれないとばかりに武者震いする一刀繚乱へ、ジョーンは真面目な顔で言う。
「カギなら、ミンナ、モッテルゾ」
「……そうですか。でも、重要拠点の警備を担当なされているのですから、実力は折り紙付きなのはかわらないでしょう」
 言い直す一刀繚乱に、「オオ! オレタチツヨイ!」と威張るジョーン。
「いい加減にしろ! そろそろそのうるさい奴と裏切り者を始末するぞ!」
 兄貴分の言葉に、フェイスレスが一瞬たじろぐ。だが、一瞬だ。とっくの昔に覚悟は決めている。
「あれはもう1人のあたし、人生を奪われ道具にされた者。必ず止めて、救ってみせるわ」
 フェイスレスが矢をつがえ、兄貴分の号砲を合図に、戦いは始まった。
 2発の弾丸がそれぞれ、一刀繚乱の脇腹とフェイスレスの肩を捉えた。フェイスレスは、痛みに矢を取り落としそうになりながらも、しっかり引き絞って撃ち返した。
 狙うは武器を持つ両手。なるべく生身の部分を傷つけずに戦闘力を奪いたい。
 一刀繚乱の方は、痛みに耐性を持っている分、構わず前へと突き進む。
 ジョーンが大上段から一刀繚乱の頭へと、思い切り力を込めて丸ノコを振り下ろす。当たればファントムといえども一撃で絶命しかねない攻撃。
 だが一刀繚乱は、なめらかに最小限の動きで避けると、一太刀。逆袈裟に切り上げると、ジョーンがムキになって大ぶりになるのを冷静にかわして逆に切り込んでいく。
「その程度ですか……?」
 残念そうに言う一刀繚乱へ、ジョーンが丸ノコを突きつけるが、それも軽く一歩引いて避ける。
 と、距離が開いたところを、兄貴分が狙いをつける。が、フェイスレスが撃たせない。
「やらせはしないわ!」
 止めるという決意をのせて撃った矢は、狙い定めた銃を弾き飛ばし、できた隙にもう一方の銃も落とそうとするが、そちらはさすがに失敗。
 しかし、その間に前衛の二人は決着がついた。
「次はきみですね」
 一刀繚乱が兄貴分へと刃を向けた。兄貴分は立て続けに一刀繚乱へ弾丸をぶち込むが、一刀繚乱は止まる気配もなく、意識から外れてしまったフェイスレスから撃たれて、今度こそ2丁目も弾き飛ばされてしまった。
 降参した兄貴分とジョーンを壁に並べ、一刀繚乱は聞きたかった事を尋ねた。
「オールドマンときみ達との関係です。きみ達は洗脳されてるようには見えないので、少し気になりまして。何か恩義でもあるのですか?」
 コネクターの二人はキョトンとしていた。
「センノウ? ナンノコトダ?」
「しらねえなあ」
 洗脳されている事を否定する二人。だが、なぜ協力しているのかについては、上手く答えられなかった。
「なんで? なんでだ……俺達はここを守るように言われて……そうだ、仕事だよ。ビジネスの関係だ」
 言ったものの、腑に落ちないという顔をした兄貴分の様子を見て、フェイスレスが一刀繚乱に耳打ちした。
「あたしも、記憶に残っているわけではないわ。でも、洗脳中には洗脳されている自覚はないんだわ。きっと」
「……そのようですね」
 洗脳された人間から、個性が消えるわけではない。歪められる事はあれど、人格が全てなかった事になるわけではないのだ。

◆その頃地上では
 ほとんどの者が海の底、あるいは海面上で活動していたが、ステラ・ワードは空の上を飛んでいた。
 攻撃ヘリAH1S、通称コブラのパイロット席から地上を見る。
 そこでは、彼女の指揮するマフィア達が、海底洞窟の上に当たる海岸を動き回っていた。
 ステラは今回、海底洞窟の地上に面している出入り口を抑えるつもりでマフィアを繰り出したのであったが、その入口が見つからない。
 それもそのはず。海中からしか行けないからこそ、潜水艦と海の怪物の秘密基地足り得たのだ。
 成果のないまま、マフィア達を家に帰すと、ステラは笑うしかなかった。
「大事な宝(出番)を失ったのです……てへぺろ☆」

◆クラーケンの湖
 一刀繚乱とフェイスレスが最奥の係留池へ続く扉の前に到着した頃には、引き返した者達を除けばほぼ全員揃っていた。
 少し開けた空間で、集う全員に見守られてエラが鍵開けに挑戦していた。
「開きそうですか?」
「突破できないと言われた迷宮も突破してきたネ! このカギだって開けてみせるネ! ミー達をなめてもらっては困るネ!!」
 真央人に問われたエラは元気よく答えて気合を入れ、集中して鍵穴と向かい合う。が、通常のシリンダー錠とは違う複雑さを持ったカギ、しかも、鍵穴が2つあり、片方をいじるともう片方も連動して動くこの錠は、エラの達人級の腕をもってしても、元の鍵を使用せずに開ける事はできなかった。
「こうなったら、奥の手ネ」
 切り札を使うヨ。とエラが取り出したのは、爆薬。
「罠も壁も吹き飛ばして敵の裏をかけるネ!」
 扉があるからと、そこから入らなければならないわけではない。そういう固定概念を覆すのも怪盗らしい発想ではあった。
 だが、周囲の者全員で彼女を必死に止めた。
「「「やめろ!ください! 洞窟が崩れる!!!」」」
 もちろん、火力を調整するだけの実力はエラにはある。だが、けして海底洞窟というものは頑丈なわけではないのだ。爆発の余波で崩れたら全員生き埋めになる。
 海中を進む装備は充実していても、地中を進む装備を用意しているわけではないのだ。
「まぁまぁ、鍵ならここにあるわよ」
 リュディアがコネクターが所持していた鍵を2本、エラへと渡した。
 エラは少し残念そうな顔で受け取ると、それぞれの鍵穴へと鍵を差し込んだ。ここからただ鍵を回しても上手くいかないことを、先程までのトライでエラは気付いていた。
 2本の鍵をゆっくりとそれぞれ交互に回し、最後に同時にぐっと大きくまわす。と、『ガチャリ』と重厚な音が響いた。
「はい。開きましたヨ」
 手応えを感じて、エラは額の汗を拭って一息ついた。
 こうして、洞窟隊の役目は果たされた。

 仕上げは俺達が。と、ここまで力を温存してきた最奥突撃班が気合を入れ直したそのとき、洞窟の手前側から異音が響いてきた。
 何の音か不思議がり、警戒し始めるファントム達。
 だが、いち早く音の正体に気付いた光が「まさか……」と声をもらした。
 激しいエンジン音と共に皆の前に姿を表したのは、アブソルートRB3!
 停止した車の周りを皆で取り囲むと、運転席から顔を出したのは、大世宮典人
「……すまない。遅くなった」
「おそ……? いや、問題ないぜ。これから突入するところだからな」
 開口一番、到着が遅れた事を謝罪した典人に、ジェームズが呆れ気味に言う。
 辿り着けた事がそもそもおかしい。それは、早々に車での突破を諦めて降りざるを得なかった光が一番良くわかっていた。
 だが典人は、洞窟の狭さも、ドロイドの襲撃も、他のあれこれ全ての無理を「全てを振り切って」突破してきたのだ。
 道中の険しさは、車体についた数多の傷や凹み、助手席で非常に疲れた顔したアデライン・エルムズの様子が物語っていた。
「典人のアブソ……何だっけ、とにかく、世界中のどんな絶叫マシンも目じゃなかったよね」
 後に彼女が語ったと言われているが定かではない。
 閑話休題。
 最奥突撃班がこれで全員揃った。
「では、行ってきたまえ。極上の成果をきたいしている」
 最後の扉が開かれ、ドゥエインの声に送られたファントム達は、最奥の係留池へと突入した。

 最奥の係留池は、今までの洞窟内が嘘のようなとても広い空間であった。
 ドーム球場が丸々一個入りそうな程の広さのほとんどを地底湖が占め、10m程の岸がぐるりと取り囲んでいた。
「なるほど、怪物が全力で暴れても大丈夫な場所ってことか」
 隼人が拳を合わせる。その怪物達は、既に水中でスタンバっているようだ。海面には巨大な触腕の黒い影がうかがえる。いつでも水面を割ってファントム達へ襲いかかってこられそうだ。
「で、潜水艦はどこだ?」
「まさか、もう逃げられたんじゃ」
 キャプテンがいるだろう艦を探すと……見つけた。
 潜水艦としては規格外に小さいため見落としそうになったが、こちらの入り口からほぼ反対側に停泊していた。
「あの位置なら、ぐるっと回って近づけそうね」
 雪花の予測に、他の者も賛成すると、ここでクラーケンと戦い足止めする者と、潜水艦に突入する者達に別れて、行動を開始した。
 艦に近づこうとして岸を走る者達へ、ミニクラーケンの一体が近寄り触手を伸ばした。
 だが、侵入者達へ触手が届く前に、次々と弾かれていく。
「受けた依頼はこなす、それだけだ」
 ビリーのレイガンが、魚雷の代わりに、水上へ伸ばされた触腕を百発百中に捉え、ミニクラーケンの自由を奪う。
 その間に水中に飛び込んだイーノクと晶晶がミニクラーケンの胴体へと近づく。
 ふたりとも、水中用のレッグギアと特殊環境下生存用のフェイスギアで、水中を自由に泳ぎ回ることができた。
(まずは頭部や眼球だ)
 イーノクは水中をうねる触手を避けながら回転ノコで切り払い近づき、晶晶もハルバードで薙ぎ払って進む。
 ミニといえども体長10mにもなるタコの胴体は、近くで見るととても迫力があり、人の頭程もある目で睨まれれば、常人であればすくみあがっても仕方がない。
 だが、今更怖気づくようでは良いファントムにはなれない。
 二人は各々のトライデントを構えて引くと、勢いをつけてミニクラーケンの大きな目へと突き入れた。
 まるで痛がるように激しくのたうち抵抗するミニクラーケン。
 本能のままに暴れるクラーケンの触手を二人は避けきれず、弾き飛ばされた。
(道中、ドロイド達は完全な機械だったって聞かされたが、動きや行動はまるで完全な生き物だ)
 痛む腹部を抑えて、晶晶がそのまま距離をとる。
 手負いの獣は手強い。巨大蛸も一緒か。
(だが、これで他の仲間には手を出せねえな。次にいこう)
 晶晶からイーノクとビリーへ提案すると、二人とも了承して狙いを次の1体へと移した。

 アブソルートがマリンモードで水中を行く。
「わー! 水! 水漏れてるよ!」
 アデラインが、車内へ水が染み出て来ている事に気付いて慌てた。あれだけボロボロになっていれば、本来の防水機能にも穴が開いていても仕方がないだろう。
 だが、この車のキャプテンは冷静だった。
「……問題ないぞ。このぐらいのペースなら、1時間は沈む心配はない」
「本当に?」
「……ああ。このままならな」
 これ以上のダメージを車体が負えばわからない。そう言外ににじませた典人。とはいえ、それならば、もともと挑む敵の強大さからわかりきっていたことだ。
 なにせ、この車の標的はただ一体、最大級のロボ蛸。人の身で抗うには敵いそうもない、伝説の怪物の名を真に頂く唯一の存在、クラーケンだ。
「他の蛸だって十分大きいのに、わざわざミニってつけて呼ぶだけあるよね」
 視界に入った巨大な影を前に、アデラインが息を飲む。
 ようやく車に気付いたとばかりにクラーケンの触腕が動き出し、8本の触手が一斉にアブソルートへと伸ばされた。
「……飛ばすぞ」
 全力でアクセルを踏み込み、力いっぱいハンドルを回してアブソルートは一度に迫る触手の束をすり抜ける。
 追ってくる触手達を右に左に時に大きなループを描き、時に細かい隙間をくぐり抜け、錐揉み回転しながら螺旋を描いて触手を翻弄する。
 そんな、最恐絶叫マシン第2弾を味わいながらも、アデラインは前方をしっかり見据えていた。
「操縦はおまかせしてるんだから……特別得意ってわけじゃないけど」
 触手をちまちま刈っていられるほど、弾数に余裕はない。胴体の重要なところへ確実に当てられる瞬間を待った。
 触手の網をくぐり抜けた先で、アデラインの視界に飛び込んで来たのは、クラーケンの大きな口。
(いまだ!)
 タイミングを逃さず発射された魚雷は、まっすぐに進み、狙い通りにクラーケンの口の中へと吸い込まれていった。
 そして、爆発するはずのタイミングで、クラーケンの巨体が揺らいだ。
 神業的な運転テクニックと超越的な雷撃手のコンビが、クラーケンに手痛い一発を喰らわせたのだ。

 ミニクラーケン達との戦いも続けられていた。
 水中の二人で、一体ずつに狙いを定めて狩りに行く。もちろん、全てが最初の一体のときのように上手くいったわけではない。
 途中で、ミニクラーケンの触手に捕まることもあった。されど、ファントム達は抗い続けた。
「我慢比べ……、俺に勝てるかな?」
 触手に絡まれた晶晶は、腕時計から鋼糸を伸ばし、逆に触手の方へ絡める。
 そして、電流を流した。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!」
 己にも電流が流れ込み、全身に痛みが走った。けれども、そのおかげで緩んだ腕から逃れ、晶晶は態勢を立て直せた。
「電撃で一部ショートでもしたのか」
 ついでに、電流を流した触手の動きが鈍くなったことで、そんな印象も受けたが、仮説が正しいかは一回の検証では断定できない。
 とにかく今は、戦って、勝つしか活路は見いだせなかった。 
 巨大なドロイド達を相手に、少人数で真っ向から勝負を挑む。
 本来なら少々無謀であったろう。だが、クラーケン達の動きは大雑把で適確さを欠き、連携もされることがなかった。
 戦う前から、何か、苦しむように。

 そうして戦いが続く間にキャプテンに用のある者達は、潜水艦へ近づくことができ、無事取り付くことができた。
 ただ、継ぎ目すら見えない潜水艦は入り口がどこにあるのかもわからなかった。
「どうにかならないかな?」
 ユウキがエルミーネに現状を報告すると、「少しお待ちください」と保留され……待つこと数秒。潜水艦の上部のハッチが自動で開いた。
「鎌刀様に、ハッキングしていただきましたわ。すぐにコントロールを取り返されると思われるので、すぐに入るようにとのことですわね」
 そうして、ファントム達は潜水艦の中へと侵入した。

◆キャプテン・オールドマン
 乱れたパイプオルガンとでたらめなオーケストラの不協和音に導かれ、ファントム達は小型艦の中を進んだ。
 小型の潜水艦であるため、中は当然せまかった。だが、潜水艦という物を良く知る者であれば違和感を感じただろう。
 確かに狭い、が、標準的な物に比べれば、かなりマシだ。と。それに、気密性が命の潜水艦で、他の部屋の音が聞こえてくるのもおかしい。
 誘われているのか。警戒しながら扉をくぐったファントム達は、最後の部屋へとたどり着いた。
 潜水艦の中である事を忘れてしまうような豪華な内装の部屋、その壁に設置されたパイプオルガンを激しく叩く古風な海賊船長風の老人。
 キャプテン・オールドマン、その人であった。
 まだ両者の距離がある中、ファントムの一人が前に出て、掌を合わせた。
「ドーモ、ファントム・サワタリです」
 隙のない丁寧なアイサツ。だが、オールドマンは返事をせず、オルガンを弾く手を止めずに、嘆く。
「ここまで来られたか。忌々しい‥‥だが、ここは私の領域だ‥‥この海も、この基地も、この艦も」
 譜面台のあるべき場所にあるモニターに、分割された画面のほとんどがブラックアウトしていた。ドロイドが破壊されたり、コネクターが気を失って瞠目したりしているのだろう。
 友好的な雰囲気はない。だが、今すぐにオールドマンが襲いかかってきたり、ドロイドやコネクターが加勢にやってきたりする様子もない。
 華龍は、思い切って問いかけてみた。
「船長、貴方にはダブルオーとの共謀疑惑がある。だが何故だ? 報告されている貴方の行動や言動は彼らのような『死の商人』を容認するものではない」
 しばし、船内には不協和音だけが響き、重たい空気が漂う。このまま答えぬなら、実力行使に出て、取調室でじっくり話を聞くという選択も浮かんだが、実行に移す前に、オールドマンが重たい口を開いた。
「ダブルオーは私を従えている」
 決定的な一言が、船長の口から放たれた。
「だが、私が真に属するのは、この海のみ……」
「ならばなぜダブルオーに加担したんだ」
 サワタリがインタビュワーを引き継ぐ。キャプテンの表情は見えないが、声音だけで嘘をついているわけではないとわかる。
「ダブルオーは、私の望む力を提供してくれた。その事には感謝している……だが、魂まで差し出すつもりなどないというだけ」
「なぜカリブ海のリゾート地を襲ったのか。そもそも、そうまでしてこの海に君臨しようとしたのはなぜか」
 続くインタビューに、疲れた様子でオールドマンは答えた。
「愚かで無粋なよそ者とはいえ、問答無用に殺しては神聖な海が穢れよう。ただ、静かなこの海さえあれば、私はいいのだ……」
 目的の為に手段を選ばない。が、根っからの大悪党というわけではない。ということなのか。
 この回答を聞いて、ユウキは腹を決めて、オールドマンに協力を請う。
「少なくとも、この海が平穏になるまでは。この海域を麻薬を載せた潜水艦が通らなくなるまでは」
 毒を持って毒を制する。ルールを守るだけでは正義を守れないという考えは、ローゼンナハトにもある。
 オールドマンの行動には問題も多い。だが、海の平穏の為であれば、協力関係も築けるのではないか。
 ユウキの期待に、オールドマンは――
「お前が、真にこの海を愛する者ならば……正直に言えば、協力はやぶさかではない」
 ユウキの顔が少し緩みかけるが、オールドマンの言葉には続きがあった。
「だが、同じ船には乗れぬな……麻薬など興味もないが、それがダブルオーに対する私の最低限の義務だ。ダブルオーと利害が一致せぬお前らとは組めない」
 はっきりとした言葉は、最後通牒だ。
「故に告げる。このままカリブから去れ……今すぐそうするならば、追うことはしない」
 ユウキの協力要請にキャプテンははっきりと否と答え、椅子から立ち上がり、振り返った。
 同時に、2発の銃声がパイプオルガンの代わりに鳴った。
 1発は、キャプテンのフリントロック式に見える装飾付きの拳銃。
 もう一発は、先手を取るべく迷わず撃ち込んだ華龍のマグナム銃。
 二人の早撃ちを合図に、最後の決戦が始まった。
 放たれた2発の弾丸は共に右肩を貫き、両者よろめきながらも素早くリロードする。
 キャプテンが老人とは思えぬ早さで立ち直り、痛みを堪えて動きながら続けて発砲。今度は、ユウキが撃たれた。
「キャプテン……残念だよ」
 脇腹から血を流しながらも、痛みに耐えたユウキが撃ち返す。けれども、わずかにキャプテンが調度品の影に隠れるのが先だった。
 だが、ユウキは構わず2発、3発と調度品に向かって撃ち込む。
 貫通狙い、というわけではない。こうして威嚇射撃している間に、サワタリが近づき、調度品の裏で飛び出すタイミングをはかっていたオールドマンに殴りかかる。
「まぁ、話が通じないなら――カラテあるのみだ」
 キャプテンも瞬時にサーベルに持ち替え受け流し、突き返すのを サワタリもいなして裏拳を狙う。
「俺もいること忘れてもらっちゃ困るぜ!」
 隼人も加勢して二人で殴りかかる。オールドマンも素早い剣さばきで二人相手に受けに回るが、受けきれない。
 隼人の突き上げにサーベルが上ずれば、その瞬間にサワタリが踏み込み、ジェットナックルでさらなる加速を得た拳で顔面を殴り飛ばした。
 すぐに態勢を立て直そうとするオールドマンだが、重い一撃に脚はふらついていた。
「私の……静かな、海を」
 だが、まだ意識はしっかりとしており、再びホルスターに手を伸ばしかけたところを、華龍とユウキで両腕を撃ち抜いた。
「世界を変える力は確かに魅力的だ。愛する海を統べる夢を叶えたい気持ちも分かる……だがその力は偽りだ」
 華龍の言葉に、オールドマンは何かを言いかけ……力尽きて気を失った。

 すぐに、雪花がオールドマンの元へ駆けつけ、治療を始めた。
 対話にも戦闘にも参加しない雪花がこの場にいたのは、全てはこのとき、戦闘後にオールドマンを死なせない為。
 自殺しようとするそぶりがなかったため、それを止める必要がなかったのは幸いであったが、自殺するまでもなく、命の灯火はいつ消えてもおかしくなかった。
「やり過ぎちまったのか?」
 隼人が焦りだすが、仕方のないこと。
 オールドマンも、彼の信念を貫くために、無理をしたのだ。それに真剣に立ち向かわないのであれば、それもまた美学に反する事であろう。
(見たままの、年齢通りだったというわけか)
 華龍がそう結論を出した。
 雪花が傷口の具合を診て、血管の損傷箇所を確認。急いで消毒し、止血する。急所は外していても、見た目通りの歳であれば、外傷性のショックでも死にかねない。
 できれば、この場で切開して早々に血管をつなぎ合わせたいところだが、道具はあれども血は足りぬだろう。
 治療の間に、雪花は他の仲間にソファ等を利用して、担架の代わりになる物を作るように頼んだ。
 作り方は、エルミーネ経由で鎌刀に聞いて行われた。
「私の前では、誰一人死なせはしないわ」
 応急処置がなされたオールドマンは、すぐに即席の担架で運ばれていった。

◆穏やかな海に
 こうして、一命を取り留めたオールドマンは、海上まで運ばれるとすぐにステラのヘリでローゼンナハト傘下の病院へと搬送された。
 到着するまでは、ヘリに同乗したエドワード・カーライルが、回復薬を使いながら、保たせた。
 治療が完了し、様態が安定し次第、逮捕されることだろう。
 雪花の信念は実を結び、怪盗達の美学は守られたのだ。
 ちなみに、海底洞窟にいたコネクター達も、全員捕縛されている。陸に戻ってから、雪花に治療されていた。
 ドロイド達も、ほぼほぼ壊滅させた。残っているものも、秘密ドッグを維持させる者がいなくなれば、自然と充電切れで動けなくなるはずだという。

(で、皆解決しちまったみたいだが、結局俺はドジ3人組を見送っただけか)
 暇だったなー。と思わずこぼしてしまったのは、敵の逃走ルート潰しの為に、出入り口で待機し続けていたソーニャ。
「あまりにヒマ過ぎて、エロい気分になってきてたぜ……」
 何十本目かのタバコを吐き捨てた。そろそろタバコも切らすし、撤収するか。そう思った彼女に、最後、仕事が舞い込んできた。
 通路の奥から飛んできたのは、一体のヒトデ。
 気配を消して潜んでいるソーニャに気付く様子もなく、不用心にまっすぐ出入り口を目指していた。
(敵さんが向かって来たら問答無用で足か肩を撃ち抜き吹き飛ばして戦闘不能にするつもりだったが、こいつは)
 もちろん、ズドンだ。掠めただけで吹っ飛ぶ対物銃の銃弾を☆の中央に当てられたヒトデは、木っ端微塵になった。
 ついでに、その衝撃で一帯の通路で崩落が起き、ソーニャが生き埋めと溺死のどちらを選ぶかというところギリギリで救出される羽目になったりしたのだが、まあ、無事で何よりである。

 後日、無事に快復したオールドマンは、逮捕され、BICOが拘束して尋問にかけられた。
 BICO流の厳しい取り調べが行われたが、それでもこの老人は口を開かなかった。
 だが、ある日の尋問の最中に、オールドマンの方から捜査官へと質問された。
「……なぜ、私の事を助けたのだ。こうして尋問するためか? ならば無駄なことだ。私は何も話さない」
 聞かれた捜査官は、しばし瞠目した。何かを考えるというよりは、何かを思い出す為に、数秒間使った。
「それもある。だが、何よりも怪盗の美学の為だろう」
「……美学?」
「敵とはいえ、殺しは美しくないからな。若者達にとっては特に、な」
 それから、沈黙はこの日の取り調べが終わるまで続いた。そして、独房へ戻る直前に、オールドマンはつぶやいた。
「ダブルオーは力を求める組織だ。いや、正確にいえば、秩序を築かんとしている。私に言えるのはここまでだ」

 こうして、夏休みの間にカリブの海で続いた怪事件は、首謀者の逮捕という形で解決されたのであった。
 だが、黒幕、ダブルオーの影は、まだまだ遠い。



 13

参加者

a.一丁ヤッてみるかァ。
石動詩朗(pa0059)
♂ 24歳 刃忍
c.いっちょやりますか♪
大神隼人(pa0137)
♂ 21歳 刃忍
e.ドーモ、キャプテンにインタビューさせてもらうぞ。
澤渡龍兵(pa0190)
♂ 22歳 乗忍
c.物理は出来ないんで、その他で頑張るぜ
ジェームズ・クレイトン(pa0243)
♂ 22歳 探知
b.ドロイド相手ならば遠慮は必要あるまい。
ドゥエイン・ハイアット(pa0275)
♂ 26歳 英弾
d.潜水仕様のアブソルートRB3を出すよ。雷撃手を募集中。
九曜光(pa0455)
♀ 22歳 乗魅
サポート
f.オールドマン氏とのセッションに微力ながら伴奏させていただきます。
小林三代(pa0527)
♀ 20歳 英魅
d.……アデルに魚雷を任せ、俺は操縦集中。
大世宮典人(pa0940)
♂ 22歳 刃乗
b.海獣のドロイドに遅れは取りません。
アガーフィヤ・コスィフ(pa0970)
♀ 19歳 英弾
c.罠や仕掛けは任せるネ! ニンジャの本領発揮するヨ!
エラ・ウォーカー(pa1057)
♀ 23歳 刃忍
d.典人の車に乗せてもらって魚雷でタコを撃つよ!
アデライン・エルムズ(pa1094)
♀ 19歳 弾忍
b.アヒャヒャ!楽しもうか!
李紅花(pa1128)
♀ 21歳 弾乗
f.じゃあ僕は演奏担当だね。何にしようかな…
マティアス・リブラン(pa1168)
♂ 19歳 弾魅
f.なるほど、音楽には音楽を、ですねっ。それならボーカル担当希望ですっ!
林秀玲(pa1187)
♀ 21歳 英魅
e.……。
陳華龍(pa1190)
♂ 26歳 弾探
e.彼には用がある。
ユウキ・ヴァルトラウテ(pa1243)
♂ 27歳 英弾
g.ド外しだったらゴメンなのです、てへペロ☆
ステラ・ワード(pa1302)
♀ 19歳 弾乗
サポート
a.少し気になりますね。
月羽紡(pa1364)
♀ 27歳 刃探
c.こっちの対応へ。まあ、上手くいくかわかりませんけど……!
日暮真央人(pa1555)
♂ 21歳 探機
a.今は込み入った事は出来そうにないから、シンプルに行くよ。
タキ・バルツァ(pa1565)
♂ 22歳 忍機
f.メインはお任せしますので僕は電脳周りの補佐を行います。
斧箭鎌刀(pa1581)
♂ 19歳 刃知
d.こっちで。機械なら壊してもいいよな?
イーノク・オルティス(pa1600)
♂ 23歳 英機
a.コネクターの相手、存分に努めさせて貰うわ。殺しはしないわよ。
リュディア・ラヴィオラ(pa1605)
♀ 21歳 弾機
f.僕も演奏に参加するねー。
ショコラ・ブラマンジェ(pa1623)
♀ 18歳 魅機
g.各部署の情報を集めて整理し必要な所へ送る整理を手伝わせていただきます。
エルミーネ・クロイゼル(pa1729)
♀ 22歳 英探
c.ま、安全確保だな。
エリアス・ツヴァイク(pa2266)
♂ 21歳 忍機
d.クラーケンどもをぶっ潰して、無力化するぜ。よろしくな!
陳晶晶(pa2267)
♂ 22歳 刃機
g.バックアップは任せなー
ソーニャ・グリンスカヤ(pa2282)
♀ 26歳 弾機
e.やれるだけやってみるわ♪
鈴鳴雪花(pa2285)
♀ 26歳 知魅
a.楽しませてもらうぜぇ?イイ声で鳴けよォ
ベリエス・デルラ(pa2296)
♀ 25歳 刃機
 だって、あれは仕方ないよ、絶対なでたくなるよ! ……うん、ごめんだよ。
ニコ・オークス(pz0039)
♀ 19歳