【文芸部】望月を謳う

担当叶野山 結
タイプショート 部活
舞台Celticflute
難度易しい
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2018/10/03
結果成功
MDPディルク・ベルヴァルド(pa0112)
準MDPゲルト・ダール(pa0208)
ユウキ・ヴァルトラウテ(pa1243)

オープニング

◆望月の
 UNICOが存在している、ここセルティックフルート島は、常夏の島である。
 しかしながら、常夏といえど、季節は等しく訪れる。
 季節は夏から秋へと移ろい、夜になればその星々も秋の星座へと変わりゆく。
 その中でも変わらぬ月の光だけが、地上を照らす。
 今宵もまた、白い光を浮かび上がらせ、満ち欠けを教えてくれる。

登場キャラ

リプレイ

◆月下の雅、お菓子を添えて
 文芸部の部員達に部外からの参加者達を加え、文芸部の顧問であるナサニエル・フォスが引率を務める。
 事前に通達していた各々の準備。学生達の持ち物とは一体何か。それを知るのはこのすぐ後。
 到着した竜血樹公園。月が良く見える位置にシートを敷き、円状になるようにして各々が座る。
 時計回りに、講師、部長、部員、部外の参加者、という感じだ。発表する際の順番は順不同になるだろうが、それはそれで趣もある。
 円の中央にて、細長い花瓶に一房のススキが活けられる。
 周りに供えられるのは、講師や学生達が持ってきた、団子や月餅などの月を象ったお菓子類。
 それから、飲み物やお酒なども。
「ちゃんとお団子も月餅も用意してますよ。ささ、先生、お召し上がりください」
 講師が甘味に目が無い事は周知の事実。部長の莫水鏡に促され、団子を一つ、先に頬張る講師。大人げない。
 集推スイホが用意した団子は、胡麻団子。
「芋名月とも呼ばれますし、豊作のお祝いでもありますから、私は里芋を用意しました」
 なるほど、と頷くはユウキ・ヴァルトラウテ
「という事は、これは‥‥」
「はい、里芋を使ったお月見ゴマ団子です」
 笑顔で頷く彼女。手作りなのか、買った物かは不明だが、美味しければよいのだ。
 スイホへと小さな疑問を持ったのは、部外ではあるが参加してくれたゲルト・ダールで、彼女はスイホへ声をかけた。
「ところでスイホ」
「ばい、何でしょう」
「その恰好、動きづらくない? 大丈夫?」
 ゲルトが首を傾げるのももっともで、スイホの恰好はドレス姿だったからだ。その恰好は目立つ上に動きにくそう、という印象であったが、彼女は笑顔を崩さぬまま「大丈夫です」と繰り返すのみ。
 彼女がそう言うのならば、という事で、深くは追及しない事にした。
 ディルク・ベルヴァルドが、視線を忙しなく月餅と周りを交互に行き来している。
 彼もまたゲルトと同じく部外参加ではあるが、発表の代わりに記録係を申し出てくれており、好意に甘える事にしたのだ。故に、彼の脇にはタブレットPCがある。
 遠慮がちな彼の声が、講師に届く。
「‥‥‥‥先生‥‥食べていい?」
「ああ」
 許可を貰った事で、ディルクの手が月餅に伸びる。控えめな甘さが口内に広がるのを感じつつ、家族の事を思い浮かべながら食べていく。
(家族は大事にって‥‥言われたから)
 想い人から贈られた指輪が、月光を受けて薬指で輝いた。
「そういえば、先生‥‥。短編って、絵本風でも大丈夫?」
 尋ねてきたのは、廻環ゆめ。手に持つスケッチブックには、おそらく絵本風に描いてきた作品があるのだろう。
 「問題ない」と講師が返せば、安堵の溜息を零す。
 彼女の脇から飛び出しそうになる柴犬の武蔵を押さえつつ、お礼を述べるゆめ。
 気のせいか、若干講師からの距離がほんの僅か遠くなったような気がする。
 思い思いがお菓子を食べる中、講師が「さて」と一つ咳払い。
「作品の発表を始めよう」
 一気に皆の顔が引き締まる。
 ここからは、月の時間。
 ディルクのタブレットPCに備えられているカメラが、起動した。

◆始まる月時間
 水鏡が挙手する。部長として最初に手本を見せるべく、彼女は作品を書いてきたノートを開いて作品の内容を語る。
「繋がった幾多の世界から植物の種を集める男の話」
 切り口に皆が耳を傾ける。

 集めた植物の種。もちろん、それを育てる男だが、男の世界は月夜の世界。
 そして、たかが植物の種とはいえど世界の欠片。太陽を望み育てていくも、元の世界とは違う成長をする植物。
 成長が上手くいかない事に嘆く男の許に、流浪の魔女がやってくる。
 その魔女は月を象徴するような女であった。その魔女は男を支え、また、男も魔女を支えていった。
 彼女に惹かれ、言葉を交わす内に気付いたのは、植物はこの世界に見合った姿に変じたのだと。
 美しい月と世界。そして代わる者など無いのは、君という存在だと。

 禁断の果実を追い求めている彼女にしては、いつもと違う内容に、ユウキが内心で首を傾げながら尋ねた。
「今回は耽美な世界じゃないんだね」
「ラブコメファンタジーだっていけるもん! 頑張ったもん!」
 心外だ、と言わんばかりに胸を反らしながら反論する水鏡。
 可愛らしく頬を膨らませ、次を指名する。
「じゃあ、次はユウキさんで!」
 突然の指名にユウキは戸惑う様子を見せたものの、「まぁ、いいよ」と快諾する。
 彼はジャンルに迷うものの、ゲルトを見て何か思いついたようで、頭の中に浮かんだものを言の葉に変えた。

「望月を 眺めて想い 手を伸ばす」

 詠み上げられた一句に、「ほぅ」と言ったのは、俳句を知る者達から。
 スイホが、ユウキに尋ねる。
「意味はどういったものでしょうか?」
 その問いに、日本酒を少し喉に通してから、彼は答えた。
「昔、恋い焦がれた女性がいたが、その人はこの世にはいない。月があの世に交わってるのなら、もしかしたら月からこちらを見守っているのかもしれない」
 だから、月を見て手を伸ばしたくなる想いを俳句に込めたのだ、と。
 語り、もう一口を口に含んだユウキの目は、口元は、笑っている事はなく。
 しかし、それも一瞬の事。
 彼は薄く笑みを浮かべると、正座をしている講師へ、一つ質問を投げかけてみた。
「先生は、恋はした事あります?」
 少しばかりの好奇心。それを満たす答えは如何や。
 周囲の視線が講師に集まる。
 動揺の色も見せず、ただ無表情のままお茶を飲む男は、ユウキを一瞥した後、口を開いた。
「この歳になれば、一つか二つは‥‥な」
 講師の言葉に水鏡が身を乗り出しかけるが、今は部活動だと思い直して座り直す。
「さて、次は誰が行く?」
 ユウキの言葉を受けて、挙手したのはゲルト。
「次は、僕が」
 視線が集まる中、「月を題材とした作品ね」と呟く彼女。
「僕ならそうだな‥‥」
 思い付いた彼女が語り出したのは、一つの物語。

 神によって月を引く馬車の御者にされてしまった少年。
 宿命のため、その少年を喰らう為に、追い続ける狼が居た。
 話し相手もいない二人は、追いかけっこをしながら話をする事になった。
 その内に、狼は少年に恋をする。
 しかし、とうとう馬車が壊れ、少年を喰らう時がやってきた。

「狼は宿命と恋に迷い、そして宿命に立ち向かう‥‥、というのはどうかな?」
 締め括ったゲルトの話に、「いい‥‥」と頷いたのは、記録をとっていたディルク。
「まぁ、こんな感じかな」
 少し照れくさそうに視線を俯かせたゲルトへ、周りが「とても良い」と評価を送る。
 水鏡からも、「宿命の理由とか、どうしてそうなったのかとかの理由もつけたら、大作になりそう」と言われて、気恥ずかしいやら、何とやら。
 頷くゆめからも、「絵本向けの話にも良さそう」と言われ、スイホがそれに同意するように頷いた。
 スイホが、「では、次は私が」と挙手する。
「物語を考えるんでしたよね。では、お月様のウサギのお話でも」
 前置きして、語る彼女のお話はどのようなものか。
 耳を傾ける皆に向けて、スイホの口から物語が紡がれる。

 満月のお月様に棲んでいるウサギ達。
 ある日、月が欠けていくのを見て、慌てふためいた。
「大変だ! このままじゃ地上に落ちてしまう!」
 どうしたら月は地上に落ちないで済むのか。
 頭を寄せ合って考えるウサギ達。
 どのアイディアも失敗したりして、困り果ててしまう。
 お餅を作ってはどうだろう。
 そしてお餅で満月を作ると、月は欠ける事が無くなった。
 月が地上に落ちる心配が無くなったウサギ達は、それからもお餅を作るのだった。

「それで、たまに満月が二つあるように見えるそうですよ。‥‥おしまい」
 どうでしたか、と微笑むスイホ。
 ユウキからも感嘆の声が上がる。
「そちらも絵本風だったか。いいね」
「ありがとうございます」
 お礼を述べる彼女の前では、ゆめが不安そうな顔で俯いていた。
 それを見たディルクが、話しかける。
「えっと‥‥‥‥どうしたの‥‥?」
「‥‥自分の、作ってきた話も大丈夫かなって‥‥」
「‥‥‥‥大丈夫、だよ。‥‥大丈夫」
 ディルクの目から見て、少なくともここの部員達は彼女の作った物語を否定する事はしないと思った。
 自分はそういうものが作れない。だからこそ、作れる人には尊敬の念を抱いている。
 彼に後押しされて、ゆめは「ありがとう」と、不安げな顔を和らげた。
 武蔵が膝の上に乗り、ゆめの顔を一度舐める。
 愛犬からの励ましも貰い、彼女は深呼吸をすると、右手を挙げた。
 周囲の視線が集まる中、スケッチブックを開いて、話を読み上げる。

 他人を不幸にした償いに、誰かを幸せにしようとする少女が、月を連れて旅をするお話。
 誰かを幸せにするたびに、少女は何かを失って不幸になっていく。
 他人の不幸を自分の不幸に。自分の幸福を他人の幸福に。
 痛い代償。けれど、少女はその歩みを止める事はしない。
 少女がそのようになってもなお、月は彼女を手放さず、それどころかずっと寄り添っていた。
 すべての人を幸福にした少女を月は天に連れていく。
 そこで、月と少女は永久に共に在りました。
 彼女はもう、不幸にならなくても良いのです。

 語り終えて、周りをそっと窺う。
 真っ先に反応したのは、水鏡だった。
「切なさがあって、けど最後にハッピーエンド。良いよ! すごく良い!」
「あ、ありがとう‥‥」
 力説する彼女に気圧されつつ、お礼を述べる。
 水鏡の他にも周りからは好評価で、胸を撫で下ろす。
 知らず、ゆめの顔に笑みが浮かんだ。

◆月見の花、咲かす声
 全員分の作品を傾聴した上で、講師からも評価が出された。
「どの作品にも、自分なりに月を扱っている。良い事だ。即席で作る作品も、事前に作る作品も、どれも良く作れていたと思う。次の部活動でも、この調子で是非活動してもらいたい」
 「はい!」と勢い良い返事を聞いた後、講師は深く頷いた。
「戻るまでには、まだ時間がある。お菓子類もまだ残っている事だし、もう少し月見を楽しもう。ただし、騒ぎすぎないように」
「はーい」
 今度は楽しそうな声で返事が来て、学生達はお菓子を食べながら雑談に花を咲かせる。
 ディルクの撮影はまだ続く。時折動画を止めて写真に切り替えてみたり、という事を繰り返す。発表中でも行なっていた彼だ。
 どんな風に撮影していたか、気になった者達が詰め寄ると、若干引き気味になったりもしたが。それでもしどろもどろになりつつも見せてくれた。
 途中、ゆめが枕代わりに講師にもたれかかる事があったが、講師が倒れた場合を想定して膝枕をしたという。あぐらの中に彼女の柴犬が入ってきた事で硬直した講師を撮影した者が居たとか居ないとか。
 月明かりに照らされての部活動は、こうして静かに更けていくのだった。



 7

参加者

b.もぐもぐ
ディルク・ベルヴァルド(pa0112)
♂ 23歳 乗知
a.何を作ろうかなー
莫水鏡(pa0196)
♀ 19歳 忍魅
b.もぐもぐ
ゲルト・ダール(pa0208)
♀ 22歳 知魅
a.ふふ、お月見、楽しみですね。
集推スイホ(pa1091)
♀ 21歳 英魅
a.月、か。
ユウキ・ヴァルトラウテ(pa1243)
♂ 27歳 英弾
a.すや…
廻環ゆめ(pa1420)
♀ 19歳 忍知
 月見‥‥団子をとるか、月餅をとるか‥‥
ナサニエル・フォス(pz0018)
♂ 35歳