【PF07】PALAIS

担当九里原十三里
タイプグランド 連動
舞台Celticflute
難度やや難しい
SLvC(紛争地域、島内)
オプ
出発2018/11/03
結果成功
MDP紅嵐斗(pa0102)
準MDPリュヌ・アカツキ(pa0057)
ナタク・ルシフェラーゼ(pa0155)
九曜光(pa0455)
ステラ・ワード(pa1302)
月羽紡(pa1364)
ブライアン・ビリンガム(pa1505)
タキ・バルツァ(pa1565)
ベリエス・デルラ(pa2296)

オープニング

◆囚われの怪盗
 その場所は、男にとって退屈なはずであった。
 伝説怪盗としての華麗なる活躍、ライバルや警察に追いかけ回されるスリル、栄光のお宝たち、そして愛すべき女性たち、あるいはプレシャス――。
 だが、彼を構成していると思われるものはみな、この無機的な地下牢からは削ぎ落とされていた。
 にも関わらず、彼は相変わらず、飄々としていた。
「まぁ……たまにはこんな休暇も悪くないかなってね。今まで走りすぎてたのかもな、私は。少し瞑想でもしてみるかなあ」

登場キャラ

リプレイ

◆騎士たちの大聖堂
「いいねいいねぇ…こんだけ数がありゃ壊しがいがあるってもんだぜ!」
 おびただしい数の騎士たちを前に、ベリエス・デルラは嬉々とした表情を浮かべていた。
 社会の裏側――暴力の世界を知る「ファウストの悪魔」にとって、彼らは恐ろしい存在ではないのだ。
「さぁ、かかってきな木偶の坊共…! せいぜい楽しませてくれよ!」
 AGのパイルバンカーを頼りにヒャッハー! とばかりに敵陣の真ん中へ突っ込んでいくベリエスの姿に、ネクタル――栄相セイスはこんな予感を覚えていた。
 この人、絶対に大怪我する――と。
(ベリエスさん、シャンデリアもライオンも見えてないの?! ああ、危ないっ!)
 彼には恐るべき罠も、そして騎士たちの誰かが持っているであろう宝珠も見えていないのか。
 いや――それらは他の仲間に任せ、自分は「目の前の敵を屠る事」のみに集中したいのだ。
(…だったら、私のやる事は変わらないよ。怪我をした皆の治療をするだけだ。戦ったら怪我をする、それならその怪我を治すのが「おいしゃさん」のお仕事だから!)
 誰一人傷付いて欲しくない、でも怪我人が出るならそれを治療するのが自分の役目だ。
 セイスは応急セットを持つ手にぎゅっと力を込めた。
(私も、HALCOさんも、それに、皆も心配……だったら、早くこの場を何とかしないといけないよね。こんな綺麗な宮殿…本当はこんなに辛くて悲しくて、腹が立つ場所にしちゃいけないんだから!)
 みんな、気をつけて! とセイスは叫んだ。
 シャンデリアの落下する音が響き、その向こうから絶え間なく騎士たちがこちらへ突っ込んでくる。
 この状況を変えるには、少々「荒っぽい」方法も有効だろう。
「さて、こっからブーストかけるぜぇ! 後ろのヤツは俺ごと狙え! 下手に近付いて怪我しても知らねぇからな!」
 ベリエスはそう声を上げると、メイウェザーの腕時計に仕込まれた薬をその腕に投与する。
 さらに、1本の注射器を反対側の腕に突き刺した。
「ォオオオオオオオオオオオオ……!!!!!」
 獣の雄叫びのような声を上げ、ベリエスは勢いを増して騎士たちを蹴散らしにかかった。
 その皮膚は緑色に変わり、狂戦士となったベリエスの精神は「グリーンモンスター」に乗っ取られていた。
「ルパンめ、オペラ座の怪人気取りか。ならば、盛り上げるのに一役買おうか。HALCO、BGMを頼む! 曲目はアンドリュ・ロイド・ウェバーの『オペラ座の怪人』メインテーマだ!」
 スパローホーク――アルフォンス・サインツはこの空間の何処かにいるかもしれないHALCOに向かってそう呼びかけた。
 しかし、大聖堂の中に響いているのはショスタコーヴィチの「革命」であった。 
「こちらの声はHALCOには通じないのかもしれんな。ひとまず…支援は任せたぞ、アルフォンス」
 ブラック・ロータス――煌宵蓮は騎士の礼をし、ファントムノダチを手に敵に対峙する。
 だが礼を尽くそうとする彼に対し、群れ騒ぐ甲冑達の態度は粗野であった。
(勝負は凌ぎ合わないと面白くない…確かにな。貴公に同意しよう…だが、この世界を構成する貴公の精神が歪んでいないことを願いたいものだな、ルパン)
 騎士たちとの剣の間合いを測りながら、宵蓮は眉をひそめた。
 一対一の勝負で決着をつけようなどという態度はあちらには見られない。
「わが刃の前に鎧など無意味…刀の錆になりたい者からかかってくるのだな」
 ここはルパンの精神世界――。
 であれば物理法則がそのまま通用するかどうかは、各自の「思い込み」にかかっているといってもいいかもしれない。
 宵蓮は怯まずに相手の間合いに踏み込むと、そのまま斜めに剣を振り抜く。
 ヘルムを着けた頭がすっぱりと切り落とされ、モザイクタイルの床に金属音が響いた。
「手応えがない…見かけの割に、つまらぬ相手か」
 だが、切った感覚はやはりゲーム的なものではなく、実態のそれに極めて近いと宵蓮は感じた。
 騎士には気配があり、殺気がある。
(愛と欲望。即ち執着。ヴィキはHALCOに「自我」があると確信していたが…ヴィキは、そしてHALCOは今どこに?)
 敵との間合いを計りながら、宵蓮は精神を集中させた。
 ここ以外の2箇所にも仲間が飛ばされている。
 しかし、そちらの空間へと意識を飛ばしたり、コンタクトをとったりという事はできそうにない。
(疑似的な精神空間だ。すべては繋がっているに違いない。そういう意味では他空間との「距離」なども恐らくは無関係…だが、このゲームで我々にそれを超越する事は許されていないのかもしれんな。ルパンに…あるいはHALCOに)
 ならば、やはり純粋にここを突破するしかない。
 ファントムノダチを構え直し、宵蓮は騎士に向かっていく。
「剣の乱れは、心の乱れ…そんなブレた太刀筋では私は切れん」
 宵蓮の迷いのない動きに対し、騎士たちはろくに手出しできぬまま次々に討ち取られていった。
 しかし、彼らは数に物を言わせ、なおも怯まずに新手を送り込んでくる。
「ロボ、ルパンの匂いを嗅ぎ分けるんだ。お前ならできるだろう? 俺より優秀なんだものな」
 アルフォンスは大聖堂に狼を放つ。
 そして、聖堂を見下ろす回廊から狙撃銃でシャンデリアを狙い撃った。
(…砕け散るクリスタルが星のようだな)
 空間に飛び散った破片が光を乱反射するその向こう側で、アルフォンスは標的を火を吐くライオンの首へと移す。
 ライオンは銃弾にその頭部を砕かれると、ぶすぶすと煙を上げて機能を停止した。
 アルフォンスは味方の驚異となる罠を壊しながら、彼は騎士の群れが前衛の仲間の両サイドから回り込むのを見逃さなかった。
(宝珠を持つのは誰か…見破ってやる。ハイタカの眼にかけて、必ずな)
 怪盗は影に――アルフォンスは騎士の頭に銃口を向け、そのヘルムを弾き飛ばす。
 すると騎士は一瞬苦痛に歪むルパンの顔を見せ、黒い煙や霧のようになって消えた。
 残された甲冑は、空っぽの金属の塊となって床に散らばった。
(甲冑の中は全員ルパンか…? だとすると)
 狼のロボは騎士に向かって激しく咆哮する。
 だが、その中から特定の何かを嗅ぎ分けている様子はなかった。
 騎士は人間に極めて近いようだが、あくまでゲーム空間内の敵キャラクターなのだろう。
(そう簡単に宝珠を渡してくれそうにはないな…! ヴィキ、そっちの首尾はどうだ?)
 彼は今、どこにいるのだろうか。
 狼を自分の傍に呼び寄せながら、アルフォンスは前衛の者たちに接近する敵に狙いをつけ、巧みに妨害する。
 さらに後衛に回った他の仲間もそれぞれに力を尽くした。
「ハッ…シャラくせぇ! 騎士だか何だか知らねぇがVR空間なんだからコイツらはブッ壊してブッ殺しても問題ねぇだろ?」
 ヴォルク――ソーニャ・グリンスカヤは対物銃ダネルを手に、前衛の仲間から大きく距離を取る。
 そして、脇から味方の死角へと回り込もうとする騎士たちを狙い、片っ端から狙い撃ちを仕掛けた。
「オラァ! ケツの穴を増やされたくなきゃ射線あけろやァ!」
 気配を消し、柱の後ろに回り込み、ソーニャは素早く弾を補充しながら味方の合間を縫って狙い撃つ。
 銃声が騎士たちの足並みを崩し、怯ませる。
「ハッ…マヌケが! 俺が撃った数より倒れてんじゃねえかァ?!」 
 騎士たちが右往左往するのを見て、ソーニャは笑い声を立てた。
 甲冑を着た騎士たちはどうやらあまり素早く動くことができないらしい。
 そのため、銃弾を避けようとした前の騎士がよろめくのにつられ、後ろの騎士たちが「ドミノ倒し」のようになる場面がしばしば見られた。
「オラオラ、怪盗ども! 俺の前出んじゃねえぞ!」
 乱暴に怒鳴り散らしながら、ソーニャは銃を床に設置し、撃ち続ける。
 足並みを崩された騎士達はモザイクタイルの床に甲冑ごと叩きつけられ、けたたましい金属音が空間に反響する。
 しかし騎士たちの最大の武器はその「数」であった。
 銃声と剣戟の入り乱れる混乱の最中、別方向から回り込んだ騎士たちの群れがソーニャの背後に迫る――。
「…チッ、気づきやがったか。そう来ると思ったぜ!」
 ソーニャは身を翻し、迫ってきた騎士の鼻面をLGで一蹴りすると、隣の柱へと移った。
 そして銃を構え体勢を立て直すと、そこから改めて狙い撃つ。
 さらに騎士たちの隙ついて、この戦場をステージに見立てた「ホースマン」が襲いかかる。
「豪華な宮殿、大勢の観客、クールなギミック、最高の舞台だ! さぁ、ここからがショータイム本番だ!」
 馬並京介はパワーレッグのジャンプ力で勢いをつけると、一体の騎士に狙いをつけ、強烈なドロップキックを食らわせる。
 そして落とした剣を拾おうと慌てている騎士を引きずり起こし、ライオンの像の口元めがけて力任せにぶん投げた。
「この最高にクールでクレイジーなギミックを利用しない手はないよなぁ!」
 ライオンの口から放たれた業火に巻かれ、騎士は悲鳴もあげぬまま力尽きた。
 甲冑の中から何やら黒い煙のようなものが立ち上り、空っぽの武具が音を立てて床に崩れるのを見ながら、京介は新たな相手へと向かっていく。
「俺ぁ剣士じゃないが、武器持ち相手に負けるつもりはねぇよ!」
 剣戟をすり抜け、騎士に掴みかかった京介が、今度は相手を思い切り突き飛ばす。
 騎士の頭上でギラリと光り、隕石のように落下してきたのは巨大なクリスタルの塊――。
 呆気なく騎士を押しつぶしたシャンデリアは破片を散らし、床の上で燃え上がった。
「やってやったぜ! さぁ、次の相手は誰だ!」
 ガラスの破片がキラキラと舞い散る中で、ユニコーン頭の怪盗は雄叫びを上げる。
 その服はところどころ切り裂かれ、破けているが京介の勢いはまだまだ止まりそうにない。
(どうやら、銃とか剣を持ってなくても騎士と戦う方法はいくらでもありそうだな)
 ブラックキャット――ヴェイン・アルカディアは柱の陰に隠れながら、仲間や騎士たちの動きを観察した。
 絶え間なく押し寄せる騎士の群れに対し、怪盗達は休みなく戦うことを強いられている。
(早く『仕事』を終わらせて、このVR空間から戻らないとな。そのために、俺に今できることはこれだ!)
 ヴェインが狙いをつけたのは、向かい側にあるもう一本の柱だった。
 袖口から勢いよく放たれたファントムワイヤは、アイリスの彫刻が彫り込まれた太い石の柱へと絡みつく。
 騎士たちがそれに気づかず2本の柱の間を通り抜けようとするのを狙い、ヴェインはワイヤを強く引いた。
「みんな、今だ!!」
 びん、と張り詰めたワイヤに足を取られ、騎士の群れが一気に床に崩れ落ちた。
 その間に剣を持った仲間が飛びかかり、あるいは銃で狙い撃つ。
「ルパンの奴、自分の脱出にHALCOまで巻き込むとは…ここを出たら目に物見せてやるぞ!」
 ナーガ――崎森瀧はファントムノダチを手に、向かい来る騎士たちの数を減らすことに専念した。
 この空間にあるはずの「アイリスの宝珠」の持ち主は未だ分からない。
 だが、この中の誰かが持っているのは間違いない。
(それなら…全員倒して奪うまでだ。どのみち宝珠を見つけても、騎士共は大人しくならなそうだしな!)
 瀧は笑みを浮かべ、剣を構え直す。
 だがその時、その頭上にシャンデリアが迫った。
「下がってください、瀧上官!」
 回廊の上からティタヌス――集推スイヤの声が響き、「ドラグノフ」の銃口が火を吹いた。
 銃弾はシャンデリアの吊り紐をかすめ、パツンという微かな音を立てた。
(当たった。あれなら…落ちる!)
 スイヤは銃を手に、新たな狙撃ポイントへと走る。
 瀧は柱の陰に飛び退き、シャンデリアはゆっくりと弧を描いて揺れた。
 そして吊り紐がその重みでぷつりと寸断された瞬間、壁に叩きつけられたクリスタルガラスの塊は激しい音を立てて粉々に砕け散った。
(スイヤ、お前がいるからこんな状況でも笑っていられるのかもしれないな……頼りにしているぞ。それに)
 VR空間なら、そして少なくともゲームをクリアして出ることができたなら、ここでどれ程怪我を負っても現実の肉体には何の影響もないのかもしれない。
 それなら普段はできない戦いを楽しんでも良いだろう。
(ここからは…少し飛ばして行かせてもらうぞ、ルパン!)
 瀧は凶悪な笑みを浮かべると、目の前の騎士の剣を払い除け、その間合いへと踏み込んだ。
 そして相手が怯んだ隙に、兜の隙間へとファントムノダチを深々と突き立てる――。
(やはり、俺にとって唯一敵にまわしたくないのは……瀧上官、あの方だけだな)
 相手がどんなにすごい相手だとしても、きっとそれは変わらないだろうと思いながら、スイヤはドラグノフを構え直す。
 そして、瀧や前衛にいる仲間の死角から雪崩込もうとする騎士たちを狙い撃った。
(…それなりに防御力はあるようだが、全く効かないわけじゃないみたいだな。これなら、必ずしも急所を狙う必要はなさそうだ!)
 自分は大勢を相手に戦いを繰り広げてきた軍人、騎士の群れなど今更怖くはない。
 そして、ルパンは遊びのつもりでこの空間を作ったかもしれないが、戦う以上――こちらは本気だ。
「スイヤ、気をつけてください。騎士たちがこの場所に気づいています」
 モンティワグス――集推スイホは銃を構えるスイヤを背にし、階段を上がってくる騎士たちの方に体を向けた。
 狙撃で遠距離の敵を狙う怪盗たちの存在に気づき、騎士たちが手勢をこちらに回してきたのだ。
「ふふ、面白いVR…そして馬鹿げたゲームですね。こんなところまで細かく作ってあるなんて」
 スイホは階段の上に飛び出すと、戦闘に上ってきた騎士の剣をかわし、そしてその胸元を思い切り蹴り飛ばした。
 不意を突かれた騎士たちはけたたましい金属音と共に、将棋倒しになって階段を落下していった。
「さぁ、早く終わらせないといけませんね。もちろん…私達の勝ち、で」
 遠距離からの射撃、近距離からの剣での攻撃、そして無手による攻撃――バリエーション豊富な怪盗たちと、剣と全身を包む甲冑、そしてその数を頼みにする騎士たちのどちらが勝ってもおかしくないのが今の状況だった。
 しかし、この空間をうまく使うことにかけては、怪盗たちのほうが数の多い騎士たちよりもむしろ優位かもしれないとスイホは思った。
「スイヤ、上官や皆さんを狙撃で援護するにはこの場所が一番適しているようです。最後までここを動かないほうが良いかもしれません。私は、上ってくる騎士たちの相手をしましょう」
 スイホはそう言うと、こちらに向かってくる新手に対峙する。
 激しさを増していく騎士たちと怪盗たちとの戦い。
 その中には、姿の見えないルパンの「意思」が潜んでいた。
(柱を使えば、効率よく落とせそうだな。よし、ここから……!)
 銀の腕――タキ・バルツァは回廊から向かいの柱へと飛び移ると、AGの機能を駆使して上を目指した。
 罠のシャンデリアは吊り紐を支えに、天井から吊り下げられランダムに落下する設定にされているようだった。
(下……ここなら誰もいないな、よし!)
 タキは手を伸ばし、高周波忍者刀の先でシャンデリアの吊り紐に触れた。
 紐はプツン、と切れ下からガラスの砕け散る音が聞こえた。
(シャンデリアが重そうな割に、紐はあんまり強くないのかな? でも、あれくらいなら僕が乗っても……)
 奥にひときわ大きなシャンデリアを見つけたタキは、意を決し、そちらに飛び移った。
 シャンデリアはタキを乗せ、ゆらりゆらりと振り子のように揺れる。
(これ、使えるな。今なら……あそこ!)
 タキは反動をつけてシャンデリアを揺らすと、隣のシャンデリアの吊り紐をぷつりと切り落とした。
 真下には騎士の群れ――落下したシャンデリアは2人の騎士を押しつぶす。
「下の人、気をつけて! 今度はこっちだ!」
 シャンデリアが揺れるのに任せながら、タキはシャンデリアを次々に叩き落としていく。
 下では騎士たちは驚き、逃げ惑っていた。
 しかしそのうちに、タキが乗っているシャンデリアが落下し始めた。
(そろそろだと思った! よし、このまま!)
 タキはシャンデリアの吊り紐を切り、反動を受けて向かいの回廊へとジャンプした。
 紐から放たれたシャンデリアは火を吐くライオンの像の一体に命中し、激しい炎が吹き上がった。
「勝負は2手3手先を読むもの……だからね。それにしてもこのゲーム、破壊したシャンデリアや像が再出現したりはしないよね?」
「ありえない話ではないな」
 タキの問いかけに、サンゲタル――陳華龍はそう答えた。
 ここはルパンの精神が反映されてできたもの。
 彼がそう設定したのなら、何が起きても不思議はないのかもしれない。
(大勢の騎士…あのルパンが乱戦や力押しの殲滅戦を好む? 恐らく誰か1人が正解…宝珠を持つ者は…)
 正解は誰なのか。
 華龍は50口径リボルバー拳銃を構え、騎士たちの動きを観察した。
(…必ずや何処かにヒントがあるゲームになっているはずだ。観察しろ、思考しろ、答えは必ず見えてくる)
 周囲には甲冑かぶつかりあう金属音と、落下するシャンデリアの砕け散る音、銃声、そして仲間たちの気合が響く。
 観察を続けた結果、罠が復活したり、理不尽に増えたりする様子はなかった。
 だが、騎士たちの数は増え続け、戦いはいつ終わるとも予想のつかない様相を呈している。
(これがルパンの好むゲームなら、VR空間である事も鑑みて『正解の騎士にだけ特別な何かがある』はず、その何かは『中身がルパンで、ルパンの能力や思考を持つ騎士』の可能性が高い)
 戦いの始め、ルパンの声をした騎士はヘルムの奥にその姿を隠し、騎士の群れの中に潜んだ。
 正解は彼なのか。
 否――あるいは。
「そこか!」
 華龍が引き金を引き、1人の騎士のヘルムを弾き飛ばす。
 その下から現れた顔は一瞬ルパンの顔で笑い、そして空っぽの鎧を残して煙となって消えた。
(やはり…いる。この中に、ルパンの『目』を持った騎士が!)
 騎士の中に、明らかに戦うだけを目的としていないものの姿を認め、華龍はそれらを狙い撃った。
 怪盗達を「見ている」騎士――恐らくその中に、正解はあるのだ。
「ルパンの『手』は観えた…私の眼からは逃げられんよ」
 未だに宝珠は見つからない。
 だが、怪盗たちは確実に戦いのゴールへと向かっていた。

◆走り屋たちの戦場
 重火器の砲口のような巨大な2本のマフラーから排気音が乱暴に響く。
 ルパンの車は地平線へと続く一直線の道路を猛スピードで走り抜けた。
 その後を追いかけるキラークィーン――李紅花は、スピードメーターがあっという間に120km/hに届くのを見て、「アヒャヒャ!」と愉快そうに笑い声を立てた。
「あのルパンとカーチェイスできるなんて最高にゾクゾクするね! こうなったら、楽しまなきゃ損だ!」
 紅花はハンドルを握りしめ、アクセルを思い切り踏み込む。
 ルパンはミラーの中の紅花を確認すると、ニヤリと笑って前方のカーブへと進路を変えた。
「この先は下りのヘアピンか…上等だよ!」
 紅花はルパンの車が機関砲の射程に入ったのを確認すると、カーブの内側に回り込み、すかさず狙い撃った。
 放たれた砲弾は運転席の窓をかすめ、窓ガラスに僅かな傷を作った。
「へぇ! この程度じゃかすり傷、ってか! 流石だねぇ!」
 砲弾を撃ち尽くす勢いで攻撃を繰り出す紅花。
 ルパンはそれに対し、反撃を繰り出す様子はなかった。
 しかし――。
「…っ! 危ない!」
 不意に急ハンドルを切り、ルパンの車がスピンをかけて再び進路を変更。
 その後方についていた紅花は危うく薔薇の植え込みへと脱輪しかける格好になった。
「やってくれるじゃないか…! だけどこっちだって、車が命の仕事してるんだからね!」
 素早くハンドルを切り、紅花はそのまま植え込みと植え込みの間を突っ切った。
 乱暴に飛び出したのは、ルパンの車の真横。
 大きくスピンしたルパンの車の窓ガラスへと、紅花は銃口を向ける。
 50口径リボルバー式コンシールド拳銃――あのプレシャスの愛銃だ。
「ルパ~ン、愛しの彼女からだよん!」
 窓ガラスに命中したリップスティック型の銃弾は砲弾のダメージで脆くなった場所を貫き、ルパンの鼻先をかすめていった。
 やるね、とルパンの口元が動く。
 そして車体がぐん、と紅花の方へ近づく。
 体当たり攻撃だ。
「…うわああっ?!」
 凄まじい衝撃とともに、紅花の車は車道の外へと投げ出され、沿道の彫刻に衝突して動かなくなった。
 しかし、激しいクラッシュだったにも関わらず、ルパンの車はスピードを上げ、新たなルートを走り始めた。
 この程度では全くダメージを受けていないようである。
「わあ、すごい…これでも、VRなんですね…! 迷路の中で勢いのあるカーチェイス……しかも音が!」
 ガゼボの屋根の上に立っていたアビエイター――推裾ソスエは下を横切る車の音に思わず耳を塞いだ。
 迷路は全体が起伏のある丘状の曲線コースと、どこまでも平面が続く直線道路のコースが組み合わされてできていた。
 その一番高い場所にあるガゼボの上からは、どうやら全体像が見渡せるようだった。
「ひっ、広いです! 一番向こうは……何キロ先なんでしょう!? 端の方は霧がかかっていて、見えないです!」
『そうですね。あの向こうに行かれてしまったら、逃げ切られる可能性が高いかもしれません』
 魔女アルツィナ――エルミーネ・クロイゼルはAiフォンの向こうからそうソスエに応えた。
 コサージュのドローンはエルミーネのいる位置から1km先まで目一杯飛行し、タブレットに画像を送ってきた。
 だが、その先にもまだコースは続いている。
「ルパンを追い詰めるためには、あまり遠くへ行かせないほうが良いかもしれません。でも、きっとうまくいきます。こうして上からの視点を確保している以上……ここはわたくしたちの領域です」
 エルミーネがそう言うと、ソスエが通信の向こうから「そうですね」と応えた。
『見えた範囲の迷路のコースは全部覚えました! エルミーネさん、私、運転も戦闘もできませんが、思い切り頑張ります…!』
「ええ、それはわたくしも同じです。動けないわたくしでも、盤上でルパンを追い詰めることならできますから」
 ルパンが怪盗たちを翻弄するように、遠くへ遠くへと移動するのを見て、エルミーネはチェイス中の仲間に向けて「先に別ルートから回り込むように」と伝えた。
 さらにソスエはエルミーネに代わり、バラの植え込みの中を移動してコースの先へと向かう。
「次の道を左に行ってください! 次は右、その次は左、その先の道は真ん中が行き止まり、右は元の道へ戻ってしまいます! ルパンの先回りをするなら、左、右、左、左です!」
 仲間の車に向かってそう大声で叫び、ソスエが先回りを誘導する。
 そして、頭上を飛んでいるエルミーネのドローンに向かって合図した。
「こちら側、誘導しました! 次は直線ルートに向かいます!」
『ええ。あちらはスピードが出るでしょうから、あなたも気をつけて』 
 ドローンの映像や仲間の情報をもとに、エルミーネはルパンの行く方角を予測する。
 次に向かう直線ルートで、ルパンは怪盗達と大きく距離を伸ばそうとするように見えた。
「皆さん、一度ここでルパンを泳がせても大丈夫です。様子を見ましょう」
 エルミーネはインカム越しに言った。
「少し距離は離されますが、雨がなければ虹は出ないもの…ルパンを捕らえるには、少し不利な状況になってもチャンスを待ったほうが良いかもしれません」
『そうだね、あたしも同感。ルパンがこの先のルートから右に入るなら…あたしも罠を仕掛けられる』
 欠片――廻環ゆめはエルミーネにそう伝えると、電話を切り、ケアーンテリアのドロイドを呼んだ。
 直線に入ったルパンがこの先でゆめの予測するルートに入るなら、徒歩で進むゆめにも、先回りができる可能性があった。
(多分……この先でルパンに会える。あたしが、その気なら)
 テリアのドロイドに迷路を確かめさせ、行き止まりの抜け道がないか、ルパンが逃げる可能性のある道がないかを確認し、途中の道にはC4を仕掛ける。
 そしてゆめは上空からトンボのドロイドにルパンの動きを追わせながら車を待った。
 ルパンは直線で追跡する怪盗たちの車を引き離すと、そのままゆめの予想通りこちらへ向かってきた。
(うまくいかないかもしれない…だから、これは賭けだ。でも、もしかしたら)
 爆音とともに近づいてくるルパンの車。
 その車輪がC4を踏みつけ、爆音が響く。
「…効いてない…!」
 ルパンの車は大きく跳ね上がったが、そのまま道路に着地すると、再びこちらに向かって走り始めた。
 その影を確認すると、ゆめは意を決し、その前方に飛び出した。
(偉大者は深い愛を持つ、っていうよね。もしもあなたがその偉大者なら…あたしを助けてくれないかな?)
 急ブレーキの音と共に、高速でゆめに迫る車。
 しかし、車体はゆめに激突する直前で停車した。
「許してくれたまえ、レディ! 君の罠にかかってあげる余裕がないものでね!」
 ルパンは車の窓をわずかに開けてそう言うと、車をUターンさせ、別ルートへと向かっていった。
 しかし、ゆめのこの行動により、ルパンは遠くへ逃げるルートから外れ、迷路の内側へと入り込む事になった。
「この空間…通信はできるようですが、ルパンに傍受されている可能性はあるかもしれませんね」
 愛らしき者――サラ・ハサンは電話を切ると、忍者1000H2のエンジンを唸らせ、バラの植え込みを飛び越えた。
 迷路だからといって、道に沿って動く必要はない。
 小回りの効くバイクならではの利点を活かし、ターゲットを追い詰めるのも怪盗の技のうちである。
(ルパン……バイクに跨がった私はちょっとテンションも高いので、気を付けてくださいね?)
 その頃、別ルートからは疾走する迷子――ダスティン・ガーランドが同じく忍者1000H2でルパンに近付こうとしていた。
 後部座席に乗っていた夜明けを征く者――リュヌ・アカツキはカーブに差しかかると、「降ろしてくれ」とダスティンに言った。
「聞こえるか、ティニー? 向こうからルパンのエンジン音が…あの先でスピードを緩めてくれ」
「ああ、運がいいぜ! ちょうどいい所に出たな!」
 ダスティンがバイクのスピードを落とし、リュヌが彼の背をジャンプ台にするようにして石像の上へと飛び移る。
 すると、反対側の道にサラのバイクが見えた。
「リュヌさん、こっちです!」
 サラに呼ばれ、リュヌはバラの植え込みを飛び越えてこんどは彼女のバイクに移る。
 エンジンを思い切り吹かし、サラは排気音を頼りに姿の見えないルパンのバイクを追った。
「あそこから突っ切れそうです! リュヌさん、行きますよ!」
「ああ、任せる!」
 やや途切れたバラの生け垣の間から、向こうの通りを走るルパンの車が僅かに光って見えた。
 ハンドルを握りしめ、サラは思い切り助走をつけて迷わずに突っ込んでいく。
(この際、失敗する確率なんて考えてたら……何にもできませんからね!)
 舞い散る真紅の花びらとともに、サラのバイクは生け垣を飛び出す。
 そして着地したのはちょうど、ルパンの車の50mほど後方だった。
「サラさん、いいぞ! このコースなら、ティニーの方に追い込める!」
「ええ…その前に、少しスピードを落としてもらいましょう!」
 サラはネックレスの鎖を掴むと、ぐるぐると回して加速をつけ、そのままルパンの車に向かって放り投げた。
 仕込まれたC4が爆発し、ルパンの車の後方が大きく左に振れた。
(この迷路はもう、あなただけの領域ではありませんよ……ルパン!)
 ルパンが速度を落とす間に、サラは一気に距離を詰めた。
 さらに前方からはダスティンのバイクがルパンの車の前へと回り込む。
 凄まじいブレーキ音と共に、ルパンの車がスピードを落とす。
「挟み撃ち成功! リュヌ、今だ! 飛べ!」
 作戦を成功させるための「ライン」が見えた――ダスティンはその時、そう感じていた。
 サラがハンドルを切り、車体を横向きにしながらルパンの車後方に接近する。
 その瞬間、リュヌが意を決し、ルパンの車の上へと飛んだ。
(追い風だ…ここからなら、届く!)
 リュヌは屋根の上に飛び降り、振り落とされないように素早くしがみついた。
 ルパンの車は前方にいるダスティンを避けるべく、道を逸れて生け垣に突っ込んだ。
 鋭い茨がリュヌの頬を引っ掻いたが、ここまで来て離れるわけにはいかない。
(飲むも飲まれるもわからん相手か…好きな方だが、挑まれて負けるのも面白くないからな!)
 リュヌは歯を食いしばり、車のフロントガラスへと身を乗り出す。
 ルパンの顔が見えた瞬間、リュヌの顔に装着されたクロウの仮面がまばゆい光を放った。
「『うわぁあ!!』」
 車内のルパンの悲鳴にバラの生け垣の中に振り落とされたリュヌの悲鳴が重なった。
 視界を奪われたルパンはハンドル操作を失い、いくつものバラの生け垣をなぎ倒しながらぐるぐると回転し、迷路内に大きな穴を開けた。
 しかし十秒もたたぬうちにルパンは車を立て直すと、再び新たなルートを走り出す。
「今のはちょっと危なかったな…。いやいや…実に末恐ろしい怪盗たちだ!」
 車内で目を擦りながら、ルパンは密かに冷や汗を流していた。
 その後ろからは、再びサラとダスティンのバイクが追う。
 しかしその時、ルパンが窓を開け、道路上に何かを撒いた。
「悪いが、これくらいの反撃は許してくれよ?」
「きゃっ、タイヤが!!」
「うわ?! ま、『撒き菱』か…?!」
 大きな「イガグリ」のような物体がタイヤへと突き刺さり、2台のバイクは走行不能になった。
 だがルパンがそのような行動に出たのも、彼らがそれだけルパンを追い詰め、ヒヤリとさせた故なのであろう。

◆容易ならざる遊戯
「何が『遊ぼうぜ』ですか! やっぱりあいつ、救いようのないイディオットですね!」
 クローバーのジャック――シャムロック・クラナドはファントムガンを構え、階段の上から落ちてくるボールを狙い撃つ。
 ライドアーマーの腕は一気に大量のゴムボールを抱えあげると、そのまま雪崩のようにボールを落下させた。
「うわっ、またやりましたね! ところで、このボール、破壊したら中からパワーアップアイテムが出てくるとか――ないでしょうかね? あっ…ないですね?! 変な演出だけみたいですね!」
 弾けたボールから飛び出すおもちゃや訳のわからないものたちを避けながら、シャムロックは落ちてくるボールを狙い撃つ。
 銃弾で破壊されたボールの中からは大量の星、小さなぬいぐるみの馬、子猫、サンタクロースなどが飛び出し、それらはTVゲームの演出効果のようなファンシーな音と光を放って一瞬で消えていく。
 ルパンは怪盗たちがそれらを見て慌てふためくのを見下ろし、ライドアーマー「メガHALCO」の上でけらけらと笑い声を立てていた。
「ったく、ライドアーマーの上でお山の大将気取りか? 伝説の怪盗も意外と子供っぽいんだな!」
 覚醒の鐘――暁靫凜音は銃でボールを撃ち落としながら、予備弾が足りるだろうか、と考えていた。
 ボールは階段上に次々に現れ、尽きることなく滝のように降ってくる。
 そして、その中から現れるのはどれも子どもが喜ぶようなファンシーなものばかりである。
「くっ…ぬいぐるみのクマとか、ラジコンヘリとか…! ここを自分の『おもちゃ箱』か何かにしてるつもりなのか?! なんかこのまま、ルパンの遊びとやらに乗るのは癪だけど、みんなが動けなくなったら困るしな!」
 ボールの強度はどれくらいなのだろうか。
 凜音は銃をトランプガンに持ち替え、試しにボールを撃ってみた。
 カードはボールをスパッと切り裂き、中からは「とりっくおあとりーとなのだよー」という声とともにどこかで見たような顔のおもちゃの兵隊たちが飛び出して消えた。
「シャムロック先輩、これトランプでも充分に壊せそうです!」
「むむっ! では、このステッキでも充分いけますね!」
 シャムロックは銃をステッキに持ち帰ると、階段上のルパンを睨みつけた。
 そして、落下してくるボールに向かってステッキに仕込まれた槍の先を突き立てる。
「調子に乗っていられるのは今のうちなのです、ルパン! 我らUNICOの怪盗に不可能はないのですよ!」
 槍先は落下してきたボールを串団子のように次々に刺し貫いた。
 そして、花火のような音とともに飛び出す大量の桜の花びら――そこにはちょうど、「花道」のようにライドアーマーに向かう道ができていた。
「シャムロック、ナイスだ! リュータ、行け! 俺とソロちゃんより早くルパンのところへ!」
 黒百合――黒鳥由理が怪盗ボルゾイを大階段の上のライドアーマーの方へと放す。
 リュータは激しく吠え立てながらボールを蹴散らし、ライドアーマーめがけて駆け上っていった。
「…HALCOを奪う、だと…? ふざけんなよ、ルパン! お前なんかに渡すつもりはない!」
 カンパニーレ――推橋ソロラはファントムボウにファイアアローを番え、ライドアーマーの手元を狙って放つ。
 矢はボールを掴んだアーム部に命中し、ゴムボールが炎を立てて燃え上がった。
「ルパン、わかっていないようだから言わせてもらうぞ! HALCOには意思がある! HALCOは、誰のものでもない! HALCOのもので、HALCOの意思で居場所を決めていいんだ!」
 ソロラは矢を放ち、ルパンの手元を牽制しながら怒鳴りつけた。
 お前のものにしていいものではないのだ、と――。
「聞こえてるのか、ルパン! あの子はお前が簡単に操ったり盗んだりして言い相手じゃないんだよ、この馬鹿!」
「そうだぞ、ルパン! ソロちゃんの言うとおりだ!」
 由理は落下してくるボールを掴むと、それを逆にライドアーマーに向かって投げつけた。
 ボールはライドアーマーの腹部に当たり、ぱぁんという音を立てて跳ね返る。
「わかってるのか! HALCOはただの機械じゃない、意思のある存在なんだからお前が好きにしていい存在じゃないんだぞ! それがわからないようならお前は最低の怪盗だな! いや、怪盗なんてものじゃないただの『犯罪者』だ!」
「犯罪者で結構! そして、馬鹿は君たちのほうさ!」
 2人の声が聞こえていたのだろう。
 ライドアーマーの上のルパンがそう言って笑う。
 自分の事を理解してもらう気などさらさらない――そんな態度のように見えた。
「馬鹿に馬鹿っていう奴が馬鹿だというからね! そしてもちろん、私は世界一の馬鹿さ!!」
 高らかに笑い、ルパンはソロラと由理の頭上へと大量のボールを落下させる。
 由理はソロラの前へ飛び出し、自分の体を盾に彼女を庇った。
「確かに…元泥棒の俺が、あいつに何か言えた義理でもない。だけど、俺だってUNICOで『怪盗としての美学』を学んだ…! ソロちゃん、俺も戦闘はできないけどこうやって庇うことくらいはできる! だから無茶するなよ!」
「ああ、ユリもな!」
 気を取り直し、ソロラは再び矢を番える。
 ファイアアローにライドアーマーを破壊するほどの威力はない。
 だが、きっとどこかに弱点はあるはずだ。
(これでも元工兵…いざとなったらC5で破壊することもできる。だけど…まずはあいつに接近しないとな)
 ソロラはボールを弓で狙い打ちながら、ライドアーマーとの距離を詰められるよう試みる。
 すると、「前衛は任せろ」と言ってパスクワーレ ――推嵩サスウがソロラの前へ出た。
「ソロラ、肝心なのは連携だ。敵が一体だからこそ、バラバラや個人で攻撃するより、状況を見て一点集中や息を合わせるなどの協力が必要となる。これは個人戦ではなく、団体戦…ゲームも現実も一緒だろう?」
 サスウはそう言ってファントムブレードを手にする。
 そして、飛んでくるゴムボールを払い除けながら、大階段へと挑んだ。
(…珍しくソロラが本気で怒っている。あいつにとっては…それだけ、HALCOが大事なんだろうな。それなら、私はその手伝いをするだけだ)
 階段を駆け上るサスウ。
 すると、ルパンはライドアーマーの拳をこちらに向けた。
 飛び出したロケットパンチがサスウに襲いかかる。
「うわっ!?」
 弾力のあるグローブ部がサスウを跳ね飛ばし、その体は積み上がったゴムボールの山へと落下した。
 飛び出したロケットパンチは本体と繋がったバネの反動で、びよん、とライドアーマーの腕に戻っていった。
「…10m、いや軽く20mは伸びそうだな」
 サスウはすぐに立ち上がり、ソロラと瀧に向かって「気をつけろ」と言った。
「今のであの拳がどういうものか分かった。…思ったよりも、発動までの時間が短いし、威力もある。多分…何かでルパンの気を引き付けないと、近づいた途端にふっ飛ばされる」
「そうだな。まだ行けるか、サスウ?」
 弓を構えるソロラに、サスウは頷いてみせる。
 ソロラは再びライドアーマーに向かって矢を放った。
 そしてその間に、サスウが改めてライドアーマーに接近していく。
「ルパン、お前は遊びでゲームのつもりなのだろうが、こっちは違う。お前に勝つことが現実で、これは遊びではなく本気だ!」
 巨大なライドアーマーに向かって勇ましく斬りかかっていくサスウ。
 その時、どこからかバラバラというプロペラ音が聞こえてきた。
「おやおや…まさか『この手』で来るとは思わなかったが、やはり入れてしまったか、この宮殿内に…!」
 ライドアーマーの上のルパンが上を見上げ、笑みを浮かべた。
 大空間の向こうから現れたのはなんと、轍の刃――大世宮典人の操縦するヘリ「ピクシー」であった。
「ちょっと待ってみんな! HALCO攻撃するの可哀想だからやめない?! 狙うなら、上に乗ってるルパンでしょ!」
 ヘリのドアから身を乗り出し、風操の射手――アデライン・エルムズがスナイパーライフルを構える。
 そして「みんな危ないからちょっと下がって」と言うと、迷わずにルパンの頭に照準を合わせた。
「どーせ仮想空間だけど恐怖くらいは味わえるでしょ!」
 ヘリの起こす風がアデラインの髪を巻き上げる。
 銃口はブレずに、ターゲットの方を向いていた。
(いい操縦だよ、典人……この位置なら、確実に届く!)
 放たれた銃弾はルパンに向かって真っ直ぐに飛んだ。
 しかし、ルパンの頭部へと届く直前、銃弾は何かに跳ね返された。
 操縦席はむき出しだったが、どうやら手元のボタンで一時的に何らかの「シールド」のようなものを張ることができるようだ。
「それも、HALCOの力を利用して作ったの? 典人、もっと近づいて! ルパンを撃ち抜いてやるんだからー!」
 アデラインはヘリの操縦席にいる典人に向かって怒鳴る。
 典人はやれるだけのことはやる、とアデラインに返事した。
「……前はアデルに手伝って貰ったから、今度はこっちが手伝う。……それに、遊びに強引に巻き込むやり口は俺も好かない。あのルパンに一泡吹かせてやりたい所だしな」
 ヘリは大階段の真上を旋回し、ルパンの頭上へと回り込む。
 ルパンはこちらを見上げ、「やるなぁ」と感心したような表情を浮かべていた。
「なにが伝説の大怪盗なの!? ただの愉快犯でしょ?! 美学の何たるかも知らないなんてお笑い種だよね! それも自分の力じゃなくHALCOの力を利用して!」
 銃口をルパンに向けながら、アデラインはプロペラ音に負けぬような大声で怒鳴り続ける。
「ルパン達がHALCOを利用して仮想空間を作らせたって事でしょ!? 無事だからいいって訳じゃないし! て言うか普通にムカつくし! HALCOは友達だもん、勝手に利用するのは許さない! 大体、『盗むのに失敗したから違う騒ぎで楽しもう』なんてバッカじゃないの!? それ勝負じゃなくて腹いせでしょ。それが怪盗の美学に則ってるとでも?」
「君のいう『怪盗の美学』について、一つ教えてあげよう、熱いお嬢さん」
 一通りアデラインの言い分を聞いた後で、ルパンはそう冷静に返した。
 その顔には、余裕の笑みが浮かんでいる。
「時には君のように相手の美学を糾弾することも必要ではあるが、基本的には、お互いの美学は尊重すべきだよ。それが『怪盗の流儀』ってやつさ。それと、何度でも言うが宝珠を手に入れるためにはこのライドアーマーの破壊は必須だ! まぁ、君たちにできないのならばそれまでだがね!」
 ライドアーマーが向きを変え、ミサイルの砲口がヘリの方を向く。
 典人はアデラインに向かって、「ドアを閉めろ!」と叫んだ。
「……攻撃が来る、かわすぞ!」
 アデラインがヘリのドアを閉めた瞬間、二発のミサイルはヘリの機体をかすめた。
 天井で弾けたミサイルからは、キラキラと光る金色の粉が散った。
「……どうやら威力を調整できる仕様のようだな。……だが、当たらなければどうということもない!」
 再びミサイルが放たれるも、典人はヘリを旋回させ、それをうまく回避した。
 だがその時、放たれた2発のロケットパンチがヘリを直撃する。
「上を飛ばれると厄介だからね。悪いけど、君たちにはここでご退場願おうか」
 ロケットパンチは拳を開き、ヘリの機体を掴んでいた。
 そしてそのまま、大階段の下へと叩き落としたのである。
(流石はルパンのライドアーマー……大した力だわ)
 ルパンが典人のヘリに気を取られていたその間に、アリス・クラークはこっそりその背後へと接近していた。
(中の2人は…無事みたいね。機体が炎上しないように、上手に壊したんだわ)
 アリスはアデラインと典人が無事に壊れた機体から脱出するのを見届けた。
 頭上からはミサイルから噴出した謎の粉が絶えず散っていたが、アリスは頭から白衣をすっぽり被り、その影響を受けずに済んでいた。
 どうやら今回は、生地に織り込まれた「化学物質分解ナノ酵素」がその真価を発揮したらしい。
(こんな事もあろうかと、白衣を持ってきてよかったわ……いつもこうはいかないかもしれないけど、少なくとも今回はこれで助かったわね!)
 アリスは粉を白衣で防ぎながら、階段上の柱と柱の間にワイヤを張り巡らせた。
 そして、隙をみてライドアーマーの背後からルパンのいる操縦席に飛びつき、バトンでシールドを強く叩いた。
「敵は前だけじゃないわよ、ルパン!」
 アリスの存在に気づいたルパンがライドアーマーをこちらに向ける。
 その瞬間、その足がアリスの仕掛けたワイヤに引っかかり、メガHALCOは大きくバランスを崩す。
「魔法少女ワンダー・ウィッチはもっと巨大な敵にも立ち向かうもの…10mのライドアーマーくらい大したことないわ!」
 アリスはネックレスを掴み、ライドアーマーに向かって投げる。
 するとそれはミサイルの右の砲口にスポンと落ち、直ちに大爆発を起こした。
 しかしライドアーマーの強度はそれなりに高いのだろう。
 ミサイルの片方の機能は奪われたが、本体をダウンさせるには至らなかったようだ。
 だがこの間に、メガHALCOにはもう1体のライドアーマーが迫っていた。
「メガHALCO……かっこいい…ゲームみたいで…ワクワクするね……ライドアーマーには…ライドアーマー……これ礼儀……」
 銀の怒り――ディルク・ベルヴァルドは試作型ライドアーマー「ラムダ」に乗り込み、大階段の上を飛んでメガHALCOに接近した。
 そして搭載された2mmレーザーを放ち、メガHALCOの腕と胴体より上を狙って攻撃する。
『ディルク先輩、すみません』
 通信越しに聞こえてきたのは、大階段の下にいる藍染――斧箭鎌刀の声だった。
『この空間では…ハッキングによるVR空間へのアプローチができないようです。ディルク先輩の機体に攻撃力と機動力のバフをかけられればよかったのですが…』
 インカム越しに、鎌刀は無念そうに言った。
 ここはそもそも、人の手で作られた擬似空間の中なのである。
 いかに強力な電脳スキルがあっても、VR空間に取り込まれてしまったが最後――そうした本来外から仕掛けるべき一切の工作は効かないのだ。
 鎌刀は、ここではそう認めるしかないのだと感じていた。
『一応…僕は最後までこのゲームの解析を、どうにか効率的に攻略できる方法を叩き出せないかやってみます。ですが…』
 難しいかもしれない、と声を落とす鎌刀の悔しげな様子が通信越しに伝わってくる。
 ディルクはメガHALCOへの攻撃を続けながら、「…仕方ないね」と返事をした。
「だけど…まだ……何か…『奇跡』が…起こるかもしれない…」
 信じて、とディルクは鎌刀に言った。
「ここを『俺たちの領域』に……ルパンから主導権を奪う事ができれば…どうなるか…分からない」
 実際に、この空間を作ったはずのルパンにこうして自分たちの攻撃が効いている。
 望みを捨てなければ、その思いがHALCOに届くかもしれない。
「…HALCOは…俺達を見てる…そんな気がするんだ…。だから…俺も…諦めないよ…鎌刀」
 ルパンの頭上を飛び、ミサイルをかわしながら、ディルクはメガHALCO透明になった胸部にはユリの紋章が浮かび上がった宝珠が収められているのを見た。
 ライドアーマーの機能を停止させなくとも、あの透明部分を破壊すれば宝珠は手に入るかもしれない。
 しかし、特別にその部分が強化されているのだろう。
 ディルクのレーザーですら一度の攻撃では僅かな傷を付けるにとどまった。
(VR空間の…本当のHALCOは……ダンスホールにいるのかな…俺…踊りは苦手だけど……迎えにならいける…)
 待ってて、HALCO。
 ディルクはそう、心の中で呼びかけた。
「怪盗の戦いは…性能表通りじゃないって事…今ルパンに…見せてやるから…!」
 メガHALCOの上にいるルパンをディルクはキッと睨みつける。
 その瞬間、放たれたレーザーが残っていた左のミサイルの砲口をスッパリと切り落とした。
「やってくれるじゃないか……!」
 ルパンがニヤリと笑う。
 そして、メガHALCOから再び2発のロケットパンチが発射され、ディルクのライドアーマーを掴んだ。
「あ、危ない…!」
 ディルクはとっさにボールの山へと飛び降りたが、ライドアーマーは叩き落とされ、戦闘不能となった。
 遊び半分だったルパンの攻撃が、ここに来て激しくなっている。
 だがそれは、怪盗たちの攻撃を前に彼の余裕がなくなってきていることを示していた。

◆少女ロボットの心は
(バックドアはおろか、僅かなほころびや取っ掛かりすらも見当たらない…なるほど、これがHALCOのVR空間というものなのですね)
 無貌の黒水晶――マクシム・ヴェッカーはPCを閉じ、大宮殿の天井を見上げた。
 ゴシック様式の細密な彫刻の間は、幾何学模様のステンドグラスで埋められている。
(これは恐らく、ルパンの脳内イメージで作られたもの。HALCO自身のメインコントロールはこの外に…そういうことなのでしょうね)
 飲み込まれたが最後、中に入ったものは手も足も出ない。
 ハッキングを試みる行為や、ウィルスになりうる行為をこの空間は絶対に許さない。
 であれば――マクシムにできるのは、どこかで自分の声を聞いているかもしれないHALCOに直接語りかけることだった。 
「大手品にもタネはあるといいますが…貴女はそれを完璧に隠してしまう。誰の干渉も許さない完璧な空間の構築…そんな『最強技』が使えてしまうが故に、貴女はあのルパンにも狙われたのかもしれませんね」
 HALCOの自我はどこにあるのか。
 ルパンの精神との接続が「洗脳」に近いものであるとすれば、ゲームクリア以外に彼女を救い出す方法はないのだろうか。
 マクシムはそんな事を思う。
(成長するAIに必要なのは愛と欲望=執着心。それが自我への短絡的な道のりです)
 Love and desire.
 しかし――。
「私は私の正義を信じています。HALCO、私の仲間もこうして、貴女に語りかけているはずですよ? 応えてはくれないのですか?」
 返事はない。 
 マクシムは小さくため息をつく。
「HALCO。貴女には少し『愛』が足りません」
 思わず、そんな事を呟いたときだった。
 どこからか舞い込んだ暖かい風が、優しく撫でるような感触をマクシムの頬に与えた。
「…HALCOなのですか?」 
 マクシムは空間に向かって呼ぶ。
「もしも、貴女がそこにいるのなら」
 応えてくれませんか?
 マクシムの手に、手品の小さな薔薇が現れる。
 風はそれをふわりと舞い上げると、小さな国旗を尾のように引き、マクシムの手から攫っていった。
(HALCOが…呼んでる?)
 マクシムは飛んでいった薔薇を追い、空間を走りだした。

(招いた? 何を勘違いしているのですか。ルパン、貴方はただドツボに嵌っただけです)
 两月――如月幾月は1人、大宮殿の階段を上へと上っていた。
 大聖堂から続く暗い階段は、何か特別な場所へ向かうようにも見えた。
(我々に技術を盗まれる事を知りながら一時の快楽に身を委ね、次は勝てると夢想する愚かなギャンブラー。夢は終わります。結果を受け取りなさい)
 怪盗達が騎士と剣を交える大聖堂の喧騒が遠ざかっていく。
 幾月は、大宮殿の中にHALCOが仕掛けたかもしれない「トリック・オア・トリート」を探していた。
(…もしかしたら、細部をHALCOさんがデザインしたというのなら……以前HALCOさんの仮想現実機能でデザインしたヴァンパイア城、その最上階には全ての吸血鬼を灰にかえて現実に戻るための窓がありました)
 上を目指し、幾月はその可能性を追った。
 だが、階段はぐるぐると回り、上下しながら一向に最上階へとたどり着く様子はない。
(これは…無駄足かもしれませんね)
 幾月がそう思いかけたときだった。
 ふわりと舞い込んだ暖かい風が、その髪を揺らした。
「…HALCOさん?」
 何故かそう感じ、幾月は風が吹いてくる方向へと歩きはじめた。

◆ヘルムの下に潜むもの
「ベリエスさん? ベリエスさん大丈夫!? 今治療するからね!」
 セイスが床に伏したベリエスの傍に寄り、止血を施す。
 薬の効果が切れ始めたベリエスは「ああ」と漏らすように声を発した。
「俺…何したっけ? はは…何も覚えてねぇや…」
 多くの敵を倒す大健闘だったが、その代償も大きかった。
 ベリエスがどうにか歩くことができるよう、セイスは精一杯の治療を施した。
「他の人もこっちに! 順番に治療するから!」
 怪我をした人は安全な方に避難して、とセイスは声を張り上げる。
 敵が多いのは時間稼ぎだったのだろうか。
 しかし、怪盗たちの健闘により騎士の群れは数を減らし、大聖堂には空の鎧が大量に転がっていた。
「どこかで見ているのだろう! 目的は何だ! 我らの力を試しているのか!?」
 劉文は姿の見えぬ的に向かって声を張る。
 相手の意図が何であるにせよ、自分の役割はただ一つ――圧倒的な武を以って道を拓くのみだ、と。
「我が名は皇龍! 怪盗ルパンよ、我が極みの拳を見届けるがいい!」
 誰よりも強く在り、誰よりも自らを律し、全ての暴威を抑止する龍たらんと、文は騎士の群れを恐れず、1秒でも早く敵を倒し殲滅すべく立ち向かっていく。
 敵は数に物を言わせ、文を叩き伏せようと襲いかかったが、文はその剣先を柔軟にかわし、相手の懐へと踏み込んだ。
 柔よく剛を制す――その言葉通りの美技であった。
「我が拳は剣に勝る、間合いに優り甲冑すらも無とする!」
 文の拳が相手の顎下をヘルムごと突き上げる。
 防具を弾き飛ばされたその顔は、一瞬、苦悶の表情を浮かべたルパンのそれに見え、直ちに黒い霧となって消えた。
 その間にも新たな敵が絶え間なく襲いかかる。
 文はその身に施した硬化スプレーの効果を頼りに騎士たちの剣を払い除け、また相手の攻撃を回避して自分の間合いに簡単に踏み込ませぬ事で1対大勢での戦況の中、雄々しく立ち回った。
「猛虎硬爬山!」
 相手を撃破したら、また次の相手へ。
 敵に息つく間も与えず、勇ましく技を繰り出す文の向こうでは、ブラックサムライ十八――ヤスケ・クロボーズがファントムノダチを鞘に収めたまま、騎士たちと睨み合っていた。
(さぁ、最初にかかってくるのは……誰だ?)
 静かに鯉口を切り、ヤスケはじりじりと間合いを詰めていく。
 すると1人の騎士が痺れを切らしたようにヤスケに向かって斬りかかってきた。
(素早いが……その動きは読めている!)
 騎士の剣がヤスケの体に触れそうになった瞬間、下段から抜き放たれた白刃がギラリと光った。
 そして斬と切り落とされた騎士の頭部がモザイクタイルに落下し、仲間の騎士たちの足元に転がった。
「16世紀のヨーロッパ騎士も求めたという刀の切れ味……我が身で味わいたい者はかかってくるがいい」
 ヤスケの居合の技は、騎士たちに少なからぬ恐怖心を与えたに違いない。
 だが、彼らにも後がないのだろう。
 数人の騎士が束になり、半ば捨て身の勢いで突っ込んできた。
(柔よく……剛を制す)
 ヤスケは騎士の前に盾を突き出すと、相手の勢いを殺し、そのまま戦闘の騎士を転ばせる。
 騎士たちはドミノ倒しのようにけたたましい金属音と共に床に転がった。
「刀槍だけでなく『組打ち術』も武士のたしなみよ」
 さらに、ヤスケは隙をついて1人の騎士を捕まえ、そのまま騎士の群れの中へと放り捨てる。
 そこへ、ウェイファーラー――推裾スエソの愛犬・カエダが激しく吠えかかり、さらに追い立てる。
「こっちには近づけさせないよ! カエダ、そのまま向こうに追い込んで!」
 スエソの声が響く。
 宮殿に騎士、そして守らなければいけない存在――それはまさに「ファンタジー」の世界だ。
 スエソは大聖堂に響く戦いの音を聞きながらそう感じていた。
「カエダ、突き進め! 少しでもみんなの攻撃の時間を稼ごう!」
 怪盗ボルゾイはスエソの命令を聞き、後衛の仲間の背後から近付こうとする敵の方へと突進していった。
 敵の数は明らかに減っている。
 そして心なしかその勢いも収まりつつあるように見えた。
(ほら、一人じゃ出来ない事も、こうやって皆とやれば先に進めるんだ! それがゲーム……いや、現実世界もそうだよね! 皆で力を合わせて宝珠を手に入れて、ルパンさんを降参させちゃおう!)
 スエソは銃を構える後衛の援護に回り、カエダと挟み撃ちにするようにして騎士の背後を捕らえる。
 そして腕時計の鋼糸をその首に絡め、素早く感電させ動きを奪った。
「みんなで協力すれば、硬い鎧の騎士だって倒すことが出来る! これぞ『マルチアクション協力プレイ』だよね!」
 感電し、動けなくなった騎士をスエソは思い切り蹴り飛ばす。
 そこへ後衛の仲間の銃弾が命中し、戦闘不能になった騎士は空っぽの鎧になって床に転がった。
「さぁ、どんどん行こうカエダ! ふふ…それにしても……それにしても、カエダも一緒に入ってこられるなんて、すごい世界だよね!」
 それぞれの場所で、それぞれが出来る事をみんな――頑張っている。
 しかしそう思ったその時、突然カエダが上に向かって激しく吠え立て、陳晶晶の「スエソさん危ない!」という声が響いた。
「避けろ! シャンデリアだ!」
 晶晶はモザイクタイルの床を滑るようにしてスエソを庇うと、ハルバードを素早く振りかざした。
 槍先で払われたシャンデリアの吊り紐が千切れ、何もない床の上に落下した本体は粉々に砕け、無数のクリスタルの破片を散らす。
「危なかったな! カエダがいなかったら即死だったぜ! さぁ、とっととクリアするぞ!」
 ハルバードを構え直すと、晶晶はLGのローラーで床を滑り、騎士たちへと向かっていく。
 彼らは未だ宝珠をどこかに隠しており、一向にこちらに渡す気配がない。
「大事な物を守る騎士、か」
 晶晶は騎士たちとの間合いを詰めながら小さく笑う。
 ルパンの命令か、自らの意志か……敵にも敵のプライドがあるのかもしれない、と。
「俺はそんな綺麗な物じゃないが、『守りたい』という意思は分かるぜ……だから、どっちの方がその意思が強いか。勝負だ!」
 AGの盾「イージス」を頼りに、晶晶は一気に騎士たちの方へ突っ込んでいく。
 そして上体を低くすると、彼らに向かって足払いを仕掛けた。
「見たか! これが雲影の力、だ!」
 仰向けに倒れた先頭の騎士に巻き込まれ、後ろにいた騎士たちも次々に倒れていく。
 その背後で、激しい爆発音が起き、煙が上がった。
 アムリタ――栄相サイスは晶晶に向かって、「気をつけて!」と声をかけた。
「こっちはもう、近づいても大丈夫だけど……ライオンの首は…全部は壊してないから!」
 仲間の障害になるライオンの像を、サイスは仲間と協力して既に半分以上破壊していた。
 サイスの傍らでブスブスと煙を上げる残骸も、ネックレスのC4を仕掛けて無力化することに成功した。
 しかし、仲間の中にはこれらや天井のシャンデリアを敵への攻撃に使う者もいた。
「この罠……どういう構造になってるんだろう……今まで私達の仲間がこれに焼かれてないのが……幸いだよね」
 サイスは床に転がっている焼け焦げた甲冑を見て思わずそう呟いた。
 銃弾を避けようとしてうっかりライオンの像に近づいた騎士はあっという間に焼かれ、こうなってしまったのである。
「……敵が仕掛けたトラップも上手く行けば……こちらの武器に使える……怪盗としては……覚えておきたい知恵だよね」
 今、HALCOはどうしているのだろうか。
 そう思いながらサイスは大聖堂の中を走り回る。
 この戦いに勝たなければ、HALCOはルパンに盗られてしまう。
 彼女が今どうしているか、心配でならなかった。
(だけど……この勝負は、皆で協力したら勝てるはず。HALCOさんだって守れるはず。HALCOさんは……友達だから)
 ルパンは、HALCOを利用してこの空間を作った。
 大勢のリアルな騎士や高速落下するシャンデリア、火を吐くライオンのギミックは彼女の力があってこそできたものなのだ。
(……ったく、ルパンめ。HALCOを道具として扱っているのは許せんな。あとでデコピン100連発の刑だ)
 戦場の勇気――ユウキ・ヴァルトラウテは呼吸を整え、銃を構え直す。
 斜め前方では一刀繚乱――月羽紡が「ユウくん!」と声を上げる。
「そろそろ終わらせましょう! 私、早く現実に戻って戦いたい人がいるんです!」
「……なら、最後まで集中力を切らすなよ、紡。背中の傷は、剣士の恥になるからな」
 ユウキはくるりと90度向きを変え、紡の後方から彼女を狙っていた騎士に向かって引き金を引いた。
 撃たれた騎士は倒れ、空になった甲冑が散らばり、金属音がモザイクタイルの床に響く。
 そしてその屍を踏み越えて新手が向かってくる。
 だが、ユウキは冷静だった。
(敵の数がだいぶ減った。これなら、紡も戦いやすくなるはずだ)
 弾数は限られている。
 だが、撃つ以外にも騎士を倒す方法はある。
 ユウキは相手の動きを観察しながらそう思った。
(危険な時ほどよく狙うことだ。そうしないと、ほらな――)
 こちらに向かって突進してこようとした騎士たちの頭上から勢いよく落下する巨大なシャンデリア。
 敵味方関係なく襲いかかるそのトラップは、呆気なく騎士たちを押しつぶした。
(紡や僕に気を取られていると、危ないからな)
 ユウキはシャンデリアから逃れた騎士を漏らさず、冷静に狙い撃つ。
 その早撃ちの技に為す術なく、あっという間に3体の騎士が倒れた。
(……宝珠を持ってるやつと持ってないやつ、個体差はあるようだが、どうも今までの様子だとその違いじゃなさそうだな)
 騎士は倒すと甲冑を残して消えてしまう。
 床に転がった「抜け殻」の中に宝珠は見当たらない。
(もう少し探してみるか。フェイクの可能性もあるが、もうこの数ならそろそろ絞り込みは可能だろう)
 少しだけだが怪盗選手権の内容に似ている、と思いながらユウキは大聖堂の中を歩いた。
 ルパンが「後夜祭」と銘打っていたからかもしれない。
「ふふ……きみ達が最後ですか。今までの騎士たちと見た目は同じに見えますが、生き残っているという事はそれなりに強いのでしょう?」
 楽しませてくれますよね?
 紡は微笑み、ファントムブレードを手に騎士たちへと斬りかかっていく。
(ですが、もはやここは私の領域。きみ達には、勝ち目はありませんよ?)
 騎士たちの剣を払い除け、紡はその首を落とす。
 だが最後に1人残った騎士は粘り強く食い下がった。
「……っ、今までの騎士たちとは違いますね。ということは、きみが……!」
 ぎいん、という音とともに紡のファントムノダチが跳ね飛ばされる。
 だが、騎士の剣が紡へと振り下ろされそうになったときだった。
「武器が、一刀だけとは限りませんよ?」
 クスリと笑った紡。
 翻った高周波ナイフが、ヘルムの下から騎士の頭部を貫いていた。
 最後の1人が倒れた――その瞬間、紡の眼の前にまばゆい光が溢れた。
「これが……『アイリスの宝珠』ですね」
 それが現れると同時に、宮殿内に転がっていた騎士たちの甲冑に異変が起きた。
 無数の立方体状のブロックに分解され、天井のステンドグラスに吸い込まれるようにして消えていったのである。
 天井から落下するシャンデリアも静止し、ライオンの首も炎を吐かなくなっていた。
 怪盗たちの勝利が決まり、大聖堂は静寂に包まれたのである。

◆迷路の終わる場所
「君の力、限界まで貸して貰うよ」
 流星のメルクリウス――九曜光は相棒「ベルリン」のアクセルを思い切り踏み込み、メーターが110km/hを超えるのを確認した。
 車窓を飛ぶように過ぎていくバラの植え込みの向こうからルパンの車のエンジン音が近づいてくる。
 飛び出すのはこの先の三叉路か。
 ジェットエンジンの起動を意識しながら、光は僅かに不安を覚えた。
(タイミングを誤れば激突するかもしれない……だけど!)
 本当に本気でアタックしているときに危険は存在しない。
 そう自分に言い聞かせ、光は勝負に出た。
「走りなら負けないよ、ルパン!」
 ルパンは怪盗たちの包囲網を突破し、より遠くへと逃げるつもりだったのだろう。
 光はルパンが直線道路へと飛び出す直前、彼の車がォオンと咆哮するような排気音と真っ黒な煙を上げるのを確認した。
 しかし光はその一瞬早くルパンの前方へと飛び出し、斜めにハンドルを切って進路を妨害していた。
(ぶ、ぶつかる……!)
 光は咄嗟にハンドルを抱え込むようにしてその衝撃を耐えた。
 2台の車は大きく回転しながら直線道路を真横に滑った。
(止めたのか……いや)
 光は車体が自分の意志に逆らって横に滑ってくのに任せながら、顔を上げ、ルパンの車が自分の車と同じようにこちらに滑ってくるのを確認した。
 ベルリンは静かに速度を落とし、ルパンの車と向き合う形で止まった。
(いい車だ。性能表とは違う)
 運転席に見えたルパンの口元が、そんな風に動いたような気がした。
 あちらの車が再びスピードを上げ、今度はバックしていくのを光は追った。
「もう少しだベルリン…もう少し頑張ってくれるかい? 終わったら新品同然にメンテしてあげるからね」
 2つの車が向かい合いながら進んでいく。
 だが、光の車がルパンの車に迫ろうとしたその時だった。
 ウォン! とルパンの車のエンジンが吠え、いきなり前進して光の車に正面衝突を仕掛けたのだった。
「…やられた…!」
 大きくスピンした光の車は後輪を路肩の縁石に乗り上げ、そこで止まった。
 車はかなりのダメージを負っていたが、どうやら光は無事のようである。
(恐ろしいな…これでゲームかよ)
 光が車から脱出するのを、怒りの日――イーノク・オルティスは象の彫刻の上から見ていた。
 追手を振り切ってスピードを上げるルパンの車の車輪の下からは、バチバチと火花が散っている。
(再起動とか性質悪いだろ)
 彫刻の上から降りたイーノクはLGのローラーを滑らせ、迷路の中を移動した。
 ルパンの車は再び入り組んだ迷路の中に入り込んだ。
 イーノクの周囲には何体もの彫刻が並んでいた。
(もしかしたら……これ)
 上から見た道路の様子では、ルパンはいずれこちらに入ってくるであろうルートになっていた。
 であれば、とイーノクの頭に「ある考え」が思い浮かんだ。
「悪い! 犠牲は無駄にはしないからな!」
 イーノクは意を決し、地球儀を担いだ巨人の彫刻の下に走った。
 そして、隣にある軍神マルスの像との間にワイヤを引っ掛けると、バトルハンマーで彫刻の台座を叩き始めた。
(ここから斜め45度に……よし、倒れる!)
 遠くから聞こえるルパンの車のエンジン音。
 巨人の彫刻がゆっくりと倒れ、絡まったワイヤに引っ張られてマルスの像も横倒しになる。
 そしてそれが隣の「考える人」の像をなぎ倒し、また隣のオベリスクへ……。
 次々に倒れた彫刻が道を塞ぎ、ルパンの行く手を阻む。
「どうだルパン! これでこっちの道からゴールには行けないぜ!」
 イーノクは事前に、迷路のゴールがこの先にあるのを確認していたのである。
 別にもルートはあるが、そちらからだとかなり遠回りになる。
 ルパンは後退を余儀なくされ、バックして別の道に入った。
(まだ諦めねぇのか! 何が「条件は同じ」だ! 絶対自分が圧倒的有利になるようにしてんだろ!)
 現実に戻ったら、あのチート野郎には一発ぶん殴ってやろう。
 ファントム・サワタリ――澤渡龍兵は通信越しに聞こえるサポート役の声を聞きながら、ルパンの進むであろうルートへと向かう。
(ファッキンチート野郎め! このスリケンでパンクさせてやる!)
 龍兵は六方手裏剣を手に、ガゼボの上へと飛び乗った。
 そして向かってくるルパンの車のタイヤを狙って投げつける。
(くっ! 刺さらねえのかよ!)
 強化されているのか、そのタイヤは硬く、並みの刃物では傷つかないようだった。
 しかし龍兵はまだ諦めない。
(まだ5枚ある……1回でやれなくても、こっちにはまだチャンスはあるんだよ!)
 ガゼボの上から向かいのアーチの上へ飛び移り、その先のキリンの像の背へ。
 龍兵は再びルパンの車の前へ回り込んだ。
(今度は、2枚まとめてどうだ!)
 再びさっきと同じタイヤを狙って手裏剣を放つ。
 2枚の手裏剣は一瞬でそのタイヤの下に飲み込まれ、今度も全く効かなかったかのように見えたのだが――。
(聞こえたぞ! 今、車の下で変な音がした!)
 龍兵はルパンの車が自分の脇を通り過ぎていった先でガクンと斜めに傾ぐのを見た。
 そして、一気にスピードが落ちる。
「やった! このスキに!」
 龍兵はショートカットして再びルパンの車の進行方向へ回り込むと、今度は別のタイヤを狙って一気に3枚の手裏剣を投げた。
 手裏剣はタイヤに巻き込まれ、その下から激しい火花が散り、金属が金属を擦るキーッという嫌な音がした。
「嘘でしょ?! あの車、パンクしてもまだあんなスピード出せるの!?」
 魅惑の火花――ナタク・ルシフェラーゼは上空のヘリから迷路を見下ろし、驚きの声を上げた。
 通信越しに、龍兵から「前と後ろのタイヤ1つずつ潰したぜ」という声が聞こえる。
『スリケンが刺さったのを見た。少なくとも、右の後輪は完全に潰れてるはずだ』
「確かに、何か走り方は変だよね。上からでも分かるよ」
 ナタクはルパンの車が時折、後ろ半分を振るようにして走っているのを確認した。
 車体が安定しないのだろう。
「じゃ、そろそろ止めてやろうぜナタク! さぁ、コブラちゃんのキスが欲しい奴はどこだい?」
 操縦席のBB――ブライアン・ビリンガムがそう言って機体を大きく旋回させる。
 そしてルパンの車の位置を確認すると、その進む方角に狙いを定めた。
「みんなちゃんと保険には入ったろうな?! こっからは……派手に行くぜ!」
 BGM71TOWの照準を合わせ、ブライアンはルパンの車前方にあるエッフェル塔の大きな彫刻めがけて砲撃を開始した。
 放たれたミサイルは強力だった。
 倒壊したタワー部は落下し、その先端がルパンの車のボンネットへと倒れかかった。
「へへ、どうだ! さぁルパン! 今のを直接車体にぶっこまれたくなかったらおとなしく降参するのが身のためだぜ!」
『まだだ、BB。あいつはまだ諦めてない』
 インカムから聞こえてきた蒼焔のイリューシャ――イリヤ・ヴォエヴォーダの声がそう言った。
 落下した彫刻はルパンの車を大きく凹ませたが、ルパンはまだ車を走らせ、ゴールへと突き進もうとしている。
「まがい物の空間だが…今までの様子からして、奴はその身一つで『無茶』を楽しもうとしているのかもしれん。まぁ、イカサマか真剣勝負か、最後までどうなるかは分からんがな!」
 イリヤはロードバイクのエンジンを吹かし、ルパンの車を追った。
 車は車体を不安定に揺らし、タイヤの下から時折火花を散らしながらそれでもまだ走り続けている。
(こんな状態でまだここまでのスピードが出るか…ならば、こちらも手加減無用ということだな!)
 イオノクラフトマヌーバーが作動し、バイクはイリヤを乗せて目の前の植え込みを飛び越え、その先の道路上に着地した。
 さらにイリヤは斜面から生け垣を突切り、一気にルパンとの距離を詰める。
(この単車は少々曲者だが…速いだけではないのが良いところだな!)
 前方にちょうどいい着地点を見つけ、イリヤは再びイオノクラフトを再噴射させた。
 車体は柔らかい草の上に着地し、大きくバウンドした。
 その時、イリヤの視界に斜め方向からこちらに向かってくるルパンの車の影がかすめた。
(ゾーンに入った、というやつか……行ける!)
 重力とバイクのポテンシャルに身を委ね、イリヤはそのままバイクがルパンの車へと向かっていくのに任せた。
 運転席で、ルパンが驚いた表情を浮かべたのが見えた。
(悪いが、俺の仕事も車が命…この勝負、負けるわけにはいかん)
 真横からイリヤのバイクがルパンの車に衝撃を与え、車はそのまま車道を飛び出し、生け垣を突き破って道なき道へと突っ込む形になった。
 しかしそれでもまだ、なおもルパンは車を走らせようとしている。
「ま、まだ逃げようとしてるのルパン……!? だけどこれなら、私でも何とか!!」
 そっちがその気なら、自分も限界を超えてやる。
 流星――莫水鏡はルパンの車に向かってワイヤを放ち、サイドミラーに引っ掛けた。
 もし可能ならば、スキを見てルパンの車に飛び乗るつもりだった。
 だが車の勢いは強く、水鏡はワイヤに引きずられる形になった。
「いやぁああ! ちょ、ちょっと待って! 何これーー!?」
『大変、水鏡さんが…! ブライアンさん、あたしもう行くね!!』
 ナタクはヘリのドアから身を乗り出した。
 こうなってはもうタイミングを計ってもいられない。
 そしてファントムカイトを広げると、ルパンの車を標的にしてヘリを飛び出していった。
(お願い……ルパンさんの車まで、届いて!)
 ナタクの体は風の抵抗を受け、左右に揺れながら落下していく。
 その時、ブライアンがヘリを操りミサイルをルパンの車に向けた。
「勝負は2手3手先を読むべし……ってな!」
 発射されたミサイルは、ルパンの車の鼻先を殴りつけるようにして車体に命中した。
 車はそのままのけぞるようにして仰向けにひっくり返る。
 ワイヤが切れ、投げ出された水鏡は悲鳴を上げて柔らかい草の斜面を転がっていく。
 そこへナタクのファントムカイトが降り立ち、水鏡をふわりと受け止めた。
「水鏡さん、大丈夫?!」
「へ、平気…ちょっとビックリしたけど」 
 若干目を回していたが、水鏡は大丈夫だと言って立ち上がった。
 どうやら怪我もないようだ。
「それより……ルパン大丈夫かな?」
 水鏡は顔を上げ、心配そうに言った。
 ルパンの車は止めた。
 しかし、どう見てもこれは「大事故」である。
「どうしよう水鏡さん、声かけてみる?」
 ひっくり返った車にナタクが近づき、コンコンとフロントガラスを叩く。
 返事がない。
 水鏡は「退いて!」とナタクに言うと、ドアに爆薬を仕掛け、強引に破壊して中を覗き込んだ。
「ルパン? ルパン大丈夫?! 気絶、してるの……?」
 運転席で動かないルパンを見て、水鏡が手を伸ばして体を揺する。
 だがその時、ルパンの顔がニヤリと笑った。
「やぁ、お嬢さん。悪いが私は諦めが悪くてね」
 ルパンは水鏡の手をぐいと掴んで言った。
「例えミサイルで車をひっくり返されようとも、車をぺしゃんこにされようともまだ勝負を捨てる気はないのさ!」
 突き飛ばされた水鏡が悲鳴を上げる。
 ルパンは車から飛び出し、何かを放り投げようとした。
 煙幕か、あるいは爆薬か――自分の足でここから走って逃げるつもりだったのだろう。
 しかしその時、ルパンより早くナタクが動いた。
「ゴメンねルパァン……なんちゃって?」
 プシューッとルパンの顔面めがけて放たれたのは、睡眠スプレーだった。
 不意を突かれたルパンは今度こそ意識を失い、その場に倒れ込んだ。
「ふふ、プレシャスさんの声マネ、似てた? まぁ、僅かな隙を突くべきだっていうのは怪盗の基本だし? ルパンさんなら寝たフリくらいするだろうな、って」
 そう言うと、ナタクは助手席に転がっていた宝珠を手に取り、キスをした。
「身を焦がすような魅惑のスパークを貴方に♪ この勝負、あたしたちの勝ちだね♪」
 苦しい戦いの末、レースを制したのはUNICOの怪盗たちと決まった。
 あとは宝珠をゴールであるダンスホールへと持っていくだけだ。
(HALCO、お前も俺たちの勝負を見ていたのか?)
 イリヤは眠ってしまったルパンを拘束しながら、空を見上げ、姿の見えないHALCOに心の中で問いかけた。
(ルパンとの利害は一致しているのか? その結びつきは、感情か? それとも支配のもと、不本意な形での協力なのか? お前は機械だが、ただの機械じゃない。心……すなわち、自我が、お前にはあるんだろう。俺にはそんな気がする。それは多分「まがい物」じゃない)
 なぁ、聞こえているんだろう。
 そう語りかけるイリヤの頬を、暖かい風が優しく撫でていった。

◆怪盗たちの矜持
 ライドアーマーは2つのミサイル発射口を破壊され、残る機能は両腕のロケットパンチのみになった。
 ルパンはそれらで怪盗達を牽制し、また大階段からボールを投げ落としてなおも抵抗を続けたが、戦況はUNICOの怪盗達に有利なように動いていた。
「ルパンさん、ステラは貴方に感謝してるです! 巨大ロボットに戦車で立ち向かう…これが…これがステラの求めた戦場なのですよ!」
 ケアフリー――ステラ・ワードは10mの巨体を前に、歓喜に打ち震えていた。
 メインバトルタンク「M1エイブラムス」には44口径120mm滑腔砲が搭載されている。
 その照準をメガHALCOに合わせ、ステラは勝負を仕掛けた。
「月までブッ飛ばしてやるです! てへペロ☆」
 放たれた砲弾がHALCOに命中し、その巨体がぐらりと揺らいだ。
 しかしまだ、このライドアーマーは倒れない。
「素晴らしいね! そう来なくっちゃ面白くない! じゃあ私も、そろそろ本気でやらせてもらおうか!」
 ルパンがそう言った途端、ライドアーマーの右手が腕から離れ、スプリングと共に飛び出した。
 そしてその巨大な拳はスプリングを目一杯伸ばし、ステラの戦車を正面から殴りつけた。
「きゃあっ! や、やりましたね……っ!?」
 ぱぁん、という音とともに、戦車は弾かれるようにして横向きになった。
 内部のステラはシートに叩きつけられ、苦痛の表情を浮かべる。
 ライドアーマーの上のルパンは大声で笑っている。
「はーっはっはっはっは!! 見たかこの飛距離! この性能! どうだい! これこそ『男子の夢』だろう?!」
「はしゃいじゃってまぁ…。ガキかっての」
 してやったり顔のルパンを見上げ、サイレンサー――宍倉静は呆れたようにそう呟いた。
「まー、確かにミサイルにロケットパンチに、夢が詰まってるってのは確かだな。それに…機械が相手なら、もう少し派手でも問題ねぇだろうしな!」
 ステラの戦車でも一発で効かないところを見ると、恐らく通常の武器ではおよそ太刀打ちできないだろう。
 ライドアーマーは巨体である分、小回りは効かないようだった。
 静はルパンの注意がステラの戦車に向いている間に階段を駆け上り、ライドアーマーの足元に手榴弾を放った。
 爆音とともに粘着剤が噴出し、ライドアーマーの足元は拘束された。
「さぁ、戦車のおたく、出番だぜ? さっきのやつをもう一発だ! 今度こそひっくり返せ!」
 さらに静は指輪からゼロエネルギーを照射し、その力でライドアーマー上のルパンの動きを奪う。
 ステラはその間にキャタピラを操って車体を正面に向け直し、再びライドアーマーに照準を合わせた。
「ここまできたら絶対やってやるです! 砲身が焼け尽き残弾切れるか、反撃でこちらがスクラップにされるかまで撃ち続けるのみ!」
 今度はロケットパンチのスキを与えない。
 ステラは気合を入れ直し、今度は連続で砲撃を開始した。
 そしてその間に、甘き夢の魔導人形――ショコラ・ブラマンジェがゴムボールを破壊しながらライドアーマーの足元に迫る。
「悪いけど僕たち、君みたいなファック野郎と遊ぶつもりはないから。そのでかいがらくたと一緒に破壊してもらうよ!」
 ショコラの手には、ゴムボールの幾つか入った大きな包みがあった。
 それを解くと、ショコラはボールをライドアーマー上のルパンに投げつけた。
「何でか知らないけど、KKKも僕らと一緒にこの空間に引っ張り込まれてたんだよね。だからちょっと、『協力』してもらったよ!」
 ルパンはとっさに小さなナイフでボールを割った。
 するとその中から出てきたのは何と大量の女性用下着であった。
「うわっ?! こんなの私は入れた覚えはないぞ!!」
 頭の上から降ってきたパンティを払いのけるルパン。
 KKK特製の「下着ボール」とステラの攻撃にルパンが身動き取れなくなっている間に、ショコラは洋傘の浮力で上昇しその背後に迫る。
「僕も改造された破壊兵器の一種だからね……ファック野郎には容赦しないよ!」
 ショコラはルパンの背後からAGのロケットパンチを放つ。
 だがその時、ライドアーマーが大きく体制を変え、ショコラのパンチを受け止めた。
「巨大ロボにあんまり近づくと危険だよ、お嬢さん?」
 スプリングと共に飛び出した巨大な拳に煽られ、ショコラは大階段の上へと落下した。
 その間にもステラが容赦のない攻撃をライドアーマーに浴びせるが、メガHALCOはそれを巨体で受け止めている。
「女の子に乱暴しちゃダメですよ、ルパンさん。はぁい、お久しぶりです。僕のこと覚えてます?」
 ショコラとは反対側からいつの間にかライドアーマーによじ登っていたのはセクシーバニーちゃん ――ルイ・ラルカンジュであった。
 心を盗みに来ちゃいました。
 そう言って、ルイはおどけてみせる。
「あの時はごめんねルパンさん♪ 愛と欲望の化身、薔薇のロザリオ参上です」
「やぁまた会えて嬉しいよ。しかし、どうやってここまで上ったんだい? 大暴れするライドアーマーを無傷でよじ登るなんて、よっぽどの怪力か強運がなきゃできないよ?」
 ルパンは思わずそんな事を口にした。
 恐らく、クライムグローブのみを頼りにやって来たルイを助けたのは「強運」の方であろう。
「君がどこをどう上ってきたか、今後の参考に詳しく聞きたいところなんだけどね」
 そう言ってルパンは操縦レバーのようなものを弄った。
「ちょっとそんな余裕もなさそうだ! ごめんよ!」
 ルイがなにか仕掛けようと企んでいるのに気づいたのだろう。
 ルパンがライドアーマーの上体を大きく旋回させ、ルイはその反動で大量のゴムボールの中へと振り落とされた。
「余裕がなくなってきたな。そうとも、ルパン。遊びは終わりだ」
 いないはずの者 ――レイン・アンダーソンが銃を構え、物陰からライドアーマーを狙い攻撃する。
「ここからが勝負だ。Nobody can find me――Ready?」
 銃弾はその強固な金属ボディーに跳ね返されたが、すべてがそのような素材でできているわけではないらしい。
 至近距離から撃てば、あるいは攻撃を通ずるチャンスがあるかもしれない。
(冷たく、雨のように静かに…)
 レインはルパン本人に銃弾が当たらぬよう気をつけながら、ライドアーマーの弱点を探した。
 すると、壊れたミサイル発射口の脇から内部構造の一部が覗いているのが目に止まった。
(ルパン、悪いがこの勝負我々に勝たせてもらう。今日は私のラッキーデーだ!)
 レインはライドアーマー内部に見えたなにか光るものを撃ち抜いた。
 すると、何かが弾けるような音が聞こえ、ライドアーマーの下腹部から煙が吹いた。
「まずい! 制御装置が……!」
 操縦席のルパンが機械を動かし、何やら慌てた様子を見せた。
 ライドアーマーを動かす機能の一部が破壊されたようだ。
(今なら、ルパンに近づける……!)
 サイドスワイプ――紅嵐斗は戦車の上のステラに「少しだけ砲撃をやめて欲しい」と言った。
 そして大階段上の天井にワイヤーガンを打ち込むと、階段上を滑空し、ボールを1つ拾い上げ、そのまま操縦席の前へと接近した。
「やぁ、遊びに来たよルパン」
 嵐斗がルパンにボールを投げつけ、弾けたボールの中からは大量のキャンディが飛び出した。
 とっさにそれらを払いのけるルパン――嵐斗はその目の前に着地する。
「今まで貴方に盗めないものはなかった。けど、今回失敗したのは何故だか分かる?」
「…ふむ、聞かせてもらおうか」
 ルパンがやや余裕のない表情で嵐斗に笑みを返す。
「それはHALCOが物じゃなく、おれ達の友達だから」
 嵐斗はそう続けた。
「確かに勝負はまだついていない。それでもHALCOを確保出来てもあなたは彼女の『こころ』までは盗めない。心を盗むのが一番難しい…だっけ」
 まだ芽生えかけでも、彼女には「こころ」がある。
 それだけは伝えたかった。
 嵐斗がそう言うと、ルパンは声を立てて笑った。
「素晴らしい! それこそ怪盗らしい答えだよ!」
 だが、とルパンは言う。
「果たして、君たちはこれから『HALCOの心』を充分に育てられるというのかい? 今の段階ではあるいは……私のほうが良き教育者かもしれないよ!」
「…危ないっ!」
 ライドアーマー内部が唸るような音を立て、その金属ボディーが熱を帯びた。
 危険を察した嵐斗はワイヤを手に大きくルパンとの距離を取る。
「まさかと思うが……『自爆』する気じゃねえだろうなぁ?」
 攻撃のスキを伺っていた静がそんな事を口にした。
 ライドアーマーはしゅうしゅうと煙を吹き出し、足元が熱で溶け出している。
「まさかあれかい? 爆発のドサクサで自分だけ飛び出して、宝珠持って、『それでは皆さんごきげんよう』ってか? ルパン先輩よ」
 その声が聞こえたのか、ルパンがこちらを見てニヤリと笑う。
 こりゃ、間違いねえな――。
 そう思った静は、ライドアーマーの下からルパンを狙い撃った。
「ちょいとそらねえぜ? 現実の先輩には悪いが、そういう『お約束』をやらせるわけにはいかないんでな!」
「ははっ! バレてしまったか……!」
 指輪から放たれたゼロエネルギーの光線を、ルパンはひらりと回避した。
 だがその反対側から、いくつものボールがルパンに向かって飛んできた。
「諦めたら試合終了。もう終わりだよルパン、僕たちの勝ちだ」
 ショコラの投げつけたボールからはKKKが詰め込んだ女性用下着やイケナイ本、その他「大人の事情でお見せできない品々」などが飛び出し、ルパンの頭の上にどさどさと降り積もった。
 そしてさらに、階段下のステラが砲撃を再開する。
「自爆エンドなんて許さないでありますよ! 最後まで正々堂々勝負するであります!」
 ステラはライドアーマー上のルパンを睨みつける。
「どっちかがダメになるまで戦うです! ファイア! ファイア! USA! USA!」
 大声でそう叫びながら、ステラは砲撃を続けた。
 しかし、残り弾数が僅かになったその時、ライドアーマーの両腕から2発の拳が飛び出した。
「ナイスファイト! だが、逃げるが勝ちという試合もあるのさ!」
「そ、その手はもう食わないです!」
 戦車から放たれた砲弾がロケットパンチを跳ね返す。
 それを見た嵐斗は意を決し、再びワイヤでライドアーマーに接近した。
 今ならいける――そう判断した嵐斗は、ワイヤを離し、ムチをルパンの体に叩き込んだ。
「さっき1ついい忘れた! ルパン、おれ達は『怪盗』だよ!」
「……っ!」
 操縦席から連絡し、ボールの山へと沈み込むルパンの体。
 嵐斗は空になったライドアーマーの上に着地し、香水型手榴弾をルパンに投げつけた。
(おれを誰だと思ってるんだ、ルパン? このサイドスワイプを舐めちゃ困るよ)
 炸裂したジェルがルパンを巻き込み、その体を拘束する。
 嵐斗がライドアーマーを蹴って飛び降りた直後、ステラの放った砲弾の最後の一発がメガHALCOに命中した。
 そして、その一発はいくら攻撃しても倒れることのなかった巨体をとうとうひっくり返した。
「風を感じろ、必ず届く……ってね。やれると思ってましたですよ。てへペロ☆」
 ステラは戦車を下り、大階段へと近づく。
 衝撃で壊れたのだろう。
 ライドアーマーの胸部が外れ、パカっという音とともに開いた。
 中から転がりでた「ユリの宝珠」は、駆け寄ったステラの足元で止まった。
「ハルちゃん……これじゃあ一緒にパレ(ダンスホール)まで連れて行ってあげられませんね」
 ルイはライドアーマーに近づき、そっと手で触れる。
 苦闘を重ねたその大きな金属の体は痛々しい有様だった。
 それを見た嵐斗が、「HALCOが泣いてる」と呟いた。
「ルパンは、どう考えてもやっぱりやりすぎだったよ。もしもHALCOがこの空間にいるなら、おれ達と一緒に帰りたいはずだ」
「そうですよね、きっと」
 ルイはそう言って頷き、倒れたライドアーマーの操縦席の方に回る。
 すると、何かのボタンが赤く点滅しているのが見えた。
「Reboot(再起動)…? よかった! ハルちゃんまだ歩けるかもしれません!」
 声を弾ませ、ルイが周囲の仲間を呼ぶ。
 そして、ボタンを指で強く押した。
「さぁ、ハルちゃん一緒に帰りますよ。ポチっとな、っと♪」
 再起動ボタンを押されたHALCOはゆっくりと起き上がった。
 その大部分が故障しているため、その歩みはとても弱々しかった。
 しかし――怪盗達と一緒に帰りたいというHALCOの意志が働いていたのだろう。
 彼女は途中で止まることなく、ダンスホールまで歩き切ったのだった。
 
◆帰還の刻
 怪盗達が行き着いた先のまばゆい空間――ダンスホールの真ん中で、幾月が仲間を手招きする。
「皆さん、エンディングが始まります」
 幾月が指さしていたのは、3つの宝珠(オーヴ)を納めるための台座だった。
 その傍らに、それぞれの空間でゲームをクリアしてきた仲間の怪盗達が集う。
 台座に収められた宝珠は、静かに虹色の輝きを帯びた。

「捕まってしまったか」
「ああ、私も負けた」

 薔薇庭園(ローズガーデン)と大階段で捕らえられた2人のルパンが顔を合わせ、笑い合う。
 お手をどうぞ。
 片方のルパンが戯れに、もう片方のルパンをダンスに誘うような仕草をする。
 誘われた方は、謹んでそれを受ける。

「ラストダンスの時間だ」
「しかし我々は敗北者――この空間にはふさわしくなかろう?」

 2人は手を取り合い、違いない、と笑い合う。
 彼らの姿は立方体状のブロックに分解され、空間に溶けるようにして消えていった。
 そして怪盗達と一緒にここまで歩いてきたメガHALCOもまたその姿を変えた。

(全てのプログラムが終了しました。英雄たちに、祝福を)
 
 傷ついたライドアーマーが無数の立方体状のブロック――「ピクセル」に分解され、そして再び形を成す。
 空間に現れたのは怪盗たちが見慣れた、小さなHALCO001。
 しかしその背には、金色の光を帯びた大きな翼があった。

「HALCOが……歌ってる?」

 ダンスホール内で、怪盗達はその声を聞いた。
 空間を震わす歌声は、勝者を称えるもののようだったが、その意味や、何語かなどは、その場にいた者は誰ひとり分からなかった。
 そしてその歌声に誘われるように、3つの宝珠が宙に浮かぶ。

(HALCOは皆さんと一緒に帰ります。ありがとう……私の友達)

 歌いながら、HALCOは大きな翼をゆっくりと羽ばたかせ、そこから沸き起こる温かい風が怪盗達を包み込む。
 彼らは眠りに誘われるように、優しく意識を失った。
 そして目が覚めた時、そこは元いたUNICOの校舎の中であった。

◆完敗しても伝説怪盗
「参った参った。さあ、おとなしくお縄を頂戴しよう……じゃないか、元から虜囚の身だったっけね、ははは」
 現実世界のルパンは、悪びれもせず(当然か)無駄なあがきもせず、再度、独居房備え付けのベッドにゴロリと寝転んだ。そう、揃って目覚めてしまえば、ルパンは檻の中の囚人でしかなく、学生とHALCOはそれを見守る自由の身でしかない。
「うーんやられた、紙一重で君らを出し抜くつもりが、二度も出し抜かれてしまったのだから。ああ、残念だが、HALCOは諦めるしかないかな……」
 ルパンが不貞寝を決め込むころ、HALCOの正常化や、取り込まれていた学生ら全員の無事、そして、同時に行なわれていたルパン一味の襲撃の顛末が届き始める。
「だが、不思議と悔しさは感じないな……ん、そうか。だから私は、無意識的に敗北するようなゲームをしたのかな。そうだ、そうに違いない」
 なんだか負け惜しみにしか聞こえない謎理論で自分を納得させると、ルパンは「君らの差し入れに期待してるよ」と言って手を振り、続けて「おやすみ」と告げると、本当に寝息を立て始めてしまった。
「……ゲームみたいな世界でやりあったわけだけど。なんかこの人、現実の存在そのものが、すでにゲームじみてるね」
 嵐斗はそうつぶやくと、『続編』が出ませんように、と天を仰いだ。



 18

参加者

a.上等だ、最高のエンタメを魅せてやるぜ。さぁ、ショータイムだ!
馬並京介(pa0036)
♂ 26歳 刃魅
e.さて、どう追いつこうか。
リュヌ・アカツキ(pa0057)
♂ 26歳 忍魅
サポート
a.よろしくお願いします。
ヴェイン・アルカディア(pa0074)
♂ 24歳 刃忍
c.【PLD】シャンデリアとライオンの仕掛けは任せてくれ。巧く破壊するさ。
アルフォンス・サインツ(pa0087)
♂ 24歳 弾忍
f.ルパンが「遊びたい」のなら、それに付き合うまでだよ。
紅嵐斗(pa0102)
♂ 20歳 英忍
f.……楽しそう……
ディルク・ベルヴァルド(pa0112)
♂ 23歳 乗知
サポート
e.ありがとうブライアンさん。コパイくらいは務めるからね♪
ナタク・ルシフェラーゼ(pa0155)
♀ 24歳 乗魅
g.またお遊びときましたか、いい加減にしろ!なのですよ。
シャムロック・クラナド(pa0160)
♀ 20歳 英探
d.あのファッキンチート野郎はあとで殴る。そのためにも、振り切るぜ!
澤渡龍兵(pa0190)
♂ 22歳 乗忍
e.(人間の)限界を超えるぞぉ!
莫水鏡(pa0196)
♀ 20歳 忍魅
f.…ま、やってみますか。動きを止められそうなら止める。そん時ゃ頼むぜ?
宍倉静(pa0201)
♂ 21歳 忍探
a.武を示す。
劉文(pa0392)
♂ 22歳 英刃
f.【PLD】要はダンスホール(パレ)まで連れて行けばいいんですよね♪
ルイ・ラルカンジュ(pa0432)
♂ 24歳 英魅
z.【PLD】Project:Love and desire。開始します。
マクシム・ヴェッカー(pa0436)
♂ 27歳 探知
d.【PLD】単車で出る。勝てばいいのだろう。それだけだ。
イリヤ・ヴォエヴォーダ(pa0440)
♂ 25歳 刃乗
d.ルパンとカーチェイス楽しませて貰うよ。1名同乗可能だよ。
九曜光(pa0455)
♀ 23歳 乗魅
f.10m位たいしたことないわ。科学の魔法で地に這わせてあげるわ。
アリス・クラーク(pa0456)
♀ 20歳 刃知
c.皆の援護をするよ!だから思い切り戦ってきて!でも怪我しないでね!
栄相セイス(pa0459)
♀ 20歳 知魅
c.罠の方の対処を行うね・・・。皆、頑張ってね。
栄相サイス(pa0460)
♀ 20歳 英探
f.……ヘリを出す。
大世宮典人(pa0940)
♂ 23歳 刃乗
b.銃での援護を行うな。
集推スイヤ(pa1090)
♀ 20歳 英弾
b.後衛にて戦闘護衛と援護を行いますね。
集推スイホ(pa1091)
♀ 21歳 英魅
f.ルパン狙いで!
アデライン・エルムズ(pa1094)
♀ 20歳 弾忍
d.アヒャヒャ!いいね、楽しもう!
李紅花(pa1128)
♀ 22歳 弾乗
a.武士と騎士どちらが強いか今こそお見せしよう。
ヤスケ・クロボーズ(pa1163)
♂ 27歳 刃乗
a.騎士を一人でも多く倒していくつもりだ。
崎森瀧(pa1178)
♂ 25歳 英刃
b.生身ではない、か。
陳華龍(pa1190)
♂ 27歳 弾探
e.追い付きましょう。
サラ・ハサン(pa1214)
♀ 20歳 乗魅
b.さて、やるか…
ユウキ・ヴァルトラウテ(pa1243)
♂ 27歳 英弾
f.月までブッ飛ばしてやるです!てへペロ☆
ステラ・ワード(pa1302)
♀ 20歳 弾乗
a.さて、楽しみましょうか。
月羽紡(pa1364)
♀ 27歳 刃探
e.追いかける…?
廻環ゆめ(pa1420)
♀ 19歳 忍知
f.ライドアーマーの戦闘の援護を後衛にて行う予定だ。
推橋ソロラ(pa1424)
♀ 22歳 英知
f.…遊びは、終わりですよ?
レイン・アンダーソン(pa1425)
♀ 20歳 英忍
g.とりあえずボール対策かな。
黒鳥由理(pa1427)
♂ 21歳 忍探
b.久し振りのアクション!楽しんで頑張るよ!
推裾スエソ(pa1498)
♀ 20歳 探魅
e.【PLD】容赦なくぶちかましてやんぜ!同乗歓迎するぜ、ナタクちゃん!
ブライアン・ビリンガム(pa1505)
♂ 26歳 乗機
c.こちらかな。よろしく。
タキ・バルツァ(pa1565)
♂ 23歳 忍機
e.ギア使って迷路の上から追いかけるか。
イーノク・オルティス(pa1600)
♂ 24歳 英機
f.悪いけど、君みたいなファック野郎と遊ぶつもりはないから。
ショコラ・ブラマンジェ(pa1623)
♀ 19歳 魅機
e.迷路を抜けて追いかけるお手伝いが出来ればな、と・・・。
推裾ソスエ(pa1632)
♀ 20歳 魅機
f.全力で攻撃させてもらう。
推嵩サスウ(pa1692)
♀ 21歳 英機
e.ルパンを追う方のナビゲート致します。力を合わせルパンを追い詰めましょう
エルミーネ・クロイゼル(pa1729)
♀ 22歳 英探
g.銃でボール対策に行くぞー。
暁靫凜音(pa1739)
♂ 22歳 弾探
a.【PLD】騎士という柄ではないがな。試してみよう。
煌宵蓮(pa2148)
♂ 24歳 刃機
a.全力で相手させてもらおう。俺の力を見せてやる!
陳晶晶(pa2267)
♂ 23歳 刃機
b.ハッ…シャラくせぇ
ソーニャ・グリンスカヤ(pa2282)
♀ 26歳 弾機
a.仮想現実ってなぁ良いもんだな。どんだけ壊してもイイんだろ?
ベリエス・デルラ(pa2296)
♀ 26歳 刃機
z.罠はいくつか残して頂ければ。騎士達を追い詰めるのに使えそうです
如月幾月(pa2311)
♀ 18歳 刃忍
 楽しもうじゃないか! なぁ、怪盗諸君?!
アルセーヌ・ルパン(pz0200)
♂ ?歳