【PF07】夢の地下砦

担当野間崎 天
タイプグランド 事件
舞台Celticflute
難度難しい
SLvC(紛争地域、島内)
オプ
出発2018/11/03
結果成功
MDPゲルト・ダール(pa0208)
準MDP鹿目淳一(pa0044)
桜葉千歳(pa0088)
ヴェロニカ・ラプシア(pa0222)
スティーヴ・カラサワ(pa0450)
アガーフィヤ・コスィフ(pa0970)
斑鳩恭耶(pa1232)
タリア・フエンテス(pa1415)
鈴鳴雪花(pa2285)

オープニング


 開幕前から一騒動あった一角祭は、確かな盛り上がりを見せ、無事に閉幕した。
 情操教育を進められたHALCO001も、一角祭の期間中に、現実での様々な生の経験を積むと同時に、学生達に仮想空間での様々な感動を与え、楽しんでいた。
 そう。HALCOは、一角祭の期間中ずっと学生達と共にあり続けた。誰にも盗まれなかった……あの伝説の怪盗ルパンが、予告どおりに奪えなかったのだ。
『一角祭にてHALCOを頂戴いたします』
 それを防いだのは、UNICOの学生たちだった。

登場キャラ

リプレイ

◆教授と作戦会議
「なんですかこのエロエロ系……」
 メイデイ――メレディス・メイナード――は状況報告を受けると、あまりの超展開にめまいを覚えた。
 ふらっとした彼を支えて、銀朱の幻影――ルシアン・グリフレット――は言う。
「秘蔵のドロイドだって? おい、実用化はよ」
「……ルシアン……あなたって人は……」
 死んだ魚のような目で兄弟同然の幼馴染を見るメイデイ。
 銀朱の幻影は支える手はさのままに、慌てて否定する。
「いやエロエロはいらん。犬をエロ扱いすんのはゆるさんぞ」
 なあ! と呼びかけた教授はどこ吹く風で口笛を吹いていた。
「……わかりました」
 なにを理解したのか、固い決意をしたメイデイを、今度は逆に銀朱の幻影が怪訝な目で見つめた。
 そして、もう一人、悩みを抱えた者が。
「白い褌……いや、まさかなぁ?」
「どうしたの?」
 斧箭槍剣が、その不動という怪盗名のごとき態勢で考え込んでいるところを、アルコバレーノことイルマ・アルバーニが肩を叩く。
「一枚少なくなってたような。いや、気のせいだな」
 アルコバレーノに気遣いの礼を言って離れていった槍剣。残されたアルコバレーノは思わず教授の方へ憐憫の目を向けた。
 その教授は、学生達に詰め寄られ、インタビュー攻めにあっていた。
「ったく、今年もやらかしましたね、あの『ピーッ』野郎が」
 天空院星……スターシーカーの発言の一部をメイデイがAiフォンから警告音を出して遮った。
 それでもスターシーカーは全く意に介さずにインタビューを進めた。
「エロドロイド軍団を停止させる方法はないんですか?」
「ハッキングを解除するか、物理的にとめるといいのだよー」
 当たり前のことを答えた教授に、スターシーカーは声を強める。
「そうではなく、何か特別な仕様はないんですか? 緊急停止装置とか」
「そんなのないのだよー。上位存在からの命令を受けるために電波は受信するから、ハッキング解除して命令を書き換えるのが一番なのだよー」
 教授の表情は読めぬが、嘘を言っている雰囲気ではない。
 スターシーカーは軽く咳払いすると、もう一つ質問した。
「HALCOに非常事態に備えた機能が付いてないですか? こちらも緊急停止装置とか、自爆装置とか」
「やっぱり強制停止スイッチなんてないのだよー。緊急停止させれるけど、こっちのコントロール下にないと無理なのだよ―。自爆装置はないのだよー」
 教授の態度は変わらない。それらの答えに、ひとまず納得したスターシーカー。彼女が一歩下がると、代わって教授に質問……協力を仰いだのはヴルぺスことヴェロニカ・ラプシア
 威圧的だったスターシーカーと打って変わり、教授にしなだれかかり、優しく問う。
「まず手始めに、盗まれた武器とその対抗策を教えてくれない?」
「もちろん、良いのだよー」
 上機嫌で教授は幾つものエロ装備について説明してくれた。もはやここに書き切れない程で、その全てを所持しているとは思えなかったが。
「M気質の人が打たれると奴隷のように従ってしまう鞭なんかは危ないわね」
 仕組みはよくわからないが、教授の作る超科学的な一品だ。油断できない。
「色香を武器にするプレシャス、男には任せて置けないわね」
 フェイスレスことリュディア・ラヴィオラも、更にプレシャスへの警戒を増した。
 ヴルぺスは更に教授へ協力を要請した。
「悪戯にも付き合って。プレシャスにリボンを『絡める』それが悪戯。教授なら、この意味わかるでしょ?」
「もちろんなのだよー」
 快く答えた教授。誘惑がうまくいったとほくそ笑むヴルぺス。
 だが、インタビューの締めに、スターシーカーが残した不穏な一言で約束は反故となった。
「わかりました。では、あとでルパン共々牢獄にぶち込みますので、悪戯の後はそれまで待っていてください」
「あ、ちょっと用事思い出したのだよー。ラボの方に行ってこないといけないのだよー」
 脱兎のごとく、教授は姿をくらましたのであった。
「……まあ、いいわ。このくらいで私達の作戦はゆるがないわよ」

「仲間であるルパンを助けに来るのは道理ですけれど」
「まあ当然ではあるけど」
 月下の蛍灯――フロウティア・モリスン――と、蒼雷の蜃気楼――エルミラ・ベルトラム―は、相手の行動に理解を示す。
 されど、蒼雷の蜃気楼は問いかける。
「複数の学生を昏睡状態にしたり、ドロイドをハッキングして下品な騒ぎを起こすのは、『怪盗のスマートな所業』なのかな?」
 答えは決まっている。
「私はそうは思わないな」
 それこそ、それぞれの怪盗が思い描く美学によるもの。起こした人物へ問いただすしかないだろう。
 なんにせよ。と、月下の蛍灯は視線を落とし、床の更に下の方へと思いを巡らす。
「昏睡している学生も同じ場所にいますし、HALCOも守らねばなりません」
 到達されないよう、力を尽くさんと。
「エルフ、俺達もHALCOに一番近い場所で守ろう」
「わかった」
 シグナ・ガントレットエルフ・プレシスの怪盗夫妻も、HALCOと学生達が昏睡している地下三階への階段の前を守ると決め、階下へと急ぐ。
「私も行くわ」
 そこにアルコバレーノもついていく。
「今回、彼らの目的はルパンとHALCOだもの。出来る限りのことはしておきたいわ」
「こっちも地下の2階だ。『グレーウォール大作戦』の時間だ!」
 美の騎士ことジェームズ・クレイトンも大人数を引き連れていった。
 一方で、すぐに駆け出さないでこの場に残り、作戦を煮詰める者達もいた。
「任務了解……」
「伝説の忍者……きっと捕らえてみせよう……伝説に、終止符を……」
「先祖伝来の因縁の対決、第2ラウンドの開始でゴザル」
 ヌルこと斑鳩恭耶と、夢売りの狂癒者ことラファエル・ケルル、サイバー忍者ことスティーヴ・カラサワ、がそれぞれ静かに気合を入れ直した。
「同じ侵入する人間として、ルートを絞り込むヨ!」
「自分が半蔵ならどうするか……」
 風魔玉響ことエラ・ウォーカーや、天翔ける紅き狼こと大神隼人が自らの達人的、超越的な隠密術を土台にし、半蔵の心中を推測する。
「変装や光学迷彩は当たり前としてこッちの内部情報から地理まで全部把握してると見てイイ」
 黒き剣こと石動詩朗も同じ見解だ。
「この施設の地図とセキュリティを含む設備表をくれ……半蔵がいかに凄まじい技と道具を持つ忍者でもスライムになれる訳じゃない、人の形をしている以上はルートも限定される」
 ヌルが要請すると、朽ち果てし聖櫃――シメオン・ダヤン――がちょろっと寄ってきて、事前にダウンロードしていた地図を提供した。
 地図を囲んで、普通であればどこを護るか。なら侵入のプロならどこからどう通るか。同じ怪盗や忍者として、攻撃側の視点で侵入経路を推測するのであった。
「こッちの穴を見つけるンだ…そこが必ず潜入路になる」

 そんな半蔵対策班達の予想を聞きつつ、怪盗クク――今井天――は、自らの対象について予想を立てる。
 ボガートも潜入技術は相当のものを持っている。半蔵ほどではないとしても、学生選手権のトラップ迷路を簡単にクリアしてみせたのだから。
 だが、いや、だからこそ――
「おそらく、こうくるはずだ。皆、協力してくれ」
 怪盗ククは、同じくボガートを相手取るつもりの学生達に声をかけて、急いで地上階へと向かった。
「ボガートさんには、以前怪盗選手権でお酒を飲まれたんでしたね。あの時は、お世話になりました。でも、先に行かせるわけにはいきません」
 リンドウ――タリア・フエンテス――も怪盗ククと共に走る。あのとき、少しだけだが、ボガートのことが理解できたから。
「危なくなったら後退してね、私が後方にいる限り怪我の心配はいらないわ」
 今回のオペレーターと救護を担当するエデン――鈴鳴雪花――が先頭を切って走っていく学生達の背中へ声をかけた。
 その影で、こそこそと話し合う二人の姿があった。
「――というわけで、そのためには通信させないのが大事だ。冴香さん、お願いするよ」
「面白そうですね。もちろん、お手伝いしますよ」
 ゲルト・ダール……ウートガルザ・ロキが耳打ちすると、中藤冴香……錦屋鏡月が微笑んだ。

 学生達の作戦は、伝説の怪盗一味に対して効果があるのか。
 短い序章をはさみ、こうして、戦いの幕が上がった。

◆「抜け」
 怪盗だから、影から侵入する。そういう思い込みをしていないだろうか。
 どこであれ、自分が警備を破れる場所であれば、良いのだ。
 それがたとえ、正面であろうとも、
 地上階の正面入り口から堂々と、ボガートは施設へと足を踏み入れた。
 普段なんでもない場所に見せかける為に、表で護る者のいない扉から中に入るのは簡単だ。鍵は開放されているのだから。
「電源は復旧しているはずなんだがな」
 薄暗い廊下に、ボガートは一人ごちた。
 これから進むべき道は、当然把握している。隠された地下への階段の場所も、廊下奥にある用具室の跳び箱の下だとわかっている。
 そして、建物の中には警備している者もいることも、当然。
 だから、廊下の真ん中に立ちふさがる人影に、妙な納得を覚えた。と同時に、騒いで仲間を呼ぶこともせず、すぐに攻撃してくることもしない拳銃貴族――ドゥエイン・ハイアット――に違和感ももった。
 腰のホルスターには、大口径のリボルバー拳銃を差している。攻撃手段を持っていないわけでもない。
 だが、拳銃の代わりに手で遊んでいる物はコイン。
(ガキどもの玩具に、コイン型の煙幕もあるんだったか?)
 煙幕を張っての奇襲かと警戒したボガートへ、拳銃貴族は、口の端を上げて一言。
「抜け」
 それだけで分かるだろ? とばかりの言葉に、ボガートも構えていた銃を逆にホルスターへと戻し、ニヤリ。
 拳銃使い同士、通じるものがあったのか。あるいは、勝負を受けても大丈夫という余裕がボガートにあるということなのか。
 空気が張り詰める中、拳銃貴族の指からコインが弾かれた。
 コインがゆっくりと頂点を越え、加速しながら落ちてくる。
 ボガートがその軌道を視界に入れ、落ちるタイミングに集中する。
 回転しながら落ちてきたコインが、床に跳ねた瞬間! けたたましいキッチンタイマーの音が鳴り響き、ほぼ同時に爆音が鳴り響いた。
 そして、拳銃貴族とボガートの二人共の体がゆらぎ、両者、踏みとどまった。
「いてて、下手な小細工を使いやがって」
 ラバー弾が命中した脇腹をさすりながら、ボガートが拳銃貴族をねぎらう。
(やはり、策を講じて互角か)
 コインの落下のタイミングとキッチンタイマーの時間を合わせ、わずかでもボガートの集中を削げればと勝機があると考えた拳銃貴族であったが、それでも互角。勝ち切ることはできなかった。
 防弾衣やクロウのマント、防弾ネクタイと、防備を固めていたおかげで即戦闘不能という事態は回避できたが、ここからは策なしでガチンコだ。
 拳銃貴族が再び銃を向けたとき、ボガートが構えていたのは、ショットガン。
「こだわりもわかるし、もうちょっと遊んでやりたいところだが、拳銃じゃきかねえみたいだからな」
 拳銃貴族がわずかに先に撃ち込むが、ボガートが撃ち返したスラッグ弾が拳銃貴族を吹き飛ばした。

「まあ、こんなところだな」
 ボガートは、弾を撃ち尽くしたショットガンをその場で投げ捨て、倒れた拳銃貴族の脇を通り抜けようとした。
 すると、廊下の奥が爆発し、廊下へと瓦礫がなだれ込んだ。更に、壁に開いた穴からドローンと鴉、狼が飛び出し、ボガートへとへと突っ込んで来た。
 ボガートがサブマシンガンを構えると、冷静にまっすぐ飛び込んでくるドローンと鴉を三点バーストで次々撃ち落とす。流れるように狼へと銃口を向けた。ジグザグに跳ねる狼の動きに完璧に合わせていたが、その銃口を少し上げて弾幕を張った。
 狼を飛び越え、その先の壁と床に一直線に穴を開けただけに思われたその弾丸は、その奥にある穴や扉から飛び出そうとしていた怪盗ククと、怪盗ナベリウスことレイモンド・レスター、リンドウの脚を止める弾幕であった。
 学生達の脚が止まったのを確かめると即座に狼――怪盗ククの愛狼ゼクス――へ狙いを定め直し、撃とうとしたその時。
 サブマシンガンを逆に撃ち抜き、弾の発射を止めたのは、一本の矢であった。
「弾丸飛び交う戦場に矢とはな」
 撃てなくなった銃で飛びかかってきた狼を殴り飛ばし、しびれた手を軽く振りながら、ボガートがなかば感心するようにつぶやいた。
 銃の機関部分の破壊を成功させたのは、桜葉千歳。弓の名手、怪盗紅月だった。
 穴の影からの曲射は、まさに弓ならではのもの。銃全盛期にわざわざ弓を使おうとする者がいるとは考えていなかったボガートの不意をつけた。
 だが、2射目以降、来ると分かれば、なんとか避けられる。弾より遅い矢が、更に速度を落としているのだから。と油断したボガートが突然の脚の痛みにガクッと膝をついた。
(羨ましいなぁ、僕は絶対あぁは成長出来ないからなぁ)
 身長的な意味で。そんな寂しい想いはマティアス・リブラン、春風の狂詩曲のもの。
 だからと別に嫉妬的な意味があったわけではないだろうが、瓦礫の影に身を潜ませた春風の狂詩曲は、ボガートの脚を狙って膝を付かせることに成功した。
 目線が同じくらいになったボガートに、春風の狂詩曲は銃の引き金を再度引いた。
 だが、そこから弾丸は発射されず、されど、ボガートの四肢へダメージを重ねる。
(ここまでは狙いどおりかな)
 効いている様子に、春風の狂詩曲は、超音波ガンで更に追撃するべく構える。が、目ざとく彼のことを見つけたボガートが、取り出したのは、ライフル。
 殺気を感じた春風の狂詩曲が咄嗟に瓦礫のバリケードに頭を引っ込めるが、ボガートの弾丸は瓦礫を突き破って春風の狂詩曲の肩を打ち抜いた。
(通させはしない。通させても勢いを削ぎたい)
 銃を落とした春風の狂詩曲の合図で怪盗ナベリウスは配下へ連絡。瞬間、建物が、世界が揺れた。
「おお、こりゃあ、大丈夫か? 派手にやってるみたいだが、崩れないか?」
 ボガートが建物倒壊の心配をした。
 だが、学生達はこの程度では崩れないように発破をかけている。揺れをむしろチャンスと見て、怪盗ククと怪盗ナベリウス、リンドウはボガートへと突撃した。
 攻勢を緩めない学生達へ、ボガートは懐から取り出した2丁の拳銃を連射した。
 ボガートを追い込む為に、別室にセットしていた超科学地震発生装置を起動して発生させた地震。だったのだが、震度3程度の揺れを意に返さず、ボガートは確実に学生達へ命中させていた。
 されど、撃たれるのは覚悟の上だ。
 防弾衣を貫通してできた銃創から血を流しながらもリンドウは動きを鈍らせずに駆け寄る。
「世代交代の時間だ!」
 怪盗ククの拳がボガートのみぞおちを捉えるが、それでもボガートは耐えた。レッグギアを撃ち抜かれ、途中で倒れた怪盗ナベリウスも肩から単分子ワイヤを伸ばしてボガートの腕に巻き付け、抑えるが、ボガートの上着の袖からこぼれた物を見てぎょっとした。
 床に落ちた跳ねたのは、手榴弾。
 弾けて閃光が周囲を強烈に照らし、怪盗ククと怪盗ナベリウスの目を焼くが、うまく目をかばったリンドウは逆にうまく近づいて懐に潜り込んだ。
 そこからの寸勁がボガートの身体を「く」の字に折る。苦しむボガートへ更に掴みかかり、投げ飛ばそうとするが、そこはうまく払われた。
 至近距離からの銃弾が腹部を貫通し、今度こそ、リンドウも床に倒れた。
 怪盗紅月も、パラライズアローやファイアアローを射て、ボガートへと抵抗する。
「私にも弓のプロとしての吟味がありますから、簡単にやられる気はありませんからね」
 しかし、粘りも叶わず、ボガートの接近を許すと、怪盗紅月は和弓を捨てた。
 一瞬虚を突かれたボガートの顔面を狙った千歳のパンチは、ボガートが大げさに飛び退ってかわした。
 冷や汗を拭ってボガートは文句をつけた。
「弓のプロとしての吟味はどうした!? しかも結構良いパンチ放ちやがって」
「そんなの近づかれたぽ~いしちゃいますよ」
 しかし、やはり不意をついた最初の一発が最後の一発となった。
 その場の学生達は倒れたまま、ボガートの声を拾った。
「ちょっと、いや、かなり驚かされたが、この程度の浅知恵じゃ、腕1000本には足りねえな」
 本音では、時間を大分とられ、体力も弾薬もかなり削られたことを悔しく思いながらも、それをおくびにも出さず、地下への階段のある部屋の扉を迷わずに開けた。

「……おっと、まだこの階に人が残ってるとは思わなかったな」
 ボガートは、本気で驚いたように、声を上げた。
 隠し階段のある棚の前で両手を広げて待っていたのは、王玲瓏。いや、ミニスカくノ一と化した彼は――
「僕は羅刹……ここを通りたければ僕を撃ち抜いてごらん」
「言われなくとも」
 すぐに2丁拳銃を抜いたボガートが、発砲。
 それを羅刹が銃弾を手で……金のブレスレットをしたアームギアで受け流しながら避けた。
 左右交互に撃たれる弾丸を極限の集中力の中で右に左に避ける羅刹。
「もっと本気を出しなよ、僕は見ての通りネコだからさ……ウケてあげるよ?」
 殺しの技を守る技に昇華させて羅刹の本気は、ボガートにすら手を焼かせた。
 だが、弾切れ狙い。守るだけで勝てると思うのは、あまりにも考えが浅かった。
「なかなか面白い嬢ちゃんだったが、これ以上遊んでいる暇はねえんでな」
 拳銃を片方、一瞬だけ手放し、代わりに掴んで放り投げたのは手榴弾。
 廊下での攻防でも使われた閃光弾が用具室を光で塗りつぶす。羅刹は光から目をかばうことはできたが、光が止んだとき、もうボガートは地下への階段を降りてしまっていた。

◆電子の戦い
 地下1階のモニタールームには、電脳戦士達が集結していた。
「やられっぱなしで終われるものか! 神意は我にあり!」
 モニタールームにこだましかねない大声で宣言したのは、エヴァ・マルタン。怪盗名プロヴィデンス。
 トランクに収まったPCでハッキングの準備を整えながら、仲間に声をかけた。
「首尾はどうだ!?」
「これは、少しかかるかもしれない」
 モニタールームのマシン達を目にも止まらぬ速さで弄っているのは、もはやUNICOでも見慣れた鹿……サイバーディアー、鹿目淳一だ。
 プレシャスのハッキングのためか、うんともすんとも言わないマシン達を、ハード面からでもなんとかするべく、彼は手を施していた。
「ここどうするです?」
「思いっきりやってよ」
 朽ち果てし聖櫃もお手伝い。ちょこちょこと配線を切ったり繋げたりしていた。
「むーたもお手伝い出来るです」
「猫の手も借りたいところだけど、ネズミの手で手伝えるのかな?」
 朽ち果てし聖櫃の相棒、ハツカネズミ型ドロイドのむーたもちょろちょろ。
 クラッキングの支度をしている間に、
「映像も見られませんか?」
 錦屋鏡月が敵の映像を見られないか尋ねるも、サイバーディアーは否定した。
「今のままじゃ、起動しても何もできない」
 モニタールームにあるマシンもモニターも、今のままでは命令を聞かないただの箱という状態だ。
 錦屋鏡月が桜葉杏花……黒闇中のセイレーンの方を見れば、彼女は彼女で、自分のノートPCで激しく目と指を動かしていた。
 黒闇中のセイレーンは、一足先に、プレシャスのデバイスへと攻撃を仕掛けていたのだ。
 プレシャスへ攻撃を仕掛けることによって、相手を防御に回らせることで、こちらのセキュリティの回復も早まる。
 それが、回り回って姉の手助けになる。そう信じて。
 今のところはまだ、プレシャス側へ侵入できる気配もなく、しっかり防がれているが、その間にもセキュリティ回復の作業は順調に進んでいるようだ。
 集中している黒闇中のセイレーンに代わり、蒼雷の蜃気楼が錦屋鏡月を呼び、自分のノートPCにお望みの映像を集めて表示した。
「残されている映像は、少ないですけど」
「十分よ。ありがとう」
 錦屋鏡月は礼を言うと、急いでモニタールームを後にした。

「良し。これでもう大丈夫だ」
「僕もがんばったのです」
 電源を入れ直し、再起動したマシンを前に、サイバーディアーと朽ち果てし聖櫃が満足気にうなずいた。
 更に、プロヴィデンスのクラックドングルをセット。
「行こう、僕達の正義を示す為に」
 サイバーディアーの言葉を合図に、怪盗達はそれぞれのPCにコマンドを打ち込み、反撃の狼煙を上げた。

◆オペレーション
 地下一階の空き教室。仕掛けも何もなく、ルパン一味も通らないだろう場所に、今回の司令部兼救護所が設置されていた。
「ああは言ったけど、これはちょっと手が足りないかもしれないわね」
 ここを取りまとめるエデンが、はやる気持ちを落ち着けるように、大きく息を吐いた。
 最初の停電の時に、エロドロイドにヤラれた者達は、怪我と言っても基本的には軽い打ち身くらいで、どちらかと言えば気持ちの問題で、メンタルケアが必要な感じであった。
 けれども、ボガート戦で負傷した者達が順番に運ばれて来ると、今度は一人ひとりが重傷である。
 エデンは一人ひとり迅速に診察して、銃創の止血や打撲痕への対処などに一人で追われることになった。
 普段の作戦であれば、もう少し救護に回る人も多い。
 だが今回、伝説の怪盗が相手ということで、裏方に人員を回す余裕がほとんどなかったのだ。
(これだけ連携しても倒せないなんて……)
 しかも、相手は一人だったという。
 対ルパン一味。前途多難である。

◆ここが地獄の――
 地上階で早くも激しく学生達とやりあったボガート。
 地下に入ればさぞかし抵抗が激しくなるのだろうと思っていたが、階段を降りた先の娯楽室も、廊下も、地下2階への階段が隠された厨房にも誰も配置されていなかった。
 廊下は一見、瓦礫で塞がれているようでもあったが、怪我人を通すためか、微妙に空けられた隙間を通り抜けることができた。
「抵抗はあれで終わりか?」
 思ってもないことを口にしながら、厨房の隅の木箱をどかし、隠し階段を下りようとしたボガート。
 だがしかし、脚を滑らせてしまい、戦闘のダメージで踏ん張って立て直すこともできなかった。
「油か? 古典的すぎて気付けなかったぞ」
 階段を滑り落ちてきたボガートが、尻をさすりながら立ち上がると、その部屋には先客がいた。
 サングラスをかけた、胡散臭い男だった。
「そこ行く人、ちょっと待ってくれ。俺の話を聞いてくれ」
 ボガートは当然無視して先を急ごうと思ったが、そこで気がついた。
 この部屋、出口がないのである。
 いや、正確には、今降りてきた階段がある。ボガートが今しがた滑り落ちてきた通り、登るのは難しいのだけれど、怪盗たるもの不可能ではないが、そちらから戻ってもしょうがない。
 ボガートは、扉があるはずの場所を窺えば、瓦礫で埋まっていた。
「ここまでやるか?」
「短時間で扉を壁にするには、これが一番でな」
 だが……と、胡散臭い男――美の騎士――はトーンを落として言う。
「俺も、出られなくなった」
「退路を断ったのなら、覚悟を決めるしかないな」
 ボガートが呆れたように言う。
 爆破する前に嫌な予感はしたんだ。と、美の騎士は言うが、学生側はそれでも実は問題ない。
 特に、隠密に特化した半蔵ならまだしも、正面突破中のボガートだ。ここに閉じ込められたのなら、十分であり、学生側の勝利と言っても良い。
「そういや、一階で弓の嬢ちゃんや不思議な銃の奴が隠れていた瓦礫を用意したのも、おまえか?」
 思い出したように言うボガートへ美の騎士はニヤリとした。
 実際は、地上階で瓦礫のバリケードを築いたのは春風の狂詩曲の仕業であったのだが、ハッタリは重要だ。
 ボガートはおもむろに一本取り出し、ゆっくりとそれを吸った。そして、吸い終わると、美の騎士にちょっとどくように言う。
「そこだとまだ危ないぞ」
「危ない?」
 素直に部屋の隅へと移動する美の騎士。
「何するんだ?」
「こうするんだよ」
 言っていくつかの部品らしき物を取り出し、またたく間に組み上げたのは、ロケットランチャー。
「流石にここが通れねえと、後の連中が詰まるんでな。一発きりのとっておきだ」
 瓦礫を一発で吹き飛ばすと、呆然とする美の騎士を置いて、ボガートは先を急いだ。

◆エロエロなのだよー
「教授の悪趣味が透けて見えます」
 地下2階の迷路の中、部屋の一つへ入ったアガーフィヤ・コスィフと入れ違いに女学生が逃げ出していった。その女学生の服がズタズタに切り裂かれていたのを見て、アガーフィヤは気怠げにため息を吐き、共に入室したソードダンサー――厳島火練――がミニスカセクシーメイド衣装で色気を振りまいた。
 振りまいた相手は、部屋の中を飛び交う数十匹のカマキリ達と地を這う大ミミズ。
 十分はずかしめた獲物に代えて、新鮮で艶めかしい獲物へと襲いかかる。
 だが、実際に餌食になるのはどちらなのか、ドロイド達はまだ知らなかった。
「お掃除させて頂きます」
「本来は同胞となるはずだったドロイド達です。せめて、我々の手で送りましょう」
 隻腕のメイド服にカマキリの鎌が届く前に、アガーフィヤが変身! アヴローラの姿になると、ロシア製のアサルトライフルをフルオートで撃ちまくる。
 カマキリ達が空中で塵と化す中、大ミミズが近づくが、触れる直前にアヴローラの足が地面から離れた。
 靴に内蔵されたロケットで、空中へと逃れたのだ。
 そうして、ミミズに気を取られることなく、カマキリ達へアバカンを集中して撃ちまくる。
 床上でうねるミミズはソードダンサーが斬馬刀を振り回して両断していく。
 もっとも、両断されたぐらいでミミズの動きは止まらず、半分程の長さになってもなおまとわりつこうとして迫る。
「これはクモカマ様のお仕込みがよろしいご様子……私がお相手致しますので存分にむしゃぶりついてくださいませ」
 虫の生命力まで再現されていること――あるいは、エロへの執着心かもしれないが――に感心するソードダンサー。ビチビチうねり跳ねるミミズの半身を切り飛ばすが、その間に、残る半身の方に脚へ巻き付かれた。
 生足に粘着質な物が這い、ぬめる感触に背筋がゾッとする。すぐに感覚を遮断したが、不快感はまだそこにあるかのように思えてしまう。
 雑念を振り払うように斬馬刀を手放し、高周波ナイフに持ち替え、ミミズが生身の所まで上がって来る前に突き刺して、動きを止めた。
 そのまま、鰻を開くようにナイフを走らせ、縦断すると、ミミズは力なく床へと落ちた。
「お掃除完了にございます」
 何事もなかったように、澄まして任務完了を告げるソードダンサーの傍に、アヴローラも降りてきた。
「もっと天井が高ければ、これも落としたかったところですが」
 アヴローラは使わずに済んだ手榴弾を懐にしまった。
 カマキリの群れもすっかり片付き、この部屋の解放は叶ったようである。
 先程の女学生も安全な場所にうまく逃げられていればよいのだが。
「では、次の場所に参りましょう」

 銀朱の幻影と暁色のフェザー――羽乃森晴――は、その部屋に入る前から、何か運命を感じていた。
 1、2の3で扉を開けて部屋になだれ込んだとき、その直感が正しかったことを確かめると、銀朱の幻影はすぐさま行動に移した。
「とってこーい」
 部屋の奥へとボールを投げ入れると広い部屋の中にいた2匹のオトモシバイヌー達は目の色を変えて追いかけていった。
 山岳部のマスコット、ヒヨコのポジート柄のボールは良く跳ね、オトモシバイヌー達は我先にとはしゃいで取ろうとする。
 なんか、気がつけば忍犬のセガタと黒柴犬のイッヌも混じっていたが、まあ、良いだろう。
「ドロイドでも基本は犬なんだな」
 予想通りの展開に、銀朱の幻影は心中でグッと拳を握る。これなら、狙い通りの展開にできそうだ。
 そんなオトモシバイヌー達の様子を暁色のフェザーも複雑な想いで眺めていた。
 オトモシバイヌーは確かにかわいい。かわいい、が。
(シバイヌ、の名を持つモノが不埒なことをしてはいけない)
 柴犬を愛するものとして、暁色のフェザーも覚悟を決めた。
「行くぞ、ゴンスケ!」
「わおーん!」
 お供の柴犬、赤いスカーフの似合うゴンスケと共に、オトモシバイヌーへと立ち向かう。
 ボールにじゃれていたオトモシバイヌーが、ゴンスケの声に気づき、我に返って学生達へと向き合う。
 だが、人を見れば抱きつき、体中を舐め回すはずのオトモシバイヌーも、ゴンスケに追われると逃げ出した。
 ゴンスケが端に追い込んだところで、暁色のフェザーがファントムワイヤを伸ばして捕らえた。
 そこから引き寄せようとワイヤーを巻き戻した暁色のフェザーであったが、なんと、その勢いを利用してオトモシバイヌーが全力で飛び込んできたのだ。
 見た目は愛しい柴犬。一瞬見とれた暁色のフェザーは、急ぎバールのような物を握りしめると、飛び込んできたオトモシバイヌーへとカウンター気味にバールを振り下ろした。
(弱点は、そこだ)
 斜め45度の袈裟斬りで打ち抜いたのは首元。頭部に収納されたCPUからの命令を全身へと送るための回路が破壊されたオトモシバイヌーは、舌をペロッと出したまま沈黙したのであった。
「わおーーーん」
 ゴンスケが床に転がったオトモシバイヌーの上に乗り、勝利の雄叫びを上げた。
 もう一匹は、ルシアンに抱きついていた。そのまま顔をなめ尽くそうと舌を出すが、そこはルシアンが一枚上手だった。
「俺は、オトモシバイヌーのヒエラルキーの頂点、群れのボスを目指すぜ」
 舐められる前にひたすら顔をモフる。時に激しく! 時に優しく! ワシャワシャと強くしたり、サラサラきれいに梳かしたり。
 愛犬達との実戦で身につけた技術を持って、オトモシバイヌーにどちらが上か、分からせたのだ。
 ――まあ、とはいえ、生物のようであくまで機械なので、プログラミングされた通り、舐めようとするのは止まらなかったため、こちらも暁色のフェザーが壊すことになったのであったが。
「くそう、おい、実用化はよ! エロエロはなしで、実用化はよ!」
 叫ぶルシアンの希望通りに、実用化される日が来るのかは、今後の教授のきまぐれにかかっていた。

 また、別室では、不動がミミズに絡まれていた。
 油断したつもりはないが、服がズタボロになっていた女学生に巻き付いていた大ミミズを無理やり剥がすと、そのミミズに自分が捕まってしまったのだ。
 艶かしく絡んでくるミミズ。ぬめぬめした体表までしっかりと再現されていることに教授のこだわりと技術を再認識しつつ、不動はその感触をむしろ楽しむ。
(エロはご褒美だ)
 締め付け具合もきつくなく、なんなら心地良ささえ感じる槍剣は、惜しみながらもミミズを一刀両断にし、引き剥がした。
「奪われたドロイドが教授の発明品であったことは不幸中の幸いでしたね」
 黒薔薇こと久良雲修平も、アスリート義足に組み合わせたレイピアでミミズを切り刻んだ。
 なおも、おかわりとばかりにどんどん通気口から新手が湧いて来ていたが、床に落ちるそばから、黒薔薇は容赦なく仕留めていった。
「僕たちを壊してくることはないようですし、何よりアレは遠慮なく壊せます」
 襲われた女学生には刺激が強かったのか、気絶してしまっているようだが、ある程度エロを受け入れる気があれば、危険は一切ないと言えた。
「何にも考えず暴れられるのも久々な気がすんな、存分にやるぜ!」
 ミミズに続いて通気口から飛び込んで来たカマキリ達に、打刀で応戦する不動。
 たまに服を切り裂かれながらも、一匹ずつカマキリを切り落としていく。だが。
「流石に数が多いですね」
 部屋中に溢れ出たドロイド達に黒薔薇が言う。
「張り切っていっぱい作ったのだよー」
 ついでに、スターシーカーの監禁を恐れて逃げたはずの教授も湧いた。どこからどうやって来たのかは、突っ込むだけ無駄だろう。ある意味、ルパン一味よりも神出鬼没なお方だ。
 その教授の襟首を不動が掴んだ。
 教授は冷や汗をかきながら、恐る恐る尋ねる。
「な、なにするのだよ―?」
「こうすんだよ」
 そう言い、不動は教授をドロイドの群れの中へと放り込んだ。
「おら、お前らのご主人が来たぞ」
「あーッ! なのだよー」
 そこに、部屋の扉を開けて急ぎ駆け込んできたメイデイが慌ててコインを放り込んだ。
 そのコインが爆発し、煙幕が教授とドロイドを覆う。
「……これで、デッドラインは守られました」
 満足そうな様子でAiフォンを取り出すと、現況を他の学生へと伝え、気絶していた女学生を回収して戻っていった。
 なお、教授は煙幕が晴れると姿を消しており、残ったドロイド達はソードダンサーとアヴローラ、柴犬の主人達も駆けつけると、いそいそと通気口の中へと引き上げて行ったのであった。

◆女達の戦い
 プレシャスが地下2階の通気口から降り立った部屋は、何やらいかがわしい雰囲気を醸し出していた。
 ピンクを基調にしながら質の良さで品を保つ、ベッドを始めとした調度品の数々。
 その部屋の主は、プレシャスに向けていた銃を下ろすと、彼女へ笑いかけた。
「お初にお目にかかるわ……私は甘き死、ココロを奪う事を美学とする女よ」
 甘き死――アルカ・アルジェント――は、下ろした銃を床に放り捨てると、プレシャスへと提案した。
「貴女と一騎討ちがシタいの。貴女が彼の女でも部下でもないなら、挑戦を受けないほどの強制力はルパンにはないでしょ?」
「……良いわ。相手してあげるわ、子猫ちゃん」
 余裕たっぷりに見せて、プレシャスもデバイスを外して、甘き死をベッドへと誘う――
 その様子を、調度品の影で窺っていたヴルぺス――ヴェロニカ――が、歯噛みしていた。
 この瞬間だけとはいえ、恋人である甘き死の寵愛を受け、熱く燃え上がるであろうプレシャスに嫉妬して。
 甘き死とプレシャスが抱き合い、口づけを交わし、互いに絡み合いながらベッドに倒れ込み、数秒の後……甘き死がプレシャスを突き飛ばした。
 突き飛ばされたプレシャスは、ベッドから転がり落ちるが、華麗に受け身を取り、勢いのまま立ち上がった。
 逆に、突き飛ばした方の甘き死は全く余裕をなくした様子で、シーツを体に巻いて、ベッドの隅へと後ずさる。
 顔を真っ赤にしてあわあわしている甘き死の異変に、ヴルぺスが飛び出した。
「あら、もう一匹子猫ちゃんが隠れていたのね」
「彼女に、何をしたの?」
 ヴルぺスが左手にリボンを鞭のようにして持ち、右手の懐中電灯に擬装していた暗器の短刀を向けてプレシャスへ問う。が、プレシャスは余裕綽々で種明かしをした。
「KKK謹製の『服用者はめちゃくちゃ奥手になってしまう薬』を飲んでもらったのよ」
「KKK謹製の『服用者はめちゃくちゃ奥手になってしまう薬』……!?」
 ヴルぺスは、教授を誘惑して教えてもらった装備の数々を思い出す。が、そのような物はなかったはずだ。
 口に出して問い詰めれば、プレシャスはあっけらかんと言う。
「そうね。勝手に持ち出した物だもの、彼は知らないかもね」
 ドロイド達をハッキングしたときだろうか? とにかく、KKK製であるのなら、後遺症等の心配はないだろう。多分。
 ヴルぺスは、知りたいことを知ると、彼女の敵討ちも兼ねて、伝説の紅一点を捕らえるべく、動き出す。
 迂闊に近寄り過ぎないように、リボンの鞭――暗殺者のリボン――で絡め取ろうと狙うが、軽やかに動くプレシャスを捉えるには至らない。
 プレシャスがナイフを取り出して反撃するも、こちらもパワーレッグによって強化されたヴルぺスが華麗なステップで避けた。
 膠着状態に陥るかと思った矢先に、ヴルぺスが奥の手を使用した。
 リボンからナイフに持ち替えると、早速投擲。
 プレシャスはそれを紙一重で交わして一気に接近を図る。いや、図ろうとしたところで脚が止まった。
 彼女の左脚に走る一筋の切り傷。それは、ヴルぺスがナイフと同時に射出した、懐中電灯短刀の刀身。
 倒れたプレシャスに、ヴルぺスが近寄り、リボンで拘束しようとしてしゃがんだ……その時、プレシャスがヴルぺスへと絡み、抱きつき、唇に唇を押し付けた。
 ヴルぺスが気付いたときには手遅れ。彼女もプレシャスを突き飛ばすと、部屋の隅へと後ずさってしまう。
「色仕掛けは無数の駆け引きがあるのよ。引っ掛け、虜にしたと思った相手が、実は最初から引っかかったフリをして、夜な夜な刃を研いでいることもある……大胆さは及第点だから、慎重さも磨くといいわよ」
 左足の傷をかばいながら立ち上がったプレシャスは、この部屋の扉を開いて出ていった。

(そうきますか)
 この勝負の行方を、離れた場所で聞いていた助手三世――小林三代(pa0527)――は、プレシャスの思惑を読もうとした。
 勝負よりも実を取るタイプ。
 夜伽やナンパも得意ではあるが、好きなわけではない。必要・有効な場面でまさに『女の武器』として使う。
 まともに勝負を受けるとしたら、受けざるを得ない状況にされてしまったときだろう。
 相手に自分が思い通りになっていると思わせて、手のひらの上で踊らせる。
 謎多き女の謎が少し解けた。これで変装もうまくいくかもしれない。
「わたしの……プレシャスの思考では、次に進むのはあそこでしょう。急ぎます」

 プレシャスが別の小部屋からまた通気口を通って移動し、また経由する部屋の通気口の蓋を開けて覗き込もうとした。
 その瞬間を、フェイスレスは狙っていた。
「あら。こちらのお嬢さんは物騒ね」
 プレシャスの顔の横数センチのところをレーザーが通過し、空気が焦げた匂いがプレシャスの鼻をついた。
 胸元から取り出した拳銃で撃ち返し作った隙で通気口から部屋の中を覗いて観察。
 そこは、元々は会議室のような折りたたみテーブルとパイプ椅子が並べられた広めの部屋であったはず。
 だが、今はテーブルや椅子は部屋の隅に集められ、フェイスレスの弾除けに使われていた。逆に、プレシャスが身を隠す場所がなく、飛び出たら狙い撃ちにされるだろう。
 しっかりとフェイスレスが自分の間合いで戦えるようにあつらえた戦場。
 他の部屋まで通気口を伝って行くことはできる。だが、ここよりは遠回りさせられる。
 これ以上時間をかけると、そろそろ危ないかもしれない。
 そう判断したプレシャスは、デバイスを操作し、少し待った。

 フェイスレスは、銃口を通気口に合わせたまま、じっくりと構えていた。
 少しでもプレシャスが姿を見せたら、撃ち抜くつもりであった。
 だから、通気口から影が飛び出したとき、ためらいなく撃った。
 撃たれたものは、片腕が吹っ飛んで、床へと落ちる。
 そして、撃たれたものと、同じ物達が、次々と通気口から溢れ出してきた。
 そう、ドロイドのカマキリ達である。
「邪魔をしないで」
 レーザーガンでドロイド達を一匹ずつ確実に撃ち抜いていくフェイスレス。だが、数の多いドロイド達に気を取られている間に、プレシャスも部屋に降り立った。
 フェイスレスも、照準をプレシャスに合わせるが、目の前にカマキリが迫れば、そちらを先に落とさざるを得ない。
 その間にも、プレシャスは部屋の入り口の一つに向かって走る。と、その扉が先に開いた。
 開いた扉から入り、援軍に現れたのは――プレシャス!?
 もう一人、プレシャスがこの場に現れたのだ。
 突然の事態に場が混乱するかと思われたが、特になんてこともなく、戦いは続けられた。
「私の前に私が現れても、偽物に決まってるわよね。相手している子達のこと考えれば、誰かのコスプレだなんてすぐにわかるわよ」
「そう。一瞬の隙もないっていうのね」
 偽プレシャス……助手三世が見破られても演技を続行し、本物へと挑む。
 だが、掴みかかる前に両足を撃たれて床に倒れた。本物、容赦ない。
 助手三世は、それでも腕を伸ばすが、その手は本物には届かない。
「女はきまぐれなのよ、お嬢ちゃん。私の心を読もうったってダメ。私がどんな気まぐれを起こすかなんて、私自身にもわからないんだもの」
「待って! 通さないわよ」
 フェイスレスが叫ぶ。アームを射出して伸ばした手は、プレシャスのスーツにかするが、弾かれた。
 プレシャスはひらひらと手を振って、扉から堂々と出ていった。

◆テリトリー
 電子の戦いは続いていた。
 プレシャスと仲間が戦っている隙をつければ。そういう思惑は、なかば成功していた。だが、それでもなお抵抗は強い。
「……とにかく、守らなきゃね」
 蒼雷の蜃気楼がモニターの中を流れていく画面を必死に目で追いながら、突破口を見つけようと試みる。少しでも、仲間の役に立つために。仲間を守るために。
「僕まで負けられないよ」
 黒闇中のセイレーンも、早くも奥の手を使ってプレシャスへ挑む。
 ノートPCで今まで通りプレシャスへ攻撃し、眼鏡型の端末で、セキュリティ奪還の為のソフトを何重にも動かす。
 姉の方は、ボガートと奮戦したものの、残念な結果になってしまったようだが、こうなったら姉の分までがんばるしかない。
「伝説の怪盗達が相手だって勝ってみせるよ。だって、僕らの超科学は世界一だからね」
 その科学力は、電子の世界でも、物理の世界でも用意していた。最悪、ルパン一味がモニタールームで作業する人を直接狙ってくることもあるかと警戒して、逃走用の道具も用意していたが、それらの出番はないようだ。
「むーたも、周りにルパン一味はいないって」
 むーたが部屋の周囲を警戒してくれているが、ルパン一味の影も形もない。
「おまえの相棒は頼りになるな」
 サイバーディアーの言葉に、朽ち果てし聖櫃は「そうなのです」と、強く頷いた。
「むーたは頼りになる、相棒です。むーたは道具じゃないです。ハルも仲間で、友達です」
「ああ、友達をみすみす拐わせるわけにはいかない!」
 朽ち果てし聖櫃の言葉に、プロヴィデンスが同意する。
「負けられない……なんとしても届かせる!」
 キーを叩く手にもより力がこもる。
 サイバーディアーも負けじとキーを叩いて追い打ちをかける。
「相手さんは遠隔だと僅かに不利な程度だけど、その僅かな差が決定的に致命的だという事を教えてあげよう!」
 マシンに直接回線を繋いだ学生達と、デバイスから無線で対応しているプレシャス。無線の方がわずかにラグが大きいというサイバーディアーの主張は、通るのか。
「環境を活かせ! ここは我らのテリトリーだ!」
 プロヴィデンスが、全員に檄を飛ばす。
 プレシャスだって、電子戦もこなす伝説級の怪盗ではある。
 だが、ここに集う者たちは、次代のローゼンナハトを背負って立つだろう、ウィザード達である。
「残る防御壁も後一つだね」
「なんとしても突き破れ!」

◆潜入のプロ達
(見つかりませんね)
 月下の蛍灯が地下2階の各部屋を巡回するものの、半蔵発見にはいまだ至っていなかった。
 途中、アヴローラとソードダンサーがドロイド相手に大立ち回りをしたり、不動と黒薔薇が大ミミズのぬめぬめについて語っていたりしたものの、他はいたって平和に見えた。
 気配はしっかりと探っているつもりだが、潜入のプロを相手にするには、追跡技術が足りないか?
 されど、一対一では敵わない、自分よりも強い相手を探す彼女に奇跡が起こる。
 先程まで銀朱の幻影と暁色のフェザーがシバイヌー達と激戦? を繰り広げられていた部屋に念のためにと入ったとたん、通気口の蓋が開き、半蔵が転げ落ちてきたのだ。
 半蔵と月下の蛍灯の目が合い、
「皆、半蔵は通気口を辿って――」
「うかつ!」
 月下の蛍灯が反射的にインカムで半蔵対策班の者達に連絡し、ブラッディフェザーを半蔵めがけて投げるが、半蔵は前方に倒れ込むようにかがみながらよけ、そのまま月下の蛍灯へ突っ込んだ。
 月下の蛍灯が続けてファントムワイヤを伸ばすが、それよりも速く半蔵は彼女の脇を抜け、廊下へと逃れた。
「狼の鼻からは逃げられねぇぜ?」
「ここを通りたければ、ミーを倒していくネ」
 だが、半蔵が来るのをわかっていたかのように、廊下で待ち受けていたのは天駆ける紅き狼と風魔玉響。
 驚きの表情を見せる半蔵へと天駆ける紅き狼が蹴りの連打を浴びせ、苦無で斬りつける。
「とったぜ!」
 手応えあり! と声を上げた天駆ける紅き狼。だが、次の瞬間、その感触は廊下に飾られていた観葉植物の幹に!
「変わり身! それはもう見たネ!」
 風魔玉響が叫ぶと、天駆ける紅き狼の背後の壁へと手裏剣とネットを同時に投擲。壁……いや、光学迷彩で擬装していた半蔵は、2つともを忍者刀で切り払い、唸るように漏らした。
「お主らも、忍びの者か」
 天駆ける紅き狼は肯定しながら、風魔玉響はまだ修行中と答えながら、攻撃の手を、脚を、緩めない。
「狼牙忍軍として負けられねぇ!」
「ユーがルパンに味方するのと同じく、ミーも守りたい物があるネ。だから、全力で相手するネ!」
 風魔玉響が抜いた忍者刀が霞、変幻自在の攻撃として半蔵へ迫り、対処の隙きを天駆ける紅き狼の拳と蹴りの乱打が襲いかかる。
 相手が音に聞く有名な忍者であろうと、いな、であればなおのこと、忍軍の名誉のためにも、仲間のためにも、勝たなければならない。
 しかし、2対1でも、半蔵へ決定打を与えるには至らない。
 すると、半蔵は突如、切り合い、蹴り合っていたところと別の場所へと大きく飛び退き、瞬間、ビームの刃が半蔵のいた場所を空過した。
「……なるほど、格上か……だが!」
 光学迷彩の時間が終わり、その場に姿を表したのは、ヌル。試作品のビームブレードによる剣戟で半蔵に迫るが、避けに徹され一太刀も届かない。しかし、半蔵からの反撃もしっかり回避し、ワイヤで牽制し靴に仕込んだナイフと戦闘服の爪を織り交ぜて攻め立てる。
「くっ。ならば、ここは一旦引いて――」
 大きく飛び退き、学生達を置き去りにして迷路状の廊下を走り抜けようとした半蔵だが、角を曲がった瞬間。
「やッぱ戦闘は白兵でねェとなァ!」
 黒き剣の奇襲……高周波ソードの切っ先が半蔵に振り下ろされるが、紙一重でかわされた。だが、
「ところがぎっちょん!」
 剣の一閃から続けてコンシールド拳銃を至近距離でぶっ放す。黒き剣のガン=カタが半蔵を逃さず追い詰めていく。
 追いついた3人を含めた4人での休みなき連撃は、さすがの半蔵も対処に困り、1、2撃もらいながらも、近くの部屋へ逃げこもうとした。
 だが、フリーパスであるはずの扉が開かない。
「ついにやりやがったな!」
 天駆ける紅き狼が喜びのままに半蔵へ飛びかかり、他の3人も追いついて再び取り囲んだ。
 セキュリティの奪還に成功し、扉の開閉の権利を学生達が握り返したのだろう。
 明るいニュースに勢いづいた4人が半蔵を追い込みつつあったが、加えて、トランプのカードが半蔵へ大量に襲いかかった。
 サイバー忍者と夢売の狂癒者のし掛けたブラッディフェザーだ。
「先祖伝来の因縁の対決、第2ラウンドの決着をつけるでゴザル」
 8枚のエースが乱れ飛ぶ中、避けきる半蔵だったが、突如バランスを崩して片膝を折った。よく見ると、左足にワイヤーが絡んでいた。その細い線をたどれば、サイバー忍者の手元へ。
 1対1であれば、まだワイヤーから逃れる術もあっただろう。
 だが、複数人で畳み掛けているとき、そこまでの余裕はなかった。
 飛来するカードを上半身だけでかわす、と、今度は背中に何かが刺さり、身体に何か入れられた感触。
「薬でござるか」
 耐える半蔵。薬への耐性は忍者の嗜みとしてあるのかもしれない。だが、もはや学生達の攻撃を全て避け切ることはできないだろう。
 黒き剣の拳銃が後頭部に突きつけられると、伝説の忍者は、両手を上げたのであった。
「半蔵、召し捕ったりってなァ!」

 半蔵をワイヤーで抜け出されないように縛り上げると、夢売の狂癒者は、半蔵へと声をかけた。
「1人で何かを成すには……限界がある……だから、君達も……ルパン一味というパーティーを組んでいる……」
 夢売の狂癒者の言葉に、半蔵はピクリとした。
 学生達が半蔵を追いつめられたのも、仲間の力あってのことだ。
 通気口から半蔵を追い出したのは、サイバー忍者のラジコン作戦だった。
 狭い通気口でもラジコンに載せたプロジェクタとメッセージタブレットで、仲間が通気口に多く潜み、すでに取り囲んでいるようにみせかけたのだ。
 そうして、半蔵が進むルートを限定し、仲間が分散して各個撃破される危険を排除したのだ。
 さて、閑話休題。
 夢売の狂癒者は続けた。
「君達が望むものは…なんだろうね……そして、ルパンの魅力も教えて欲しいな……」
「ルパン殿の望みが拙者の望み。ルパン殿の魅力は……魅力……」
 半蔵は、むむむと真剣に考え出してしまった。あまりにも深刻な様子に、夢売の狂癒者はそれ以上追求せず、そっとしといてあげることにした。
「そんなことより、プレシャスしゃんどこー!?」
 そして、これ以上この場で得る物がないと見たエロ狼が、先程までのシリアスを投げ捨てて、プレシャスの匂いを追って走り去っていったのであった。

◆最終防衛線
「どうだった?」
 地下2階の最奥で、アルコバレーノが戻ってきたことに気づき、聖騎士が声をかけた。
「できるだけのことはしてきたわよ」
 一見すましているアルコバレーノの額には、汗が滲んでいた。
 彼女の予想では、ルパンがHALCOを盗むためにはHALCOの再起動が必要。そのためにはHALCOの感覚を若干現実側に残している。と読み、それを逆に利用するべく、ひたすらHALCOに愛の歌を囁いてきたのだ。
 だが、HALCOが応答不能なことは変わらず。
 中に影響を与えられたかも分からず。
 仕方なく、眠ったままのルパンに「起きたら帰って」と言い残して、戻ってきたのだ。

「そうか。わかった」
 シグナ……トワイライトバレットは、雪華との通信を切ると階段の前で待つ相方の顔を見た。
 それだけでトワイライトバレット……夫の言わんとすることを察した聖騎士は、槍を構えてみせた。
「相手は?」
「プレシャスとボガートだ」
 その言葉の意味に、言ったトワイライトバレットの顔がこわばる。
 優秀な学生達をもってしても、2人の進撃を止めることができなかったということ。
「二人とも、ある程度傷は負わせたとは言うが――」
 トワイライトバレットの手を、聖騎士は握る。
「我らなら必ずや勝てる、気負うな……お前には私が付いている」
 聖騎士が他に見せない顔をすれば、トワイライトバレットはニヒルな笑みを浮かべた。
「……そうだな。罠は張り終わっているんだ。どこからでも来い!」
 先程のこと、学生達が協力し合えば、伝説の怪盗達であっても、捕まえるのは不可能ではないということでもある。

 最後の階段の前の通路でしばし待つ。と、とうとう最後の角を曲がり、ボガートが姿を表した。
 すると、廊下に張られたピアノ線を見つけ、ため息を吐いた。
「この程度の仕掛けでなんとかなると思われてたとはな」
 開口一番、がっかりしたように言うボガートに、トワイライトバレットはムキになって22口径の拳銃を撃ちまくる。
 通路の長さ的に、十分拳銃の射程圏内のはずであったが、ボガートは超音速弾を軽くかわしていた。
 それも、廊下に張り巡らされたピアノ線を軽く避けながらだ。第一段階のフェイクも、第二段階の隠蔽された本命の罠も。
(だが、誘導はできている……そこだ!)
 この弾をよければ勝負は決まる! という狙いすました銃弾に対しては、ボガートもリボルバーを抜き放ち、撃ち落とした。
「隠してるつもりかもしれないが、見え見えなんだよ」
 ボガートがあと一歩脇にそれていれば、足元から網を引っ張り上げて捕縛する罠が発動するはずであった。
 トワイライトバレットがムキになっていたように見せていたのも、罠にはめやすくする演技という面もあったのだが、そこまで看破されているとは、何か詰めが甘かったのか。
 神をも欺ける程の絵画や立像の技術があれば、この網にボガートを捕らえることもできたかもしれない。
 逆に、ボガートがトワイライトバレットへと銃口を向けると、彼の前に盾を構えた聖騎士が立ちふさがった。
「我が君を傷つけさせはせぬ!」
 そのまま罠をかい潜ったボガートに、学生達の最後の砦として、聖騎士が挑んだ。
「薔薇は散る為に!」
 正面から得意の槍を突くが、ボガートは罠の中に舞い戻るように避けて銃を乱射する。
 上半身は星条旗調の盾で防ぐが、下半身には何発か命中。
 槍の距離をキープするためには、罠地帯に自ら踏み込まなければならない。
 聖騎士が逡巡し、盾で自分と仲間の致命傷を防ぐので精一杯になっていると、事態は急展開を迎えた。
「ボガート殿、今拙者も加勢するでゴザル」
 廊下の角を曲がってきたのは、なんと半蔵。
「遅かったな。若造相手でも手加減するのはもう疲れた――ん?」
 ボガートが後ろをちらりと振り返ると、なんと、半蔵が罠を全部ぶち抜きながら廊下を駆けてくるではないか。
 それは第一段階のフェイクを越えて、第ニ段階の罠に触れた。瞬間、廊下に大音響が鳴り響き、閃光が走った。
「おまえは誰だ!?」
 キーンと耳鳴りする中、ボガートが叫ぶと、偽半蔵――ウートガルザ・ロキ――はしたり顔で言った。
「真っ向から戦うだけが勝つ手段ではないよ」
 そう。真っ向からでは勝ちきれない相手をどうにかするため、声紋偽装や動作偽装を尽くした上に冴香の協力を得て、ルパン一味に変装していたのだ。
 少々準備に時間がかかってしまったが、その分完成度は高かった。
 そして、ボガートにとって、このやり取りの代償はあまりにも大きかった。
 気がついたときには、既に聖騎士の槍の間合い。
 聖騎士は、ボガートを逃さぬように槍を薙いで足元を狙い、転ばせた。
「くそっ。人の脚ばっかり狙いやがって」
 床を転がるボガートに飛びかかり、盾で床にうつ伏せに押さえつけると、トワイライトバレットが駆け寄って拳銃を突きつけた。
 ボガートも一瞬手首を返して上へ銃口を向け、反撃の兆候を見せた。が、弾を撃つことなく、銃を手放して降参した――と見せかけ、凄まじい連続回し蹴りで学生らの包囲を脱した。体術さえも達人級なのか。
「こっちよ、ボガート。撤収するわよ!」
 プレシャスがボガートをかばい、2人は協力して戦線を離脱にかかる。
「失敗か?」
「うん、ルパン自身がやらかしたみたいね。この状況で突破しても全員やられるだけ」
「チッ、仕方ないな。半蔵、またな」
 ボガートとプレシャスは驚くほどのドライさで、HALCOを諦め、ルパンと半蔵を見捨てた――いや、見捨てたのか、2人を信頼しているからこそなのか、あるいはUNICOやローゼンナハトを信じているからこそなのか、それはわからなかった。
 いずれにせよ、その無駄のない決断的な撤退はあまりに瞬間的で、学生らも押さえ込むことができず、逃走を許す結果となった。

◆怪盗たる者達
 2人を逃がしたとはいえ、結果でいえば、学生達はルパン一味の企てを防ぐことができた。
 後夜祭を乗り切り、HALCOを……仲間達を、守り切ることに成功したのだ。
 ルパンと、今回新たに捕まえた半蔵は、改めてそれぞれ地下牢に閉じ込められた。が、あちこち破壊した為に耐久力が落ち、位置も防御機構の基本もバレているこの場所からは、早々に移送されることとなった。
 しかも、プレシャスが脱出に使用したルートは、監視カメラの死角をついた、元々の地図にはないルートであり、いつの間にか作られていた横穴を通るものだったのだから、なおさらである。
 ちなみに、このルートを見つけたのは、天駆ける紅き狼であったのだが、さておく。

 今回の事件のことはそのうち、ローゼンナハトの内外含めた怪盗会の中で、広まっていくだろう。
 ルパン一味が、学生達にちょっかいを出したが、返り討ちにあった。と。
 伝説の名を継ぐ者達が、怪盗の卵達に(あるいはBICOの卵に)一杯食わされた。と。

 やがてBICOにより、怪盗2名はICPOへと移送された。
 そして、予想通りといえば予想通り、2人は間もなく、まんまと脱獄した。
 だがそれは、実はBICOの手落ちではなかった。後日、学生らにもそれとなく伝えられたのだが、ルパンと半蔵の『解放』は、ローゼンナハト上層部の政治的決定なのだという。
「必死に逮捕してくれた学生らには、少々申し訳ないが‥‥しかし、そうであればこそ、真相を伝えぬわけにもいかないからね」
 学長は1人、腕を組んで、セルティックフルートの海岸で夕日を眺めていた。
「ルパン一味は、ローゼンナハトにとり、敵でも味方でもない。そして放置しておいても、世間の害にはほとんどならない。だから、むやみに敵対してお互いを削りあうよりは、恩を売っておいたほうがいい、か‥‥老人達の考えそうなことだな。かく言う私も、もうジジイみたいなものだが」
 そうは言いつつも、学長はこの決定に賛成していた。理由はいくつかある。彼はアルセーヌ・ルパンが好きだった。ボガートも好きだった。服部半蔵は‥‥正直に言うとよくわからないが、ルパンに従うなら害はなかろう。そしてプレシャスもまた、理由は不明なのだが、学生らに好意的に見えた。
「ルパンに恩を売る‥‥大したバクチじゃないさ。UNICOの開校なんて大バクチに比べれば、ね」 

 では、最後にこの男の魂の叫びを持って、後日談を締めたいと思う。
 学長のいる海岸から数百メートル離れた断崖で一人、夕日に向かって、隼人は叫んだ。
「プレシャスのエクストリー乳、揉みしだきたかったぜー!!!」



 15

参加者

a.誰かが出来るって事は、僕等にだって出来るって事さ…さぁ、ショータイムだ
鹿目淳一(pa0044)
♂ 26歳 忍知
f.俺の技術を見せてやる。
シグナ・ガントレット(pa0058)
♂ 20歳 弾知
c.伝説の忍者ねェ?
石動詩朗(pa0059)
♂ 25歳 刃忍
b.これを通すわけにはいかないな!
今井天(pa0066)
♂ 21歳 英探
e.わんわんわん!!
羽乃森晴(pa0077)
♂ 20歳 英探
b.弓と銃の対決‥になるのでしょうか?
桜葉千歳(pa0088)
♀ 20歳 英弾
g.(死んだ魚のような目)
メレディス・メイナード(pa0098)
♂ 21歳 探魅
c.到達されない様、尽力致します。
フロウティア・モリスン(pa0099)
♀ 21歳 忍知
e.白い褌…いや、まさかなぁ?
斧箭槍剣(pa0114)
♂ 22歳 刃乗
e.俺が本当のオトモシバイヌーってヤツを見せてやるぜ…(駄目なフラグ)
ルシアン・グリフレット(pa0124)
♂ 23歳 英探
c.今度は直接勝負と行きますか!!
大神隼人(pa0137)
♂ 22歳 刃忍
f.冴香さんと協力して、進化した僕達の幻術を見せよう。冴香さん、よろしくね
ゲルト・ダール(pa0208)
♀ 22歳 知魅
d.魅せてアゲル、私の全てを。
アルカ・アルジェント(pa0217)
♀ 24歳 弾魅
d.教授の力が必要なの。
ヴェロニカ・ラプシア(pa0222)
♀ 21歳 英忍
z.よろしくお願いします。
イルマ・アルバーニ(pa0239)
♀ 20歳 探魅
f.そこ行く人たち、ちょっと待ってくれ。俺の話を聞いてくれ(胡散臭い演技)
ジェームズ・クレイトン(pa0243)
♂ 23歳 探知
b.拳銃使い同士の勝負に必要な言葉はひとつだけ。
ドゥエイン・ハイアット(pa0275)
♂ 27歳 英弾
f.ふふ、ゲルトさん、こちらこそよろしくお願いしますね。
中藤冴香(pa0319)
♀ 25歳 探魅
c.先祖伝来の因縁の対決、第2ラウンドの開始でゴザル。
スティーヴ・カラサワ(pa0450)
♂ 22歳 忍知
d.ルパンの女と呼ばれるプレシャスにどこまで迫れるかやってみましょう。
小林三代(pa0527)
♀ 21歳 英魅
c.よろしくお願いします。
ラファエル・ケルル(pa0579)
♂ 21歳 忍知
a.やられっぱなしで終われるものか!
エヴァ・マルタン(pa0835)
♀ 27歳 知魅
e.援護はお任せください。
アガーフィヤ・コスィフ(pa0970)
♀ 20歳 英弾
g.さーて、あのファック野郎(クモカマ)にインタビュー(物理)しましょう。
天空院星(pa1054)
♀ 22歳 弾知
c.ミーはここネ。半蔵との戦いは任せるネ!
エラ・ウォーカー(pa1057)
♀ 24歳 刃忍
b.さ、勝負だよ。おじさん。
マティアス・リブラン(pa1168)
♂ 20歳 弾魅
サポート
f.薔薇は散る為に!
エルフ・プレシス(pa1173)
♀ 27歳 刃乗
c.任務了解…
斑鳩恭耶(pa1232)
♂ 27歳 刃忍
b.接近してしまえば…
タリア・フエンテス(pa1415)
♀ 26歳 刃乗
a.さて、僕は得意分野で頑張ろうか
桜葉杏花(pa1513)
♀ 19歳 知魅
e.お掃除させて頂きます。
厳島火練(pa1582)
♀ 27歳 刃機
d.男には任せておけないターゲットね。あたしがハートを射抜いてあげるわ。
リュディア・ラヴィオラ(pa1605)
♀ 22歳 弾機
a.守らなきゃね。
エルミラ・ベルトラム(pa1648)
♀ 23歳 知機
e.躾がなっていませんね。
久良雲修平(pa2226)
♂ 20歳 英機
b.ま、折角の機会だし。
王玲瓏(pa2227)
♂ 19歳 忍機
a.おてつだい的なあれそれです!
シメオン・ダヤン(pa2252)
♂ 19歳 知機
g.お役に立てるかしら♪
鈴鳴雪花(pa2285)
♀ 27歳 知魅
 今度は本気で遊んであげるわ。
レディ・プレシャス(pz0203)
♀ ?歳