【CP】ルベウスの聖母

担当九里原十三里
タイプショート 授業(島外)
舞台オランダ(Europa)
難度やや難しい
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2018/12/24
結果成功
MDPアデライン・エルムズ(pa1094)
準MDPドロシー・ロマンシア(pa0318)
イリヤ・ヴォエヴォーダ(pa0440)

オープニング

◆終身刑の女
 自分はきっと、この刑務所の中から出ることなく一生を終えるだろう。
 でも「天使」たちはまだ、飛べる可能性を持っているから――半年前に終身刑を言い渡されたばかりのミルダはそう言った。
「この中で知り合った女から聞いたの。クリスマス前に『ルベウス』と『サピロス』が教会で対決するって」
「サピロスはあの教会を含めたルベウスの『シマ』を狙っている……その決着をつけるつもりというわけだな」
 ゾフィ・ヴァルブルクがそう言うと、ミルダは涙ぐんだ。

登場キャラ

リプレイ


「大人って、勝手ですよね」
 明かりを落とした部屋の中、淫楽のユダ ――サディアス・ディプレシの顔がろうそくの明かりに揺らいで見えた。
「子供たちの手はまだ汚れちゃいない…ミルダはそう言ったらしいですけど、どう思います?」
 慇懃無礼を承知の笑みを、サディアスは教会の大人たちに向ける。
 クリスマスソングが響く部屋の中――子供たちはダンサーの踊りに夢中になっていて、大人たちの会話には気づいていない。
「みんな一緒に…その願いを叶えるのは難しいかもしれませんね」
 黙りこくっているシスターたちの顔を見ながらサディアスは言った。
「然るべき施設に子供たち入れる手配は我々の方でできます。だけどそれも、貴方達次第ですよ?」
「それは承知の上だ」
 神父はそう、きっぱりと答えた。
 いずれこうなる時が来るのを、ずいぶん前から分かっていたのかもしれない。
「では、皆さんは罪を認めて、正しい裁きを受けるつもりなのですね?」
 サディアスがもう一度聞くと、シスター達も皆頷いた。
 しかし次の質問には、やはり返答を迷う様子が見られた。
「子供たちに、『真実』を伝える気はないのですか?」


『ふぅーん。マフィアの縄張り争いをねぇ…へーえ』
 馬鹿馬鹿しい。
 風操の射手 ――アデライン・エルムズの嫌悪の籠もった声がインカム越しに聞こえた。
『どうしたの?』
 ファンシー・ガール ――ドロシー・ロマンシアはバラの植え込みの陰に立ち止まり、通信の向こうにそう聞き返す。
 アデラインは深呼吸し、何かを振り切るように、なんでもない、とドロシーに答えた。
『お宝が壊されたり、子供達が殺されたりするって聞いたらやっぱりほっとけないよね!』
 いつもの声がそう言った。
 ドロシーは顔を上げ、屋根の上を見た。
 アデラインの洋傘の先がキラリと光るのが見えた。
『まったく、かよわい女の子にこんなことさせるなんて嫌になっちゃうわよね』
 近づいてくる足音に耳をそばだてながら、ドロシーは笑う。
『…まぁ、マフィアのおじさん達がこっちの都合なんて考えてくれるわけがないでしょうけど!』
 ドロシーは、教会へと続く小径を歩く1人の男を見た。
 サピロスの構成員である。
(教会に辿り着く前に…先制を仕掛けさせてもらうわよ)
 息を殺し、ドロシーはタイミングを図った。
 そして男と自分との距離が近づくのを待って、ドロシーは「仕掛けるわよ!」と通信の向こうにいる仲間に合図した。
「はああ……、せいやーーー!!」
 植え込みの陰から狙いを定めたドロシーは、不意打ちの「ライダーキック」で男の頭を蹴り飛ばした。
 開戦である。
「てめぇ…! ルベウスのモンか!」
 異変に気づいたサピロスの男たちが銃を構える。
 だが、風魔玉響 ――エラ・ウォーカーは彼らが引き金を引くのを許さなかった。
「撃たせるわけにはいきませんヨ! 教会が傷つきますからネ!」
 エラがピン、とコインを弾き、男たちの足元で真っ白な煙を吹き上がった。
 一方、アデラインは教会を挟んで反対側からやってくるルベウスの者たちに狙いを定めていた。
「さぁて…狙撃手の本領発揮しちゃうよー! 隼人、槍剣! 奴らのライフルは私に任せて!」
 アデラインはインカムの向こうにそう言うと、街灯の下にいた男の手元を狙い撃った。
 さらに続けてその隣の男のライフルを銃弾で弾き飛ばす。
「クソっ、あそこか!」
 3人目の男はトカレフを屋根の上のアデラインに向ける。
 だがその瞬間、暗闇から放たれた一枚の羽が、引き金と男の指との間に突き刺さった。
「銃も機関部さえどうにかしちまえば無力……ってなァ? うるぁ! ブラッディサンタからのプレゼントだ! 遠慮なく受けとれや!!」
 天翔ける紅き狼――大神隼人が飛び出し、怯んだ男の腹部へと重い膝蹴りを叩き込んだ。
 さらにその勢いのまま、教会前の通りからこちらへ入り込もうとする新手の者たちへと向かっていく。
「気をつけろよ! ライフル弾かれたくれえで怯む奴らじゃなさそうだぜ!」
 不動――斧箭槍剣は隼人にそう声をかけると、ライフルを拾おうとしていた男に掴みかかる。
 そして、その横面にナックルの強烈な一打を浴びせかけた。
「で? どいつがてめぇらの頭だって? おら! もう一発喰らえや!」
 二発目の拳が意識を完全に刈り取り、男は枯れた芝生の上に倒れ込んだ。
 だが槍剣がファントムブレードを抜いて顔を上げると、新たな敵が立木の陰からグロックで槍剣を狙っていた。
「伏せて!」
 アデラインは洋傘の銃口を向け、男を牽制する。
 男は木を盾にしながら、屋根の上のアデラインを睨みつけ、銃口を向けた。
「そっちは殺す気かもしれないけど…私達は美学に反するのよね!」
 洋傘を広げて盾にしながら、アデラインは男に応戦する。
 銃弾が飛び交う芝生の庭を迂回し、その間に槍剣は敵の懐へと踏み入っていく。
 そして一気に間合いを詰めると、ファントムブレードを振り上げ、木の陰の男に飛びかかっていった。
「その『金切り声を上げる物騒なもん』持ってさっさと帰ってもらおうか!」
「てめぇ…ッ!」
 とっさに身を翻し、男は槍剣に向けて銃弾を放った。
 槍剣の肩から真っ赤な鮮血が飛ぶ。
 だが構うことなく、槍剣はファントムブレードを男へと振り下ろした。
「んなモンに怖気づくわけねえだろうがぁ!」
 翻る白刃――脇腹に大きな傷を負い、相手は悲鳴を上げて倒れた。
 槍剣は刀身の血を払うと、腕にできた銃創にちらりと目を遣った。
「ま…おあいこってトコだろうな」


『達人クラスは…いない? どうかしら?』
 サピロスの構成員達の実力のほどはどうなのか。
 インカムから聞こえてくるドロシーの声に、蒼焔のイリューシャ ――イリヤ・ヴォエヴォーダは「さぁな」と答えた。
「いずれにせよ、情けや容赦などということを考える気は俺にはない」
 教会の反対側から聞こえてくる銃声や悲鳴が、反対側の庭で戦う仲間の優勢を伝えてくる。
 このままルベウスとサピロスがここで戦う事態にはならずに終わりそうだとイリヤは思った。
「どうした? 教会の宝が欲しければこの俺を倒してみろ。もっとも…その穢れた手でこの俺に触れることができればの話だがな」
 イリヤは教会を背にし、両手の銃を撃ちながらサピロスの男たちを駐車場の方へと追い込んでいった。
 足を撃たれ傍らに転がった男が悔しげにイリヤを見上げ、オランダ語で何か汚い言葉を吐いた。
「安心しろ。後で救急車を手配してやる。精々、この教会に手を出したことを後悔するんだな」
 蔑んだ目で男を一瞥すると、イリヤは駐車場に停まった1台の車に向かってゆっくりと歩いていく。
 銃声は止み、砂利を踏むイリヤの足音だけが闇に響いていた。
 しかし――止んだのは一時のことであった。
「どうやら……そっちの方が『近そう』だな」
 イリヤが肩の力を抜き、銃口を下げる。
 すると、即座に1人の男が車の向こうから身を乗り出し、イリヤに銃を向けた。
「させないネ!」
 街灯の明かりにギラリと光り、男の腕をかすめたのはエラの手裏剣だった。
 白いボンネットに鮮血が飛び、闇夜に悲鳴が響く。
 イリヤがサピロスの構成員たちの気を引きつけ追い込む間に、エラは別方向から回り込んでいたのである。
「これ以上、余計なところへ手出しはさせませんヨ!」
 相手に接近したエラはシノビブレードを翻し相手を牽制すると、さらに毒を仕込んだ靴の隠しナイフで相手に斬りつける。
 だがその時、車に隠れていた残り2人の男がエラに向けて銃を撃った。
 銃弾がエラの肩をかすめ、僅かに傷を作った。
「っ! 往生際が悪いネ!」
 エラはコインを放ち、煙幕に自分の姿を隠す。
 そして、エラの反対側に回り込んでいたドロシーが飛び出し、片方の男の背後からその背中にドロップキックを食らわせる。
「武器は銃だけかしら…!? やっぱり、油断ならない連中ね!」
 ドロシーは倒れた男から銃を奪い取り、遠くに放り投げた。
 だがその時、2発の銃声が響き、その一発がドロシーのリボンを弾いた。
 エラを見失ったもう1人の男が振り返り、ドロシーに銃口を向けたのだ。
「死ね、女ぁ!」 
 相手はドロシーを狙って銃を撃つ。
 しかし、ドロシーはとっさに自分のそばにいた男を盾にし、その陰に入った。
 銃弾はドロシーではなく、彼の味方であるサピロスの構成員の男の頭部をかすめ、毛髪が散るのが見えた。
「間合いが甘いわ! そうやって撃つと、わたしじゃなくて味方に当たるわよ?」
 さぁ、どうするのとドロシーが声を上げ、盾にされた男がやめろ、撃つなと喚く。
 そして銃を構えた男が一瞬怯む様子を見せたその時――彼の背後に回り込んだイリヤが銃を振り上げた。
「往生際が悪いと生きているよりも辛い目に遭うぞ。殺さずに仕留めるのは骨が折れるんでな」
 イリヤは男の後頭部を銃身で強かに打ち据え、男はそのまま崩れ落ちた。
 どうやら気を失ったようである。
「…今夜は蒼い焔の死神が夢に出ないことを、神に祈るといい」
 イリヤはインカムの通信を切り替え、救急番号に電話を繋いだ。
 そして、怪我人が大勢出たが幸いまだ死人はいないようだと告げたのだった。


「おらおらおら! んな、へなちょこ弾が当たっかよ!!」
 隼人はパワーレッグを駆使して走り回り、また障害物に身を隠しながら、ルベウスの残党を教会の敷地の外へと追い遣っていた。
 相手も意地があるのか、なかなか降参の意を示そうとしない。
 だが、教会の屋根の上からはアデラインが狙い、隼人や槍剣はひるまずに突っ込んでくるのである。
 抗争に慣れたマフィアといえど、怪盗達はやりにくい相手だったに違いない。
『隼人! そいつで最後だよ!』
 インカム越しにアデラインの声が言った。
 屋根の上からは、男が銃を手に何やら動揺している様子が見て取れた。
 恐らくもう弾切れなのだろう。
『多分、もう撃ってこないよ! 隼人、行って!』
「よっしゃ! んじゃ、遠慮なく突っ込ませてもらうぜ!」
 隼人は男に飛びかかり、そのまま捕らえて締め上げた。
 いつの間にか、周囲は静かになっていた。
「向こうも静かんなったな……これで撤収ってトコか」
 隼人は庭を見回し、もう戦える者がいないのを確かめた。
 遠くから複数のサイレンの音が聞こえ、槍剣が「救急車だな」と言った。
「あと、警察もか。じゃ…あとは向こうに任せて帰ろうぜ」
 自分たちの仕事はここまでだ。
 怪盗達はゾフィの手配した車に乗り込み、教会を後にした。

 ルベウスとサピロスの抗争は止められ、教会内での銃撃戦は免れた。
 事の顛末を聞いた教会の者たちは、教会や宝、そして子供達の命が守られたことに対し、感謝を示した。
「ミーは罪には罰をきちんと与えるべきだと思いマス。ですが、罪もない子供達に別れという罰を与えるのは反対ネ」
 無邪気に遊ぶ子供達を見ながらエラは言った。
 中にはまだ、何か起きているのか全く分かっていない子供もいるようだ。
「無罪とはいかないでしょうが、なんとかなりませんかネ」
「そうだね。私も、子供達に罪はないと思う。それに……」
 アデラインは声を低くする。
「子供に保護者を選ぶ権利なんて、無いんだから」
「ミルダが、貴女と同じ事を言っていたことがあります」
 年老いたシスターの1人がそう口にした。
 自分の意に沿わぬ場所に生まれ育てられたこと――それに反発して彼女は教会出ていったのだ、と。
「人生は常に善と悪の隣り合わせ…そのどちらに自分の人生を支配させるかは、これからのおまえ達次第だろう」
 イリヤはそんな事を言いながら子供達を見ていた。
「金に色はない、という。穢かろうが何だろうが、そこに美学や赦しを乞う心があるなら、光明はあるだろう」
「…子供達の事は、貴方がたにお任せします」
 神父は意を決したように顔を上げた。
 そして、彼らに本当のことを全て話すと言った。
「今回の事がなければ、彼らはいずれルベウスの構成員となったでしょう。どんな形であれ、その運命を抜け出し、新たな道を開けるのです。ですから…彼らが二度と戻ってくることが無いよう、例え子供たちに恨まれたとしても、私達は全てを正直に話すべきなのです」
「恨む…とは限らないですよ。ちゃんと理解して待っててくれるかもしれないじゃないですか」
 決めつけることはないとサディアスは言った。
 神父は表情を固くしたまま小さく頷いた。
「みんな元気で助かったって、ミルダには報告しといてやるよ」
 槍剣はそう、神父に声をかけた。
 子供達はエラやドロシーと戯れ、笑い声を上げている。
「子供達の笑顔を映像に収めてな。それくらいできるだろ、ゾフィ先生?」
「そうだな斧箭。しっかり撮っといてやってくれ。きっと…何よりのクリスマスプレゼントになるだろう」
 ゾフィはそう言って頷いた。

 その後、子供達はローゼンナハトの支援者が運営する施設に引き取られ、全員がそこで養育される事が決まった。
 ルベウスとサピロスは教会の大人たちを含めた構成員の殆どが逮捕され、組織は事実上解体となった。
 そして主を失った教会はローゼンナハトの仲介により自治体の所有物となり、今回守られたお宝と共に大切に保管される事が決定――今回の事件の顛末を聞いたミルダはゾフィを通し、怪盗達へ感謝を伝えた。
 彼女はその後、教会の者達と手紙でやり取りするようになり、今は少しずつ関係を取り戻しつつあるとのことである。



 11

参加者

b.当然こっちだ
斧箭槍剣(pa0114)
♂ 21歳 刃乗
b.色々考える必要がねぇからな…こっちでブラッディサンタと洒落こむぜ!!
大神隼人(pa0137)
♂ 22歳 刃忍
a.子ども達、UNIKOで保護できないかしら?…いちおう提案してみるわ。
ドロシー・ロマンシア(pa0318)
♀ 20歳 刃乗
c.まだ汚れちゃいない…ねぇ……。
サディアス・ディプレシ(pa0355)
♂ 22歳 知魅
a.……御託は抜きだ。
イリヤ・ヴォエヴォーダ(pa0440)
♂ 25歳 刃乗
b.まぁ、ここネ。よろしくおねがいしマス!
エラ・ウォーカー(pa1057)
♀ 24歳 刃忍
b.狙撃手の本領発揮しちゃうよー!
アデライン・エルムズ(pa1094)
♀ 20歳 弾忍
 クリスマスに教会を荒らすなんて不届き者にはどういう仕置が良いだろうな?
ゾフィ・ヴァルブルク(pz0025)
♀ 38歳