【SD】甘味の闇を炙り出せ

担当空根 漣
タイプショート 事件
舞台チェコ(Europa)
難度普通
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2018/11/17
結果成功
MDPアルフォンス・サインツ(pa0087)
準MDPキティ・ラップ(pa1077)
ショコラ・ブラマンジェ(pa1623)

オープニング

◆夢のように甘く
 セルティックフルート島にある複数のスイーツ取り扱い店が、同時多発的に営業妨害に遭ったり、経営不振に陥るという不可解な状況。
 学生達の調査の結果、そこには業界に君臨する大企業の影があったという。
 その時は具体的な企業名こそわからなかったものの、スイーツ好き――しかも講師の本気――が集まれば候補も絞られるというもの。
 以前の調査を担当していた講師から出た名前は、『Sugar Dream』というものだった。
「『Sugar Dream』!? 飴ちゃんからケーキまで、手広くスイーツを扱ってる最大手じゃねぇか!」

登場キャラ

リプレイ

◆曇った味
 わくわく、と期待に胸を膨らませた様子の比良賀ソラはテーブルに並んだスイーツへAiフォンのカメラを向けていた。彼女と同じく荒鷹稲荷もスイーツを撮影している。
 複数のスイーツをそれぞれ同じ角度から撮影するソラは、断面図の様子もきちんと記録していた。
「会社の環境が製品へ影響を及ぼすかもしれない……これは詳しくしらべなくては! あっ、こっち新作? これは断然怪しいね!」
 怪しい、怪しい、と小さく繰り返すソラ。言葉とは裏腹に彼女の表情は至極明るい。
「チョコやショートケーキはおまかせあれぇ」
 そういう稲荷はテーブル脇に置いてあるメニュー表を広げ、載っている画像と実際のスイーツを見比べて記録していた。
「材料の原産地とかぁ、書いてありますねぇ。盛り付けもまぁ及第点でしょうかぁ?」
 稲荷の言葉にソラが顔を向け「画像はイメージですってやつだね」と相槌を打つ。
 うーん、と唸りながらショコラ・ブラマンジェは稲荷の広げたメニュー表に載る画像とスイーツを見比べ、指摘する。
「急いで作ったのか、全体的になんとなく雑な感じしない? 味は……んー、まぁそれなり?」
 フォークで一口スイーツを掬い、口へ運ぶショコラ。彼女に続きソラと稲荷もスイーツを口にする。
 思案気に味わっていたアリス・クラークは「甘いわね」と味の感想を口にした。その後、アリスは持参した化学道具セットをテーブルの隅に広げ、簡単に検査を始める。
「……特に危険な物質が含まれているとかはない様ね。脱法ハーブとか、薬品とか。凡そスイーツを作るうえで必要な素材しか入ってないわ」
 手早く化学道具セットを仕舞うアリス。テーブルに並ぶスイーツへフォークを向ける皆は、ソラと稲荷が今まで撮った他支店のスイーツ画像を再度確認する。
「やっぱり店舗によって見た目のクオリティはマチマチだねぇ。どれも美味しいけど、ほんっとに美味しい! ってものは無かった印象かなぁ」
 自身でもスイーツを作るソラは「量産された市販品って感じ」と肩を竦める。
「何処にでもある様な見た目だし、余りオリジナリティは感じないわね」
 それが良いと言う事もあるけれど、とアリスは画像を見ながら言う。
「業界最大手と言う割にこの程度? って思っちゃうかなぁ。何となく残念だよね。甘くて美味しいってのを否定する訳じゃないけどさ」
 ショコラがソラとアリスの言葉に頷きながらそう口にした。
「販売数を稼いでいるから最大手、という事なんでしょうかねぇ? 見た目の奇抜さや話題性より、馴染み深い形と味を選んだ結果だったり、するんでしょうかぁ」
 稲荷の言葉に「一理あるわね」とアリスが頷く。
「馴染み深い形や味を大量に売り出すのなら、多くの支店や大きな工場は武器になるわね。個人経営の小さなスイーツ店では一日に作れる個数も限られてくるし」
「でもぉ、量販品を大量に捌く企業と個人経営のお店は、共存出来る道があるじゃないですかぁ。個人経営のお店はそのお店でしか味わえないスイーツがある訳ですしぃ」
 アリスの言葉に稲荷はスイーツをフォークで掬いながら言う。稲荷の言葉に頷くソラは「あり方が違うよね」と続けた。
「コンビニでカップケーキ買うのと誕生日にホールケーキ買う、みたいな違い。コンビニでホールケーキ買ってもいいけど、どうせならーってさ」
「もし『Sugar Dream』が他店の妨害をしているのなら、共存出来る店舗をあえて潰してるって事にならないかしら? 不必要な争いは不毛だわ。何故そんな事をするのかしら」
 首を傾げるアリスの言葉にショコラは持っていたフォークを軽く振りながら口を開いた。
「目に付くライバル店を全て潰してしまえば、その地域の利益総取りって事になるよね。共存とか皆で仲良く分けましょうとか、大きな企業になればなるほど邪魔な思考だったりするのかもよ?」
「極論ね。それが最も効率よく利益を得られる手段であるのは確かだけれど、そんな事をしたら信用や信頼を失うわ。それは企業にとって一番の痛手。リスクが大きすぎると思うの」
 アリスが首を傾げながら言えば、ショコラはスイーツを飲み込み、口を開いた。
「ライバル店さえ潰れてしまえばいいんだから、会社や企業が直接手を出さなくてもいい。疑うべきは企業の裏って事だよ。例えば、闇組織とかね」
 成程なぁ、とショコラの言葉にソラが頷きを返す。もぐもぐとスイーツを頬張っているランベルトへ「ラン先生どうですか?」とソラが問う。
「ん? どれも美味いぞ!」
「いやそうじゃなくて! 先生調査忘れてるでしょ!」
 まったくもー、と言いながらソラはテーブルに残ったスイーツを大きくフォークで掬い取り、ランベルトの口の中へと詰め込んだ。

◆曇る顔
 企業医師に扮したゲルト・ダールキティ・ラップと共にモデルケース店の医務室の中にいた。順番に医務室へと通される店員には、国から依頼されて勤務実態の調査をしている、と説明がなされている。
 向かいあって座る店員へゲルトはにこやかに笑い、口を開く。
「調査内容は匿名で報告しますので、ご安心ください。ここで貴方のお名前も伺いません。後日呼び出しもありませんからね」
 恐る恐ると言う様子でゲルトの言葉に頷く店員へ、リラックス出来る様にと用意したハーブティが運ばれる。
 ハーブティを口に含み、ほ、と息を吐く店員。その様子にゲルトはキティへと視線を向け、小さく頷く。
「ほな、これから三つ、質問するで。まず一つ目。あんたさんはいつからここで働いてはるのん?」
 キティの質問に答える店員。ゲルトは静かに頷き、答えを書き留める。
「二つ目。仕事のやりがいはなんでっしゃろ?」
 キティの言葉に店員は視線を泳がせ、言葉に詰まった。ゆっくりで大丈夫ですよ、とゲルトが言えば店員は首を竦め、おずおずと応えた。
「最後三つ目や。最近何かありましたやろか? 働いてる時でも、プライベートでもええで。こんな事ありましてん、ってもんないかいな?」
 三つ目の質問に店員は先程とは違う意味で思案していた。首を傾げながら「別段何も」と応えた店員にゲルトとキティは笑顔で頷く。
「ご協力に感謝します。ありがとうございました」
 ゲルトの言葉に店員は腰を上げ、会釈した後医務室を出た。医務室の外を確認するキティは「次の人で最後やで」とゲルトへ言う。
 医務室へ現れたのはアルフォンス・サインツだった。アルフォンスはスーツを身に纏い、コネで入手した偽装社員証を胸元に差している。どこからどう見ても営業マンと言う様相をしていた。
 あれ、と顔を上げるゲルトにアルフォンスは肩を竦め、彼女の前へと腰を下ろした。
「色々調べて来た。俺は人に紛れるのが仕事みたいなものだしな。ついでだからそっちの成果と俺の得た情報を共有しておこうと思って」
「ああ、成程。それは僕達も助かるね」
「ハーブティ淹れよか? お菓子もってきはったんやろ?」
 キティに言われ、アルフォンスは手にしていた小さな紙袋をテーブルへ広げた。中には丁寧に包まれたスイーツがあり、ゲルトとキティは思わず頬を緩める。
「新顔を装って工場へ潜入したら、まぁその、マダム達から持って行きなさいと言われてな……。その話は良いとして、工場で色々聞けたぞ」
 ほな聞きましょか、とキティは三人分のハーブティを淹れ、アルフォンスの持って来たスイーツにフォークを向ける。
「勤務時間はかなり長いようだな。記録には残っていない。働いている人の意識へ擦り込みが行われている様だ」
 記録へ残さない超過勤務は常だとアルフォンスは言う。工場でも、少ない人員で多くの作業工程を賄っているそうだ。急な休みは取り辛い、と工場で働く人は皆疲れた顔をしていたとアルフォンスは二人に語った。
「自分が休んだら仕事に関わる全ての人への迷惑になる、と言っていた。子供が熱を出しても、連勤ばかりでも表立って抗議活動をしない。『みんな同じ想いだから』と言う意識が働いているのだろうな。君の代わりは居ない、と言う言葉はいい意味でも悪い意味でも、働いている人の心を縛っているのではないかと思うよ」
 ふぅむ、とアルフォンスの言葉に唸りながら、ゲルトはフォークを咥え、先程まとめた店員の調査結果を捲る。
「こっちでもそれらしい兆候はあるね。店舗での製菓担当と販売担当の人員が不足してるけど、これは自分達の働き方次第でどうにかなるかもしれないと思ってる」
 ハーブティを啜り、キティはゲルトに続いて口を開いた。
「勤続年数の長い人がぎょーさんおったなぁ。新人と古株の差が大きすぎるんは気になったところや。古株ばかりで会社を回すと、暗黙の了解っちゅーのが増えて来るやろ? あと、長く勤めてはるのに仕事に対してのやりがいを即答出来た人は皆無やったな。なぁなぁに(適当に)仕事してはるんとちゃうかな」
「日々の業務をこなすので精一杯、なのかもしれないな。他には、スーツでサングラスを掛けた男性が度々目撃されているくらいか」
 アルフォンスの言葉にキティが「聞いた話やな」とゲルトへ視線を向ける。
 キティに頷き、ゲルトは手元の資料を捲った。
「営業を終えた店舗へ、スーツにサングラスを掛けた男性が出入りしている様だと数人の社員から話があったよ。本社の上役かと思って、知らない顔だけれど声を掛けなかった、って」
「同一人物だと断定するには早いが、興味深い言葉を拾った。デトロイトの上役、だそうだ」
 アルフォンスの言葉にゲルトとキティは顔を見合わせ「デトロイトの上役?」と口を揃えた。
 二人に頷くアルフォンスは得た情報を口にする。
「社員の間でそう呼ばれる人物がいる。男性らしいが、社員は皆この人物について口を噤んでしまうから詳細不明だ」
 それから、とアルフォンスはスーツの内ポケットから自身のAiフォンを取り出し、二人へ録音された盗聴内容を聞かせた。

『今月はこんだけ都合して貰えませんかねぇ?』
『少し、増え過ぎじゃないか?』
『いやぁ、ウチも苦労してんですよ。地上げに恐喝、穏便にクレーマー手配。それらの後処理もねぇ。人を動かすには金がかかる。イーサン取締役、あんたとはオヤジの代からの付き合いだ。この金額もかなり譲歩してんだけどねぇ』
『……先代には世話になった。これも会社の為』
『はっはぁ、会社の為ねぇ……。何いい人の皮被ってんだ? 俺とあんたの間でそういうのは止めてくれよ。被害者面なんてあんたに似合わねぇぜ?』
『ベルナール、ここは私の会社の支店だ。自社支店の中でくらい良い経営者を演じさせてくれてもいいじゃないか』
『言うねぇ。オヤジとつるんでただけはある。精々その、良い経営者、ってのが剥がれ落ちない様にしときなよ』
『問題ない。今後とも『Sugar Dream』と『Sweet Devil』は良き隣人同士だからな』
『おいおい、俺の『Sweet Devil』ちゃんが隣人? いつの間にそんな薄っぺらい関係に成り下がったんだ?』
『ふふ、訂正しよう。一心同体、でどうかな?』
『いいねぇ。そうでなくちゃなぁ。可愛い『Sugar Dream』君の為に『Sweet Devil』ちゃんは働きますよぉ』
『金額は用意する。期待しているぞ』

 Aiフォンを操作し、録音されていた音声データを止めるアルフォンス。ゲルトとキティは顰めた顔を見合わせ、アルフォンスへと視線を向けた。
「真っ黒ですやん。あかんわー……」
 キティは首を横へ振り、そう零す。ゲルトは思案気に視線を漂わせた後、口を開いた。
「人は事実を捻じ曲げる、か。感情論や信じ込んだモラルに従ってしまって、論理的に物事を判断できなくなってしまう。そうして曲げられた事実が沢山あるのかもしれないね」
 ゲルトの言葉にアルフォンスとキティは肩を落としながら頷いて見せた。

◆曇りのち闇
 アルフォンスの仕掛けた盗聴器から、大企業『Sugar Dream』の抱える闇の片鱗を垣間見た皆。ゲルトとキティから働いている者の実情を知り、皆は沈痛な面持ちでテーブルに並ぶスイーツを見ていた。
「何処も苦労があるんだね、って他人事みたいだけど、スイーツに罪はないんだよなぁ」
 ぱく、とフォークの先に乗せたスイーツを頬張るソラは、溜息を吐きながらそう零した。
「これだけネタが出揃ったのだから、後はこれをどう改善していくか、になるわね。働く人の意識改革からになるかしら。人員確保も急務ね」
 そう言うアリスは皆に顔を向ける。闇は払いましょうねぇ、と稲荷が口を開いた。
「盗聴会話の中にあったベルナールという人は、デトロイトの上役って呼ばれてる人と同一人物なんですかねぇ。デトロイトのって言うくらいだから、きっとデトロイトに行けば何か解りますよねぇ」
 稲荷の言葉に「そうだね」とショコラが頷く。
「その人について社員が誰も口を割らないのは、もしかして『何も知らないから話せる事が無い』のかもしれないね」
 ショコラの言葉に頷く皆。盗聴された会話からも『Sugar Dream』と『Sweet Devil』の濃密な関係性が伺える。
 皆はそれぞれにスイーツを頬張り、まだ見ぬ闇の根城、デトロイトへと想いを馳せるのであった―――

 それはそれとして、とソラは先程から一心不乱にスイーツを食べているランベルトをつつく。
「ラン先生食べ過ぎじゃない? アルフォンスさんもラン先生と競争始めないでー!」



 10

参加者

a.有名スイーツ企業の秘密を盗む、っていうことで、怪盗の出番…なのかな…?
アルフォンス・サインツ(pa0087)
♂ 24歳 弾忍
a.店員に
ゲルト・ダール(pa0208)
♀ 22歳 知魅
c.ティータイムの紅茶とスイーツは1日の節目に大切なものよ。邪魔するなんて
アリス・クラーク(pa0456)
♀ 20歳 刃知
a.色々聞くでー
キティ・ラップ(pa1077)
♀ 20歳 弾知
c.いただきます!
比良賀ソラ(pa1234)
♀ 20歳 忍知
c.お菓子好きにとっちゃ黙ってられないよね(とか言いつつ食べまくり)。
ショコラ・ブラマンジェ(pa1623)
♀ 19歳 魅機
c.よろしくお願いします。
荒鷹稲荷(pa2317)
♀ 19歳 忍魅
 お土産ッ! お土産ッ!
ランベルト・ロッシュ(pz0036)
♂ 33歳