【OS】約束のRosen Roman

担当旭吉
タイプショート 日常
舞台日本(Asia)
難度易しい
SLvA(日本程度)
オプ
出発2019/05/07
結果成功
MDPアルカ・アルジェント(pa0217)

オープニング

 
 ――朝、目が覚めて。貴女がいるの。

 その髪も。その睫毛も。
 目蓋の下の、瞳の美しさも。


登場キャラ

リプレイ

◆薔薇の目覚め
 芳しい匂いに包まれた、柔らかなベッドの中。
 夜の熱とは異なる清々しい空気に、朝を感じる。
 もう少しだけ、昨夜の激しい愛の余韻に浸っていたい気持ちもあるけれど。同じベッドの中、すぐ目の前から聞こえる吐息を聞いてしまったら。
「ん‥‥」
 ほんの少しの悪戯心と共に。まだ覚醒しきっていない愛しい人に身を寄せて、その顔を見つめて。
 早く、その唇に、唇で触れたくなってしまって。
 おはようの代わりに、触れるだけで離すつもりだった唇は。逆に深く、激しく奪い返されて。
「‥‥おはよう。私のヴェロニカ
アルカ‥‥」
 とても美しく笑んで、何度でも私の心を花開かせ、震わせてしまう貴女。
 こんな早朝から、私をどうしてしまうつもりなのだろう。
 ベッドと互いの密着した温もりに名残は尽きないけれど、今は頬から髪へ指を添わせるに留めて。
 これで区切りにしようと、最後に軽く唇を啄めば。彼女は一足先にベッドを抜けて、シャワーを浴びに行った。
 彼女が戻ってきたら、自分もシャワーを浴びて。その後は、彼女の美しい黒髪を丁寧に整えてあげたい。
 普段からよく手入れされている事が一目でわかる、艶のある髪。指通りもよくて、いつまででも触っていたくなる。同じ女として嫉妬する前に、ただ純粋に彼女の髪が好きだ。
 服はどうしようか。制服では何かと面倒だし、何より味気ない。
 あるいは、敢えて彼女と出会った服で‥‥というのも、ありだろうか。
 普段はそこまで悩む事もないのだけれど、今日は特別だから。

 今日は、互いに一番綺麗な形になって――行きたいところがあるから。

◆薔薇の婚約
 恋人らしく、深く指を絡めて手を繋いで。
 部屋を出て廊下を抜け、芳しい薔薇の香りに包まれたホテルのエントランスを出る。
 この時期の日本の早朝は、まだ少しだけ肌寒さを感じるけれど。気を引き締めるには、ちょうどいいくらいだ。
「行きましょう、アルカ」
 テーマパークとホテルを結ぶ専用クルーザーに、手を取り合って乗り込む。運河の船上は地上より更に寒さが増すけれど、手を繋いで寄り添っていれば風が気持ちいいくらいだ。
 運河とその向こうに見えるテーマパークの街並みが流れ去っていくのを眺めていると、早朝のクルージングはあっという間に終わってしまい。二人はまだ人のいないテーマパークに辿り着いた。

 アムステルダムを再現した早朝の街並みは、静まり返っていて。
 人の代わりに満ちていたのは、仄かな薔薇の香りだった。
 定番のスポットでなくとも、街のあちらこちらを薔薇が飾っていて、そこから今朝咲いたばかりの薔薇が香るのだ。まだ誰の目にも触れていない、美しくも無垢な花達が。
 道中の薔薇も悪くないけれど。自分達の目的は、もっと先。二人で視線を交わして微笑み合ったら、足は奥へ、奥へ。最奥へ。
 濃くなっていく薔薇の香りに誘われるまま、テーマパークの最奥――「薔薇の宮殿」へと向かう。

 華やかな街並みや庭園を抜けた、一番奥の静かな森。
 風が緑の木々を揺らしていく音に、小鳥の囀りが響く。
 そんなささやかな出迎えを受けながら辿り着いた、最奥の宮殿。その庭に今が盛りと咲き誇っていたのは――薔薇のアーチに、薔薇の生垣、トンネル。全てが香り高い薔薇で満たされた、まさに「薔薇の宮殿」だった。
 「相応しい場所」を探しながら、二人でしばし「宮殿」を散策する。白薔薇のアーチが続くトンネルは、どこかのお伽噺にでも出てきそうな。
「ウェディングドレスの花嫁が歩くには、最高にお似合いの場所ね」
「そうね。白薔薇に、白のドレスで‥‥」
 ふと、ヴェロニカは想像してみる。それぞれ白のウェディングドレスに身を包んで、二人で並んでこのアーチを進む姿を。それはきっと、眩しいほどに輝かしくて、幸せな光景に違いない。

 まだ人のいない花園の、その中心までやって来て。二人は静かに向き合う。
 どれほど美しい薔薇も、甘い香りも。目の前の愛しい人を彩りはしても、掻き消す事はできない。
 その人を愛しいと思うこの心も、奪う事はできない。
 ただ、それでもこの場所は。二人きりで誓うには、相応しい場所だと思ったから。

 跪いたアルカがヴェロニカに捧げるのは、指輪の箱、ではなくて。
 小さなダイヤが輝く指輪を、彼女の左手を取って薬指へ直接嵌める。
 幾度となく絡めてきた彼女の指にぴったりと指輪が嵌まると、その手の甲へ誓いの口付けを落とした。
「愛する私の女王、淫らな私の愛奴‥‥貴女の永遠を私に頂戴。代わりに私は、ココロとカラダの全てを貴女に捧げるわ」
 真っ直ぐ見上げてアルカが告げるのは、愛情と敬意、欲情と支配欲。それら全てを含めた、誠意ある全身全霊の誓い。
 真っ直ぐ見下ろして聞き届けたヴェロニカは、立ち上がった彼女の左薬指にも指輪を通す。
「私の信じる全てにかけて、幸せにすると誓うわ。薔薇の匂いがする環をくぐって、貴女に至るの。何度も、何度でも‥‥この瞬間を繰り返しながら」
 視線を絡めれば、自然と近付くダークローズとピンクローズの唇。
 触れるだけでは伝えきれない愛の熱量を、もっと、と。求め、求められて、高め合って。
 薔薇の花園で二人きりで交わされた、熱く深い口付けで結ばれて。
 女と女は、長い将来も共に歩み続けることを、ここに誓ったのだった。

◆薔薇の運河
 朝一番の薔薇の香りを求めてホテルを出たので、実は朝食もまだだった二人。しかし、これから朝食をとりにホテルへ戻るのも勿体ない気がする。ならば、昼食をとるガーデンレストランが開くまで散策を続けようかと、それからも各所の薔薇をゆったりと巡っていた。
「勿論、貴女の愛で私は常に満たされているけれど。愛する貴女と一緒に食事をとる時間も、十分に取りたいじゃない?」
「ええ。どんな時も一緒にいたいわ」
 戯れるように唇を掠めて、甘えるように頭を預けて。
 赤、白、ピンク。大きなもの、小さなもの。様々な薔薇が降るように視界を楽しませてくれる街を、二人は気の向くままに進んでいった。

 いつしか、日は随分と高くなり。テーマパークも開園して、人が随分と増えてきた。
 レストランでの食事を終えた頃には、早朝の頃のような二人きりの空気はもう味わえそうになかった。あの静けさが夢のようにさえ思えてしまう。
 そんな時、目に付いたのが運河のクルージングだった。ホテルに帰る便とは別の、園内の「薔薇の運河」を楽しめるコースのようだ。
「アルカ、あれに乗ってみない?」
「クルーザーから、川べりの薔薇を楽しめるのね。面白そうだわ」
 そういう事ならばと、早速乗り場で船を待って乗船する。

 船内の丁寧なアナウンスと共に、広い船窓から見える景色を楽しむ。
 歩いているだけではわからなかった、風車が回るのどかな田園風景や、視界いっぱい広がっていた薔薇が滝のように運河の両岸に続いている様は、圧巻であると同時に芸術的でもあった。
 色とりどりの、終わらない薔薇の滝。それはそれで、十分に。十二分に満たされはしたのだけど。
(‥‥人の波に、消えてしまうんじゃないか、って)
 例えば、これは夢で。目を閉じて開けた瞬間には、全てが無かった事になっている現実が待っている、とか。
 船の外の景色に。船内に。増えてきた人の波の向こうに、愛しい人を見失ってしまうのではないか、とか。
「‥‥‥‥」
 何気なく首をもたげた不安に、現実感が欲しくなって。ヴェロニカは、隣りに座るアルカに凭れかかった。彼女の身体は柔らかくて、温かい。よく知っている温度だ。
 アルカもまた、何も言わずに身体を寄せてくれる。まるで、ヴェロニカのそんな不安を見透かしているかのようだった。

 揺れる船に、規則的な波音と、愛する互いの心音を聞きながら。
 二人は流れていく窓の外の薔薇を、改めて美しいと思うのだった。

◆薔薇の夜、その眠り
 花の香りに包まれながらアフタヌーンティーを楽しんだり、ローズマーケットで育てられそうな薔薇の苗を探してみたり。そんな事をしている内に、日はみるみる暮れていく。
 眩く沈んでいく夕陽の残滓が消えると、よく晴れていた夕焼け空は群青へ、やがて夜の色へと染まっていく。

 夜になると、テーマパークは一斉にライトアップが始まり、全く違う様相となる。
 レトロな街灯に照明が灯り、庭園の夜の顔を照らし出せば。
 まるで晩餐会のテーブルのように、ディナーの皿のような色とりどりの花々の間に、ワイングラスを象った大きな電飾が並ぶ。
 ライトアップによって、夜でも薔薇の色は鮮やかに演出されるが、その光は決して薔薇より主張する事は無い。
 この場所の主役は、あくまでも薔薇なのだから。
「夜になって、照らす光が変わっても。薔薇の美しさは変わらないわね。むしろ‥‥昼には見られない姿を見せてくれる」
「貴女は、昼の薔薇と夜の薔薇、どちらが好きかしら」
 夜の薔薇を一通り見て回りながら、ヴェロニカはアルカに尋ねてみた。
 アルカはヴェロニカの手を取ると、その指に嵌められたままの誓いの指輪を愛しげに撫でる。
「‥‥全部、好きよ」
 昼だけでなく、夜だけでなく。薔薇だけでなく。
「堪らなく愛おしいわ。昼も、夜も。花弁の一枚ずつ、秘められた花弁の内側まで。甘く愛し合っていたいの」
 ――貴方の全部を私に頂戴。
 絡められる指に応えて、ヴェロニカもアルカの空いている手――薬指に指輪を嵌めた左手に、手を重ねる。
 将来を誓い、伴侶となった愛しい人。彼女が「今欲しいもの」を、言葉に込められた熱から感じ取ってしまう。
 そうなってしまえば。この庭園を満たす薔薇の香りは、たちまち愛欲の香りとなる。
「私も同じよ。薔薇の香りを纏う貴女に、もっと触れたくなる」
「クスクス‥‥今夜は、昨夜よりもっと熱い夜になりそう。眠る時間が勿体ないわ‥‥」
 ずっと離さないわ、と。告げた言葉の残響は、愛する人の唇の内へ。
 熱も吐息も声も、全てを求め、あるいは与えるように、深く重ねて。

 薬指に契られた印が、この薔薇の一日が夢ではない証。
 甘く、深く、熱く交わした永遠の誓いと共に。
 その身を包む薔薇の香りを、彼女達は想い続けるだろう――。



 8

参加者

a.クスクス…楽しみ過ぎて蕩けそうだわ。
アルカ・アルジェント(pa0217)
♀ 24歳 弾魅
a.貴女と二人きり…。大切な日になるわね。
ヴェロニカ・ラプシア(pa0222)
♀ 21歳 英忍