十番目のターゲットマーク

担当九里原十三里
タイプショート 事件
舞台エクアドル(America)
難度やや難しい
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2019/06/05
結果成功
MDP神崎真比呂(pa0056)
準MDP真純清輝(pa0904)
マクシム・ヴェッカー(pa0436)

オープニング

◆エクアドルの孤島
 火山の名残と荒れた海――この地に特有の鉄分を多く含んだ赤い砂浜の向こうの空には、嵐の予感があった。
 
「だけどめったにある依頼じゃないし。『仕事』は確実に済ませないとね」

 でしょ? と1人の若き怪盗が犯罪社会学講師・張憲永を振り返る。

登場キャラ

リプレイ


「これさ。銃は恐らく42口径。相当痛かったはずだよ」
 鈴木と名乗る医者――真純清輝がイリヤ・ヴォエヴォーダに摘出した弾丸を見せた。
 イリヤは「解せんな」と言って顔をしかめた。
「あの探偵が言う『反動の大きい銃』とやらで撃ったわけか」
「とりあえず、ボクはリネン室をもう一度見てくるよ」
 看護師――神崎真比呂はそう言いながらベッドに寝ているウリセルの額の汗をタオルで拭った。
「同郷のお医者さんのお手伝いついでにね♪ あそこにはなにか残ってる気がするんだ」
「かもしれんな。そういえば……あの探偵はまだあれをやってるのか」
 部屋を出ると、イリヤはホフレのいる食堂に向かった。
 憲永は適当にのらりくらりと質問をかわしていたが、そろそろ疲れてきた顔をしていた。
「探偵、貴様も容疑者だ。勝手に尋問など始められては困る。第一、貴様に何の権限がある?」
 そう言ってイリヤはホフレと憲永の間に割って入った。
「聞けば韓国には兵役がある。彼も元軍人かもしれんだろう。俺のようにな。第一、アジアのあの辺りで銃のない国はその隣の日本くらいのものだ。一緒にするとは浅知恵すぎるぞ」
 しかし、ホフレもまた簡単には引こうとしない。
「たかが2年程度の兵役でこんな体格になりますかねぇ? それに、兵役を終えたばかりの方にしては……」
「まぁまぁ、そのくらいにしようよ。休憩大事だよ? ね?」
 イリヤの後から入ってきた真比呂はそう言って密かに憲永にウィンクした。
 そして、食堂の奥で掃除していたジルとドミンゴに声をかけた。
「あの時の事、聞かせてくれない? ドミンゴさん、厨房から食堂行った?」
「ジルに呼ばれるまであっちで鍋を洗ってた……俺は何があったのかそれまで気づきもしなかったよ」
「ドミンゴは嘘をついてないわ。私がここに呼びに来た時、まだカレーの鍋を洗ってたのを見たもの」
 2人の発言を聞き、真比呂は「嘘だな」と思った。
 眼鏡のディスプレイには言動にはジルには87%、そしてドミンゴには100%の嘘があると表示されていたのだ。

 もう1人の探偵 ――シルフィ・レオンハートはマニーに話を聞いていた。
 シルフィはマニーを疑うのではなく、「信じる」姿勢を見せることで彼に向き合った。
「あなたの無実を証明するためにも、話を聞かせて欲しいの。一緒に犯人を探しましょう?」
「探偵に話を聞かれてる男が犯人なんじゃないのか?! 僕は銃声を聞いたんだ! 撃てたのはあいつしかいないよ!」
「なら、ちゃんと聞かせて。あの時どこで銃声を聞いたのか、どんな音だったのか」
「知らないよ! 覚えてないんだ! でも、あれは銃声だった! 信じてくれよ!」
 混乱しているのか、嘘なのか……マニーは感情的になって喚くばかりで、正確なことを語ろうとしなかった。
 やむなくシルフィはリネン室に向かった。
(あの人以外は銃声を聞いてない……ね……不思議な話ね)
 シルフィがリネン室に入ると、真比呂と清輝が先に中を調べていた。
 マニーがきちんと証言をしなかったと話すと、2人は「ああ、やっぱり」と口にした。
「あの人は残念ながら100%嘘をついてる。今ね、撃たれた時の状況を2人で再現してたんだ」
 真比呂はそう言って、床に散らばったシーツを指さした。
 そこにはまだ撃たれた時に飛び散った血の跡が生々しく残っていた。
「この場所にこう倒れたとしたら……撃ったのは、あの窓の向こう?」
 シルフィはリネン室の奥の窓を開けた。
 建物の裏側は崖だった。
「あの崖を登って窓と同じ高さから撃てば、リネン室にいる社長を狙うことはできる」
 清輝はそう断言した。
「この窓に傷一つないってことは、事件時は開いていたという事。傷の場所、向きで射角からして……間違いないはずだよ」
 そう言うと、清輝は窓の外に顔を出した。
 外壁と窓のアルミフレームには2発の銃弾の跡――銃が外から撃たれたことを示す証拠があった。
「見ると観察じゃ大違い……ってね? 1発じゃ命中しなかったみたいだ」
「じゃあ、どうして誰にも銃声が聞こえなかったの? ここは枕とかたくさんあるけど、こういうのを使ったっていうこと?」
 シルフィは撃たれた際にウリセルが抱えていたと思しき枕を手にとった。
 銃声は何故消えたのか――事件の謎は残されたまま、外の嵐はますます激しくなっていた。


『銃創のダイヤモンドに、銃による殺人未遂。些か出来過ぎとは思いませんか?』
 宝石とミステリー好きの有閑貴族 ――マクシム・ヴェッカーの声がインカム越しに聞こえる。
 イリヤは玄関のドアを開け、外の景色を見ながら「ああ」と返事をした。
「銃はリネン室にはなかった……別のところに隠されているか、犯人が持っているかもしれん」
 荒れ狂う海を睨むように見ながらイリヤは言った。
「事件時、銃声を隠す大きな音もしなかったはずだ。だとすれば、銃は」
 そうイリヤが言いかけた時だった。
 背後で、その「音」は響いたのだ。
「……聞こえるか?」
『ええ。私のいるところからもハッキリと』
「人は論理的な説明を求めず、理論的な説明に合うように事実のほうを捻じ曲げるというが……」
 イリヤは小さくため息をつく。
 通信越しにマクシムが「ええ」と返事した。
『イリヤ、食堂に皆さんを集めてください』

「私はマクシミリアン。彼はイリヤ、私の護衛です。どうぞよろしく」
 マクシムはそう、ホフレに挨拶した。
「夜分にお呼び立てして申し訳ありません。探偵の真似事が趣味でしてね」
 周囲には変装した怪盗たち、そしてホテルの従業員らが揃っていた。
 犯人がわかった――そう言われたホテルの従業員たちは緊張した面持ちで口を噤み、ホフレだけがマクシムに興味深げな視線を向けていた。
「こんな夜だ、第二の事件が起こらないとも限らん」
 イリヤが言った。
「全員集まっていたほうがいいだろう。そして、全員が容疑者だ。身の潔白も証明したかろう?」
 そう言いながら、イリヤは威圧するようにその場の者たちを見据えていた。
 この中に犯人がいる――それはもう、間違いないのだ。
「スペンセル氏の宝石コレクションにも面白いものがあると聞いて伺っていたのですが」
 マクシムはそう切り出した。
「まさかこんなことになるとは……しかし、腕のいいお医者様が居て助かりましたね。美しいお嬢さんたちともお知り合いになれて、とても光栄です」
 そうマクシムが言うと、シルフィがにっこりと笑い返す。
「まず最初に、あの韓国人の先生は犯人じゃないわ」
 シルフィはそう口にした。
「犯人は銃を外から撃ったの。あの時間、外はすごい嵐で、犯人は当然ずぶ濡れになったはず。そして、撃ったのは恐らく建物の裏……あそこから玄関や裏口を通って、衣服を整えて駆けつけるには最低でも10分はかかるわ。でも、先生はマニー、あなたの悲鳴が聞こえてすぐに駆けつけたわ」
 もしも憲永が撃ったのならばもっと時間がかかっただろう。
 その推理を真比呂が継いだ。
「実はここに来る前に知ったんだけど、サプレッサーを付けても銃声って完全には消えないんだってね? 金属音みたいな音は出ちゃうんだって。だけどあの時は……」
 そう言って真比呂はとある人物を見た。
「銃声をホテルの中の人達から完全に聞こえなくする『ある音』がホテル中に響いてたんだ。だよね、フロント係のメアリーさん?」
 メアリーはぐっと唇を噛み、黙っていた。
 彼女はあの時、外からかかってきた電話に出ていたと証言した。
 しかし、真比呂がかけたという電話先に裏を取ると、それが嘘だと判明したのである。
「それがわかったことで謎はすべて解けました。さして難しくもない……簡単なトリックでしたね」
 マクシムがそう、口を開いた。
「あなたは電話を『受けた』とおっしゃいました。しかし、実際はご自分のスマホか何かでかけたのではありませんか? こんな風に」
 そう言って、マクシムはAiフォンの発信ボタンを押した。
 静かなホテル中にけたたましく響き渡ったのは、1つではなく「複数」の着信音だった。
 人の活動が多く騒がしい日中は気づきにくいが、夜になるとその音量の異様さは外の嵐の音の中にあっても際立っていた。
「ありふれた犯罪ほど難しい……なんていうけどね」
 清輝が言った。
「このホテルは従業員数が少ない。だから、いつでも誰かが電話を取れるようにあのリネン室にも子機が置いてあった。音量を『最大』にした状態でね」
「スペンセル氏にお聞きします」
 マクシムが口を開いた。
「犯人の動機は何でしょう? あなたが死んで……得をするのは誰でしょう?」
「ホフレさんにも聞いたほうが良いかもね。ボクとすずきさんが部屋を出て、先生が一服しに行った後、こっそりウリセルさんと話してたでしょ? 『恐れていたことが起きてしまった』って」
 実は鼠ドロイドが張っていた――というのは内緒として。
 真比呂にどうなのかと問われたホフレは「そのとおりです」と返事をした。
「私は事前にスペンセル氏に相談されてここに泊まっていたのです。『命を狙っている者がいる』とね」
 憲永が何かでボロをだすならばとカマをかけ、わざとああやって時間をかけて尋問していたのだとホフレは話した。
 しかし犯人は憲永ではなかった。
「あの時、銃を撃てたのはキミしかいない。そうだよね、ドミンゴ」
 清輝は静かに言った。
「現場に到着するのに一番時間がかかったのはキミだ。もし、ジルが君のアリバイを偽証したのだとしたら。そしてウリセル以外の従業員が全員『共犯』だったとしたら――」

「そこまでだ、姉ちゃん」

 不意に、真比呂の悲鳴が周囲に響いた。
 ドミンゴがサプレッサー付きの銃を手に、真比呂を拘束していた。
 それを見たマニーが「やめろ!」と叫ぶ。

「せっかく上手くいってたんだぞ! ここに来てなんて事を!」
「ルセぇ! もとはといえばてめぇの女が! メアリーがホテル支配人婦人の座が欲しくて言い出したことじゃねえか!」

 そう、ドミンゴは喚いた。

「畜生! 『ウリセルが死ねばマニーが社長になっていい思いができる』だと?! 俺達を利用しやがって! やい! こいつを死なせたくなかったら全員床に……!」

 しかし、そうドミンゴが叫んだ時だった。

「ボクは武闘派看護師さん……舐めないでよねっ!」

 身を翻し、銃を蹴り飛ばす真比呂、そして間髪を入れずドミンゴに飛びかかり組み伏せるイリヤ。
 すべてが終わったと悟り、マニーとメアリーは崩れ落ちるようにして座り込んだ。
 こうして、事件の長い夜は終わり、島にはやがて、朝がやってきた。


「ところで先生、この事件には関係なかったようですが」
 島を出る直前、マクシムが憲永に問いかけた。
「あの時言っていた10……あれは『10個目のダイヤモンド』ということですか?」
「僕もまだ、詳しくは聞いていないんですけどね」

 怪盗たちを前に憲永は言った。

「10個目の銃弾はまだ薬莢(やっきょう)の中……そういわれているらしいですよ」



 10

参加者

b.真比呂は 警察官から 看護師に 進化した!(変装変更)
神崎真比呂(pa0056)
♀ 22歳 刃乗
a.英国の、宝石とミステリーが好きな有閑貴族役でもやりましょうか。
マクシム・ヴェッカー(pa0436)
♂ 27歳 探知
b.御貴族様の用心棒だな。銃やナイフで武装し、わざと疑われる役回りだ。
イリヤ・ヴォエヴォーダ(pa0440)
♂ 25歳 刃乗
a.探偵に探偵はだめかしら…
シルフィ・レオンハート(pa0829)
♀ 22歳 英探
b.犯人特定とまではいかないけど、被害者に触れて分かった事は、共有するよ。
真純清輝(pa0904)
♀ 21歳 探知
 あの、ホフレさん煙草休憩ダメですか? ダメ? えー……(※非喫煙者)
張憲永(pz0033)
♂ 31歳