空の水面に映すは心

担当叶野山 結
タイプショート 日常
舞台Celticflute
難度普通
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2019/07/31
結果成功
MDP真純清輝(pa0904)
準MDPダスティン・ガーランド(pa1171)
斧箭鎌刀(pa1581)

オープニング

◆星空は水に映る
 熱帯夜なセルティックフルート島。
 過ごしやすい服装で、夜を過ごす学生達。
 そんな中で、誰かが言った。
「最近、星空が綺麗に見える。星を見ながら誰かと話して歩きたい」
「どうせなら星空を水に浮かべてみたい」

登場キャラ

リプレイ

◆星空の海に大人の甘さを
 一台のバイクが、砂浜の近くで停まる。
 そのバイクから男女が一組、降りる準備をする。
 イルマ・アルバーニは、着てきた浴衣が崩れないように気をつけながら、砂の混じったアスファルトに降り立つ。
 運転手を務めたダスティン・ガーランドもまた、ライダースーツの前を少し緩め、降りる。
 ボンドカータイプのバイクが倒れないようにセットし、イルマの手を引いて砂浜までやってきた。
 景色を改めて注目してみる。なるほど、黒い海原に星の光が降り注いでおり、そのおかげで海がきらめいているように見える。
 知らず、感嘆の吐息を零したのは、ダスティンだ。
「星空を模したカクテルはあるが‥‥コレは凄い」
「ええ、そうね。‥‥ねえ、ダスティン、浴衣は裸足でいいのよね?」
「ああ、そうだだな。夜とはいえ、怪我したり転んだりしないように気をつけてくれ」
「そうね。気をつけるわ」
 心配してくれた恋人に笑いかけて、彼女は履いていたミュールを脱ぐ。
 足の裏で感じる砂の感触。
 波打ち際まで歩き、寄せては返す波と戯れる。
 一歩進んでは、波が寄せてくるのに合わせて数歩下がり、また近付いては、下がる。その繰り返し。
 彼女が波で遊ぶ度、波の中の星空は一瞬だけ姿を揺らす。
 イルマが転ばぬようにすぐ傍で見守っていたダスティンは、サングラスの奥で目を細める。
 そして、彼もまた裸足になって、イルマと同じように波打ち際で戯れ始めた。
 ひとしきり遊んだ後、二人は波打ち際から離れると、もたれかかれそうな堤防がある場所まで移動した。
 恋人繋ぎを崩さずに波へと振り返り、イルマはダスティンに話しかける。
「楽しいわね」
「ああ。それに、キミの浴衣も花が咲いたみたいで綺麗だ」
「ありがとう」
 さらりと言われた称賛の言葉にも、イルマは冷静にお礼の言葉で返す。この場が夜ではなく昼であれば、彼女の頬が赤く染まっている事に気づけたかもしれない。
 その後は、お互いの話をしていた。
 イルマは芸事の話を。手品を得意とする理由や、音楽を嗜む切掛となった出来事を語る。オペラのヘンゼルとグレーテルが切掛なのだと話す彼女を、ダスティンは愛おしそうに見ていた。
 ダスティンからはバイクと妹弟の話を。バイトをして初めて買ったのがバイクだった事、実妹は可愛くて義弟はいいヤツで二人が認めてくれたから今の自分が居ると語った。彼を見つめるイルマの瞳もまた、愛おしさを含んでいた。
 話も落ち着いた所で、腕時計を見ればかなりの時間が経過していた事がわかる。
「そろそろ帰ろうか」
「ええ。‥‥ねえ、ダスティン」
「どうした?」
「私ね、大輪も小さい花も好きなの」
「そうなのか」
「ペスカトーレも魚介も好きよ。‥‥あなたなら、合うお酒を用意してくれるでしょう?」
 それは誘いか、或いは次の約束か。
 返された彼の言葉を知るのは、彼女と本人のみ。

◆密やかな願い事は海に溶けて
 浴衣姿のユリア・ジェラード一条葵は、海に向かって歩いていた。
『星空を水面に浮かべる』
 その条件に合うと思って浮かんだ場所がそこだったからだ。
 海岸に辿り着いた二人は、海原を見て「すごい」と異口同音に呟いた。
 空には満天の星空、海には煌めく星空が映る。波の動きに合わせて揺れる煌めきと月。
 幻想的な光景に、二人共しばらく声が出なかった。
 時間を置いて呟いたのは、葵の方だ。
「‥‥予想はしてたけど想像以上だな」
「上も下も‥‥空になったようですごく綺麗だね」
 海原に対する称賛の言葉を並べ、二人はもっと近くで見ようと砂浜まで降り立つ。
 波がやってこない所まで来て、ユリアは彼に座ろうと促した。
 小鳥の柄の浴衣が汚れぬようにハンカチでシートを作り、そこに腰掛ける。
 波模様の浴衣を着ている葵も、同じようにして座り込んだ。
 もう一度海の感想を互いに言い合い、笑う。
 「そうだ」と呟いたユリアを、葵はどうしたという顔で振り返った。
 本人は楽しそうに目を輝かせながら、思ったことを口にする。
「七夕の時も、色々願い事したけど、これだけ綺麗な星空なら、また願い事できるかもしれない」
「欲張りだな。ま、ユリアらしいけど」
「真剣だよ」
「はいはい。あ、お願い事と言えば‥‥」
「うん?」
「ユリアはこんな話を知ってるか?」
 彼が語ったのは、流れ星の話。
「流れ星が流れる間に心の中で3回願い事を唱えると叶う、っていう話。カナダにもあるのか?」
「カナダにも昔からあるのかはわからないけど、聞いた事はあるよ」
「ああ、そうなのか」
「探してみようか?」
「流れるといいんだが」
 そう都合よく現れるだろうか。
 疑問は浮かぶが、期待するのは悪い事ではない。それに、本当に来てくれたらとても嬉しい。
 考えを改めて、葵は微笑みと共に肯定する。
「ま、こんだけ綺麗な星空なんだ。きっと見つけやすいだろ」
「うん」
「ただし、願い事はお互い内緒」
「ええー?」
「その方が面白いだろ?」
「‥‥そうだね、そうしようか」
 面白い、という言葉に納得してか、すぐにユリアは頷いてくれた。
 二人で夜空を注目する。出てきますようにと祈りながら。
 流れ星を探すユリアを横目に見ながら、葵は自分の願い事を考える。
 実のところ、彼女と一緒にいるだけで自分の願い事は叶っているようなもので。
 だからか、新しい願い事がすぐには浮かばないのだが、探すのに夢中になっている彼女を見て、彼は願った。
(「隣にいるユリアの願いを叶えてくれ」‥‥これだな)
 願い事を定めると、彼もまた夜空へと視線を集中させた。
 浴衣の裾を押さえながら、ユリアはチラリと視線を一瞬だけ葵へ移す。
(私の願い事はもうかなってるような気もするけど‥‥。葵とこれからも一緒にいたいって)
 果たして、彼女の願いは叶うのか。
 星だけが知っている、二人の秘密の願いごと。

◆星空よりも気になるのは
 色原朔に誘われて、斧箭鎌刀は共に公園へ来ていた。
 夜だからか、互いに制服ではなく私服で、朔は可愛らしいワンピースを着て、洋傘を持っていた。何かに使えるだろう、とは彼女の弁である。
 鎌刀はスッキリしたポロシャツにズボンという簡素な出で立ち。手荷物として小さなリュックを背負っている。足元には彼の愛犬である柴犬がおり、主人を見上げて楽しそうに息を吐いている。
「それで、星空を水面に浮かべるってどうやるつもりなんです?」
「噴水なんかちょうどいいんじゃないか?」
「なるほど、ではそこへ行きましょうか」
 思いつきのままに動く彼女を放っておけず、鎌刀はついていく形で噴水のある場所まで行く。
 たまたま運が良かったのか、噴水の辺りに人気は無く、静かにゆっくりと過ごす事が出来そうだ。
「ちゃんと映っているな。ほら、鎌刀も見るといい」
「こうして見ると空の支配者のようですね。見えませんか?」
「そうだな。では、支配者から少しいただこう」
 そう言って、朔は両手で水を掬ってみせる。
 彼女が掬った水にも星空は映り込むが、手の隙間から溢れていき、すぐに水は彼女の手から無くなってしまう。
 濡れた手をどうしようか一瞬迷い、ワンピースの裾へ伸ばそうとしたのを見て、鎌刀は思わず声で制止する。
「ちょっと待って下さい。何をしようとしているんです?」
「服で拭こうかと」
「ハンカチは?」
「ポケットも無い、荷物はこれだけな私が持っているとでも?」
「‥‥そういうのはちゃんと持ってきてください」
 思わず溜息を零す鎌刀に、朔は「そうだな」と素直に頷く。
 それから、鎌刀は彼女が傘以外に荷物が無い事を指摘して、自分が持ってきた鞄を下ろす。
「寮は近いですから分からなくはないですが‥‥ちゃんとお茶と塩飴と冷感ペーパーくらいは装備して下さい」
「暑さ対策の用意がいいな」
「当然でしょう? 僕の方が一年先輩なんですよ? それに、こんなところで女性が倒れようものなら治安のいいこの島でも何が起きるか」
 鞄の中身を確認しつつ、真面目に返す鎌刀。
 さり気なく朔を女性扱いしてくれていた事に、朔は嬉しそうに笑う。
 彼女の表情に気付かないまま、鎌刀はハンカチを取り出すと彼女に差し出す。
 いたずらっぽく笑う朔を見て、鎌刀は少しだけ嫌な予感がした。
「さすが準備がいいな。ついでに拭いてくれ」
「まったくもう‥‥」
 差し出された手を仕方ないという顔で拭く鎌刀。
 そういう所が甘やかしているのでは、と思うも、口には出さない朔。
 けれども、心地いいと感じる時間。
 二人の足元に居る柴犬が、構ってもらえなくてふてくされているのに気付くのは、まだ少し後の事。

◆兄弟の絆を星に絡めて
 ヴェイン・アルカディアオリバー・カートライトは、兄弟ではあるが同じ一期生だ。
 ゆえに、同室になるのもなんら違和感は無い。
 二人は部屋に洗面器を置き、星空が映るのを楽しんでいた。
 オリバーが、洗面器の中の星空と窓から見える星空を交互に見て、「いいな」と微笑む。
「こうやって水を置けば、部屋の中でも星が映った水面が堪能できるんだな」
「おお、星空綺麗だな!」
「ま、兄弟で何やってるんだって話だけど」
「いや、こうやって二人でゆったり話すこともないし、たまにはいいな」
「それもそうだけど」
 少しだけ落ちる沈黙。
 何を話そう。迷うヴェインに、オリバーが尋ねる。
「‥‥兄貴、両親の話、聞くか?」
 ヴェインには両親の記憶が無い。いつの間にかストリートチルドレンとして過ごしていた彼には、気付いたら両親の記憶が無かったのだ。
 それは、オリバーと再会してからも思い出すことはなく。
 両親の話をちゃんと聞く機会を得た今宵。
 オリバーの迷うような目を見て、ヴェインは笑いかける。
「大丈夫だ。話してくれるか?」
「うん」
 優しい声で促され、オリバーは一つ一つ話していく。
 覚えている限りの事を、少しでも伝えたくて。
 ヴェインの顔は微笑みから変わらない。それが喉の奥から言葉を続けさせてくれた。
 話し終えた後、少しの沈黙を置いて、兄は弟に問いかけた。
「そういえば、オリバーは父ちゃんと母ちゃんが亡くなってから‥‥大変な思いしたんだよな。俺は、オリバーのことも記憶になくて‥‥憎んで、ないか?」
「俺が兄貴を憎んでるかって?」
 言葉を反芻し、オリバーは少し考える素振りを見せる。
 それから、首を横に振った。
「そりゃ‥‥色んな事があったけど、憎んだり、恨んだりなんてしないよ。どっちかというと、兄貴とまたあえて嬉しい気持ちの方が強い。たった二人の兄弟だからさ」
 嘘偽りのない言葉。
 それを受けて、ヴェインは安心したように笑う。
「そっか、そういってくれると嬉しいけど」
 自然と伸びた手が、オリバーの頭を撫でる。
「ありがとうな。ん、いい子いい子」
「なっ?! な、なでなではやめろ」
「はは、いいだろたまにはにいちゃんぶったって」
「もうっ」
 口では怒っていても、その手を払いのけるような動きはない。
 それが、弟の答え。
 じっくりとすごす兄弟の時間を、星空と共に楽しむのだった。


◆深い夜に沈む二人の星空
 神崎真比呂は、部屋の前でソワソワしながら立っていた。
 恋人である真純清輝をデートに誘った所、何故か部屋を指定されたのだ。
 「準備があるから後で」と言われて、真比呂はこうしてここで待っている。
(そろそろいいかな‥‥)
 おそるおそる拳を上げて、ドアをノックする。
「すずきさん、そろそろいーい?」
「どうぞ」
 良い返答が来て、すぐに真比呂はドアノブを回した。
 隙間から見える室内は暗く、真比呂は不思議に思いながらも、ドアを開け放した。
 そこにあったのは、暗闇の中、部屋いっぱいに広がる星空と、ビニールプールに張られた水(プールの下には防水シートが敷かれている)。よく見れば、水の中にも星空が映っていた。
 いつもの部屋が整理されているのもあり、模様替えをした新鮮な気分だ。
「うわぁ‥‥!」
 思わず感嘆の声を漏らす真比呂に、清輝は満足そうに笑い、そして彼女に近付いてその手を取った。
 エスコートしながら、今の部屋の注意点を彼女に告げる。
「まっぴー、暗いから足下気をつけて」
 そして、着いた場所は、プールのそば。
 水面に浮かべられる星の煌めき、部屋いっぱいの星空。全てに対して真比呂は胸がいっぱいになった。
「まるで夜空のプレゼントみたい! す、すごーい! ありがとう、すずきさん!」
 嬉しさのあまり抱きついた真比呂を、清輝は「おやおや」と笑いながら受け止める。
「仕掛けは単純だし、実のところは映像‥‥鏡花水月どころじゃない。けど、ニセモノが本物より楽しめない、なんて決まりはないのさ。手を加えてAR体験とかもできる分、こっちのが凄いかもだぞ」
 誇らしげに言う清輝の発言に、真比呂は「すごいすごい!」と連発する。
 褒めちぎっている最中、真比呂は相手の姿に気がついた。
 首をかしげる清輝に、真比呂は今見たままの事を告げる。
「下から星の光に照らされるすずきさん、とっても神秘的で綺麗だよ。大好き‥‥」
 さり気なく加えられた愛の言葉に、言われた方は嬉しいやら恥ずかしいやら。
 「ありがとう」と返す清輝。
 プールに視線を移し、彼女は呟く。
「水着がないのが残念だなぁ」
「こればかりは仕方ないさ」
「‥‥あのね、すずきさん」
「うん?」
「水着の代わりに、あの水面の星空を纏って浸るのはどうかな‥‥」
 恋人の顔をする真比呂を見て、清輝は静かに見つめ返し、今度は彼女から真比呂を引き寄せた。
「キミのための星空さ‥‥お望みとあれば、共に沈もうか?」
 指先が服の上から星空をなぞる。
 熱い吐息と共に星空のシーツが揺れたのかどうかは、二人だけしか知らない。
 そんな秘密の深い夜を、半分の月だけが知るのだった。



 9

参加者

c.水に浮かぶ星空とすずきさんの瞳に映る夜空、どっちも見たーい!
神崎真比呂(pa0056)
♀ 22歳 刃乗
c.はいはい、いいこいいこ
ヴェイン・アルカディア(pa0074)
♂ 24歳 刃忍
a.心地良いわね…
イルマ・アルバーニ(pa0239)
♀ 20歳 探魅
c.星空の逢瀬ってのは、誰にも邪魔されず、静かで……そんなのであるべきさ。
真純清輝(pa0904)
♀ 21歳 探知
a.ああ、イイ時間だ。
ダスティン・ガーランド(pa1171)
♂ 27歳 乗魅
c.なっ?!
オリバー・カートライト(pa1468)
♂ 22歳 忍魅
b.それでは駄目ですよ。ほら、これとあれと…
斧箭鎌刀(pa1581)
♂ 20歳 刃知
a.ねえ、葵。海に星に、ロマンチックだと思わない?
ユリア・ジェラード(pa1688)
♀ 20歳 英刃
a.予想はしてたけど、想像以上にロマンチックだ。これ。
一条葵(pa1712)
♂ 20歳 刃乗
b.ふふ、楽しみだな。なんてことない遊びだが、こうしてここへ来るのがいい。
色原朔(pa2372)
♀ 18歳 英超