君のゆく道 僕がきた道

担当八島礼
タイプショート 授業(島内)
舞台Celticflute
難度易しい
SLvC(紛争地域、島内)
オプ
出発2019/11/24
結果普通
MDP神崎真比呂(pa0056)
準MDP真純清輝(pa0904)

オープニング

◆進路面談
 年末も近づいた11月。世間ではクリスマスの準備に忙しく、ショッピングモールを歩けば賑やかなクリスマス仕様のショーウィンドゥが道行く人の目を楽しませる。
 そんな寒さに反比例した高揚の秋。UNICOの学生達は教室に呼び出され、講師と差し向かいで進路についての面談を受けていた。

 なお進路面談は今回が初めてでも、特別という訳でもない。学生の希望を聞き、的確にそれぞれの能力や達成度を鑑みて指導を行うため、何人かの有志の講師により断続的に行われているものである。
 今はダブルオーの関与も囁かれるヴァルツェン公国に多くの学生をBICOの準捜査官として派遣している最中ではあるが、徐々にダブルオーの実態に迫り、決戦の日にも近づきつつあるのを肌で感じ取ってもいるだけに、学生達の間でも自ずと未来の選択を意識するようになってきてもいる。

登場キャラ

リプレイ


「ここに入る前はさ、捜査官になって悲しい思いをする人を減らしたかった。自分のように理不尽な事件によって大切な人が奪われるのを見たくなかったんだ。犯罪は人の人生を変えてしまうから」

 放課後の教室窓から覗く海岸は、水平線に沈み始める夕陽とは逆に、どこかセンティメントを浮かび上がらせる。
 オリバー・カートライトが講師相手に漏らしたのは、心に決めた目標の変容。
 否、増殖する目標。

 一度は挫折した音楽の世界で生きる道。
 だけど愛する女が美容技術を上げよう、生かそうと頑張っているから、自分も目指したくなる。
 学長は両立出来るとは言ったけど、中途半端になって彼女を失ったり、音楽で生計が立てられずに苦労させるのではと不安にもなるのだ。

「自分がこんなにも弱くて、こんなに欲張りになるなんて思わなかった。先生ならどうする? どちらかを選ぶか、両方取るか‥‥」
「彼女を取るならBICOは勧めない。ましてや音楽も捨てきれないのならなおさらだ」

 グリフィズ は婉曲的に答えは一つしかないと言う。

「BICOに入らなくても悲しい思いをする人を減らせるかな? もう少し冴香と話し合ってみるよ。これは俺一人の問題じゃないから」

 そう、これかは二人の問題。
 二人は共に在ると誓ったのだから。

 夕陽を浴びるオリバーの前髪には赤く染められた一房。
 それは沈みゆく陽が海に作る一筋の道に似ていた。


「帰る家がある訳でなし、雇って貰えるならここに骨を埋めることになるんじゃないかな?」

 タキ・バルツァは当然とばかりに窓の向こう、沈む太陽を眺めながら質問に答える。
 日が落ちた先にあるのは家々の灯り、家族団らんの時間。
 それは自分の知らないぬくもりに満ちていている。

「ギアの事もあるから医療的にも技術的にも完全に縁を切れないし、それなら完全サポートを受けられるほうがいいよね。よしだを取り上げられても困るし」

 己を見下ろせば膝の上にいるのは猫型ドロイドの『よしだ』と、機械の腕。
 目も耳も、手も足も、そして慰めてくれる可愛い相棒さえも皆、ローゼンナハトに与えられたもの。
 同じ境遇のビグマリオ仲間もUNICOに入ったからこそ得られたものだ。

「まぁ、放流されてもろくな生き方は出来ないだろうし、有効活用できる所がありそうなら、かな」
「チラッチラしてこっちがスカウトするのを待つとは素直じゃないな! このツンデレめ! 貴様はBICOに就職だ!」
「先生、それ、スカウトじゃなくて『命令』」

 よしだを撫でながらジャックにツッコミを入れ、窓の向こうに点り始めた灯りを見る。

 見て見ぬふりは出来ず、安全なところに引っ込むのも性に合わない。
 だからきっと他の誰かに求められるなら危険を承知で任に就くだろう。
 そして誰かの家に灯りが点り続けるのを遠目に見ながら守り続けるのだ。


「俺はひとまずこのままBICOを目指す」

 断言する青年の肌は宵闇の黒を仄かに染めたような肌をして、だけど瞳は真っ直ぐな光を湛えていた。
 前線で戦う方が性に合っている。
 かつての自分のように洗脳されて戦わされているのを見るのは我慢ならない。
 それからコネクターだった頃に洗脳され犯した罪を償うためにも。

「いい面構えだ。覚悟も決まっているようだな。お前なら良い捜査官になるだろう」

 決意を受け止めるグリフィズは心の内を読んだように頷いた。

 犯した罪は決して消えないことイーノク・オルティスは知っている。
 クリスチャンである彼は罰を受けて地獄の業火に焼かれる覚悟もしている。
 だからこそ飛び込める戦場があるのだと。

「カラーガードになりたいって言う夢もあったりはするけど、手足のことを言い訳し続けられるものではないからな。だったらその道は進むべきじゃ無いのだろう。それでも好きだから練習は続けているけど」

 大きなフラッグを回して颯爽と鼓笛隊を引き攣れて歩むカラーガードは花形。
 警察音楽隊も考えはしたが、元コネクターが一般の警察に入れるものなのかも分からない。
 だが夢とは違う道を行けど、夢を捨てた訳でもないと。

「BICOで軍学隊でも作ってみるか?」
「いいな、それ。歌や音楽が得意なヤツもいるし」

 祭典で先頭を切る自分を想像し、イーノクは思わず笑みを浮かべた。


「グリフィズ先生、毎年こうやって話を聞いてくれましたね。ここに入ってから自分の進みたい道を私は見つけることが出来ました」

 かつて連れて逃げてくれと抱きついてきた少女、花鼓紫は、三年を経て大人の女の顔で講師と向き合っている。
 初めての口付けは強請って講師から教えて貰った。
 だけどそこから先の初めては任務のためだった。

 任務のためなら割り切れるようになったのか言えば、心は体ほど強がれないけれど。
 それでもこの先を行くには必要なことと言い聞かせた。

「身につけた医療技術で人を救おうと思います。捜査官としても頑張っていきたいと。だから先生‥‥卒業した後も私は、今の私なら先生の隣を歩くことは出来ますか?」

 それとも先生と生徒でなくなったのなら夢は醒めてしまいますか──

 続く言葉は想いごと嚥下して胸に秘めた。

「仕事なら配属先次第。私生活なら答えられない。戦闘バカの俺には想定外の質問だ」
「先生は戦闘バカじゃないですよ。私のことも、他の生徒のことも、よく面倒を見て下さいました。だから恋愛関係‥‥とかではなくても、先生達をサポートしていけるような、そんな人間になりたいと思っています」

 紫は変わらぬままな男に向けて微笑んで告げた。
 きっと何だかんだと言いながら助けに来てくれる、そんな気がして。
 だから今度は自分が、彼に手を差し出すのだと。


「先生には、相棒っている?」

 真純清輝はいつもと変わらぬ茫洋とした調子でグリフィズに質問を投げかける。
 戦場で安心して背中を任せられる友、後方支援に絶大な信頼を置く友、そんな相手がいるのかと。

「さあな。もしいると言ったら?」
「要は支えたい相手か出来たので、本職がバックアップに求めるものをご指導願いたく。愛情で喜ばせても死地に行かせちゃ意味がない」

 心なし神妙になって理由を言えば、自分が見えてない物を代わりに見てくれると助かるとの返事。
 戦場にあっては背中についた目となり、捜査においては広い視野と深い見識で多角的に考えろと。

「よく分かりました。どんな理由や美学があろうとも、犯罪ってのは好かんので。だから進路は純粋に捜査官になると決めましたよ」

 そう言う清輝はいつも通りの曖昧な半笑いだけれど。

 そこには強さがあった。
 間違いなく目標があった。

 理想に向けて一直線に走って行く彼女のため、どこまでも走っていけるように、邪魔はさせず、時に過ちを正し、知恵と知識とで併走していく。
 それは清輝だけが出来ること、清輝だけの特権。

「なるべきはuomo universaleってヤツかな。ダヴィンチらしい万能のサポーター。シャーロックとしても名探偵になってみせるよ」
「体力も付けないと置いて行かれるぞ、あいつ、早いから」

 楽しみにしている、と講師は笑って清輝に言ったのだ。


「学園に来て、たくさんの犯罪を目にしたけど、準捜査官として関わった事件だけでこれなら、実際にはもっと多くの悲しみが溢れていると思うんだ」

 夕闇の匂いのする空気を大きく吸い込んで、神崎真比呂はこれまで出会った人達の悲しみを思い出す。
 自分の中の、人には語らぬ苦しみと憎しみ、それから悲しみを。

 悲劇を一つでも減らしたい。
 自分と同じ思いをする人が出て欲しくない。
 そんな願いは迸る情熱の炎となって、夕暮れの残りが真比呂の髪を赤く色づかせる。

「だからボクはBICOの捜査官になって、実働部隊として犯罪から一人でも多くを救いたい。ボクの全てを正義を為す力として振るいたい。だけど一人じゃ何も出来ないと思う」

 超越した特化技能を持つ反面、不得手なことも数多ある。
 でも今は世界で一番頼れるパートナーがいる。
 誰よりも冷静で、誰よりも信頼できる、暗くなれば行く道を照らし、後ろに迫る闇を見据えてくれる、そんな相棒が。

「でもすずきさんと一緒なら迷わず全力で目指せる。すずきさんがいれば何も怖れるものなんてない。アイルトンとして闇を駆け抜け、ランスロットとして闇を切り裂く正義の刃を振るってみせるよ!」
「それでいい。だが任務でプライベートのパートナーと常に一緒とは限らないからな?」

 苦言を口にするわりには面白そうに目を撓ませて、グリフィズはそのまま突っ走れと激励してくれた。


「グリフィズ先生の部屋の荷物番はむしろ僕の命が色々と危ないですからね。どうなるかはその時次第、ではありますが‥‥」

 メレディス・メイナードは軽率に地雷を踏みに行った後で、慎重に前置きして己の未来の展望を語り始める。

 教官という柄では無い。
 だけど怪盗として自由奔放に美学を貫くのも違う気がする。
 捜査官としてガチな事件現場に投入されるのもたまらない。

「BICOの調査員、とかでしょうか。捜査官では無く、事前調査などにご協力出来ればと。僕達学生が任務をこなせるのも彼らのおかげですから。現場で触れてみないと分からない情報もありますしね」

 これまで経験した捜査官としての仕事は下調べが済んだ状態で下されることが多かった。
 名も知らぬ誰かが、捜査に必要となる情報を先に入手して道を開いてくれたもの。
 同じように自分も知恵を働かせ、道なき道を切り拓くのだと。

「必要とされない場合もあるでしょうし、あくまで希望、として。それに一緒にいたいと思う方もいますしね」
「今、『正式に捜査官になると彼女と一緒にいられないから、調査員にしときます』と聞こえたぞ」
「勝手に穿った見方をして僕の心の声を代弁しないでください」

 メレディスはツッコミを入れるけれど、卒業してもきっと、あれを調べろこれを調べろと、使い倒されるんだろうなと。
 間もなく沈みそうな夕陽に視線を向けて思ったのだった。


「‥‥色々とまだ悩み中です。向き不向きは分かるのですが、やりたいこともたくさんあって」

 頬に手を当て小首を傾げる女の横顔を、夕陽が紅を刺すように照らしている。

 中藤冴香の平凡美人な顔は化粧によってわざと目立たなく繕われたもの。
 素顔は残照の如き華やかさでも、冴香は目立つことを望んではいなかった。

「BICOの後方支援専門の捜査官として雇われるか、表向きスタイリストとして働きながらローゼンナハトの怪盗か、それとも外部協力者として働くか」

 武力に乏しいのは熟知している。
 むしろ鑑識や調査に向いていることも。

 だけどUNICOに入学して任務に応じた様々な変装技術を学ぶうち、美容の道を極めたいという欲も湧いてきた。
 調査と美容、両立させるのなら怪盗業の表向きに働き、自身がコネになるのも手だと。

「将来的には実家を継がないといけない可能性もあるのですよね。好きな道を選べとは親から言われているので、あまり心配はしていないのですが」
「戦闘を避けてメイクを生かしたい、というのであればBICOよりは外部向けだろう。実家のことがあるなら尚更だ」
「やはりそうですか。それならそちらの方向で考えてみますね」

 冴香は夕陽を浴びてグリフィズ微笑み返す。
 化粧の下に素顔を隠すように、心の中に恋人のスタイリスト兼マネージャーもいいなどと思ったことは隠して。


「ここにはヒントを求めてきたんだけど、簡単じゃないって再認識させられたよ」

 ゲルト・ダールは神を信じない。
 神や運命と名の付くものに反逆心を抱いてきた。
 神や運命の名の元に圧制や粛清を容認し、戦争を引き起こす者達を。

「戦争を止めるには一人の力じゃ足りない。だから、扇動者にでもなろうと思ったんだけどね。だけどそれは転がり出した流れを後から修正できない、危険すぎる、って」

 武力以外で戦争を止めるリミッターになれるのか。
 民意を動かし悪に挑むのは間違った正義の執行になりはしないか。

 そう考えれば怖くなる。
 父を奪った戦争に対する復讐心が、ゲルトを突き動かすものの正体だから。

「最近、別の道もありかなって思えてきたんだ。戦災孤児を集めた孤児院。そういうの作って運営していくために世界の善意を集めたいんだ」

 ゲルトは進路のその先を語ると、ジャックが高笑いして激励する。

「いいじゃないか! 俺が応援してやる! で、結局進路はどうするんだ? 怪盗でもBICOでも稼げるが、善意、ということは浄財を集める気だな!?」
「うん、僕はエンターテイナーだから。僕のように戦争で大切なものを無くした人達が笑って生きられるように、笑顔を引き出すよ。どっちに進むかはもう少し考えてみる」

 ジャックの拍手を浴びながらゲルトは窓の外を見る。
 それは一日の終わり、グランドフィナーレに相応しい華やかな日没だった。


「UNICOは捜査官と怪盗の両方を目指す場所と思っていました。ソル先生も両方の顔をもっていらっしゃいますよね?」

 フロウティア・モリスンは何故問うのかと言いたげに向かい合う男を見つめる。

「俺はBICOの捜査官だ。それ以外にはない」

 あくまでも二つ名だと告げた後で脱線した話を正す。
 水平線に沈みゆく日の残滓を浴びながら男はフロウテイアに先を促した。

「そうですね、どちらかを選ぶなら捜査官の方が向いているとは思います。怪盗は法を犯すもの。人を欺くもの。どうしても後ろめたく思ってしまいますから」

 美術品の保護のため、正義のために盗み出すのだとしても、盗まれた側の気持ちを思う。
 そうすることでしか守れないものがあるのだと知った今でも。

「美術品も、人の命も、捜査官でないと守れないものがあります。逆に怪盗なら守れる場合も。そう考えると怪盗であることも必要ではないかと思うのです。それに‥‥」
「なんだ」
「世界最高の怪盗になる夢を諦めていませんから」

 貴方の心を盗めるような──

 そう心の中で付け足すけれど、その心はいつになったら盗めるのだろう。
 いつになったら自分を見つめてくれるのだろう。

「二足わらじを履いて到達出来るほど容易くないぞ」
「そうですね、難攻不落です」

 分かっているのかいないのか。
 太陽という意味の名を持つ男を見つめながらフロウティアは微笑んだ。


「家に帰るのはあり得ないし‥‥、怪盗は‥‥俺、花形じゃないし‥‥。UNICOの講師は‥‥向いている気がしない‥‥。協力者は‥‥なんかヤだな‥‥。BICOの捜査官は‥‥この前先生にボコボコに言われた‥‥」
「‥‥お前、まだ根に持ってるのか」

 おそるおそるチラリと講師を上目遣いに見れば、グリフィズが半眼となっている。

 あれも駄目、これはイヤ、ぐちぐち、ねちねち。
 ディルク・ベルヴァルドは講師にボコボコに言われたことを忘れてはいなかった。

 補佐に向いている自覚はある。
 BICOの捜査官になれたらいいなと思っていた。
 だけどどこに自分が向いているのか見えない。

「皆の役に立ちたいとは‥‥思うけど‥‥どうしよう‥‥?」
「どうしよう、ってお前、自分で決めろ」

 冷たい視線と言葉がかえってくると、ディルクは縮こまり、ますます何も考えられなくなる。
 そんな彼に痺れを切らしたか沈黙ののち30分を経過した頃、講師は渋面を作って言った。

「迷うならBICO入りをまず考えてみろ。方針や指示を出して貰った方が迷わすに済むならそっちの方が楽だ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。向いてるとかじゃないんだ‥‥‥‥」
「消去法だ」

 夕陽は沈み、これから闇が来る。
 どこを歩めばいいのか分からなければこちらを歩けと言うのを、ディルクは少しだけ納得する。
 夕陽が水平線に残した光の道、それを追えばいいのだと。



 9

参加者

a.ボクが……ボク達が目指す道、経験豊富な先生から見るとどうなのかな?
神崎真比呂(pa0056)
♀ 23歳 刃乗
a.どうなるかはその時次第、ではありますが…
メレディス・メイナード(pa0098)
♂ 22歳 探魅
a.よろしくお願いします。
フロウティア・モリスン(pa0099)
♀ 22歳 忍知
z.よろしくお願いします。
紅嵐斗(pa0102)
♂ 20歳 英忍
c.んと……どうしよう……
ディルク・ベルヴァルド(pa0112)
♂ 24歳 乗知
c.卒業後、か……。
ゲルト・ダール(pa0208)
♀ 23歳 知魅
c.…色々と悩んでしまいますねぇ……
中藤冴香(pa0319)
♀ 25歳 探魅
a.話すべきはありたき姿。不足や必要なものを指摘されたら、学べばいいのさ。
真純清輝(pa0904)
♀ 22歳 探知
a.先生のお陰で決めたことがあります
花鼓紫(pa0975)
♀ 20歳 知魅
c.大切な人と歩いていきたい…そのためには…
オリバー・カートライト(pa1468)
♂ 22歳 忍魅
c.まあ、行くあてがあるわけでも無いし、ね?
タキ・バルツァ(pa1565)
♂ 23歳 忍機
c.将来、なぁ…
イーノク・オルティス(pa1600)
♂ 24歳 英機