【炎の剣】邀撃のブルゴス

担当八島礼
タイプショート 授業(島外)
舞台スペイン(Europa)
難度やや難しい
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2020/01/04
結果成功
MDPメレディス・メイナード(pa0098)
準MDPフロウティア・モリスン(pa0099)
エルミラ・ベルトラム(pa1648)

オープニング

◆炎の剣
 月が変わり、年が明けた。
 昨年末に起きたダブルオー絡みの案件──ヴァルツェン公国の騒動、さらにはUNICO襲撃のせいでクリスマス気分も半ばぶっ飛んでしまった学生達であったが、新年を迎えるとそれなりにいつもの日常が戻りつつあった。
 とは言え、ダブルオーに攻め込まれたという事実は消えず、今は互いに体勢を立て直すまでの小休止といった感じで、今後の対立激化に備えることが急務には違いないのだが。

「揃ったな、これで全員か。早速だがスペインの英雄エルシドは知っているか?」

登場キャラ

リプレイ

◆配置
 空港で待ち受けていた車に乗り込みブルゴス博物館へと急行する。
 どのくらいアドバンテージが築けるかは到着時刻との勝負。それを車中から一人行動を開始し、見取り図だけでは分からない実際を事前に把握、勝利へと一歩近づけた者がいる。
 エルミラ・ベルトラムのフェイスギアには最新鋭のOS[AsuraSYS]が搭載されていた。

「侵入、成功。大丈夫、まだ敵は来てない」

 淡々と管理システムへ接続したことを告げ、次々と監視カメラの映像を自分の《目》とする。ノートPCのモニターには正面玄関の映像が映し出されていた。

「こっちは全員配置済みだ。‥‥っと、どうした鎌刀?」
「強襲するなら突入先と脱出口は違うはずです。玄関から展示室までのルートとは別のコースを辿るでしょう。恐らくは搬入口……通用口より早く路上に出られますから」

 オリバー・カートライトは後輩である斧箭鎌刀を振り返る。
 彼もまた知略に優れたダヴィンチの一人。Aiフォンに転送された道路地図と設計図面を見比べて予想を立てる。
 イーノク・オルティスもその意見を推した。

「美術品運搬用の車で待機している仲間がいるかもしれない。車は警戒しといた方がいい」
「だな。なりふり構わず正面突破と見せかけて別のやつが奪って逃げるパターンもありか」

 イーノクが搬入口のメレディスに連絡する中、オリバーもまた通用口のフロウティアに回線を繋ぐ。

「搬入口は最注意でしょうね。トラックで重火器や戦闘要員を運び入れることも出来ます。そうなると僕に出来ることは……」

 メレディス・メイナードは展示室から搬入口までの予想経路を割り出した。展示室待機の仲間が罠を仕掛けるためには初動を遅らせる必要がある。
 一方、通用口のフロウティア・モリスンは如何に戦闘による被害を最小限に抑えるか、ひたすらそのことを気にしていた。

「アントルティーナを傷つける真似はしないでしょうが、他の展示品も心配です。いっそすんなり通してしまっ方が……」

 彼女の父は美術商。美術品や歴史遺物に対する愛着は父親譲り。彼女にとっては全て守り、遺すべきものだ。
 その為に出した結論はメレディスと同じ、わざと通りやすい道を作っておき誘導するということ。

「わかったヨ! 罠を設置して迎え討つネ。タキと一緒に最後の砦になるヨ! 時間稼ぎは頼むネ」

 インカムでメレディスの指示を受けたエラ・ウォーカーが張り切る。展示室内に罠を張り巡らせ、アントルティーナに敵を近づけないために。

「さて、僕も準備しようかな。展示室まで到達せずに済んでくれれば一番なんだけど」

 タキ・バルツァはアントルティーナの間近で待機。
 展示物を破壊させず確実に敵を仕留めるにはどうすればいいか、建築工学に長けた彼は展示ケースの配置を、それから天井を見て戦術を練る。暗闇の中行動する敵をも見逃すまいと、暗視効果付きのフェイスギアを装着して。

◆激突
『正面、来たよ』

 エルミラが短く敵の到来を告げて間もなく扉が破られた。幸いだったのは初手から重火器が使われなかったこと。

(なりふり構わずってよりマシか。だったら……!)

 物々しい武器を持ち込むような敵に正面からぶつかれば、より強硬な手段に出られかねない……と言うのが犯罪心理に通じたメレディスの言だった。
 オリバーは耳を飾る紅玉のイアリングを千切り取るように外すと、エントランスホールに侵入した者達へと投げた。

 煙が立ちこめる。
 擬装煙幕弾の破裂に完全に虚を突かれた視界を奪われた敵めがけ、オリバーが回転ヨーヨーを放つ。敵兵全てを片付けられぬのなら展示室に入る前に重火器は潰しておこうと、それは自動小銃に巻き付いては刃が鉄を削り破壊する。
 だが敵とて武闘派。煙幕が収まりかけたとき、オリバーめがけて弾丸が放たれる。

「オリバー!」

 殺気を感じ取ったイーノクが叫ぶ。
 身に危険が迫っていることを瞬時に察したオリバーか咄嗟に身を躱す。
 持ち前の運動能力か、それとも神業か、弾丸は頬を掠めただけ。すかさず反撃に出る。
 指輪から放たれるレーザー光線が敵の動きを留めると、格闘用に特化されたボティーアーマーの鋭い爪を腹へと食い込ませた。

「ここから先は通さない! 逃がしもしない! お前達には聞きたいことが山ほどある」

 イーノクはレッグギアのモーターブレードを蹴り急速接近。その手には分割して二槍と化したファントムランサーがある。
 美術品を破壊しないためにはエントランスで武器を奪うか無力化したい。その上で逃がさぬ算段が必要だ。

 ローラーが床を滑り、時速100キロのランスチャージが敵の火器を粉砕する。人ならざるスピードに度肝を抜かれた敵は足払されて転倒、そのまま意識を失った。

「ふむ。待ち構えられていたと知ってなお撤退せずに突入しますか。いいでしょう、こちらもその気でいきます」

 鎌刀は二人が阻みきれなかった敵が展示室へ向かうのを見下ろすと、ビームブレードで斬りかかる。
 そう……彼は見下ろしていた。ファントムワイヤをエントランスの照明に巻き付け、天井から彼らの動きを一望していた。
 敵は確かに荒事に慣れているようだが、軍人として統率が取れているのとは違う。そしてイーノクが感じ取っていたように誰かから厳命されているのか、待ち伏せされていたと知っても作戦変更して撤退することはしない。

 天井から奇襲をかけ斬り付けると、またすぐにワイヤーで自身を引き上げて壁を蹴り、別の敵へと挑む。
 ファントムアイで暗闇さえ物ともせず、糸一本で中空を自在に動く姿はまるでアメコミのヒーローのようだった。

「数が多いな、事務室の方へ回ったぞ……!」
「待て、イーノク。重火器持ち以外は無理せず先に行かせた方がいい。爆発物を使われたら終わりだ」

 ブレードで追いかけようとするイーノクを制止したのはオリバーだった。

「ええ、事務室へ回ろうとする者も優先的に、ですね」
「それなら俺は搬入口に回る」

 鎌刀もまた攻め手が多岐のルートを取らぬよう行く手を誘導する。
 イーノクは外へ出ると急ぎ一人搬入口で敵と相対するメレディスの応援に向かうのだった。

◆搬入口
『運搬用のトラックが1台。助手席に一人いるね』

 搬入口の前に止まる不審な貨物車。一見それは運送業者のようにも見え、運転席と助手席の二人は変装までしている。搬入口横の扉を破壊すると、内部操作でシャッターを開閉。トラックを中へ入れる気のようだが。

(残念でした。そう易々とは行かせません。こんなこともあろうかと車を移動しておきました)

 物陰に潜むメレディスが心で呟いた。
 自分達の乗ってきた車と公用車のライトバン2台を車庫内シャッターギリギリに移動。シャッターの中に車を入れられぬよう敵の出鼻を挫く。
 さらには資材運搬用のカートを搬入口から作業室へと向かう通路に放置し、巧妙な妨害と誘導を仕組む。
 邪魔な車は置いてあるが人は通れるし、ゴールである作業室の入り口は見えている。そのことが彼らに破壊ではなく迂回という手段を取らせる。だがそれは時間稼ぎだけではない。

(戦力は削らせて貰いますよ。ええ、きっちりと)

 潜入技術担当講師をモデルにしたというペンダントのおかげもあってか隠密系技能は強化され、敵は作為であることも彼が潜んでいることにも気づかない。
 一列に並んで作業室へと向かう戦闘員に向けて自分専用のトランプを投げると、声も出せぬまま一人減る。一方で先に向かった者からは驚き声が上がった。作業室手前に仕掛けたカルトロップを踏んだのだろう。

(……爆破されなくて良かった。それじゃそろそろフロウ先輩を手伝おうかな)

 車に乗っていたエルミラは行く手を阻むものとして車ごと爆死せずに済んだことに安堵しつつ、防火システムを順次作動させた。

◆通用口
 搬入口と違うのは、通用口から侵入してきた敵が少数で、なおかつ隠密行動を行っていたこと。

(目的は警備システムの掌握でしょうか。それももう既にエルミラが抑えていますが……破壊されないに越したことはありません。それとも……)

 如何にエルミラの技術が優れていようが、コンピュータ・ネットワークを物理破壊されてしまえばコントロール不能となる。また正面玄関に向かったものは囮、こちらが本命でないとも限らない。

 通用口を小走りする3人をフロウテイアが追う。鍵のかかった場所は意図的に解除し誘導すると、闇に潜んで奇襲をかける。

 白い羽根が闇を切り裂くように飛んで黒服の男を掠めた。
 男には何かが掠った程度にしか思えなかっただろう。だがその羽根には彼女自身が調合した特殊な神経毒が含まれ、忽ち意識を奪う。死にはしないが当面目を覚ましはしないはずだ。
 頽れた仲間に驚き振り返る男人を襲うのはフロウティアのネイルに仕込まれた毒。切り裂かれた衣服からたちどころに薬が回る。

 もう一人がフロウティアを狙い発砲するとそれを回避。

先生 を失望させるのは一度でたくさんです)

 彼女の優れた耳は引き金を引こうとするわずかな動作音さえ捉えていた。
 いつぞやは最後の最後に子どもだと油断して撃たれた。そのことがフロウティアの心に強く残っている。

「こちら制圧完了。防火シャッターを上げても大丈夫です」
『了解。敵を通します』

 インカム越しに後輩に指示を出すと防火扉が上がった。
 複数のルートを辿れぬよう、各個撃破しやすいよう、そして搬入口から突入した者達と合流されないよう仕組んだ罠が解除された。

◆展示室
『正面から2、搬入口から5、通用口からはなしだね。まあまあかな、扉壊されたくらいで済んでるし』

 監視カメラに映る映像で残る人数を把握しエルミラが告げる。
 これまでのところ作戦は上手くいっている。無理して阻止しなかったことが逆に爆発物の使用を抑える形となったが慢心は禁物。

「ユー達が足止めしてくれたおかげで罠を準備することができたヨ! 後は任せておくネ。むしろ逃げた場合のことを頼むヨ!」

 クロウのマントで身を隠したエラはインカムで告げると、赤外線探知機能の付いたコンタクト越しに展示室内を眺めた。隠れてもこちらにはお見通し。温度感知で蠢くものの存在を逃がすことはない。準備も万端だ。

「かかったネ!」

 正面から突入しアントルティーナに向けて小走りする敵が、突如何も無いところで躓いて転んだ。
 何もない……そう思うのは誤り。彼らに見えなかっただけ。展示ケースを利用して足首の高さに張り巡らせたワイヤーが足を掬ったのだ。
 何が起きたのか分からぬ敵に足音を消したまま接近。威力特化型の暗殺者のリボンで追撃する。

「罠と不意打ちこそが忍者の特技ネ! 危ないものは使わせないヨ!」

 瞬く間に二人を討ち取るエラだが、その彼女めがけて新たな敵が迫りくる。搬入口で討ち漏らした者が辿り着いたのだ。

「そっちには行かせないよ。アントルティーナを奪わせて捕まえるというのも手だけど、触れさせないのが一番だからね」

 立ち塞がったのはタキだ。
 だが敵は彼の姿を見つけることは出来ない。何故なら彼はAG[スパイダー]で天井に張り付いて待機、展示室全体を俯瞰していたからだ。最終地点で待機、そこに到達させずに討てるなら移動する。そんな作戦を彼は考えていた。

 天井を縦横無尽に移動し敵の背後に下り立ちながら絶打を繰り出す。
 誰が天井を動き回れる者がいると思うだろう。彼らはタキがかつてコネクターとして改造された強化人間であることを知らない。不意打ちに気づいて振り返っても、もう既にレッグギアのジャンプ力でまた天井へと消えている。
 爆発物を投げつけようとする敵に煙幕で視界を奪い、そして手にあるものもまた奪う。

 罠と気づいた数名が逃走を計る。
 それを待ち受けていたのはフロウティアと、事務室を通り先回り、ルートを予想していた鎌刀だ。作戦の失敗を連絡しようとしても既に車内で待機していた敵の仲間はイーノクによって潰されている。
 メレディスもまた車を使用出来ないようパンク、逃走防止の工作を施していた。

『ここは私の領域。好きにはさせない。これで全部だね、お疲れ様。怪我した人は車まで来て。治療するから』

 最後の一人をタキが討ち取ったのを見届け、エルミラが告げる。後はBICOに犯人を引き渡して背後関係を探り、アントルティーナをどさくさ紛れにすり替えるだけだ。

◆疑惑
 遅れて合流したベイリー・フェルト がにこやかに模造品を持参。撤収前にすり替えが行われ、任務は終了となるはずだったが。

「どうかした? 何か気になることでも?」

 すり替え作業を手伝っていたタキが問うが、ベイリーの歯切れは悪い。

「偽物かもしれないと言いたい訳だな?」
「え!? ミー達が守ったこの剣が偽物ってこと!?」

 グリフィズがベイリーの言いたいことを察して代わりに言うと、エラが驚いて声を上げる。
 彼女はタキと共に展示室にいた。その間警備員も待避させ、学生達以外は誰も展示室には入れなかったはず。

「まさか最初から偽物だったのか? 俺達よりも早く盗んだ奴が?」
「ダマスカス鋼じゃない。だからアントルティーナじゃない」

 オリバーが皆も浮かべたであろう予想を口にするとエルミラが頷く。

 何のために戦い、何のために守ったのか。
 学生達の心に一抹やりきれないものと謎とが残された。



 8

参加者

c.時間がありませんが、出来そうな事をやってみましょう。
メレディス・メイナード(pa0098)
♂ 22歳 探魅
b.私は通用口から行こうと思います。
フロウティア・モリスン(pa0099)
♀ 22歳 忍知
z.よろしくお願いします。
紅嵐斗(pa0102)
♂ 21歳 英忍
z.建物内部に罠を設置し、迎え撃つネ。最後の砦を担当するヨ!
エラ・ウォーカー(pa1057)
♀ 24歳 刃忍
a.人が少なそうだから正面玄関で…
オリバー・カートライト(pa1468)
♂ 23歳 忍魅
z.僕は館内かな。
タキ・バルツァ(pa1565)
♂ 23歳 忍機
a.こちらで。
斧箭鎌刀(pa1581)
♂ 20歳 刃知
a.俺もこっちの予定だな。
イーノク・オルティス(pa1600)
♂ 24歳 英機
z.電算面から支援の予定。あと治療。
エルミラ・ベルトラム(pa1648)
♀ 23歳 知機
 敵は派手に仕掛けてきそうだ。装備を怠るな。
ソル・グリフィズ(pz0024)
♂ 37歳