迷子の子犬は恋をする

担当叶野山 結
タイプショート 日常
舞台Celticflute
難度易しい
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2017/10/02
結果大成功
MDPニコライ・ホーキンズ(pa0879)
準MDPジェームズ・ワース(pa0279)
エルマンノ・モレッティ(pa0008)

オープニング

◆其の者、甘き香りを用いて(不本意に)誘惑せし
 休日の過ごし方は人それぞれである。
 学生達の中には、昼をとった後、たまにはグラウンドで遊ぼうという事で出てくる者も居る。
 グラウンドへと繰り出せば、目立つ光景が目に入ったのは無理らしからぬ事。
 学生達の目に映ったのは、紙袋を落とさぬように抱えたナサニエル講師が犬に追われているとしか見えない姿だった。


登場キャラ

リプレイ

◆ふれあい広場
 グラウンドにてナサニエル講師と犬を見守る者、飼い主を捜しに向かう者に別れる学生達。学生達の中には犬を連れている者も居たが、それについては後述するとして。
 探しに向かう者達の中には犬の写真を撮りたいと言う者も居た。
「先生も一緒に撮りますか、犬君が一緒に居る理由も説明し易いので」
 Aiフォンを手にし、笑顔でそう言うのはジェームズ。拒否をしたくても、彼の申し出の理由には理不尽な部分も無く、講師に逃げる手段は無い。
 講師の足元には相変わらず子犬がじゃれてこようとする。後退する講師と追いかける犬。そしてその様子をAiフォンに搭載されているカメラにて撮影するジェームズ。勿論、動画である。
「なんで動画を‥‥」
「聞き込み用だよ? 状況説明し易くなるし」
 確かに動画の方が説明しやすくはなるだろうが。
 といっても、彼が動画撮影したのは十秒程。その後は写真に切り替えて撮影していた。
 追われる講師へ助け舟を出したのは清輝だ。彼女は慣れた様子で子犬を抱き上げ、その重さと毛並みを堪能する。友人である真比呂も横で子犬の頭を撫でている。もちろん、動画撮影や写真撮影も忘れない。
「せんせー、そのメシ買った店、どこ? すずきさんもそれ、食べたい」
 清輝の質問に、講師は西ショッピングモール内にある店を挙げて答える。
 はい、と彼女は子犬を水鏡に預けると、Aiフォンで一度シャッターを切った。
「じゃ、行こか」
「あ、待ってすずきさん!」
 Aiフォンをしまい、彼女を追いかける真比呂。今はまるで真比呂の方が子犬のようにも見えるが、さておき。
 あっという間に行ってしまった彼女達を呆気にとられた様子で見送る学生達。
 水鏡へサイス華龍が近付き、その子犬を念入りにチェックする。
 まずは首輪について確認。どのブランドのものか、ネームタグのようなものは無いかを確認したが、どちらも無名であった。新品同様に綺麗な首輪ならタグが付いていそうな物なのだが。
 サイスは首の後ろの皮膚と筋肉の間に埋め込まれるマイクロチップの存在が犬に無いかと思い、確認したのだが、見えなかった。あったとしても読み取り装置が無いとどうしようもないのだが。
 地道に探すしかないという結論に彼女は至り、首を横に振った。
 わかるのは、白くふさふさで、耳が少し大きめに垂れているという特徴をニコライが検索した結果、ゴールデンレトリバーなのではないかという事だ。雑種の可能性もあるのだが、一応仮としてそう考える事にした。
「‥‥犬さん、何処から来たのかな‥‥?」
「わからないですが、先生の通ったルートを辿ってみましょう。私は公園に行って探しますけど、サイスさんも一緒に行かれますか?」
「‥‥うん、行く」
 ルティの誘いに頷けば、ジェームズが進み出る。
「では、私もご一緒させていただこう。レディ二人のみに探させるのは忍びない」
 彼の申し出により、公園へと向かう事にした三人。
 講師のルートの中で、公園以外では西ショッピングモールがある。
 そちらへ向かう事にしたのは、ニコライ、小夜、華龍の四人。小夜には怪盗ボルゾイ、天には怪盗ボルゾイの他にシェパードも一緒に居り、更に天は脇にドローンを抱えていた。
 華龍の西ショッピングモールに行くべきだという提案に乗った三人は、歩き出した華龍についていく。
 グラウンドに残る事を選択した者達は、捜しに向かった者達が見つけてくれる事を祈り、自分達はここで待つ事にした。
「はい、先生」
 未だに子犬に対して距離をとる講師へ、が飴玉を差し出した。
 落ち着く様にという事なのだろう。それを受け取り、口に含む講師。
 ちなみに晴の足元には赤いスカーフを巻いた柴犬が居る。ゴンスケと呼ばれた犬は飼い主に一度振り向き、「わんっ!」と吠えた。
「あ、先生。少しだけ肉を分けてもらえませんか? 胡椒のついてないところでいいので」
「いや、それは避けた方がいい。食べ物全体に振りかけられているなら、危険だと思う」
「それじゃ、やめておこう。ありがとう、晴くん」
 元気いっぱいに吠えたゴンスケは、水鏡の腕の中にまだ居る子犬に向けて尻尾を振っている。
 晴がゴンスケを抱き上げる。その愛らしい柴犬に触れようと水鏡が手を伸ばして、晴がゴンスケを撫でる手と触れ合った。
 思わず手を引っ込め、恥じらう様子を見せる水鏡。晴は宙に浮いた手をあちらこちらへと手持無沙汰に動かしている。
 ベリーを口に含んだような甘さが空気に満ち、どこか微笑ましさを周囲に与えさせる。
 そこへシェパードがやってきた。エルマンノが飼っている犬だ。
 シェパードは子犬よりも講師に興味があるようで、講師の足元にやってこようとする。
「うん? 待てロズ、お前の役割はそこの犬と遊ぶことだ、講師と遊ぶことでも講師で遊ぶことでもない」
「最後」
 水鏡が思わずツッコミを入れるが、些末な事。
「しかし、車を出すのもやぶさかではないと思ったんだが、必要ない‥‥んだよね?」
「何も困った事が無さそうなら、大丈夫だろ。連絡があったら車で行けばいいんじゃないか」
「それがいいと思う。もしくは、飼い主が見つかったらその場所までこの面子で行くとか」
「犬と講師も連れて?」
 エルマンノの質問に、全員が講師を見やる。
 行きたくなさそうに首を横に振る講師だったが、足元の子犬は講師から離れたくない様子で。
「‥‥連れていこう」
「仕方ないね。せめての配慮として、先生が助手席に座る様にして、犬が近付かない様にするので」
「‥‥頼む」
 行く事が学生達によって確定した事で観念した様子の講師に、ほんの少しだけ同情してしまったのは、学生達の秘密である。

◆探し、偵(うかがう)者達
「迷子の子犬‥‥サンゲタルの名にかけて真実を掴もう」
 ショッピングモールに到着した彼らは、情報を集める前に一度顔を突き合わせていた。
 華龍が告げた宣言に、小夜が問う。
「でも、どうやって分かる物なの?」
「見える部分から推理をする事が探偵の素質ある者の務め。例えば、あの首輪にはデザインが凝っていないシンプルなものである事から、飼い主はあまり装飾を好まないのだろうという事‥‥とかな。女性でもシンプルな物が好きという者が居る為、首輪の趣味から性別は絞り込めなかったが」
 華龍の返答に、小夜は納得したが、今度はニコライが質問を投げる。
「首輪の事はわかったが、でも、どうしてショッピングモールに?」
「自分が飼い主なら、どうする?」
 逆に質問で返され、ニコライがすぐには返答出来ずにいる横で、天が小さく声を上げた。
「人の多い場所で探そうとする。聞き込みをしたりとか」
「ああ。講師と同じルートで犬がついてきていたのなら、ショッピングモールに寄ろうとするはずだ」
「では、この辺で聞き込みをしてみる?」
「ただやみくもにやっても効果は無いだろうな。人を集めるのが手っ取り早い気がするが」
 ここに来る前にプリントアウトすれば良かったのだろうが、生憎とそんな時間は無かった。
 ペット用品店はショッピングモール内にある様子だ。ニコライは先にそちらへ行ってみると告げて、その場を離れた。それから、手に持ったタブレットPCで後程モールの監視カメラを見てみる、とも。
 見送った後で、小夜が荷物のバイオリンケースを開き、そこからバイオリンを取り出した。
 天や華龍は彼女が何をしようとするのか理解して、少し離れる。
 天は抱えていたドローンを持って離れた場所へ行く。集まってくる者達とは別の場所に飼い主が居るかもしれないと考えての行動だった。
 ドローンを飛ばす準備をしている間に、小夜のバイオリンが音を奏でる。優しい調べを紡ぐその曲は、チャイコフスキーの曲だった。
 彼女が学園の制服を着ている事もあって、その音と姿に目を奪われ、注目する客達が増えてくる。
 華龍が集まる人混みの中に飼い主らしき者が居ないか視線を動かす。不自然にペット用品を持つ者が居ないか‥‥などに注意して。
 声をかけるのは一曲が奏で終わってからになるだろう。今この美しい曲を聞いているのを邪魔するわけにはいかないのだから。

 ショッピングモール内では、ニコライがペットショップを訪れる前に、休憩するテーブルスペースにて真比呂と清輝の二人と遭遇していた。
 何やら美味しそうなお肉を食べている。胡椒のついた匂いからして、おそらく講師に教えてもらった店のお肉だろう。
「ニコライくん、これからペットショップ?」
「あ、ああ」
「さっき行ってみたけど、来ていないって言われたよ」
「なので、すずきさん達は食べる事にしたんだよねぇ」
「美味しいよね、これ。胡椒が効いてて」
「そうか‥‥もうそういう時間だからな」
 二人して食べている様子を見て、そういう事しか言えなかった。
「でも、犬猫は香辛料ダメだと思ってたよ。これ注文したから分かるけど、あれだけ香りがしても近付くなんて、慣れてるのかな?」
「慣れとはまた別なのではないか?」
「お肉の匂いとは別に、先生にすり寄ってたみたいな感じだったもんね。惚れたのかな?」
「犬猫の感情は分からない」
 隣に座り、ニコライはタブレットPCの電源を入れる。
 真比呂が身を乗り出して何をするつもりなのかを覗きこむ。画面への影になると注意すれば椅子におとなしく座ってくれた。
 そのまま指を動かして、監視カメラをハックする。確認する時間は今日の昼前からこれまで。
 なかなか堅いセキュリティで、何度も弾かれる。だが、諦めずに何度も挑戦した結果、その道は開かれた。
 表示される動画画面。だが、講師の姿はあっても、飼い主と思われる者は見当たらない。そもそも、店内に動物が連れ込めないから見つけるのは困難なのかもしれない。
 ペット用品に入っていった客を確認するも、焦った様子で尋ねてきた客は見つからない。此方には来ていないのだろうか。
 場所を入口に切り替えてみる。時間を限定して確認してみると、散歩をしている様子の姿が一瞬見えた。
 子犬の大きさ、毛並みの特徴。それらと一致した犬を連れているのは、ロングスカートをなびかせた小柄な女性だった。髪は肩まで揃えた長さで、真っすぐに伸びている。カーディガンを羽織っているのも確認し、ニコライはAiフォンを起動して女性の特徴について仲間へ教えるのだった。
 程なくして、公園に向かったと思われる者達から連絡が入る。件の女性を見つけた、と。

◆紳士と淑女、発見せり
 時は少し戻り、竜血樹公園に着いたルティ、サイス、そして守る為についていったジェームズ。
「犬を飼っていて、公園を散歩コースにしているのなら、顔見知りの人が居るかもしれない」
「そうですね。あとは、何か探している風な人を探してみる、とか?」
「あとは‥‥捜索している事、SNSみたいなのにあがっていないかな‥‥」
「そちらも手だろうけど、とりあえず、先に探索してみよう。分かれて探索した方がいいと思うんだよ」
「確かに、効率的‥‥」
 ジェームズの言葉に頷く二人。
 Aiフォンにはそれぞれが撮った写真がある(ルティの分はジェームズとサイスが提供した)。散開し、それらしき人物を探しに歩く。
 ベンチに腰掛けて空を仰いでいる婦人、草むらに寝転がる男、ボール遊びをする子供達。
 様々な者達が公園に居るのを視界に入れていく中で、何かを探すように顔を動かしている女性が居た。
 その女性を発見したのは発見したのはジェームズで、彼は二人が自分に合流するまで遠巻きに見つめながら、女性の動きに合わせて移動する。手に持っている双眼鏡で野鳥観察の振りをしながら歩く事で誤魔化しつつ。
 サイスとルティと合流し、三人で声をかけてみようという事になり、近付いた。
「あの、すいません」
 振り向いた女性は、「なんでしょう?」と冷静に返していたが、視線が忙しなく動いている。何かの焦りがある様子だと、ジェームズには読み取れた。
「‥‥何か、お探しですか?」
「ええ、ペットを‥‥」
「それは、もしや、子犬ではないのかね。丁度、この写真のような」
 三人がAiフォンに収めた子犬の写真を見せると、女性の目が見開いた。
「この子です! 今、どこに居るんですか?!」
「えっと‥‥学園のグラウンドに居ます」
「先生と、学生達が保護しています。安心してください」
「車を運転できる者が居る筈だ。車を出してもらい、此方に来ていただこう」
 ジェームズがAiフォンを通じて仲間に連絡を取る直前、ニコライからの通信が入った。
 添えられていた情報は、確かに目の前の女性と一致しており、公園に集合という事になった。

◆迷子の子犬は恋に破れる
 西ショッピングモールに行っていた者達の手に何故か肉料理らしき物が入った大袋があったが、一度その問題は置いておくとして。
 公園にひとまず全員集合は出来た。ナサニエル講師は犬と距離を置こうとしているが、犬に近付こうとされているのは変わらず。
 というより、ゴンスケや他の犬達にも近付かれているような気がしなくもなく、飼い主や学生達が慌てて抱き上げる。
「良かった、あたしの可愛いワトソン。リードを外して公園を散歩させようとしたら、突然どこかへ走っていっちゃったから心配したのよ」
「こういう所では放さない方がいい。今日はたまたま先生についていった様子なので俺達もこうして探せたが、そうでなければ危うく行方不明になる所だった」
「犬を飼う人には様々な責任が伴いますから、気を付けてくださいね」
「ご迷惑をおかけしました。ありがとうございます」
 華龍と小夜に諭され頭を下げる女性。
 講師も何か言いたそうだったが、犬を前にしては言葉が出ないようで、先程からだんまりである。
 無事に首輪にリードをつけた女性は、その犬を抱えたまま頭を下げてその場を後にした。
 子犬が寂しそうに鳴いてナサニエルを見つめていたが、ナサニエルが顔を背けた事で何やらショックを受けたような顔をした‥‥ように見えた。
「もしかして、本当に惚れてたのかな、これ」
「性別聞いておけば良かったね」
「いや、ワトソンと呼んでいたから、オスなんじゃ?」
 清輝と真比呂の会話に、天が答えを出せば、納得した顔をされ。
「? どうした、水鏡」
「えっ、ううん、なんでもないよ!」
 不思議そうな顔で水鏡を覗き見る晴に手を振ってみせる。
 まさか、清輝達の会話からオスの犬にモテる先生と考えて、その結果、脳内で色んな妄想が繰り広げたなんて、口が裂けても言えない。
「先生、大丈夫です? 飴要ります?」
 エルマンノの心配そうな言葉に、講師は何とかといった体で「大丈夫だ」と告げる。
 足元に近付こうとする犬達からさり気なく距離を取ろうとしているのを、サイスは見逃さなかった。
「‥‥苦手なんだ」
 小さく小さく呟いた言葉は、誰の耳に止まる事も無い。平和な事だ。
「ところで、その袋は?」
「私も気になってました」
 ジェームズとルティが指摘したのは、ニコライと華龍が持ってきた大袋だ。
「折角なので、コネを使ってお昼を調達しました!」
 真比呂の宣言に、学生達がありがたいと口にする。
 今回のご褒美として、学生達はそれを頂くのだった。


 余談ではあるが。
「そうだ、先生。期待の新星! 皆のアイドル! ゴンスケくんはいかがでしょう?」
 水鏡の犬に慣れる為の提案に講師が勢いよく首を横に振ったのは、その場に居た学生達のみぞ知る話である。



 13

参加者

c.犬の対処は犬に‥‥だな。必要であれば車も出せるが。
エルマンノ・モレッティ(pa0008)
♂ 22歳 乗魅
z.先生のお昼ご飯の匂いのせいで、こっちもお腹減っちゃうよね…じゅるり
神崎真比呂(pa0056)
♀ 21歳 刃乗
a.聞き込みをして、情報を集める予定だ。
今井天(pa0066)
♂ 19歳 英探
c.よし、此処は我々に任せてくれ(もふもふ
羽乃森晴(pa0077)
♂ 19歳 英探
b.私も公園の方へ探しに行ってみます。
矢藤ルティ(pa0097)
♀ 19歳 英忍
c.ゴンスケくん、遊ぶぞー!(グッ)
莫水鏡(pa0196)
♀ 18歳 忍魅
b.先生も一緒に撮りますか、犬君が一緒に居る理由も説明し易いので(ニコー)
ジェームズ・ワース(pa0279)
♂ 26歳 弾魅
b.捜査、とか、犬さんを調べてみる、とか、してみる・・・。
栄相サイス(pa0460)
♀ 18歳 英探
a.無事に飼い主の元へ返してやれるように、努めよう。
ニコライ・ホーキンズ(pa0879)
♂ 20歳 忍知
z.自分らのランチタイムも忘れずにいたいところ。
真純清輝(pa0904)
♀ 20歳 探知
a.よろしくお願いします。私は…西の方を探してみます。
明神小夜(pa0954)
♀ 18歳 乗知
a.フッ…楽しいゲームの始まりだな。
陳華龍(pa1190)
♂ 25歳 弾探
 ‥‥決して怖いわけではない。ああ。
ナサニエル・フォス(pz0018)
♂ 34歳