お宝は視聴率?!

担当九里原十三里
タイプショート 事件
舞台日本(Asia)
難度普通
SLvA(日本程度)
オプ
出発2018/06/06
結果成功
MDPゲルト・ダール(pa0208)
準MDP氷見侘助(pa0418)
紅嵐斗(pa0102)

オープニング


 ある日の夜、ゾフィ・ヴァルブルクはとあるTV番組制作会社のプロデューサーである内藤(ないとう)に呼び出されていた。
 彼はスタッフを遠ざけると、近々企画されている特別番組「痛快鑑定☆夢のオークションボンバー!」の台本をゾフィの前に置いた。
「困るよ、内藤。うちの学生達はタレントじゃないんだ」
 ゾフィは呆れ顔で言った。
 彼には過去にも同様な事を頼まれ、依頼を引き受けているのだ。

登場キャラ

リプレイ


 本番前の楽屋。
 中藤冴香は忙しそうにバックヤードを行き来し、鑑定士役に「最後の仕上げ」を施していた。
「お2人ともバッチリです。後は、うっかり日本語を喋らないように気をつけてくださいね?」
 パウダーブラシを片手に、冴香は何だか楽しそうにしていたが、フロウティア・モリスンはちょっと不安げな顔だ。
 姿こそ完璧になったが、ネックなのは演技ができるかどうかだ。
「鑑定そのものは出来ると思うのですが、それを大勢の前で話すのですよね……とにかく正確な情報を伝えることに尽力しようと思うのですが」
「多少のアラはきっと見逃してもらえますよ。外国人というのは日本人にとって権威の一つとされる場合もあるようですから。自信を持って挑めば、きっとうまくいきます」
 イギリス人絵画鑑定士に変装したメレディス・メイナードはそう言うと。手鏡で冴香のメイクを満足気にチェックしていた。
 そしていよいよイベント開始時間となり、スタッフが鑑定士役の4人を舞台へと促した。
 舞台前では、紅嵐斗が急いでもう一台カメラを増設しようとしていた。
「内藤Pの指示なんだ。多分、ここからのほうが画もキレイに撮れるだろうって。ほら、今回どっちかっていうと小さい鑑定品が多いじゃない?」
 嵐斗はそう言ってスタッフたちを説得すると、放送開始の合図を待った。


「はい、えー、では最初の依頼人をお呼びしましょう! どうぞ、ステージの方へ!」
 司会者が依頼人をステージへと促し、持ち込まれてきたのは蜻蛉の妖精がデザインされた「香水瓶」であった。
 依頼人はこれをアール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代にわたって活躍した作家「ルネ・ラリック」の作だと自信たっぷりに言った。
 鑑定を任されたのは日本人の西洋アンティーク鑑定士に変装したルーカス・ヘルキャットである。
「ルネ・ラリックはフランスのガラス工芸家で、宝飾デザイナーとしても大変有名な方ですね。では、拝見しましょう」
 ルーカスは手袋をはめ、香水瓶を細部まで丁寧にチェックした。
 その手元にカメラが寄り、会場の期待が高まっていく。
(やっぱり……事前に調べたとおりですね)
 ルーカスは鑑定を終えると、自席に戻り、フリップに金額を書き込んだ。
 鑑定額は2万2千円、「偽物」という結果であった。
「今回来られている宝飾鑑定士の方は当然ご存知かと思いますが、おそらくこれはポルトガルのリスボンにあるグルベンキアン美術館に所蔵されている有名な『胸飾り』のオマージュ品として作られたものです」
 ルーカスはフロウティアにチラリと視線を送ると、「こちらがそうです」と蜻蛉の胸飾りの写真をカメラに向けた。
「ただ、出来は大変いいものです。作者には偽物を作ろうという意識はなく、ラリックをリスペクトした作品として製作したのかもしれません。実用品としてお使いになってはいかがでしょうか?」
 ルーカスの隣で、イギリス人鑑定士に変装したフロウティアも頷き、同意を示す。
 続いて出てきたのは、美しい宝石で装飾されたブローチであった。
「私にこれをくれた方は、ヴィクトリア女王の次女で、ヘッセン大公ルートヴィヒ4世の奥さんになった『アリス』という王女様が、嫁ぐ時に女王から贈られたものと言っていました。間違いなく本物です!」
 依頼人の自信たっぷりな姿に、会場も沸き返る。
 鑑定を任されたフロウティアはブローチを鑑定すると、番組アシスタントを呼んで英語で鑑定結果を伝えた。
「えーと、通訳します。先生がおっしゃるには、残念ながらヴィクトリア時代のものではない、と。『偽物』ということですね!」
 ブローチはアンティーク品を模して現代に作られたもので、鑑定価格は3万円。
 当然ヴィクトリア女王とも関係のないものであった。
「でも、丁寧に作られたものだし、私はとても素敵だと思うわ」
 フロウティアは最後にそう言い添えた。
「自分のお気に入りは値段で決まるものではないわ。パーティーやお食事会に付けていくには十分じゃないかしら?」
 続いて、ステージに運び込まれたのは、「古城の窓辺で髪を梳く美しい姫」が描かれた油絵であった。
 依頼人はこれを、アルフレッド・テニソンの詩に題材をとった『シャロット姫』という作品だと言った。
 イギリス人画家ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの作とされ、有名な「シャロットの女」シリーズ3点に次ぐ4点目ではないかと期待され、鑑定前からかなりの注目を集めた。
(鑑定品が2連続で偽物……やはり、『悪党』達は相当焦ってるでしょうねぇ)
 絵画の鑑定を任されたメレディスは、舞台裏に何となく緊張感が漂っているのを感じ取った。
 そして鑑定を終え、通訳アシスタントを呼んだ。
「残念! こちらも偽物ということです!」
 アシスタントがそう言うと、「3連続偽物判定」に会場は爆笑の渦に巻き込まれた。
 メレディスはフリップに「3万5000円」と書き、淡々と金額の内訳を説明した。
「3万円は額代、絵の方は5000円だね。多分、関係ない絵をそれっぽく仕立てたんじゃないかな?」
 偽物続きの鑑定結果に、会場はすっかりお笑いムードになってしまっている。
 そして、今度こそ本物か、と期待されて出てきた4点目の依頼品は、一体の「天使の像」だった。
 依頼人はこの天使の像について、20世紀の日本で活躍した彫刻家・佐藤玄々の「幻の作」ではないかと期待していた。
 これを担当したのが、「クセの強さ」で有名な日本人彫刻鑑定士に変装した氷見侘助だった。
「偽物」
 鑑定品を見るなり、侘助はいきなりそう口にし、会場がどよめいた。
 番組の司会者が慌てて「先生~!」と駆け寄るが、これは番組のいつもの「お約束」である。
「せ、先生! 鑑定してないですよね?!」
「これ、偽物」
「あ、あの会場皆さん、すみません! 先生は先程のイギリス人鑑定士のお2人と同じく『通訳』が必要なんです!」
 司会者がフォローし、侘助が鑑定道具を取り出す。
 だがやはり、結果は変わらなかった。
(うーん、作風似せてるけどやっぱ違うよな……本物は目元の彫り方にちょっと特徴あるんだよー)
 侘助は事前に見た本物の鑑定士の「クセの強い」身振り手振りをマネながら鑑定を進める。
 その様子を見ながら、会場の客は大笑いし、出演者たちも笑いをこらえて肩を震わせていた。
(まぁ、それに玄々は天使なんか彫らねーだろうし、はい偽物。その辺の木彫りの熊さんの土産物くらいの価値しかねーな)
 侘助は鑑定結果をフリップに書き、「通訳」に何やらボソボソと耳打ちした。
 天使像の鑑定額は、1万8千円という「お土産価格」であった。
「え~先生曰く、佐藤玄々の作品は都内の某百貨店のロビーに飾られた『天女像』が有名で、これがもし本物ならば大発見とのことですが、残念ながら偽物。顔は結構可愛いので、鑑定価格関係なしに可愛がってあげてください、とのことでした」
 会場が爆笑で沸き返る中、鑑定は続くのだった。


「早速動き出したね……まず、あいつかな。行こう!」
 ゲルト・ダールは冴香にそう声をかけると、客席の方に走り出した1人のスタッフを追いかけた。
 内藤の監視役として、学生達が当初からマークしていた男である。
 彼はスマホを片手に何やら「すみません、すみません」と誰かに謝っているようであった。
「おい、どこ行くんだ」
 ゲルトは監視役に近づき、声をかけた。
 すると、相手は「ボスが怒ってる!」と焦っていた。
「鑑定額が違うじゃねえかって! 客席から今、電話!」
 ゲルトは既に、別の所にいるもう1人の監視役の姿に変装している。
 すっかり油断しきっている相手に、ゲルトは「プロデューサーが反旗を翻したようだ」と話した。
「まぁ、嫌な予感はしたんだよなぁ。とりあえず、ボスには僕が説明する。君はちょっと休んで落ち着きなよ」
 ゲルトはそう言って男を休憩場所に促した。
 だがそこには、1人の怪盗が待ち構えていた。
「テレビ局ってのも随分と腐ってんだなぁ? おいお前、誰と連絡取ってたって?」
 男を捕縛したのは、ゲルトに言われ、密かに忍び込んで待っていた大神隼人であった。
 その一部始終は、隠れて追いかけていた冴香のカメラに収められた。
(よし、バッチリです。あとは、ちょっと編集をかければOKですね)
 撮影を終了し、冴香は密かに微笑む。
 そうして1人目が御用になっている頃、煌宵蓮が客席で動き出していた。
「やはり、どうも『キナ臭い男』が2人いると思っていたんだ。ここは私に任せてもらうよ、ゲルト君」
 警備員に変装した宵蓮は電話を切ると、「いかにも」な強面の男と、その手下らしき男の後を追った。
 2人はこのまま、バックヤードに殴り込みをかけそうな勢いであった。
「何や、あの鑑定結果は! 内藤のボケが裏切りよったんか?!」
 ボス格の男はドカドカと舞台裏に近づいていく。
「クソっ、何がオマージュ品や! アレには最低でも4000万円付けろて…!」
 彼がそう、言いかけた時だった。
 その首筋に、何か冷たいものが触れた。
「あれは偽物だ。この長物は、本物だがな」
 ヤクザ者は、それが真剣であること、そして宵蓮に「その筋」のニオイがある事を即座に悟ったようだった。
 手下に「動くな」と声を掛けると、視線をじろりと宵蓮に向けた。
「何が目的や」
「自分達が何をしたのか分かってるはずだ。警察を呼ばれても文句を言えないような事をな」
 番組内での悪事がバレたのだと察したのか。
 ボス格の男は「ついでに弁護士も呼んでもらおかい」と口にしたきり、それきり何も言おうとしなかった。
 宵蓮が客席にいた2人を縛り上げていた頃、大道具係に変装した大世宮典人は、1人の女を追っていた。
 それは、フロウティアが担当したあのブローチを鑑定に出した依頼人であった。
(……色々なやり口を考えるもんだな、ヤクザってのは。尊敬はしないが)
 典人の追っている女は、苛立たしげにスマホを操作し、何回も電話をかけた。
 会場を抜け出し、誰かと連絡をとろうとしているようだった。
 通話越しには何度も「ツーツー」という不在音が漏れ聞こえた。
「ボス! 折返し電話ください! あいつがいません! 内藤も! 裏切ったかもしれません!」
 焦っているのか、大声でそう留守電を入れる女。
 典人はその後ろに忍び寄ると、素早く捕獲し、女を人目のないところに引っ張り込んだ。
「……警察だ、あんた達の悪事はバレている。……観念したほうが良い」
「何すんだよっ、離せ!」
 女は典人の腕に噛み付き、逃れようと大暴れした。
 だが、次の瞬間、首に当てられた典人の指輪から、女の体内に電流が走った。
「……番組を『無事に』終えるためだ……大人しくしていてくれ」
 典人が女を確保した頃、嵐斗は最後の1人となる内藤の監視役に迫っていた。
 男は殺気立ち、内藤の姿を探していた。
「あの野郎、裏切る気ならこの俺が始末してやる!」
 インカムを投げ捨て、人気のない駐車場を横切っていく男の手にはナイフがあった。
 編集機材の置かれたライトバンに男が近づく。
 するとその陰から、カメラを構えた嵐斗が現れた。
「内藤さんならいないよ。『よからぬ者』が近づくと困るから、俺が隠しちゃったんだ」
「てっ、てめぇ…!」
「ナイフなんか持って怖いなぁ。今の『画』はバッチリ撮らせてもらったからね? じゃあ、おやすみ」
 シューッと放たれた催眠スプレー。
 男はそのまま、駐車場に倒れ込んだのだった。


「ボスは自白したよ。自分から話したほうがいいんじゃない?」
 ゲルトはそう言って、Aiフォンの動画を捕まった者たちに突きつけた。
 そこには「自分たちがやりました」と書かれた黒い蓮の花のマーク入りの紙を咥えさせられた手下と、一切合財を白状するボスの姿が映っていた。
 これは宵蓮の「悪戯」とゲルトの変装による「フェイク動画」だったのだが、そっくりな声と姿に騙された下っ端たちは、カメラの前で証言を始めた。
「依頼人は7割が仕込み…一般参加者は3割だけです。アタシ以外はタレントの卵使って…『出演者が足りないから3万円で依頼人を演じてくれ』って」
 典人に捕縛された女がそう話す様子を、冴香と嵐斗がカメラに収めていく。
 後で調査すると、彼女らの証言どおり7割の依頼人は「仕事に繋がるからと言われアルバイトで雇われた」と証言。
 名前や経歴まで全て、鑑定依頼品と同じく「偽物」であった。
 そして逆に、「本物」の依頼人が持ち込んだ物はその多くが素晴らしいお宝であった。
「番組に呼ぶ前に人を厳選してたのかな。絵画も本当に良いものが来てたね。他所でも間違いなく高値がつくよ」
 宵蓮に呼ばれてやって来た画商がそう話したとおり、今回番組内で「本物」と鑑定された品は高額な値が付き、番組後半のオークションを大いに盛り上げた。
 その裏で撮影された「スクープ映像」はそのままニュース担当者の手に委ねられ、放送された緊急特番は日本中を衝撃の渦に巻き込んだ。
「ねぇ、プロデューサーさん。全部終わったら打ち上げしない? マティーニを、ステアじゃなくシェイクで。どうかな?」
 ゲルトがそう言うと、内藤は「悪くないね」と笑って返した。
 そして後日「番組はスポンサーを変更して放送が続けられることになった」という話がゾフィから学生達に伝えられたのだった。



 19

参加者

a.僕だと守備範囲は絵画でしょうか…(ろくろを回すような手付き
メレディス・メイナード(pa0098)
♂ 20歳 探魅
a.鑑定をしようと思いますが、絵画か宝飾品か悩みますね……。
フロウティア・モリスン(pa0099)
♀ 21歳 忍知
c.おれはこっちで。意図的にカメラの死角を作るから荒事はそっちでお願い。
紅嵐斗(pa0102)
♂ 19歳 英忍
b.ほぅ…テレビ局ってのも随分と腐ってんだなぁ…いっちょ暴いちゃいますか♪
大神隼人(pa0137)
♂ 21歳 刃忍
b.呼び出して、逮捕しやすい場所へ誘導するつもりだよ。よろしくね
ゲルト・ダール(pa0208)
♀ 21歳 知魅
c.私自身は、こちらでしっかりスクープをカメラに収めさせて頂きますね。
中藤冴香(pa0319)
♀ 24歳 探魅
a.んー、じゃあ僕は彫刻にしておこっかなー。えーと、鑑定士の資料資料…
氷見侘助(pa0418)
♂ 22歳 弾知
a.どの品鑑定するか迷いますね。いずれにせよ勉強にもなりますし……。
ルーカス・ヘルキャット(pa0899)
♂ 20歳 探知
b.……力仕事は得意だし、大道具のスタッフにでも紛れ込むか。
大世宮典人(pa0940)
♂ 22歳 刃乗
b.物騒だな…
煌宵蓮(pa2148)
♂ 23歳 刃機
 生放送は「いつもどおり」放送予定だ。途中でカメラを止めるのは厳禁だぞ?
ゾフィ・ヴァルブルク(pz0025)
♀ 38歳