感謝の伝え方

担当ひさき いくる
タイプショート 日常
舞台Celticflute
難度易しい
SLvC(紛争地域、島内)
オプ
出発2017/11/06
結果大成功
MDP宍倉静(pa0201)
準MDP陸真影虎(pa0315)
ルーカス・ヘルキャット(pa0899)

オープニング

◆オボエテロヨ!
 島内、とある一室。
「はぁっ! ァッ! もう、あっ、クッサ! カニェッツでショー!」
 下着姿で同居人のロシア娘は悶絶していた。
「うるさいなぁ……」
 同じ部屋に暮らすのに、そんな風に騒がれてはたまらない。

登場キャラ

リプレイ

◆秩序と混沌
「感謝……そうですね、同好会の皆さんには、何かお返しできればと思います」
 ルーカス・ヘルキャットはロシア人にそう返した。
「お返し? 仕返しとは違うデショー、なにするの?」
 ロシア人の言葉に、ルーカスは一角祭りの事を思い返す。
 一緒に過ごした美術同好会のみんなへの感謝を。そして、学生会の面々の労いをしたい。
「僕の出来る事なんて、たかが知れていますから。ちゃんと伝えられる自信は無いのですけど……」
「ほっほぅ?」
 ルーカスは柔らかく、困ったように。でも確かに彼の優しさが滲む微笑みを見せる。
「やらなければ、何も伝えられませんよね」
「やられる前にやれ、デショー!」
 ロシア人を引き連れて、ルーカスは調理設備がある場所へと移動する。
 彼が感謝を伝える方法として選んだのはお菓子作りだった。
 お菓子作りが始まってから、しばらくしてルーカスの言葉数は極端に減った。
 みんなに行き渡るようにと選んだであろうクッキー。
 しかし、決して手を抜くわけではく複数の味を用意する。
 一つ一つの工程を丁寧に、真剣に行っている様子に、ロシア人もふざけた絡みをすることなく見守る。
「できました」
 調理室に漂う、甘く香ばしい香り。
 几帳面にラッピングされたクッキーは、きっと受けとる人に気持ちが伝わる一品であろう。
 あとは、調理室の片付けをして私に行くだけである。
 そこに、どこからともなくシャロン・コーエンが颯爽と現れた。
 汚れた調理器具を見ると、シャロンは一つ頷いた。
「やあシャロンちゃん! 油汚れで困ってないかい?」
 シャロンは誰かに語りかける。
「シャロンさんは、あなたでは……」
「そうなのよマイク! どんなにブラシでこすってもとれないのよ!」
 ルーカスのもっともなツッコミは黙殺される。そう、シャロンは今芝居のまっただ中。
 観客のヤジなどに捕らわれることなく、彼女は演技を全うするのみ。
「そんなときには、このKKKクリームの出番さ! どんなに頑固な汚れだって、フライパンごと消しちゃうのさ!」
 言ってシャロン(マイク)は、そこにあった食器用洗剤をおもむろに手に取る。
 そして、汚れたオーブンプレートにさっと洗剤を塗る。
 するとどうだろう。
 汚れた調理器具は一切合切消えて無くなってしまった。
 というのは、もちろん彼女のお芝居の話。少し汚れが落ちただけのオーブンプレートが流しの中に鎮座している。
「凄いわマイク! これで面倒なお掃除も楽チンね!」
 シャロンは喜び、飛び跳ねる。
「ありがとう!」
 芝居の終わりを告げるように、シャロンは深くお辞儀をした。
 拍手をするのはロシア人のみ。ルーカスは呆気にとられていた。
 ふと我に返ったルーカスはシャロンが後片付けを手伝ってくれようとしているのだと捉えた。
「お疲れ様です。疲れたときには甘い物、だそうなので……良かったら」
 クッキーの一つをシャロンにお礼として差し出す。
「あ、ありがとう……ございます」
 突然のことに驚きながら、シャロンはおずおずとそれを受けとり、礼を述べた。
「……もう少し手伝います」
「ありがとうございます」
 シャロンの申し出に、ルーカスは微笑んで応じた。

◆いつもとは少し違う
 ジェームズ・クレイトンは人を探していた。
「おー、いたいた」
 目当ての人物を見つけ、近づいていく。
 シルフィ・レオンハートの装いに、ジェームスは内心喜ぶ。
「どうした?魔法少女リリルの衣装を着て。ついに全宇宙平和の為に戦う決意でもしたのか?」
「今日は今までの感謝の気持ちを伝えようと思ってジェームズが好きな格好をしてきたんだYO」
 魔法少女リリルの衣装をみせるようにシルフィはその場でくるりと回る。
 随分としっかりした作りの衣装に、ジェームズは満足げに頷く。
「似合うかNA」
「似合うぞ。身長も違和感無いものなぁ」
 すっと、シルフィが綺麗にラッピングされた物を差し出してくる。
 反射的に受けとったもののジェームズは、それがクッキーであることに驚く。
「いつも部活のお手伝いしてくれてありがとうなんだYO」
「お、おう……」
 そう言ってシルフィは楽しげに笑う。
 一方、ジェームズはひたすらに困惑していた。
 ジェームズは、シルフィのことを食い意地が張っていると思っていた。
 だと言うのに、食べ物を自分に渡してきた事に動揺が隠せない。
「ぴ? なんで驚いた顔してるのかNA? 見た目は不恰好だけど美味しいと思うんだYO」
 シルフィの言うとおり。クッキーの形は、不格好でお店に売っている様な物ではないことが見て取れた。
 作っている最中につまみ食いとかして全部無くなったりしなかったのだな、と内心思いつつジェームズは慌てて笑顔で取り繕う。
「ん……いやいや、ありがとうな? 俺は感謝される事なんて何にもしてないだろ?」
「そんなことないYO」
 いつも助かっている、そう言外に告げてシルフィは微笑む。
「これからも一緒に色んな事件を解決していこうNE」
「そうだな。もっと沢山の謎を解決していこうな」
 ジェームズはシルフィの頭をそっと撫でる。
 シルフィもそれに逆らわず、気持ちよさそうに。うれしそうに目を細めた。

◆体だけでなく心も重ねて
 とある一室。夜も更け、静まりかえった部屋。
 恋人たちは静かに向かい合っていた。
 アルカ・アルジェントはその色香で人を虜に、支配してきた女である。
 しかし、その上に胡座をかいてはいない。本当の想いは音にしなければ伝わらない事を知っていた。
「貴女に伝えさせて、この胸にある想いを」
 アルカは正面に座る恋人、ヴェロニカ・ラプシアの目を正面から見据えてそう告げる。
 瞳をそらすこと無く、じっと。
「貴女はいつも唐突で、大胆よね……」
 そう言って微笑むヴェロニカは、次の言葉を待つ。
「私は貴女に出逢い、ハジメテ温もりを知ったの」
 静かに、しかし確かな情熱をもった言葉を紡ぎながらアルカはそっとヴェロニカの両手をとる。
「肌を打ち付け合う熱を生きる糧としてきた私に灯った最初の火、それが貴女」
 熱がそこに確かにあると伝えるかのようにヴェロニカの手を自身の胸に添える。
 アルカの心音がヴェロニカの手へと伝わる。じわり、と伝播する熱はどちらのものだろう。
「これが私の音、家族を知らず愛さえも利用して生きた女が初めて高鳴らせた鼓動、偽るコトは出来ない真実の音」
 ゆっくりとしたアルカの瞬き。ヴェロニカはそれを愛おしげに見つめる顔は陶然としていた。
 普段のヴェロニカしか知らない者ならば、同一人物だと気付かないであろう。
 それだけヴェロニカの顔は今この時、この場所。恋人との時間を大切にしている。
 そして、もっと激しく求めたいとも思っていた。
「まるで前世から決まっていたように、私は貴女しか見えない……愛してるわ、ヴェロニカ」
 言って、アルカはヴェロニカを抱きしめ、深く口付ける。
 深く深く。肉体すらじゃまだと、もっと溶け合ってしまいたいと言わんばかりに互いに求め合う。
「私も愛しているわ、アルカ」
 一度離れて、応えるヴェロニカ。どちらともなく、微笑みあう。
「伝えるのが音なら、確かめるのは温もり…淫らに激しくね」
 夜は、長い。

◆きっと伝わっている
 宍倉静は眼前の光景を、無感動な目で眺めていた。
 集まってみた物の、静にとってあまり向いた話題ではないのだろう。
「感謝の気持ちを伝えろ、って言われてもな……」
 隣に立つ陸真影虎もきっと同じように考えているだろう、と生あくびを噛み殺しながら声をかける。
 だが静の予想に反して影虎は眉間にしわを寄せて、何事か真剣に考えている様子だった。
「なぁカラちゃん? おたくもそう思う……」
「おい…臭いから近寄るんじゃねえよ。シャワーでも行ってきたらどうだ?」
 影虎はにべもない言葉を返して、しばし黙考する。

 感謝ねぇ…。自分の中で思ってるだけじゃ何も伝わらねえからな…何事も形にするっていうのは大事だ。
 どこぞの捻くれ青年ならともかく、言葉に乗せて相手に渡すっていうのは忘れねえようにしないとな。

 つい今し方、言葉の暴力をふるっていたことを影虎は覚えていないのだろうか。
 影虎はゆっくりと息を吐く。そして、静の目をじっと見据える。気持ちが伝わるように、だろう。
「ま、色々と人間関係には苦労しててな。こうして普通に付き合ってくれてるのも結構感謝してるんだぜ?」
「……何だよ。改まって」
 真剣な様子の影虎に、静は目を丸くする。
「いい機会だし言っとこうと思ってな。ありがとよ、宍倉」
 そう言い切ると、影虎は再び静から目線を外した。
 呆気にとられた静は、その顔を徐々に歪ませ笑う。
「……。はー、つまり……カラちゃんはボッチだったと? うわ、残念だー。可愛い可愛いカラちゃんは、男友達一人も居なかったって、笑える」
 そういって、静は哄笑する。
 影虎は、そんな彼の様子に眉間にしわを寄せる。いつもなら、すぐに言い返すのだが折角だからと我慢する。
「はいはい、可哀そうだから、俺がこれからもよろしくしてやってもいいんだぜ? ん?」
「おい青年、こんな可愛い子から感謝されてるんだから涙を流しながら受け取るとかしろよ」
 我慢できずに結局、いつも通りだ。
 静と影虎の関係はこういうもので、それはそれで良いのかもしれない。
「……ったく。そんなん伝えてどうすんだよ。関係ねぇよ、俺には」
 ため息交じりに呟き、そっぽを向いた静を見て影虎は何を思っているだろう。
 いつものことだ、と思っているのだるか。
 それとも言うべきことは言った。
 そう考えたのだろう。
 影虎は無言でその場を立ち去ることにした。
 気付けば集まった他の人間もそれぞれ解散していた。
「おい」
 不意に後ろから呼び止められて、影虎は振り返る。
 そこにお菓子が投げ渡される。
「持て余してたの思い出したから、やるよ」
 お菓子を投げてきた静は、目線をそらしながら早口でそう言う。
「じゃ、またな」
 影虎が何か言うよりも早く、別れを告げると静はさっさと去って行った。
「なんなんだ、あいつ」
 そういう彼女の口元は人知れず緩んでいた。



 9

参加者

b.感謝の気持ち、ねぇ?
宍倉静(pa0201)
♂ 19歳 忍探
a.想いは、音にしなければ伝わらないの。
アルカ・アルジェント(pa0217)
♀ 22歳 弾魅
b.恋人の気持ちを聞かせて貰うわね。
ヴェロニカ・ラプシア(pa0222)
♀ 19歳 英忍
b.部長は……おー、いたいた
ジェームズ・クレイトン(pa0243)
♂ 21歳 探知
a.んん…よし。
陸真影虎(pa0315)
♀ 18歳 刃知
a.よろしくお願いします。
シルフィ・レオンハート(pa0829)
♀ 21歳 英探
a.そうですね、では僕はこちらで。練習兼準備という感じになりそうです。
ルーカス・ヘルキャット(pa0899)
♂ 19歳 探知
z.恋人とか居ない私はどうすれば…そうか一人芝居か。やったねシャロンちゃん
シャロン・コーエン(pa1290)
♀ 20歳 探魅