聖夜にサンタの奇跡あれ

担当カランコエ
タイプコミック 事件
舞台アメリカ(America)
難度普通
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2017/12/21
結果大成功
MDP神崎真比呂(pa0056)
準MDPゲルト・ダール(pa0208)
ディルク・ベルヴァルド(pa0112)

オープニング


 いつだって神様って奴は理不尽で、世の中って奴は不公平だ。
 世界はLEDでぴかぴか光り輝いていても、どこかの隅っこで空きっ腹を抱えて寒さに震える子供に気付く奴なんざいない。
 だったら、それを知ってる奴がなんとかしなきゃならねぇ。知識としてではなく、実感としてってやつだ。
「やるぜ、やるぜJJ。いいかやるぜ」
「おう、兄貴」

登場キャラ

リプレイ



 生誕を祝う子供たちの歌が教会から聞こえてくる。豪華でもなく、きらびやかでもなく、質素で慎ましい祝祭の祈りが。
「なあ先生、その袋の中身‥‥もしや」
 赤いサンタ服に白髭な羽乃森晴の言葉に、プレゼントを足早に運んできたグラサンタがビクリと肩を震わせる。
「‥‥先生? なんのことだ。俺はサンタだ。ホーホーホー」
 無駄なサンタ意識。どさりとテーブルに降ろされた袋の口から溢れたのは黄色と白と赤の洪水。晴がそのうちの一つを拾い上げ、首を伸ばしたゴンスケが好奇心も露わにフェルトの人形をクンクンする。
「‥‥うーん、ちょっとレパートリーが少ないんじゃないか?」
「なにも考えずに手を動かしているとつい‥‥だが見ろ、クリスマスエディションだ。ルドルフだぞ」
「ツノがついて鼻が赤いヒヨコとかある種のクリーチャーだろ一般的には」
「プレゼントは演出で価値が跳ね上がる。その演出に僕の手品は最適だからね。ポジートにはクリスマスを盛り上げる手伝いをして貰おう」
 小ぶりなポジートをゲルト・ダールがキュッと握るとあら不思議。反対側の手からリースを被って現れる。
「だから、困った兄弟のことは任せたよ」

「わん! わん!」
 降り出した雪に向かってジャンプするゴンスケ。
 冬支度を終えてもこもこの柴犬はたちまち子供たちのハートを掴んだらしく、尻尾をピンと立てた彼は右に左にと愛想を振りまく。
「これは僕も負けてられないかな」
 ぱちんと指を鳴らす。ぴんと耳を立てたゴンスケは心得たもので、(晴に命じられたわけでもないのに)ゲルトの傍らに腰を下ろす。自然、皆の注目を浴びることになった彼女は微笑みと共にステッキを高くさし上げ――ぽん、という軽い破裂音と紙吹雪を伴ってそれは小さな花束へと姿を変えた。
「クリスマスの夜には奇跡がつきもの。今日は、ささやかな驚きを皆さんにお届けしよう!」
 わっと上がった歓声。ゲルトは大げさな身振りで右手に視線を集め、左手から出したポジートをゴンスケの頭に載せた。
「実はビックな手品を用意しているんだ。シスター、子供たちと外出していいかい?」
「外出ですか? ですが、夜に外に出るのは‥‥」
 子供たちが心配なのだろうシスターに、晴も口添えする。
「迷子になったりしないように俺も気をつけるし。それにゴンスケもいるから」
 ふらっと集団から抜け出した子供を牧羊犬のように連れ戻すゴンスケの姿に、シスターも笑みを零す。
「晩餐までには戻ってきてくださいね。冷めてしまっては残念ですから」
「‥‥子供たちを避難させるなら教会の裏の方がいいだろうな。でも、いつの間に大がかりなマジックの準備なんてしたんだ?」
「してないよ?」
 あっけらかんとしたゲルトの返答に言葉もない晴。タネも仕掛けもありません、は口上だけにしてほしい。
「アドリブだけど、それに対応できてこそ幻術師。避難の口実だけじゃない。きちんと楽しんで貰うんだ。だって、今日は奇跡が起きる日なんだろう?」
 かつて絶望の淵にあり、神を呪った自分を救ってくれた奇跡。それこそがあの日見た奇術なのだから。だからこそ今日この舞台が恵まれぬ子供たちにとって忘れられぬ思い出となるように――


 雪が舞い散る街を駆ける人影。イルミネーションが煌々と照らす聖夜の夜を見上げる者もなく、その目立つサンタの衣装の主は空駆けるが如く屋根から屋根へと飛び移る。
 ビルの屋上で足を止めた紅嵐斗が耳をそばだてた。聞こえてくる金属が激突し、アスファルトを噛み損ねて滑る悲鳴。クリスマスソングには似合わない諍いの音。
「‥‥いた、多分アレだ。94号線を郊外に向かって走ってる。かなり荒っぽくやってるな」
『大変、巻き込まれる人が出る前に止めないと!』
『こちらは移動中‥‥デニーズの屋根を借りるつもり‥‥』
 スターターをキックしたらしい神崎真比呂の言葉に北海技研工業製の大型ロードバイクの咆吼が被さり、ディルク・ベルヴァルドが応える。
『なるべく長く‥‥直進するコースに誘い込んでくれると‥‥とても助かるよ‥‥』
「やってみる」
 通話を切った嵐斗は屋根伝いに跳びながら状況を伺う。オモチャ屋のトラックに激しくアタックを繰り返すバンの他に追走するものは見当たらなかった。どうやらこの事態はIC連中にとっても予想外のトラブルだったらしい。でなければ追跡に使うのがバン一台だけということはないだろう。
 トラックが大きくハンドルを切ったのを見て嵐斗は足を緩める。激突したバンが離れ、トラックが横転を避けるためにカウンターを当て、元の道路に戻る。
 そのタイミングを狙って彼は屋根を蹴り、夜空に跳んだ。
 数秒の浮遊感。薄い金属板を叩く派手な音を立てて嵐斗はコンテナの上に着地した。
「っと、やらせないよっ」
 ウィンドウを開いた人相の悪いサンタが短機関銃を手に身を乗り出すのに気付いた嵐斗は鷲づかみにした花火に片っ端から点火する。色とりどりに光の花を咲かせ始めたそれはアンダースローで投じられた。
 犯罪サンタは咄嗟に顔を庇うが、嵐斗の狙いはそちらではなかった。七割ほどの花火が窓から車内へと飛び込み、リチウム、カリウム、ナトリウムの燃焼反応による鮮やかな火の芸術を披露する。本来乗り込むべきトラックのコンテナに比べて狭いバンに詰め込まれた男たちにとってはたまったものではない。
「このっ‥‥」
 身を乗り出していたおかげで火花と煙責めを逃れた犯罪サンタが銃口を嵐斗に向ける。振るった鞭が銃を絡め取るが、男も奪われまいと力を込める。
 発砲。
 サンタ服を掠めた9mmパラベラム弾が赤い布地に黒く焦げた跡を残す。咄嗟に鞭を捨てていなければ危ないところだった。続く連射が薄い外板を貫いてデタラメな穴を作る。絡みついた鞭のせいで銃身が安定しないのだろう。ただでさえ走行中の車両から不安定な姿勢で身を乗り出しているというのに、長さ3mにもなるロープ状の付着物を付けたまま狙いなどつけられるものではない。
 絡みついた鞭を取り除こうと手元に注意を向けた犯罪サンタ。それが失敗だった。急速に近づいてくるエンジンの唸りに気付いた時にはもはや手遅れ。斬られた袖からサンタ服の赤とは違った赤が散り、出血により握力を失った手から銃が落ちてアスファルトに転がる。
「子供たちに夢と幸せを届けるサンタが犯罪者なんてダメ、絶対!」
 バイクに跨がった真比呂、いや『不破のコーイヌール』(サンタver)がファントムブレードを手に一喝する。
「ディルクさんが待機してるポイントまでまだ距離がある! 別なルートに抜けられたらマズイよ!」
「大丈夫、コーさんに抜かりなし!」
 我が身を銃撃の盾とした『不破のコーイヌール』が、着弾の衝撃を堪えながら応える。あと少し、もう少しなのだ。

「な、なんだってんだよチクショウ!」
 半泣きのブロディがサイドミラーをチラ見しながら叫ぶ。
 オモチャ屋のサンタに追いかけられたと思ったらコンテナの上に乗った別口のサンタとバトルが始まり、今はバイクに乗ったサンタ女がカタナを振るって戦っている。もうなにがなんだかわからない。今のうちに脇道に逃げようとしたブロディが慌ててハンドルを戻す。だって、道が巨大なサンタのバルーンで塞がれているんだもの。
「なんだよこりゃあ‥‥誰だ、こんな悪戯した奴ぁー!」
 こうなればアクセルを踏むしかない。サイドミラーに映る追っ手のサンタはコンテナの上のサンタとバイクのサンタに手一杯らしい。
「ジャック無事か!?」
「大丈夫だぁ、兄貴ぃー!」
 小さなミラーの中で、被弾したらしいサンタのバイクがヨタつく。それでも銃口が運転席に向くとバイクは果敢にバンへと向かっていくのだ。わけがわからない。何故、どうして、こいつらはこんなバカをやらかした奴を守って痛い目を見ているんだ?
 ‥‥サンタだからなのだろうか。俺は、よい子ではないのに!

 良き狙撃手に必要なのは、神の如き技量ではない。求められるのは忍耐強さと平常心だ。レストランの屋根に腹ばいになったディルクはスコープを覗き込む。ここからは一直線。奇をてらう必要はなく、ただ必要な場所を撃ち抜けばいい。
 緊張に震える指をぎゅっと握る代わりに、懐に忍ばせた短銃を撫でる。今は亡きソ連で作られた、古めかしい、どんな状況でも発砲できる信頼性を突き詰めた銃。
 指を離した時には、もう震えは消えていた。
『ディルクさん、ポイントに入ったよ、準備オーケー!?』
「うん‥‥タイミングはばっちり‥‥あとは、任せて‥‥」
 嵐斗からの連絡にそう返すと深く息を吸い、止める。射撃部に身を置く者として外すわけにはいかない一射。狙うはバンのエンジン。
 トリガーを絞る。弾はインテークを貫き、強固なシリンダーブロックに当たった弾は砕けながらエンジンルーム中を跳ね回ってファンベルトとケーブルをズタズタに切り裂いた。突然動力を失ったバンは乗ったスピードを御しきれずに横転し、車体に描かれたクリスマス塗装を路面でヤスリ掛けしながら街路樹に激突した。
 バンを包むように煙幕が上がったのは嵐斗が制圧にかかったからだ。コーは身振りでトラックを止めにかかっている。
「‥‥二人は‥‥大丈夫みたいだ‥‥怪我が‥‥ないのが‥‥一番だよ‥‥」
 無事を確認したディルクはもう一度、短銃に触れた。
 今度は震えを止めるためではなく、成功を伝えようとするように。


「‥‥こりゃあ‥‥」
 トラックに積まれた荷物の下に隠された武器類を見たブロディが呻く。この偽装トラックがテロのために用意されたものであること。追跡してきたのはICの実行犯たちであること。そして、知らなかったこととはいえ孤児院を危険にさらしていたこと。『不破のコーイヌール』に包み隠さず告げられたブロディが膝から崩れ落ちる。
 クリスマスも満足に祝えない孤児院のためにと犯罪に手を出し、失敗した挙げ句、とんでもない危機を呼び込もうとしていた。
「俺ぁ‥‥なんてバカなことをしちまったんだ‥‥」
「兄貴ぃ‥‥」
 そんな兄弟の肩をコーは叩く。後悔することができるなら、きっと、まだ立ち直れるはずだ。
「子供たちへの親切な贈り物なら、それに相応しい行いでしなきゃね」

「もう事前の準備なしでイリュージョンなんて御免だからな‥‥」
 ぐったりした晴の顔を舐めていたゴンスケが、残されていた小さな包みを咥えて走り出す。それは腕のいいパティシエが作ってくれた菓子を小分けにした袋で、子供たちも大喜びしてくれたプレゼントだ。
 正面の門に現れた二人の足下にそれを置いたゴンスケは、真っ赤な衣装を着た二人組を見上げる。
 子供たちを悲しませるつもりか。そう説教するつもりだったゲルトは、叱責の代わりにどこからともなく取り出したヒイラギの実を襟元に飾ってやった。
 だって、クリスマスツリーとプレゼントを抱えたデコボコサンタは――鼻の先だけではなく、目まで真っ赤だったから。

 きっと、今日は素敵なクリスマスになるに違いない。



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参加者

b.ちょこっと修正!
神崎真比呂(pa0056)
♀ 21歳 刃乗
a.わん!わん!わん!
羽乃森晴(pa0077)
♂ 19歳 英探
c.IC組を攪乱して攻撃の手を止めたり狙撃ポイントまで誘導してみる。
紅嵐斗(pa0102)
♂ 19歳 英忍
c.あと……『プレゼント』も……真比呂の案で…いいと思うよ……
ディルク・ベルヴァルド(pa0112)
♂ 22歳 乗知
a.クリスマスプレゼントになる物だけ二人、他は警察に渡すのはいいと思うよ
ゲルト・ダール(pa0208)
♀ 21歳 知魅
 行くぞ、聖ニコラスの名のもとに。ホー、ホー、ホー!
ベネズエル・マサラ(pz0026)
♂ 42歳