SPECTRUM

担当九里原十三里
タイプコミック 事件
舞台イギリス(Europa)
難度やや難しい
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2017/12/25
結果大成功
MDPアルカ・アルジェント(pa0217)
準MDP神崎真比呂(pa0056)
羽乃森晴(pa0077)

オープニング


 大きなキャンバスの中で、美しいドレスを身に纏った淑女たちが微笑んでいる。
 ふっくらと白く描かれた豊満な胸元には、神秘的な暗緑色の宝石が輝いていた。
「彼女らのアレキサンドライトのネックレスは全て、あの『悪徳宝石商』の一族に奪われてしまった」
 屋敷の主人は油絵の肖像画を杖先で指しながら忌々しげに言った。
「描かれているのは皆、この私の先祖なのだ。ネックレスもこの絵の通り、この21世紀まであの美しい形を留めている! だというのに、司法は私達の主張を認めなかった! この私の悔しさが諸君に分かるだろうか!」

登場キャラ

リプレイ


◆開幕
 宮殿の庭に純白のリムジンが乗り付ける。
 La・Giocondaのデザイナーにエスコートされたモデルが現れ、出迎えた者たちに向かって笑顔を見せる。
 宵の口の宮殿の庭に、一斉にフラッシュが瞬いた。
「ガーデンも宮殿のナカも警備員のヒトでいっぱいデス。侵入するなら……今ネ!」
 エラ・ウォーカーは周囲の人々が有名モデルの登場に気を取られている隙を狙い、内部に滑り込んだ。
 その様子を警備員に扮した羽乃森晴――「暁色のフェザー the Feather of Dawn」
が見守っていた。
『良いぞ、気づかれてない。ネックレスがあるのはその奥だ。スタッフが今、金庫から出してる』
『了解デス』
 エラは晴とAiフォンで連絡を取り合いながら、ネックレスのある部屋へと近づいていった。
 廊下には真っ赤な絨毯が敷かれ、ショーの会場である大広間からはオーケストラがチューニングする音が聞こえてくる。
 首尾よく衣裳部屋の中に滑り込むと、エラは奥で準備するスタッフの様子を観察した。
(警備員がイナイ……衣装スタッフだけみたいネ)
 ネックレスの管理はショーのスタッフに任されているらしい。
 スケジュールを確認し合う者たちの傍らにアレキサンドライトのネックレスが光る。
 エラはそっとその側に忍び寄り、スタッフが目を話した隙にまず1つ目のネックレスを贋作にすり替えた。
(ふぅ、危ない危ない……無理してしくじったら、それこそ台無しネ!)
 エラはスクリーンボックスを展開してその中に隠れると、次のチャンスを伺った。
 その頃、外でフラッシュを浴びていたモデルが控室に入っていた。
「ああ、寒かった。こっちはドレスなんだからお庭での撮影タイムは勘弁して欲しいわよね」
 モデルは部屋に置かれていたコーヒーサーバーに手を伸ばし、ブラックコーヒーを淹れた。
 そしてその一杯を飲み干した途端、ふらふらとその場に倒れ込んだ。
「良い子ね、ベルタ。ちょっとオネンネしてて頂戴?」
 アルカ・アルジェントは手にしていた万年筆をそっとしまうと、眠っているモデルを物陰に隠した。
 MNのイヤリングがキラリと光り、アルカの姿がモデルのベルタに変わる。
 部屋に入ってきた衣装スタッフはそこにいるのが怪盗「甘き死 Sweet death」であるとは思いもせず、衣装の着替えを手伝い、アレキサンドライトのネックレスをその首にかけた。
(ふふ……私に相応しい舞台じゃない。呪いさえ跪かせる程に魅惑的な色香、魅せてアゲル)
 アルカは鏡の中の自分を見て密かに微笑んだ。
 その頃、もう1人のモデルが怪盗と入れ替わろうとしていた。
「あっ……」
 プツン、と腕時計型麻酔銃の針が若いモデルの意識を奪う。
 その背後にはシャムロック・クラナドが立っていた。
「よし、身長もこれでOKですね」
 MNのドレスが「クローバーのジャック Jack of the Clover」を世界的に有名な美女ベスト100の1人であるモデルへと変身させる。
 シャムロックはモデルの首のネックレスを贋作と入れ替えると、本物を自分の首にかけた。
「そろそろ開幕ですね。さぁ、ランウェイを歩きますよ♪」
 宮殿内にはオーケストラ楽団の演奏するオペラ『La Gioconda』の「Danza delle ore(時の踊り)」が流れる。
 ランウェイの周りではダンサー達が華やかなダンスでゲストを出迎えている。
「おやベルタ、何だか今日は雰囲気が違うね?」
 ブランドのオーナーが舞台裏に出てきたアルカにそう声をかけた。
 アルカはモデルの顔で艶やかに微笑んでみせた。
「嫌だわミスター・ジョコンダ。今宵に相応しく装ったのよ」
 黒いマニキュアを塗った爪先が男の頬に触れる。
 ファンデーションの香りが鼻をくすぐる距離。
 長い睫毛の奥から見つめる琥珀の瞳――今宵の獲物はそこに「裏切り」の予兆が潜んでいる事など気づかない。
「私が誰か知ってるでしょう? アナタのコレクションに誰よりも相応しく、アナタのLa・Giocondaが世界一のメゾンだと示せる唯一のオンナよ」
 アルカは毛皮のコートを翻すと、甘い余韻を残し、ランウェイへと歩いていった。
 いよいよ、ショーの開幕である。

◆ランウェイの怪盗
 シャンデリアの下に敷かれた白いランウェイの上にアルカがブーツの靴音を響かせる。
 その胸元にはアレキサンドライトが赤く輝き、観客はその姿に魅入った。
(さぁ、御覧なさい。ネックレスの相応しい持ち主が誰なのか)
 艶やかに、媚びず、でも蠱惑的に。
 アルカはランウェイの先で観客に視線を投げかける。
 それに続き、3人のモデル達が舞台の上でポーズを取った。
(ふふふ、皆さん輝いてますね。それでこそ私のライバルです!)
 シャムロックは4人のモデル達がランウェイに進むのを見届け、そして、満を持してスポットライトの下へ歩き出した。
(気持ちいい……! ランウェイを歩くって、こんな感じなんですね)
 柔らかに揺れるツインテールの髪と、胸元で輝くアレキサンドライト。
 最後の1点を身に着けたシャムロックが誇らしげにポーズを決め、舞台の上にコレクションの全てが出揃った。
 会場中の視線がモデル達に集まり一斉にフラッシュが瞬く。
 しかし誰もが皆、それらが本物であるということを疑わぬ中に1人だけ――「違和感」に気づいた者がいた。
 今宵のショーのプロデューサーである。
「あのドレス俺が指定したのと違うぞ! どうなってるんだ?」
 シャムロックのMNのドレスは着用者を美女にすることはできても、衣装を変えることは出来ない。
 プロデューサーは事の次第をスタッフに問いただすため楽屋に駆け込んだ。
 すると、ネックレスの箱の上に一枚のカードが置かれていた。
「オーナーその他には呪われてください。首飾りは元の持ち主に返しますので」
 カードの最後にはクローバーの意匠と「J」の文字。
 その時、傍らに置かれていたミンクのコートの下で何かが動いた。
 眠らされていたモデルが寝返りを打ったのだ。
 その首には、贋作のネックレス――。
「どういうことだ? だったらランウェイのあいつは一体……!」
(な、何かマズい展開みたいデス!)
 物陰に潜み、プロデューサーの様子を見ていたエラは急いで晴に連絡を取った。
 エラに「気づかれたらしい」と聞いた晴は、すぐにシャムロックとアルカに外へ出るように伝えた。
「川沿いのガーデンだ。そこに『迎え』が来る」
「もうお開きですか? 残念ですねぇ。もう少し楽しんでいたかったのに」
「ネックレスも手に入れたんだし、もう良いじゃない。行きましょうシャムロック」
 今宵のショーはこれにてエンディング。
 モデルの時間はお終いだ。
 シャムロックとアルカは怪盗の姿になると、宮殿の扉を開け放ち、ローズガーデンの方へと走り出した。
「何だって?! モデルは偽物だと!?」
 プロデューサーから話を聞き、騒ぎ始めた警備員達。
 そして1人の警備員が庭へ走っていく2人の怪盗を見つけ、声を上げた。
「見たか?! あいつらネックレスをしていたぞ!」 
「追え! 捕まえろ!」
 俄に騒然となるショーの会場。
 宮殿の出窓が開け放たれ、警備員達が追いかけようと外に出る。
 そこに飛んできた1枚のコイン。
 そして次の瞬間、爆音と煙が巻き起こった。
「ぐわぁ?!」
「ごめんなサーイ!」
 エラが庭へと走り出る。
 しかし、別の場所にいた警備員がすかさずそこへ駆け寄ってきた。
「に、ニンジャだ! 捕まえろ!」
「どうしてジャパニーズニンジャがここにいるんだ!」
「NOー! なんでミーがニンジャだと分かったネー!?」
 さすがは「風魔玉響 Fuma Tamayura」……こんな時でもブレない。
 胸元には「忍者」とはっきり書かれているが、日本語の読めない英国人にも格好でバレバレである。
 警備員達はエラを捕まえようと追いすがった。
 しかし――。
「わんわんっ!」
「ぎゃああ! な、なんだぁ?!」
 赤いスカーフをはためかせ、花壇の影からわふーん、と飛び出してきたのは晴の愛犬・柴犬のゴンスケである。
 驚いて仰向けにすっ転び「ぎゃー」と叫ぶ警備員達。
 ゴンスケはその体の上に乗ると、くるりと巻いた尻尾をふりふり、足を踏み踏み、わんわんわふわふ……。
 その姿を見ていた晴が「良いぞゴンスケ!」声を上げた。
「こうなることくらい分かってたさ! 2手3手先まで読めなくて勝負ができるか!」
 撤収を決め、宮殿から走り出す晴の横を一匹のハツカネズミが走り抜けていった。
 鼠はガーデンを走り抜け、女神の彫像の上に駆け上がると、夜空を見上げた。
 遠くから、ヘリコプターの音が近づいていた。
「うわぁ、きれいな夜景! すごいね……宝の山みたい」
 神崎真比呂は操縦席から眼下の夜景を見下ろし、思わず感嘆の声を漏らした。
 高度を下げると、ライトアップされた宮殿の庭が次第に近づき、芝生を駆け抜ける仲間の姿が見えた。
「じゃあ僕も、キラッと輝くような活躍を見せるとしますか! 目標は、あそこだね!」
 真比呂は一気に高度を下げ、機体のドアを開けた。
 スタンバイしていたミニオンズの2人が縄梯子を下ろす。
「皆急いで!」
 ヘリをホバリングさせながら、真比呂は仲間に向かって叫んだ。
 プロペラの風圧がガーデンに咲き誇った冬薔薇の花びらを巻き上げる。
 縄梯子を伝い、仲間が急いで機内へと撤収する。
 その向こうから、警備員や大勢のスタッフが追ってくるのが見えた。
「あははは! やっぱり追ってきたね。まぁ、仕方ないよね。怪盗だもん」
 真比呂は4人の仲間が機内へと乗り込み、最後にドロイドのハツカネズミが飛び込んできたのを確認すると、素早く機体を上昇させた。
 追いすがろうとしていた警備員やショーのスタッフが数人、悲鳴を上げて芝生の上に転げる。
 会場はもはやパニック状態である。
 それを見ながら、晴が「呪われてるなぁ」と呟いた。
「ネックレスの『呪い』が何だったのかは見ないで済みそうだけど……こういう結末を迎えたってことは、La ・Giocondaっていうブランドは充分その報いを受けたんじゃないかな」
 晴の隣では回収した3点のネックレスを見せながら、エラが皆に任務完了を報告していた。
 アルカとシャムロックの身につけているものと合わせ、これで全てが回収された事になる。
「さぁ、仕事が終われば帰るまで。みんな、行くよ!」
 ヘリのドアが閉まる刹那、そこから地上に向けて何枚ものカードがばら撒かれた。
 そこにはこう書かれていた。
『二色なる輝きは呪いと共に悪しき手を離れ、永遠に夜空を彩る ――不破のコーイヌール』
 肩にドロイド鼠を乗せた真比呂が笑う。
 後日、回収されたネックレスは元の持ち主の所へ戻った。
 一方のハイジュエリーブランドLa ・Giocondaは一連の事件に関しての説明を求めるマスコミ、そしてアレキサンドライトを購入できず激怒する客達の対応にてんやわんやだったということである。



 22

参加者

c.誰か可児丸警部に予告状出す人いるのかな? ボクはその予定なし!
神崎真比呂(pa0056)
♀ 22歳 刃乗
c.ゴンスケと共に逃走の支援を。
羽乃森晴(pa0077)
♂ 19歳 英探
a.私もランウェイを歩いてみたかったのでー!
シャムロック・クラナド(pa0160)
♀ 19歳 英探
a.魅せてアゲルわ。
アルカ・アルジェント(pa0217)
♀ 23歳 弾魅
b.潜入して、事前にすりかえますヨ。よろしくお願いしマス!
エラ・ウォーカー(pa1057)
♀ 23歳 刃忍