貴方に白の真心を

担当旭吉
タイプショート 部活
舞台Celticflute
難度易しい
SLvC(紛争地域、島内)
オプ
出発2018/03/07
結果成功
MDPアイザック・ブライトン(pa0348)
準MDPルシアン・グリフレット(pa0124)
マティアス・リブラン(pa1168)

オープニング

◆はじめてのほわいとでい
 『ホワイトデー』――――とは?
 知識としては知っている。
 バレンタインに女性からチョコレートを貰った男性が、その返礼の贈り物をする日本の風習だ。
 東アジア圏では徐々に広まりつつある文化だが、ヨーロッパ圏ではとんと縁の無いもの。
 世界中から人が集まるこのUNICOに来て、まさか自分がホワイトデーの当事者になる可能性なんて髪の毛程の可能性も考えていなかったのである。

登場キャラ

リプレイ

◆全ての女性へ
 適度に陽射しが差し込む園芸料理同好会の部室のキッチンは明るく、それでいて暑すぎるという事も無い。
 食材や器具が並べられた調理台は、すぐにでも料理を始められそうだ。
「では、何かありましたら」
 部長のアイザック・ブライトンが参加者達に一通りの説明を終えると、シルフィ・レオンハートの瞳がやる気と期待に輝き始める。
「ホワイトデーと言えばバレンタインの三倍返し‥‥ついにこの日が来たんだYO。お菓子の山なんだYO!」
 一方で、「ホワイトデーイベ限定ガチャが‥‥」などと唸る比良賀ソラ。それぞれのホワイトデーがあるようだ。
「食用の薔薇とかスミレはあるかな?」
 商品にするための花の砂糖漬けを作るべく、材料の花を取りに行こうとしたアイザックの元へ、マティアス・リブランが尋ねてくる。
「ありますよ。私もスミレは使う予定でしたし、パンジーや薔薇もサンルームにあります」
 摘みたての活きのいい花を、さっと洗って卵白に浸け、砂糖をまぶす。
 それを乾かせば、見た目にも舌にも鮮やかな花の砂糖漬けになる。
(花自体が鮮やかですし、包装はガラス瓶に詰めてリボンを結ぶだけで十分でしょうね)
 バレンタインのお返しに、女性が喜ぶものになれば。

◆ひそひそ大作戦
 参加者がそれぞれサンルームから花を取ってきたり、自分が作りたい菓子作りに着手し始めたりした頃。
(三月十四日‥‥ベ先生の誕生日でもあるんだよね、たしか!)
 ソラがひそっと話題を持ちかければ、ルシアン・グリフレットがひそっと反応する。
(じゃ、ケーキでも用意するか。土台だけ焼くから、皆でデコるか?)
(いいねぇ! 推しのキャラチョコ作りで鍛えた腕が唸るぜぇ‥‥)
(何か楽しい話デスカ?)
 二人がひそひそと盛り上がるのを、手裏剣クッキーを作っていたエラ・ウォーカーや、林檎クッキーの生地を作っていたアデライン・エルムズが聞き付け、アデラインを教えていたアイザックや他の参加者達もその計画を知る。
(ケーキ以外でも、先生のお部屋‥‥お花飾ったら、喜んでくれるかな)
(フラワーアレンジメントならお手伝いできますよ)
 花鼓紫の協力を得て喜ぶシルフィに、はて、と首を傾げるメレディス・メイナード
(先生のお部屋は、普段鍵が掛かっていたような‥‥先生に許可を得て飾らせて貰うのでは、サプライズにならないのでは)
(でも勝手に扉をデコった時は喜んでくれたから、喜んでくれるんじゃないかなっ!)
 アデラインの経験談がシルフィ達を更に後押しする。
(ドアを開けるのは任せてYO。ミステリーの推理と部屋の鍵開けは似たような物だからNE)
 鍵開けの技術は全く無いはずのシルフィだが、その自信はどこから来るのか。
(さて、皆でデコるなら普通のホールケーキでいいか。焼き上がりまでしばらくかかるからまた後でな)
 随分と大きな集団になっていた密談をルシアンが解散させ、自分はメレディスにも手伝わせて土台作りに取り掛かる。
「‥‥そう言えば先生、来てませんね」
「ここのイベントの事知らせて回ってたの先生だったのになぁ?」
 ふとメレディスが零した言葉に、ルシアンも周囲を見回す。
「先生の姿じゃないだけかもよ?」
「‥‥かも知れませんね」
 アデラインの慣れたような言葉に苦笑する。この期に及んで何かに紛れるとしたら――『菓子の作り方を教わる学生』、だろうか。
「あ、それじゃさっき話してた時に堂々と聞かれてた可能性もあんのか!」
 部外者がいたとしても疎外感を感じさせないよう、なるべく短い時間で、全員で固まる事の無いようにルシアンなりに気を配っていたのだが、学生に変身されていたのでは判別も難しい。
「話を聞かれていても、完成品はまだ秘密にできますから」
「土台ができる前に、見覚えの無い学生さんを見つけ出さないとー!」
 そして、その学生を探す前に自分の菓子を完成させねば。
 メレディスとアデラインの微笑ましい会話を聞きながら、アイザックはこの場に姿を見せなかった講師を思った。
「幸せは‥‥見守る方が楽ですから。失う事を知ってしまうと、ですね」
「失った事があるんですか?」
「まあ‥‥遠い昔ですよ」
 苦笑するアイザックは、問いかけた声の主にくり抜いたクッキー生地を天板へ移動させるよう指示する。相手は丁寧に生地を並べると、オーブンに入れて指示通りの時間を指定した。
「‥‥失う幸せが僕にもあったかどうか、もう覚えてませんが。今はちょっと怖くはありますよ」
 妙に気になる声の主の姿をもう一度見ようと顔を上げた時、たった今までそこにいたはずの学生の姿は煙と共に消えていた。
「どうしマシタ、アイザック?」
「今まで、確かに私はクッキーの作り方を教えていたのですが‥‥」
 ――そう言えば、名前を聞いていなかった。
 気付いたアイザックは、学生がオーブンに残していったままのクッキーが焼き上がるのをエラと共に待っていた。

◆真心出来上がり
 講師を驚かせるためのケーキのデコレーションをこれでもかと頑張った後、学生達は互いに作ったり用意したりしたプレゼントを交換していた。
「これはルシアンに。イッヌに似合いそうですよね」
「お、サンキュ」
 メレディスからルシアンには、ワンポイントで足跡模様の刺繍が入ったバンダナだ。あの困り眉の黒柴も愛らしさとイケ柴度が上がる事だろう。多分。
 ちなみに、ルシアンからメレディスへのプレゼントは特に無い。敢えて言うなら『共に作業をしたこの時間』がそうだろうし、それで十分だと互いにわかっている。
「私からはメレディスにこれ、バレンタインのお返し! いつも色々ありがとー! これからもよろしくねっ!」
 アデラインからメレディスには、頑張って林檎ジャムを練り込んだクッキーに、『感謝』の白いトルコキキョウを添えて。敢えて彼のイメージである青い花にしなかったのは、今日が『ホワイトデー』だから、だとか。
「まさか、アデルさんからバレンタインのお返しを頂けるとは」
「林檎好きだよね、メレディス?」
「ええ。ああ、それで‥‥ありがとうございます」
 少し驚きながらもふわりと喜んで受け取ると、メレディスもアデラインにプレゼントを贈る。大振りのガーベラを中心に配したミニブーケと、ミニボンボンやビーズ等を編み込んだ自作のシュシュで、シュシュの方は形が賑やかな分色味を淡く抑えてある。
「お花もシュシュも可愛いーっ メレディスってほんとにセンスあると思う!」
「アデルさんの髪色に合えばと。ミニブーケの方は紫さんにも花選びを手伝って頂きまして」
 近くでまだ自分達の作品制作にかかっていた紫にアデラインが礼を言うと、紫は二人の満足げな表情を見て微笑んだ。
「花は、紫様の方が私よりずっと詳しいと思っていましたので。お任せして正解でした」
「アイザックさんはその分、料理にかかりきりだったじゃないですか。これも分担ですよ」
 互いを信頼する部長と副部長の、園芸料理同好会での形だ。
「くんくん‥‥クッキーのにおい‥‥」
「ああ、『名も知らぬ学生様』のものでしょう。後で頂きましょうか」
 シルフィが嗅ぎ当てたのは、作っていた学生が消えてしまったクッキー。何の変哲もない初心者用のプレーンクッキーには、学生がいた足元に残されていたメッセージカードが添えられていた。

『何かを残し、残されるという習慣がない自分には、これが限界だ。
 残りは追々返済する。何か用があれば、夕食後に部屋へ来るように。  幻想影遊』

◆そして貴方に
 カードで告げられた通り、寮での夕食を済ませると学生達は講師の部屋を目指した。部屋の扉はやはり開いていない。
「ここは僕の出番だね‥‥」
 真剣な顔になったシルフィが息を吸うと、おもむろに扉をノックして声をあげる。
「ベイリー先生たのも――――!」
 鍵開けも推理も何も、普通の呼び出しである――!
「はいどうぞ」
 開いた――!
「先生、ハッピーバースデー!」「はっぴーばーすでー!」
 顔を覗かせた瞬間に学生達から次々に祝われると、ベイリーはその勢いに多少は驚いたが心底という程では無く、ただ笑って礼を言っていた。
「えっと‥‥皆が用意してくれたものがあるんだったよね? ここじゃ何だし、中においでよ」
 言われるまま通された彼の部屋は、以前バレンタインにここへ来た学生達には記憶より多少片付いているように見えただろう。間違い探しの範囲だが。

 奥のテーブルに通された学生達は、そこで皆でデコレーションしたホールケーキを箱から出した。
 土台のスポンジとフルーツ、ベースのクリームはルシアンが。
 ケーキの縁に散らされた二種類の花の砂糖漬けの内、ビオラの花弁はアイザックが。スミレの花弁をホワイトチョコソースに浸けたものはマティアスが。
 ホイップクリームで花やリボンを描いたのはアデライン。
 イラストのような精巧な似顔絵チョコを作ったのはソラ。
 ルシアンが用意したチョコペンやチョコプレートでケーキを彩ったのはエラ。
 仕上げに、キャンドルと星型のアイシングクッキーを縁に配置し、『Happy Birthday』を添えたのがメレディス。
「先生、僕達も頑張って作ったんだYO。これからも素敵で格好いい先生でいてNE」
 そしてシルフィと紫からは、サクラソウで周囲を飾り小さく纏めた色違いの薔薇のブーケを。
 学生達が自分に何か用意している事だけは知っていたらしいベイリーだったが、完成したそれらを受け取り見つめると言葉を失ってしまっていた。
「先生、どうしましたカ?」
「私達なりに、日頃の感謝を込めてみたのですが‥‥」
 エラと紫が首を傾げていると、講師は額に手を当て大きく溜息をついた。
「‥‥何となく予想は付いてたはずなんだけど、困るなぁ‥‥本当に」
「困って頂けたなら、僕達としては大成功ですよ」
 事実、ベイリーは困惑こそしていたが、その顔は負けを認めたような笑顔だった。
 満足げなメレディスはもう一つ、個人としてプレゼントを贈った。ゼラニウムの花を押し花にした栞だ。
「四葉のクローバーも素敵だと思いますが、自力で見付けられた試しが無くて。貴方に出会えて良かった。来年もまた、お祝いできますように」
「来年まで、猫が好奇心に殺されてなければね?」
 生花を扱う慎重さで栞を受け取り、講師はまたそれを見つめる。しかし室内が静かになってしまった事に気付くと、茶を出すから皆で食べようと促した。
 切り分けたケーキを皆で食べる中、ルシアンは個人的にベイリーの元へ行くと、以前『秘密』を立ち聞きしてしまった事を謝罪した。
「なかなか話す機会が無くて。こんな時に言うのも何ですけど」
「メレディス君にも言ったけど、あれは君達が謝る事じゃないんだ。立ち聞きは褒められた事じゃないとしても、悪いのは僕の方だ。‥‥無価値な話をすまなかった」
 逆にルシアンに謝るベイリーは、いつも通りの少し困った笑顔だった。

 *

 ベイリーの部屋での茶会を少し早めに出てきたマティアスは、その足で寮母の部屋へと向かった。
(料理だし、心配性のあの人が部室のイベントに来ると思ったけど‥‥この時間ならいるかな)
 部屋の外から少し窓を覗いてみると、クエスティがノートPCの画面を見つめながらコーヒーを飲んでいた。それを確認した上で、ドアをノックする。
「今日はホワイトデーでしょ。はいこれ、先生にあげるよ」
 砂糖漬けにした赤い薔薇を、ホワイトチョコに浸けた甘い花。泣きたくなるほどのビターチョコが好きだと言っていた彼女には甘過ぎるだろうとも思ったが、マティアスの気持ちとしてこの見た目は捨てられなかった。
 赤薔薇と、『白薔薇』に込められた意味を。
(気付いてもらえなくても目を背けられてても、少しずつ食べてくれれば)
「甘いようで、巧妙で。狡猾なようで、半端で」
 ふふふ。と微笑むと、彼女は甘い花弁を一口食べた。
「やっぱり甘過ぎるわね。気持ちはとてもわかりやすいけど、私は『花盗人(フラワーシーフ)』だから」
 花盗人に花を差し出す理由を、ゆっくり考えておいて。
 クエスティはそう言って、もう一枚花弁を口にした。

 *

「皆様、今日は楽しんでくださったようでよかったです」
 講師の部屋での茶会が解散した後、アイザックはエラと共に談話室へ来ていた。参加者達の表情を思い出しただけで、今回のイベントを開催して本当に良かったと思えた。
「エラ様はお師匠様に作られたのでしたね」
「イエス! この師匠の分は明日にでも送るヨ」
 箱に詰められた手裏剣クッキー。蓋を留める紐の下には忍者刀をイメージした折り紙を挟んである。包装紙も手裏剣イメージと、中から外まで隙間なく凝っている。
「そして‥‥アイザック、いつもありがとうネ。これは、ユーの分ヨ」
「私に‥‥ですか? 本当に頂いていいのでしょうか‥‥ありがとうございます」
 予想だにしていなかったエラからのプレゼントに驚くと共に、アイザックは優しい友人の温かい心がとても嬉しかった。
「では、私から‥‥」
 アイザックはその場で変身すると、『真夜中の紅茶党』として鮮やかなブーケと共に瓶詰めの砂糖漬けを渡した。
「私の感謝の気持ちです。どうぞ」
「オォ! とっても綺麗デス!」
 感情を爆発させたように喜ぶエラの姿に、紅茶党の男はまた自分の心が満たされていくのを感じた。

 *

 ――花と砂糖が彩る白の日。そんな、常夏のある日の事。



 13

参加者

c.ケーキ用にバースデーキャンドルをいろいろ用意してみます(こそこそ)
メレディス・メイナード(pa0098)
♂ 20歳 探魅
a.(ひそひそ)先生の誕生日、ケーキ用意するんで希望者でデコって貰えれば
ルシアン・グリフレット(pa0124)
♂ 21歳 英探
b.(エラ様は何を作ってらっしゃるのでしょうか…)
アイザック・ブライトン(pa0348)
♂ 26歳 探魅
c.先生、たのもーーーなんだYO。!(ばたーん)(二回目)
シルフィ・レオンハート(pa0829)
♀ 21歳 英探
c.よろしくお願いします。
花鼓紫(pa0975)
♀ 19歳 知魅
a.さて、美味しいクッキーの作り方ハ……
エラ・ウォーカー(pa1057)
♀ 23歳 刃忍
b.(ひそひそ)りょうかーい! ケーキ可愛くデコっちゃうよー♪
アデライン・エルムズ(pa1094)
♀ 19歳 弾忍
a.ふふふ、楽しみ楽しみ!
マティアス・リブラン(pa1168)
♂ 19歳 弾魅
a.(ひそひそ)おっけー!じゃあケーキをデコるぞぉー
比良賀ソラ(pa1234)
♀ 19歳 忍知
 ホワイトデーに喜ばれるものって、何だろうね?
ベイリー・フェルト(pz0011)
♂ 28歳