激走ファラオチェイサー!

担当楽市
タイプショート 事件
舞台エジプト(Africa)
難度普通
SLvB(アメリカ程度)
オプ
出発2018/03/11
結果大成功
MDPイリヤ・ヴォエヴォーダ(pa0440)
準MDPディルク・ベルヴァルド(pa0112)
李紅花(pa1128)

オープニング

◆こちら、墓荒らしになります
「ゲーッハッハッハッハッハ、これだけの収穫がありゃあ万々歳だ!」
「兄貴ィ、売り払えばどんくらいになりますかね!?」
「さぁなぁ! ただわかってるのは、俺たちが一生遊んで暮らせるってことだァ! ゲーッハッハッハァ!」
 場所はエジプト、王家の墓と呼ばれる世界的に有名な遺跡から東に少し外れた砂漠の一角。
 そこに、隠されたエジプト王家の遺跡があった。

登場キャラ

リプレイ

◆行くぜ行くぜ行くぜー!
 エジプト北東部。
 ナイル川をさかのぼるようにして、一台のラリーカーが砂漠を激走している。
「何もない砂漠を走るってのは爽快だなぁ、弟よ!」
「兄貴、兄貴! 運転が乱暴すぎるって、せっかくのお宝が!」
「おおっと、そりゃすまん!」
 謝りつつも、盗掘屋・兄は速度をそのままに鼻歌交りで運転を続ける。
 隣に座る弟も「大丈夫かよ」と言いながら、全体的に余裕の様子だった。
 当然だろう。
 未発掘の遺跡をいち早く発見し、その中にあった財宝を確保できたのだから。
 あとはもう一時間弱も車を走らせてポートサイドまでいけば、この国を出て逃げ切ることができる。
 財宝を闇市場に売りさばけば、そのあとに待っているのは約束された裕福な暮らしだ。
「ヘッヘ……、最高だな……」
 数日先に迫る幸福な結末を思い描き、笑ってしまう弟だった。
 が――
「オイ、外から何か聞こえねぇか?」
「ああ、兄貴。やけにうるせぇ音が……!?」
 弟が窓から顔を出して車の後ろを覗き見る。そこには、砂埃を巻き上げて飛ぶ一台のヘリがあった。
「ああ……、やっと捕捉したよ……」
 ヘリを操りラリーカーを追うのは、ディルク・ベルヴァルドであった。
 彼は眼下に見えるその車をしっかりと視認して、静かにうなずいた。
「な、な……!?」
 弟は絶句する。こんな砂漠のど真ん中で、まさか追手が来るなどと。
「兄貴、兄貴ィ!」
「何だ、どうした!」
「追手だ!」
 その、悲痛と呼んでも差し支えない弟の叫びが合図となった。
「見つけたぞ、不埒なる盗掘者!」
 荒野の丘を派手に飛び越えて、現れたのは真っ赤な薔薇のカラーリングが施されたバイクだ。
 二輪を駆って大地を疾駆するはエルフ・プレシス
 正義に燃える両眼が、しかとラリーカーを捉えている。
「逃がすものか!」
「オイ……!?」
 兄が怯えた声を出す。それは、エルフににらまれたのもあるがそれだけではない。
 いつからそこにいたのか、後方に三台、自分たちを追う車が迫っていた。
「……追撃。……濡れ手に粟な気持ちは分からんでもないが、墓荒らしは死者への冒涜だ」
 三台の中で先頭を走るのは、大世宮典人が乗るオープンカーだ。
 炎天下に風を浴びながら、典人はただまっすぐにラリーカーを追う。
「あっちもなかなか頑丈そうだが、こっちもなかなかどうして。さぁ、仕掛けに行く」
 続いて、イリヤ・ヴォエヴォーダの車が地面をバウンドする。
 ろくに舗装されていない荒野だ。車に求められるのは速度よりも走破性である。
 その点でいえば、イリヤが選択したトラックは悪路走破に特化したそれで、まさにおあつらえ向きだ。
「操縦技術自体はなかなかのもののようだが、俺もプロでな」
 ガタガタと激しく揺れる車内でも、イリヤは一切焦ることなくハンドルを握っている。
「ハッハァー!」
 最後に、高笑いしながらGTを走らせるのは李紅花だ。
「イイねイイねこういうシチュ、待ってたよ!?」
 その言葉通り、彼女はアクセルを踏み込んで興奮のままに車を激走させた。
 助手席に乗っている紅嵐斗が、その激しさに危うく舌を噛みそうになった。
「紅花さん、ちょっと……!」
「しっかり掴まってね嵐斗、飛ばすからさぁ!」
「あ、ダメだ。聞こえてないね」
 しかもさらにかっ飛ばすとか何それ怖い。
 嵐斗はMN技術で姿を変えながら、フロントガラスの向こうに見えるラリーカーを見つめる。
 彼らは盗掘者。
 自分たちは怪盗。
 盗みについてはどうこう言えた義理ではないかもしれない。
 しかし、それが人類文化の喪失に繋がるかもしれないというのならば、見過ごしてはいられなかった。
「紅花さん、いいよ。もっと踏み込んでくれ!」
「もちろんさぁ――!」
 炎天の空にはヘリ、焼ける荒野に車とバイク。
 エジプトを舞台にした大捕り物が始まった。

◆レッドホットカーチェイス!
「あああああああ、兄貴! どうすんだよ、兄貴ィ!」
「うるせぇ、泣き言ホザく前にその手に持ってるモンをブッぱなせ!」
「お、おう!」
 混乱しながらも、それでも彼らは一般人ではない。
 兄の一喝を受けて弟が右手に大型の拳銃を握りしめる。
「……来る」
 典人が、ラリーカーから顔を出した弟を視認して手にした拳銃のことを皆に告げた。
 通信を介して、その情報はただちに全員が共有する。
 そしてまず動いたのが、イリヤであった。
「おっと、それはナンセンスだぞ」
 弟が拳銃を向けて狙いを定めようとする。
 その隙を突いて、イリヤが思い切りアクセルを踏み込んでラリーカーの後方に車をぶつけた。
「なぁ――!?」
 車が激しく揺さぶられ、弟が拳銃をあらぬ方に撃った。
 ナメられている。そう感じたのは彼ではなく、兄であった。
「フザけやがって……!」
 積まれている荷物はしっかりと固定してある。
 壊れることはない。いや、多少壊れても逃げ切れば俺たちの勝ちだ。
 ハンドルを強く強く握りしめながら、彼は思い切りアクセルを踏み込んで、一気に速度を上げた。
「……ぶつけられても特に堪えていない。意外といい車を用意していたんだな」
 その一幕をすべて見ていた典人が、盗掘者の車を少しうらやましく思った。
「なるほど、頑丈だ」
 そしてぶつけたイリヤ当人も、同じように相手の車の性能を感じていた。
 頑丈さを優先しているようだが、さりとて速度が遅いわけではない。むしろ早い。走破性も悪くない。
「――いい車だ。だが、車だ」
 バタバタと大きな音を立てて、空よりヘリが迫っていく。
 ディルクが操るそのヘリは、ただそこにあるだけで盗掘者兄弟に強烈な圧力を与えていた。
「クソ、この野郎……!」
 再び、弟が窓から顔を出す。
 今度は手にサブマシンガンを持っている。その銃口が向けられたのは、ヘリの方だ。
「……当たらないといいけどなぁ」
 操縦するディルクが、表情を変えずにそうつぶやいた。
「クソ、クソ、クソがァァァァァァ!」
 狙いをつけるなど一切せずに、盗掘者の弟がヘリへとマシンガンを乱射する。
 昼間の砂漠に、弾丸は刹那の火線を描くが、ほとんど当たらない。
 そもそも距離が開いている。当然といえば当然だが、それに気づかないくらいに弟は焦っていた。
「よかった……、随分と焦ってくれてるみたいだ……」
 そんな相手の様子を確認し、ディルクは一つ安堵の息をつく。
 だが、彼だけがそのときになって気づくことができた。
 この先に待ち構えている、彼らにとってのよからぬ兆し。ディルクの目が、はっきりとそれを見た。
「あれは……」
 ――灼熱のカーチェイスは続く。
 逃げるラリーカーは確かに高い性能を持っているだろう。
 その速度はイリヤのトラックより速く、その走破性は典人や紅花の車より高いかもしれない。
 しかし、所詮は個人が所有する車に過ぎない。
 現に、今、逃げるラリーカーの右側面にエルフが、左側には紅花が迫りつつあった。
「この位置なら、これで!」
 盗掘者・兄がこっちを見た瞬間に、嵐斗の持つステッキがパッと光った。
「ン、だァ!?」
 兄はその輝きに面食らうが、何とかハンドルを離さずに済んだ。
 見ていた紅花が楽しそうに笑う。
「ハハ、やるじゃん嵐斗!」
「あっちもなかなか。……今ので乱れないかぁ」
『いいや、十分だ!』
 インカムから声が聞こえる。
 それは反対側からラリーカーに迫るエルフのものだった。
「卑劣な盗掘者め!」
 ラリーカーの車体に、エルフは思い切り斧を叩きつけてやった。
 いかに頑丈な車とはいえ、さすがにそんなことをされたら大きく凹む。
「おまっ、フザけんなァ!」
 弟が拳銃で応戦しようとする。だがその程度の弾丸では、しっかりと防備を固めているエルフには通じなかった。
「兄貴! どうすんだよ、兄貴ィ!」
「うるせぇ、今考えて――」
 弟に泣きつかれ、兄は歯噛みしかけていた。
 しかし遥か前方に見えるものを確認して、歪みかけていたその顔に笑みが浮かぶ。
 ディルクが皆に情報を伝達したのは、まさにそのタイミングであった。
『気を付けて……、砂嵐が来る……』

◆サンドストームドライビング!
 青天の霹靂と呼ぶにしても、それはいきなりのことだった。
「視界が……!」
 強風によって砂が大きく巻き上げられる。
 生じた砂煙の規模はちょっとやそっとどころではない。UNICOの学生たちは、この砂嵐に追撃を邪魔される。
「兄貴……!」
「ヘ、ヘヘ……ッ! ツキはこっちのものらしいなぁ、急ぐぜ!」
「おお!」
 これをチャンスとばかりに、兄がアクセルを全開にした。
 もはや盗掘品がどうこう言っている場合ではない。とにかく逃げなければ話にならない。
 そして学生たちは、この天候の悪戯をモロにくらっていた。
 ディルクはまだいい。ヘリで砂煙が届かない高所まで逃れられる。
 しかしそれ以外の、車とバイクで大地を行くメンツが、砂の中に巻かれてしまっているのだ。
「……これは、参るな」
 中でも特に影響が大きいのが、典人だ。
 彼が乗っているのはオープンカー。荒ぶる風と砂を避けることができないのだ。
 厳しい。それを実感する。
 本来であれば速度を緩めるべきであろう。
 視界は狭まり、少し先も怪しいこの状況では無理をするべきではない。
 最悪、悪路に車がひっくり返ることあってありえた。
 それは分かっているはずだが、そのとき彼の操縦は意識的な理解を超えていた。
「……行くか」
 何故自分がそう呟き、そうしたのかは分からない。
 だが彼はスイッチを入れて、車に備えつけられているカスタム過給器を一気に展開する。
 時を同じくして、エルフもまたスロットルを全開にしていた。
「この程度の砂煙が何だというのだ!」
 まっすぐ、ただ真っすぐ彼女はバイクを走らせる。
 典人と同じく外に身をさらしている彼女は、曲がらぬ信念そのままに砂嵐の只中を突き進んでいく。
「我が心、我が走り、性能表とは違うぞ!」
 盗掘者の兄弟は、決して油断していなかった。
 砂嵐の訪れという幸運があっても、それで慢心できるほど彼らのキモは太くない。
 だから兄は常に速度を落とさずにいたし、弟は拳銃の弾丸を入れ替えて準備をしていた。
 やがて砂嵐を突っ切ったとき、生き残った追手連中にトドメをさせるように、と。
 だからこそ、彼らは驚愕するしかなかった。
「ウソだろ、オイ……!」
 学生たちの中に、脱落者は一人もいなかったのだから。
 典人がオープンカーを駆り、エルフがバイクで砂上を走り抜ける。
 どちらも砂まみれ、ほこりまみれである。
 だが健在。どちらも今なおあきらめることなく、盗掘者を追いかけていた。
「クソ、ったれが!」
 盗掘者兄弟から余裕が一気に消える。ハンドルを握る手が、冷たい汗で濡れた。
 その動揺は当然、彼の運転にも出てくる。
 格好の隙であった。
「嵐斗、変わって!」
「OK、紅花さん!」
 紅花がハンドルから手を放し、代わりに嵐斗が運転をする。
 そして彼女は持ち出した散弾銃を並走するラリーカーの窓ガラスに思い切り発射した。
 散弾が、ラリーカーのガラスを砕く。飛び散った破片が、盗掘者・弟の頬をかすめて切った。
「うおおおおおおお!?」
「あ、アホかテメェ!」
 弟が大きく身をのけぞらせて、兄の運転の邪魔をしてしまう。
 ポートサイドの街に近づきつつも、そこでラリーカーの走行が大きく乱れた。
「……ああ、」
「――今だ!」
 典人が、大きく右に回り込む。
 そして反対側にはエルフ。
 オープンカーを壁にしてラリーカーの走路を制限したところで、エルフの斧がそのタイヤを叩き割った。
「うおああああああああああああ!?」
 後輪の片方をブチ破られて、いよいよラリーカーは操縦がきかなくなる。
 横転か。そう思われた瞬間に、イリヤのトラックがラリーカーを追い越して、その前方に回り込んだ。
 ドガァンと、激突音は派手だった。
 しかし彼の車はしっかりと、ラリーカーを受け止めていた。
「ま、これくらいはできるさ。俺の仕事は車が命でね」
 車をもって車を制す。
「ひぃ、ひぃぃ!」
「何だ、何だってんだ……!」
 完全に動きを止めたラリーカーから、盗掘者兄弟がはい出て逃げようとした。
「おっと……、逃がさない……、よ……」
 しかし上空、バタバタとプロペラの回る音が聞こえてきて、兄弟は腰を抜かしてその場に座り込む。
 ディルクのヘリがトドメとなった。
 ポートサイドまではあと3km。
 その位置で、砂漠の大追跡劇は終わりを告げた。
 なお、押収された盗掘品は無事にエジプト政府に返還されて、未発掘の遺跡の調査も始まるとのことだ。
 彼らは見事に、人類の文化遺産を守り切ってみせたのだ。



 12

参加者

a.それまではナビや射撃の間ハンドル保持したりしてサポートするつもり。
紅嵐斗(pa0102)
♂ 19歳 英忍
c.よろしく…
ディルク・ベルヴァルド(pa0112)
♂ 22歳 乗知
b.頑丈なやつで仕掛けに行く。巧くやる。多分な。
イリヤ・ヴォエヴォーダ(pa0440)
♂ 24歳 刃乗
a.……追撃。今装備してる車両で行く。
大世宮典人(pa0940)
♂ 22歳 刃乗
a.オッケー!頼りにしてるよん、嵐斗。
李紅花(pa1128)
♀ 20歳 弾乗
a.逃しはせぬ!
エルフ・プレシス(pa1173)
♀ 26歳 刃乗