【MC】天使のメダル

担当ちま
タイプショート 授業(島外)
舞台ウクライナ(Europa)
難度普通
SLvC(紛争地域、島内)
オプ
出発2018/07/12
結果成功
MDP栄相セイス(pa0459)
準MDPアルカ・アルジェント(pa0217)
アニタ・フィーニ(pa1687)

オープニング


 鮮烈な陰影描写で美術界に論争を巻き起こした、19世紀の風景画家JM・テイナー。
 盗難にあった彼の3つの絵画『幸せな日の出』『帆船の船出』『光と影』のうち、『幸せな日の出』は無事回収された。残り2点の行方だが、こちらも捜査の結果、ウクライナのマフィアのボスの手に渡ったという情報を得られている。
 そこからさらに調査を重ね、買い取ったマフィアのボスの名が判明した。

「アレクセイ・ホローヴィチ。クリミアのロシア系武装勢力出の男だよ」

登場キャラ

リプレイ


 邸宅の柵門が開き、煌々としたライトで新月の闇を切り裂きながら銀色の高級車が車道へ出た。黒塗りの護衛車が2台、後を追っていく。
 車が完全に見えなくなるのを待って、怪盗ネクタルこと栄相セイス、怪盗雲影こと陳晶晶は行動を開始した。
 柵門を越えた雲影は音もなく着地し、鍵を開けてネクタルを入れる。臭いを嗅ぎつけて集まった犬達は、ネクタルに魅了されておとなしくなった。
 車の後部座席にはアレクセイとレーシャの姿があった。思惑通り、彼らは親好あるマフィアボスの誘いに乗ってパーティーへ向かったようだ。ボスが出掛けたことで邸内の者は気を緩ませているだろう。調べるなら今のうちだ。
「美術品のある場所を突き止めなくちゃ」
「ああ。……しかしデカい屋敷だな。
 時間が惜しいから手分けするぞ。俺は上から行く」
「分かった」
 R階段の中ほどまで駆け上がった雲影は、そこから手すりを乗り越え、わずか2ステップ、数秒で階上へと消える。
 ネクタルも手近にあったドアへ向かいつつ、Aiフォンのスイッチを入れた。


「セイスさんから合図がきた」
 道路脇へ停められた、目立たない車の助手席でヒューイ・オブライエンがメールの着信で振動するAiフォンを手に呟く。
「予定通りだよ」
「なら次は私達の出番ということね。
 さあイキましょ、ヴェロニカ」
 くすりと笑って、アルカ・アルジェントが後部座席から外へ出た。その手はヴェロニカ・ラプシアへと差し出されている。
「ええ。あなたと私で慢心した男の心身に刻みつけてあげましょう、ルーブルで買える夢なんてたかが知れているということを」
 美しく着飾り、甘い芳香を漂わせながらきらびやかな光を放つ高級ホテルへと出陣していく二人を、アニタ・フィーニはぽーっとなって見送った。
 外見と違い中身は幼い彼女でも魅了してしまうほど、今日の彼女達は完璧な美を体現している。
「……ねえヒューイ先生。お二人は、マフィアのボスにこのパーティーを開いてもらったんですよね?」
「アレクセイに紹介してもらうためにね。それが?」
「他にもマフィアのコネクションとか持ってる人がいたりするのを見かけるんですけど、マフィアって皆悪い人です?」
「いいか悪いかで言えば悪いよ。どうして?」
「だって相手が同じマフィアでも、私達のお願いに、こうして協力してくれるから」
「見返りがあるからね。アレクセイが失墜すれば得をする者は必ずいる。1人の得は別の者の得にもなる。その連鎖のどこかに彼女達に協力するマフィアがいて、こちらに味方した方が得るものが大きいと判断したんだろう」
「じゃあやっぱり、悪い人なんですね」
 アニタは窓ガラス越しにホテルを見上げる。
 その最上階レストランでは今まさに、アルカとヴェロニカがマフィアボスからアレクセイへ紹介を受けているところだった。


 アレクセイはマフィアボスという現在の地位に上り詰めるまで敵対者は残らず始末してきたに違いないことを窺わせる、危険なパワーを漂わせていた。
 そして女をナメている。
「あなた、凄い覇気ね……うちのボスとは大違い。視線だけで感じちゃう」
 アルカは一目でそれと見抜くとヴェロニカと左右について、洗練された手練手管でアレクセイを巧みに誘惑し、階下の一室へ彼を誘い出した。
「さあ入って。2人じゃなきゃイケない天国にご招待よ」
「それは楽しみだ」
 ベッドに座ったアルカのドレスのスリットから覗く太ももの付け根に視線を奪われ、ネクタイを緩ませるアレクセイに、ヴェロニカが赤ワインを注いだグラスを差し出す。
「あなたもよ。飲んで、アルカ」
「飲ませてちょうだい」
 ヴェロニカはワインを口にふくみ、ベッドに膝を乗り上げるとアルカに口移しで飲ませた。
 深く重なった唇から漏れた一滴がアルカの細い喉を伝い、胸の谷間に滑り落ちていく様に、アレクセイはごくりと生唾を飲む。
 2人は手足を絡ませアレクセイを見た。暗い室内に浮かび上がる2人の白い肌から目が離せない。
 さあこっちへいらっしゃい――視線は蜘蛛の糸のように彼に絡みつく。見えない糸に操られるようにふらふらと、アレクセイはベッドの2人へ近づいた。


 アレクセイが2人の美女と共に会場を抜けるのを確認したユウキ・ヴァルトラウテは、アレクセイの愛人レーシャに視線を移した。
 クリミアの毒花と呼ばれた元暗殺者。その経歴を思えば男の行動に気付いていないはずはないのだが、笑顔で歓談に花を咲かせている姿には、彼女が何を考えているか窺わせるものはない。
(毒か)
 その文字から反射的に浮かんだのはカイリーだった。彼女もまた毒のスペシャリストだ。だが毒を識ることで学生達の選択肢を増やそうとする彼女と人殺しに用いてきたレーシャでは、天と地ほどに違う。
(あれは扱い方を間違えると死に至る毒花だ。さて、どうするか……)
 その時インカムに通信が入った。

 通信はネクタルからだった。
『美術品が置かれている部屋を発見したよ! 鍵は電子錠が1つ。やっぱり2人のどちらかから番号を聞き出す必要があるみたい。それと、もう1つの鍵が特殊で……丸くて薄い、2センチくらいの円盤を置く盤が2つあるんだけど、内部に凹凸があって。穴の感じから、天使じゃないかとは思うんだけど……』
 どうしよう? 困っている彼女に、ユウキは答えた。
「心配いらない。見当はついたから」
 その目はレーシャの胸元に下がった銀色のメダルを見つめていた。

 ユウキはレーシャを見つめた。ほどなく彼からの視線に気付いたレーシャは、その視線の意味を正確に読み取り、視線で彼の品定めを始める。
 はたして抱くだけの価値がある者として見るか、始末しておかねばならない者として見るか……。
 金に不自由していない洒落者に見えるようしたつもりだが、いっそ捜査官と匂わせたほうが良かったか。迷いだしたころ、レーシャが応じるようにほほ笑みかけてきた。どうやら合格点はもらえたようだ。
 彼女の元へ向かいながら、外のアニタにインカムで合図を送った。

「合図です、ヒューイ先生」
「じゃあ始めて」
「はいっ」
 アニタはAiフォンでホテルのリネン室に紛れ込ませてあった電波妨害装置のトランクを起動させる。
 それは、レーシャに接近するユウキの存在を伝えようとしたイーゴリのスマホを直撃した。
「……なんだこりゃ?」
 突然役立たずになった自分のスマホをイーゴリは困惑して見下ろす。
 ボス・アレクセイの居場所は分かっている。舌打ちをして、階下の部屋へ向かった。


 ネクタルの報告はヴェロニカにも伝わっていた。
「……ええ。分かったわ。ありがとう」
「どうかしたのか?」
「ボスが私達を探しているみたい。でも、このことに気付いている様子はないそうよ」
 Aiフォンを切り、ベッドのアレクセイの横へと戻る。
「それより、素敵だったわ、あなた。私達2人を相手に……さすがね」
 ヴェロニカが見つめているのは彼の胸筋でなく、そこで揺れる金色のメダルだ。アルカもすぐにそれと気付く。
「フン。まだいけるぞ」
 ヴェロニカの腰に腕を回すアレクセイの顔を、反対側に寝ていたアルカの指が自分の方へと向かせた。
「ん……何回でもデキるのね、なら今度は、こういうのはどう?」
 アレクセイに馬乗りになったアルカはリボンを見せる。
「ほう。面白い趣向だ」
 両腕をヘッドボードへ結ぼうとした、まさにその時。ドアが強くノックされた。
「ボス、俺です。レーシャのやつ色気づきやがって。あの様子じゃあ色男の口車に乗って、ホイホイ部屋にシケこむかもしれませんぜ」
「チッ、あの女……。
 すぐ行く」
 ベッドを降りようとしたアレクセイに、背後から女の腕が絡みついた。
 ヴェロニカの一打がアレクセイの意識を速やかに奪う。
「私達にイカされるなんて光栄でしょ」
 シーツに伏したアレクセイを見下ろすアルカの手の中で、金のメダルが光を弾いた。


 女と消えた愛人への腹いせもあってか、レーシャはユウキの誘いに応じて、彼の部屋へついて来た。
 間接照明のみのうす暗い室内で、ユウキはレーシャを見つめる。
「ふふっ。何をそんな所で突っ立っているの? ボーヤ」
 レーシャは両腕を背中に回してドレスのジッパーを下げる。グラマラスな肢体に小さすぎる下着。男を魅惑する腰つきでユウキに近寄った。
「さああなたも脱いで」
 上着の下へ潜り込み、シャツを這う手。
 ユウキはレーシャの肩を取って引きはがした。
 え? とレーシャがまばたきをする。
「遠慮する。キミに魅力がないわけではないが、僕の好みではないんでね。
 それに、僕よりずっとキミを魅力的と思うやつもいるみたいだし」
 とまどう彼女を後ろへ軽く突き飛ばした。それが合図。
「ヒャッハァー! 待ってたぜぇ、ぷるるんちゃんっ!!」
 続き部屋から天翔ける紅き狼こと大神隼人が飛び込んだ。
 接近し、絶打を放とうとするもレーシャは跳んでこれを避ける。どこに隠し持っていたのか、着地した彼女の手には銀色の小型ナイフが握られていた。
 驚きも逃げもしないユウキの様子から、レーシャはこれが罠であることを瞬時に理解する。
「あなた達、何者?」
「キミを傷つけるつもりはない」
「そうそう。ちいっとばかし乳ハントさせてもらうかもしれないけどな」
 両手の指を曲げて動かす天翔ける紅き狼を、レーシャは変態を見る目つきで嫌そうに見た。
「……行儀良くできるならさせてあげないこともなかったけど、あいにくその気は失せたわ」
「そりゃないぜ。ここでどれだけ待ってたと思うんだ? その胸を揉むことだけ考えて耐えてたんだ、少しは同情してくれよ」
「あらあら。そんなに私にお相手してほしかったの。
 じゃあいいわ、来なさい。相手になってあげる」
 ただし、こちらのね。
 レーシャが見せつけるナイフにも、天翔ける紅き狼にひるむ様子はなかった。
「やったぜ!
 そんじゃあ遠慮なくいかせてもらっちゃうかな♪」
 腰を落とし、ぐっと膝に力をためて、一気に間合いへ走り込む。
 それまでのふざけた態度とは全く違う、スピードにパワーの乗った攻撃にレーシャは一瞬とまどったような表情を浮かべたが、紙一重で避けるとすぐさまナイフで応戦した。
 女であるレーシャの方がリーチが短く間合いは狭いが、ナイフがその分を補っている。刃に毒が塗られているのは明白で、肉を切らせて骨を断つ戦法は使えない。じりじりと相手の間合いを測りながら攻撃を仕掛けたが、レーシャの回避力は並外れて高く、天翔ける紅き狼の拳はなかなか有効打とならなかった。
(女暗殺者か。しかもかなりの腕の持ち主だ。
 興味深いが、これ以上時間をかけるわけにはいかんな)
 気配を殺し、部屋の隅で様子を窺っていたヌルこと斑鳩恭耶は、廊下に通じるドアへ視線を流す。
 数分前、アレクセイからメダルを奪ったとの報告は受けていた。このままおとなしくレーシャの護衛とアレクセイの護衛が動かないとは思えない。それに。
(ここから屋敷へ戻り、美術品を奪取する時間も考えねば)
「……任務開始」
 誰にも聞こえない声で呟くと、ヌルはイヤリング型煙幕を戦う2人の中央へ放り込んだ。
「!?」
 突然床を転がってきたイヤリングにレーシャの目が下を向く。直後、猛烈な勢いで噴出した白煙が彼らを分断した。
「な、何っ……?」
 ごほごほと咳き込むレーシャ。しかし目は油断なく、背後に回った気配の主を捉えていた。
 ヌルのレイピアによる奇襲が彼女を襲う。軌道をナイフでそらせて避けた彼女は寝かせた刃を滑らせることでレイピアの持ち主へとたどり着いた直後、もう片方の手に握ったナイフで彼を攻撃する。
 顔面に向けて突き出されたそれを紙一重でかわしたヌルはその動きで距離を取り、手首の返しで小刻みに攻撃するという細剣術で攻めたてる。そして業を煮やした彼女が強打でレイピアを払うタイミングでわざとレイピアを落とした。
「紅狼!」
「おう!」
 間合いに踏み込んだ彼女を前後で挟み、2人同時攻撃を仕掛ける。
 ヌルの絶打はみぞおちに決まり、天翔ける紅き狼の攻撃は――……。
「エクストリー乳ハント完了」
 意識を失い、崩れ落ちた彼女を脇から前に回した両手で支えつつ、天翔ける紅き狼は呟いた。キリッと。表情だけはキメ顔で。あと、やり遂げた感でいっぱいの満足そうな声で。


 美術品の飾られた部屋の前でメダルの到着をやきもきしつつ待っていたネクタルと雲影は、メダルを受け取ってって早々に側面に刻まれた番号に気付いた。それを電子錠へ打ち込み、もう1つの鍵へメダルを嵌めると、ドアで鍵の外れる音がする。
「……すげぇな」
 目に飛び込んできた名画の数々に、知らず雲影の口から感銘の言葉が漏れた。が、すぐにネクタルの存在を思い出し。
「おっと。今は感動するより、早く運び出さないとな。……ったく。こいつらは犯罪者のステイタスになるために、作られたんじゃねぇんだぞ」
 少し恥ずかしそうに言う彼に、ネクタルは気持ちは分かるというように笑顔で頷く。
「うん、そうしよう」

 そうして仲間達と手分けして外の車に積み込んでいた雲影は、あることに気付いて呆然となった。
「『光と影』が、ない?」


 アニタによって自白剤を投与されたアレクセイから、理由はすぐに判明した。
「大変です! 『光と影』は数日前、他の美術品と一緒にロシアの政治家クレチェンコへ売ってしまったそうです!」
 



 9

参加者

b.ぷるるんを頂戴しに行くとしますか♪←×
大神隼人(pa0137)
♂ 22歳 刃忍
a.どうやってイカせようかしら…(クスクス
アルカ・アルジェント(pa0217)
♀ 23歳 弾魅
a.ルーブルで買える夢なんてたかが知れているのよ。
ヴェロニカ・ラプシア(pa0222)
♀ 21歳 英忍
c.皆の援護予定。医療や情報連絡係だけれど、皆怪我しないでねー!
栄相セイス(pa0459)
♀ 20歳 知魅
b.面白い…
斑鳩恭耶(pa1232)
♂ 27歳 刃忍
b.さて、少し仕掛けてみるか。
ユウキ・ヴァルトラウテ(pa1243)
♂ 27歳 英弾
a.凄い人なのかな…
アニタ・フィーニ(pa1687)
♀ 19歳 探機
a.さて、マフィアのお手並み拝見っと。
陳晶晶(pa2267)
♂ 22歳 刃機
 みんな、頑張ってね
ヒューイ・オブライエン(pz0041)
♂ 30歳