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夏は短し恋せよ怪盗

 参加無料の投稿イベント「夏は短し恋せよ怪盗」について
19/8/19

夏は短し恋せよ怪盗

 講師らによる「夏季特別補習」が学生らの間で人気になるなか、どういうわけか、学生会長のエリザベト・バリンデン(pz0100)が「自主補習」などと言いだした。
「いえ、バリンデン家だからこそ、お手伝いできることもあるかと思いまして。参加は任意ですので、自主的に参加したい方だけご応募くださいませ。大したことはございませんが‥‥最新の豪華クルーザーで二泊三日、最高級シェフと最高の演奏で、ラクジュアリーでブルジョワジーでスーパーファビュラスな空気を肌で学んで頂こうというだけのつまらない企画ですけど」
 もちろん応募は殺到した。

 そしてフルート港。乗り込んだのは、QV2号(クイーン・バリンデラックス二世号)。最新にして最高の設備を有する中型クルーザーだが、その魅惑のハイパー装備を語ることは、今回はしない。
 今回の舞台は、2日目の夜、最高のオーケストラによる、正装の優雅な舞踏会なのだから。
「怪盗たるもの、こうした宴でダンスに興じなければいけないこともあるでしょう。そのための補習なのです。なお、男女ペアになることがほとんどですし、そうした場合はジェントルにエレガントに、あるいはセクシーな振る舞いが必要になるでしょうから、今回もそういうつもりで踊ってくださいませ」

・イベント概要
 このイベントは、下記のプレイング投稿フォームを用いて行なう、無料の企画イベントです。
 どなたでもどのキャラでも参加できます。
 投稿の締切は8月13日です。それまでの間、何度でもプレイングを投稿できますが、1キャラが複数回投稿した場合、その最後のものだけが採用されます(つまり、先に送ったプレイングは締切迄は何度も上書きできます)。
 投稿は、選択肢とプレイング(100文字迄)、装備やスキルが反映されます。装備とスキルは投稿時のものとなります。
 投稿されたプレイングを元に後日、リプレイが公開されます。全員の描写は保証されませんが、全投稿がマスタリングの対象となります。

・イベントの展開と目的
 本イベントでは、ラクジュアリーでブルジョワジーでスーパーファビュラスな舞踏会のシーンを扱います。
 目的達成のため、ペアとなり、その相手と、ジェントルでエレガントでセクシーに踊らなければいけません。
 お相手は、すでに決まった相手がいればその人と、意中の相手がいれば、あるいはその人と、それらがなければ、おおむねランダムに決定されます。
 本イベントは、無理やりカップルを作るものではありませんが、せっかくペアとなった相手と、これを機に親交を深めていただけたらさいわいです。
 プレイングには、好みのタイプを書いてもいいですし、どのように踊るか、どんなセリフを言うか、どう魅せるか、どう戸惑うか、なんでもお好きにお書きください。

・選択肢について
 各選択肢により、ペア決定が左右されます。
[決まった相手と]
 すでに恋人同士等、踊る相手が決まっている方はこれを選び、その相手を指定してください。
[意中の相手に]
 この舞踏会を機に、気になるあの人にペアを頼みます。相手の選択肢やプレイング次第で、うまくいけばその人と踊ることになります。ダメならランダムな相手になります。
[来る者拒まず]
 とくに相手は指定しませんが、誰かに誘われたら、基本的に喜んでお相手します。
[ランダム希望]
 誰かに指定されても、それはいったん断り、ランダムなカップリングに委ねます。
[壁の花かも‥‥]
 もし、いろいろカップリングしても、どうにもあぶれてしまう者がいるとしたら、それはきっとこの選択肢を選んだ者でしょう。しかし、これを選んだからといって、絶対に壁の花になるとは限らず、ひょっとすると誰かとペアになり踊るかもしれません。

プレイング投稿フォーム(8月13日迄)
19/8/12

リプレイ

◆紳士淑女の円舞
 煌びやかなシャンデリア。重厚なオーケストラ。豪華絢爛なダンス会場――
 これらが学生のためだけに用意されたとは、まさに贅の極みだが、それに応えるべく、ファントムの卵たちは、振る舞わなければならない。

 集推スイホ(pa1091)は、恋人のシャロン・ミシェーレ(pa0888)にエスコートされ、嬉しくも恥ずかしい、夢のような想いを味わっていた。
「ふふ、スイホ様は綺麗ですね。こうして共にいられる私はすごく幸運です。ありがとう」
 そうしてスイホは抱き寄せられ、唇を塞がれる。夢の味が、より明確に感じられた。

 夫婦で参加のリュヌ・アカツキ(pa0057)とサラ・ハサン(pa1214)。エスコート役は、もちろん夫だ。
「やはり踊るのが上手ですね、あなた。それに、いつもよりずっと大胆で‥‥」
「たまには良いだろう? ここでは、そうしなければいけないのだから」
 2人のファントムが優雅に舞う。毅然とした夫婦の繋がりもまた、深みを、ファントムらしさを醸していた。

 ディルク・ベルヴァルド(pa0112)も、恋人アウラ・メルクーリ(pa0908)を必死にエスコートしていた。彼の苦手分野ではあったが、その顔には、覚悟が見てとれた。
「うん、上手にできてるよ‥‥でも、緊張してる?」
 アウラに言われ、ディルクは目を丸くした。
「そ、そりゃするよ‥‥するけど、楽しまなきゃ‥‥」
「ふうん‥‥だったら」
 アウラは、人目を気にしてキョロキョロするディルクの頬を、手でぎゅっと挟んで、思い切り顔を近づけると。
「ほらほら、きみはわたしだけを見てれば良いのよ」

 氷見侘助(pa0418)もまた、エスコートするつもりが、逆に李蕾(pa1220)に引っ張られていた。
 好きな人の前ではうまくやりたい。だから今、ダンスを教えてくれ――そう聞いた李蕾は、やれやれというふうに首を振ると。
「そういうのは、事前に頼んでください」
「やっぱそうかあ‥‥でも、補習の補習ってなっちゃうじゃん」
「それもまたいいでしょう。特別補習のための、秘密の補習‥‥二人だけの」
 そこまで言っても、侘助の目はピンときていなかった。いつかこの瞳が、今の夢見心地の自分と同じように揺れ動く日がくるのかどうか、李蕾にはわからなかった。でも、今の彼の瞳は、確かにまっすぐで一生懸命に見えた。

 アシュレイ・ローウェル(pa1435)がエスコートするのは、優雅なドレスに身を包んだ推裾スエラ(pa2328)。
 お互いに緊張が滲み出ているが、その口元はほころんでいる。たとえ下手でも、場違いってことはないはず。だって周りはみんな、同じUNICOの仲間なのだから。
「素敵な雰囲気ですごく楽しいデスがドキドキしマスネ‥‥!」
 スエラにそう言われ、アシュレイもうなずく。まったく同じ気持ちだったから。
「この楽しさは、スエラさんと一緒だからだと思います」
 アシュレイがそう言うと、スエラは、頬を赤くして、何も言い返せはしなかったが、もう少し指を深く搦めてみた。

 ダスティン・ガーランド(pa1171)がエスコートする相手は、この道の達人といえるイルマ・アルバーニ(pa0239)。
 ゆったりと踊りながら、やりやすいな、とダスティンは思う。エスコートされる、ということに慣れているのだろう。
「ふふ、演技でなく素で踊ってもこう心が昂ぶるものなのね」
 イルマが艶っぽく言い、艶っぽく見つめてきた。ダスティンもクールに(努めてクールに)見つめ返す。
「俺も演技をやめて、素になるべきかな?」
「どうかしら。そうするのは、あるいは、ダンスの後のがいいかもしれないわ」

 アルカ・アルジェント(pa0217)とヴェロニカ・ラプシア(pa0222)、その指には、お互いに贈りあった七夕のペアリングが輝いていた。
 ヴェロニカが、恋人の手を取り、その指輪にくちづけすると、アルカは妖艶に身を寄せ、その耳にささやく。
「キスする場所は、まだたくさんあるわよ」
「ええ‥‥でも夜は始まったばかりよ。もっと、愛を謳いましょう」
 天の川が激流だとしても、二人の愛の滴り、その永遠の奔流に比べれば、何を恐れることがあろうか。

 レイモンド・レスター(pa1587)は、ぶつぶつ言いながら、幼馴染のシーナ・アトリー(pa1516)の手を引いてわちゃわちゃ踊っていたが、雑さがたたって、シーナの足を踏んでしまった。
「あ、悪ぃ! ‥違うっ、そんなトコに足を置くシーナが悪い!」
 ぶっきらぼうに言い直すレイモンドに、シーナはくすくすと笑みを返す。
「ったく、えーっと‥‥もうちょっと体寄せろ。それが正解のはずだから」
 レイモンドが乱暴に手を引くと、シーナは勢い余ってその胸に顔を突っ込んでしまった。
「す、すまん‥‥って、なんで笑ってんだよ!」
 そんなふうに言われるほど、シーナの口元は緩んでいき、この時がもっと続くことを、ただただ願うのであった。

 イーノク・オルティス(pa1600)とキティ・ラップ(pa1077)もまた、幼馴染同士で組んでいた。
 キティのさりげなく着ている豪華なドレスも、実は密かに、このために新調したもの。しかしイーノクはそのことには気づかず、そつなく、上手にダンスを導いていた。
「よし、お互いうまく踊れてるな‥‥ところで、俺とでよかったのか?」
「仕方ないやろ! 相手と言われてパッと浮かんだんがイーノクやったんやから」
「そっか、他に浮かばなかったんなら、仕方ないよな」
 イーノクの言葉に、キティはうつむく。
(仕方ないんやない‥‥どんなに考えたって、イーノクしか浮かばないんやから)

 陳晶晶(pa2267)とルーナ・メイヤール(pa2261)も幼き時からの間柄だが、二人はすでに、しっかりと心が結ばれていた。
 動きは少しぎこちないが、たとえどちらが転んでも、必ず支える、そんな想いが繋いだ手に見て取れた。
「合わせるから、任せろ」
 晶晶は真剣だが、その笑顔は本物だった。ルーナも自然と笑みがこぼれる――こういう場で彼とダンスを踊れるだなんて、なんだか夢みたい。
「ゆっくりでいいぞ、ゆっくりだ」
「うん、ゆっくり‥‥」
 ゆっくり、ゆっくり。ずっと、このまま――

 紅嵐斗(pa0102)と周立夏(pa1061)のカップルは、とても激しく、印象的に踊っていた。
「ふふ、さすが嵐斗君はお上手ですわね」
 エスコートされる立夏も優雅だが、何より、切れ味鋭く、ゴージャスでため息の出る動きを見せるのは嵐斗で、その体さばきはいつにも増して輝いていた。
「ああ、そうするのがこの補習だから、全力で踊るよ、君と」
「あまりの凄さに、注目が集まってますわ。ほら見て、周りのみんなを」
「その必要はないよ。おれの目に映るのは、君だけで十分だから」

「き、綺麗だ‥‥アガーフィヤ‥‥」
 エヴァ・マルタン(pa0835)にそう言われると、アガーフィヤ・コスィフ(pa0970)は優しく微笑み、エヴァの手を取った。
「さあ、踊りましょう」
 そうして、アガーフィアは踊って、踊って、踊った。彼女の誘惑的な踊りよ――エヴァは踊らされ、踊らされ、身も心もぐるぐると翻弄されると、夢でも見ているかのように、うっとりと言葉が口から洩れた。
「好きだ‥‥誰よりも‥‥貴女を愛してる‥‥」
 絞りだされた愛の吐露を、アガーフィヤは月のような笑みで受け止めると、返事の代わりに、そっとその顔を寄せた。

「エレガントでセクシーって、つまりいつものすずきさんの真似すればいいんだね!」
 神崎真比呂(pa0056)にそう言われても、真純清輝(pa0904)は薄く笑い返すしかなかった――見た目も、ダンスも、エレガントなのはまっぴーのほう。自分はただ、ここで開き直って、余裕でいればいいだけ‥‥でも。
「‥‥女同士のカップル、けっこう、いるよね」
 真比呂がヒソヒソと清輝に耳打ちする。たしかに、と清輝はうなずく。
「だから、もうちょっと‥‥大胆に踊ってみようか」
 真比呂がウィンクする。清輝は目を細めて、見つめ返すと。
「エスコートはまっぴーの役だから、全部まかせるよ」
「そーお? じゃあ‥‥振り落とされないようにね、お姫様!」

「今日のサスウは俺のお姫様だからな!」
 リアム・イチカワ(pa1534)はそう言って推嵩サスウ(pa1692)の手を取ったものの、今や、そのダンスのキレは鈍り、ぎこちない表情が浮かんでいた。
「ゆっくりやろう、ゆっくりでいい」
 サスウが身を離す。リアムが女性との接触に弱いことを知っているため、なんとか気を遣って、楽しい空気になるよう努力しているのだが。
「‥‥なんだか俺がエスコートされてるみたいだな」
 リアムが自虐的にぼやく。だがサスウは、真面目な顔で返す。
「まだ慣れてないだけだ。もう少し頑張れば、きっといいダンスになる」
 そう言われると、リアムはだいぶ、肩の力が抜けた。するとダンスが楽しくなってきた。楽しくなってくると、サスウの手も気にならなくなってきた。そうして徐々に、リアムはサスウの騎士(ナイト)となった。

 そしてこちらは、先輩と後輩。
「素敵な方、踊っていただけます?」
 ヤスミナ・リベラ(pa0422)に手を差し出されると、アレク・レイヴァ(pa2283)は無意識的にひざまずきながらその手を取った。
「ああ先輩‥‥光栄の極み! しっかりエスコートいたします!」
「そ、そんな泣くほど喜ばなくても‥‥」
「おっとはしゃいでる場合ではないですね、先輩に恥をかかせないようしっかり踊ってみせますから!」
 だが、そう宣言した5秒後には、ヤスミナの足がアレクのそれと絡み、ずっでーんとハデに転ぶのだった。

 部長と部員、同志、いや――
「私と踊ってくださいませ」
 厳島火練(pa1582)のカーテシー。久良雲修平(pa2226)はうやうやしくその手を取り、そして二人は優美に踊る。
 美しいステップだ、と、一番感じていたのは、修平自身か。
(今だけは時間が止まってくれればいいのに)
 そう思い、見つめる修平の瞳を、火練も静かに見つめ返し。
(修平様‥‥彼をご主人様とするのも、悪くない未来に思えます)
 ――マスターとメイド、そんなダンスも、ファントムの世界にはふさわしい。

 冴香のドレス姿やっぱり綺麗だな、とオリバー・カートライト(pa1468)は考える。
 なんて素敵なダンスなんだろう、と中藤冴香(pa0319)は考える。
 赤のポールガウンのドレス。冴香の全身は淡いオーラを放つかのようだ。
 軽やかなステップに、絶妙のエスコート。オリバーは音楽そのものが踊りだしたかのようだ。
 二人は喋る必要はなかった。見つめあう必要さえなかった。ただ、お互いの肌が、相手の美学をいかんなく感じ取っていた。

「‥‥おい、ユリア。俺だ俺。葵だ」
 一条葵(pa1712)に呼び止められ、ユリア・ジェラード(pa1688)は目を丸くした。
 ピシっとしたタキシードに、ワイルドだがカッチリしたオールバックヘアー。いつにない葵の姿。
「葵‥‥?! ねえ、なんかいつもと姿違くない? いや、いつももいいけど‥‥こっちもステキ」
「ったく、こんなカッコするの、お前の前だけなんだからな」
「ふふ、そうだね、ちゃんとしないとね。じゃあ私は大丈夫かな?」
「ああ、似合ってるぜ、そのドレス」
「じゃあ行こう。王子様」
「そ、そうだな‥‥ひ、姫」

 優雅で、大胆で、アメイジング。
 躍動的。情熱的。見る者を恍惚とさせる、シバワンダフルなダンス。
「‥‥ゴンスケ‥‥」
 羽乃森晴(pa0077)が肩を落としてそう言っても、柴犬ゴンスケは「わん!」と誇らしく踊り続けるのだった。
「すまない、ちょっと盛り上がりすぎたみたいだ」
 晴が謝る相手は、恋人の莫水鏡(pa0196)。水鏡も、二人のダンスに水を差され、苦笑するしかないが。
「まあ、いいんじゃないかな。でもさ、その代わり‥‥」
「ん、なんだ?」
「これから、二人っきりになれそうな場所を探しにいかない? ‥‥だめ?」
「‥‥よし、ゴンスケ。しばらく、ソロでファビュラスに踊っててくれるか?」
「わんっ!」

◆壁の花(or毒草)
 そんなゴージャスなひとときを、壁際で、ゆっくり、あるいは、ゲンナリと眺める者たちもいた。いわゆる「壁の花」ってやつである。
「‥‥こっちはひどい事になってやがるな」
 斧箭槍剣(pa0114)は、チラリと横目で、怪しい連中を見やる。
 トナカイの背中に乗りながら、ワイングラスを揺する馬並京介(pa0036)。馬マスクをつけているので、そのワインも飲めはしないはずだが。
 というか彼が乗ってるトナカイは鹿目淳一(pa0044)ではないか。こちらはどこで頼んだのか、必死にラーメンをすすっている(この両名のビジュアルについて文章で説明するのは骨が折れるので割愛するが、興味がある方は直接見に行くとよいだろう。後悔はしないはずだ)。
 と、そこへショコラ・ブラマンジェ(pa1623)がてくてくやってきて、トナカイの背中におりゃっと乗ると、ラーメンのナルトを勝手につまみ食いして、ヤケなかんじでオーケストラに叫んだ。
「すいませーん、クラシックはもういいんで、EDMメインでお願いしまーす」
 すると、京介と淳一がおもむろに、ドンツクドンツクデゲデゲギュイィィンとボイスパーカッションでEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック。要するに今流行りのクラブサウンド)をやり始めたので、ショコラはずっこけてトナカイの背中から落ちた。
「‥‥なんなんだありゃ」
 槍剣があんぐり見ていると、
「たぶん、相手が見つからないとかラブ空気にやられたとか、いろいろあったんじゃないかな‥‥」
 マティアス・リブラン(pa1168)がそんなふうに返す。なおマティアスも、クエスティ先生がこの場にいないので、もはや誰とも踊る気なしだ。
「モブーノさんもあんなになっちゃいましたし‥‥」
 そう言う桜葉千葉(pa2377)も、ダンスどころじゃなかった。モブーノと会長をダンスさせるべくいろいろ画策していたのだが、激辛パスタをモブーノの顔にぶっかけてしまい、「目がぁ、目がぁぁぁぁん!」とモブーノを退場せしめ、計画は失敗に終わったからだ。千葉ちゃん、持ってるねえ。
 と、その横に桜葉姉妹の杏花ちゃん(pa1513)が投げ飛ばされてきた。投げたのはその姉の千歳(pa0088)。二人の姉妹の間にナニがあったのか?
「聞かぬが華、聞いたら毒草ですよ」
 千葉もこう言ってるので、やめておこう。
「あっちもこっちも、眺めていて飽きないですね」
 斧箭鎌刀(pa1581)は他人事みたいにそう言った。が、そんな彼に、色原朔(pa2372)が声をかけてくる。
「鎌刀‥‥もう誰か相手はいるんだろうか?」
「いえ? 別に‥‥いませんが」
「そ、そうか‥‥なら、一緒にどうだ? こういうのは嫌いじゃなさそうだし、少しは上達したところを見せたいんだが」
「そう言われては、断る理由もありませんね」
 そして鎌刀と朔は、ダンスの輪の中へ――見れば他にも、今頃になってパートナーが決まるケースが散見されるではないか。
「ふうん‥‥」
 槍剣は腕を組み、ここに来れなかった恋人を想う。来ればよかったのによ、案外、悪くない場所みたいだからな――

◆誘い誘われて
「えっ、わたしですか?」
 ライリー・ホワイト(pa2387)に手を差し伸べたのは、ナタク・ルシフェラーゼ(pa0155)だった。
「じっとしてたらもったいないよ。さあ踊ろう♪」
 突然の誘い、突然のダンス。ライリーには戸惑うことばかりだが、ナタクは強引に手を引き、勝手に踊らされてしまう。
 でも、なんだか楽しい――そう思い始めたライリーだが、ふいにナタクは、手を離して華麗なスピンジャンプをするや、ステップを踏みながら後ろ歩きで離れていく。
「あ、あの‥‥?」
「ついてきて、追いかけてきて。まだ私と踊る気があるなら」
 ライリーは、しばらく動けなかった。だが、ナタクが会場から姿を消すと、ふいに気持ちが定まり、駆け出していた。

 シャムロック・クラナド(pa0160)に「お暇ならどうですか」と誘われたとき、ジェームズ・クレイトン(pa0243)は、戸惑いよりも、申し訳なさを感じていた。
「いいけど‥‥自信が無いぜ? いいんだな?」
「私も同じようなものですから。何事も経験です」
 ――だが、どちらもダンスは不得手。グダグダなうえ、やたらとシャムロックの足を踏んでしまうジェームズは、思わず手を離し、ぶつぶつと。
「‥‥だから言ったろ? 俺とじゃ――」
「えーいっ!」
 シャムロックは突然、ジェームズの片腕を掴んでぐるんぐるん回転を始めた。もはやダンスというより、なにかの必殺技のようだ。
「こうすれば遠心力で踏まれな――あっ」
 手がすっぽ抜けて、そのまま飛ばされたジェームズは、勢いを保ったまま、トナカイに突っ込んでラーメンどんぶりを頭からかぶることになった。

 澤渡龍兵(pa0190)と推裾ソスエ(pa1632)もまた、ぎこちないダンスが続いていた。
 目が合った二人、龍兵が「ドーモ」と挨拶したことで、かりそめのパートナーとなったが――龍兵の、超然として、システマチックなダンスに、ソスエは困惑していた。
「この船からはワビサビやゼンが感じられん‥‥」
 そうぼやく龍兵に、ソスエは、勇気を出して言ってみた。
「あ、あの‥‥失礼ですけど‥‥おもむきを感じられないのは、ご自身のせいじゃないでしょうか‥‥」
「む‥‥?」
「体の動きが堅いのは、心が緩んでないせいかもしれません」
「そうか‥‥ならば、修行あるのみ」
 龍兵の心境の変化を、ソスエが読み解くことはできなかったが、少なくともその後、ダンスに柔らかさが出たのはたしかだった。

「こーゆーのガラやないけど、スーパーファビュラスに楽しませてもろてるから言うこときかななー」
 夕星将太郎(pa2401)がぼやきながらうろついていると、氷見彩玻(pa1093)と目が合った。
「あ、えーっと‥‥ぶ、舞踏会、やなあ」
「ぶ、ぶとうかい、だよねえ」
「‥‥ほ、他にいないなら‥‥」
 将太郎にそう言われ、彩玻はとりあえず、こくりとうなずいた。
 ――ダンスは、将太郎のエスコートもあり、なんとか形になっているが、彩玻の表情は硬い。
「‥‥大丈夫か?」
「難しい‥‥」
 首をかしげる彩玻。将太郎は、しばし考え込むと、とりあえず、こう言った。
「焦らんでもええ。夜はまだ長いんやから」
 そう、舞踏会はやっと折り返しの刻。豪華客船の夜は、そう簡単には、終わらない――
19/8/19