浜辺ノ相撲合戦

担当 Toro
出発2017/06/12
タイプ ショート A(Lv250以下) 冒険
結果 成功
MVP 森住ブナ(ka00364)
準MVP 鋼燐坊 禅戒(ka00192)
吉弘 龍重(ka00291)





オープニング

◆混乱尽きまじ
 加賀国、その海沿い。居並ぶ来世人達の表情を一言で表すなら「うわぁ」、である。
 彼らは、加賀国で連続しておきる「辻髪切り」‥‥十中八九、化身の仕業と推測されるそれの対処のために依頼を受け、そこに来ていたのだ。
 そしたら、どうだ。敵の正体が髪切りであった、というのはいい。だが、その体長は今まで現れた個体のサイズを大きく上回る。
 一般男性の1.5倍はあろうか? 2mを超す体躯に無駄に長くサラサラした髪のその化身は、来世人たちに相撲を持ちかけ、敗者は髪を切れ、と迫ってきたのだ。
 そこまでは、髪切りやその亜種と戦ってきた来世人ならば「よくあること」で済む。済まされてしまう。

登場キャラ

リプレイ

◆覚悟の準備
「今日は髪切りの断髪式なのだよー。アイアイ、そこで僕の活躍を見てるといいのだ」
 藤 あきほの堂々たる勝利予告に、巨大な髪切りは不快げに「マケヌ!」と声を上げた。口喧嘩‥‥というには稚拙ながら、最低限の言葉のやりとりは可能であるようだ。
 その事実が、ますます不気味ではあるのだが‥‥髪切りは大抵、人語を解せるのでそれは仕方のないこと、なのかもしれない。
「先に明かしておくが、頭巾の下は頭髪が伸びておる。忙しさにかまけて、剃髪をさぼっておったのでな。ゆえに拙僧が負けたら、存分に切って貰おう」
 富栄弩院 頼伝の宣言に、髪切りは歓喜の声を上げる。おそらく、この髪切りは気付いていないが。頼伝にていよく利用されている‥‥ように、見えなくもない。
「坊主だから切らせてやる髪はないが、倒せば問題なかろう?」
 一方、同じ僧兵として鋼燐坊 禅戒の態度は一味違った。ある意味、あきほと同じ結論なのだが‥‥そも、しっかりと手入れされた禿頭に手を入れる場所はない。勝敗がどう転ぶかはともかく、彼に一切の隙はないように見えた。
 そして、禅戒はこの髪切りのことを、あまり危険な手合いとは感じていなかった。脅威ではない、という意味ではなく。単に髪を切るだけだから命は問題あるまい、と言う意味で。
 果たしてその判断がいいか悪いか、はこれからはっきりすることだろう。おそらく。
「相撲で勝つとなれば、まわしだけで戦わねば‥‥んん?」
 吉弘 龍重は、天下無双(予定)として相撲を存分に楽しむことで、実力を見せようと意気込んでいた。
 そして、一反木綿の善意をむげにしないためにも、彼らを身にまとって戦おうと決めていた。‥‥さて、相撲というからには裸一貫、まわしのみで戦うべきか? というと、河童らしき覆面化身は衣装を着込んでいる。マスクもしている。もしかして、そこまで厳密じゃないんじゃね? と龍重は気付いていた。
「我らは力を合わせることで真価を発揮する。ゆえに、お前の全身にまとわりつく所存」
「ミイラ‥‥あ、そういう巻き付き方‥‥?」
 一反木綿達の言葉に、ようやく龍重は理解する。大いなる助力には、大いなる自己責任がともなうのだ、と。
 それはあきほも同様の道をたどることへの示唆なのだが、まあそれはともかく。

「‥‥えびモドキ‥‥ころス‥‥」
 で、海の中。
 森住 ブナは、好機を得るべく一人、海の中に潜んでいた。
 彼女の身に纏う巫女装束は、瀬織津姫(せおりつひめ)の法力が宿るとされるものだ。『水中で泳ぐようにして』神楽法を放てる代物なのだが、決して『水中での機動や生存力を高める』ものではない。つまり、今こうして水面から顔を出し、機をうかがうブナの動きは、髪切り憎しの一心から来る彼女の不断の努力のたまものなのである。‥‥それにしたってもうちょっとスマートな隠れ方があったろうと思うのだが、彼女がそれでいいのなら、いいんじゃないだろうか。見ていて微笑ましいし。

「誰ぞ、俺と相撲を取る奴はいないのか! 髪切りばかりが相手か!」
「よかろう、では拙僧がお相手いたそう」
 髪切り憎しというか、依頼なので優先されるのは仕方ないとして、さすがに無視されている感がした覆面河童が、来世人達へ物言いを付け始めた。
 なので、ここぞとばかりに頼伝が前に出て、戦いを引き受けようと自らの胸板を叩いてみせた。こういうところを見るに、彼はいい男なのである。僧としてどうかとか、その辺はさておき。

◆挑め、戦え、そして
「ぬうっ!」
「フンンッ!!」
 頼伝と覆面河童との戦いは、熾烈を極めた。‥‥というか、互いの体格差が体格差なだけあってか、なかなかお互いに有効な手を打てないでいたのだ。相撲である以上は掴み、投げ飛ばさねばならない。だが、魔法を使ったのだろうか、その覆面河童の動きはあきらかに速く、そして慮外の力を秘めている。
 ただ組み付いて投げるだけでは、おそらく勝てない‥‥張り手なり何なり駆使して、やっと互角かそのあたり。
 それは覆面河童も心得ていたようで、素早い動きから張り手を繰り返し、順当に頼伝を追い詰めていく。何度か張り手をまじえ、痛めつけすぎない程度に戦った覆面河童は、頼伝の足を刈って転ばせ、決着をつける。
「でかいの、筋は悪くないがまだまだ荒削りだな。俺に勝つにはまだ浅いぞ」
「これは‥‥手厳しい‥‥洗礼‥‥」
 満足げに胸を張る覆面河童に、悔しげに呻く頼伝であったが‥‥さりとて、ついてしまった決着に否やを述べる気はないらしく。比較的穏便なうちに、決着がついたといえるだろう。

「髪切り! お前の相手は俺だ!」
 続いて、龍重‥‥らしき一反木綿ミイラが前に出る。褌のミイラではないだけ、いくらかマシなのだろうが‥‥それでも、ミイラ姿はミイラ姿だった。
 頭に巻いた鉢巻の力と、一反木綿達の力を得た彼は、髪切り同様、宙に浮いていた。髪切りほどではないにせよ、空を自在に飛ぶその姿は神秘的であり‥‥ちょっと気持ち悪い。
「カミ、切ラセロ!」
「おう、勝てたら考えてやるよ!」
 巨大な髪切りの意気に、龍重は軽々しく応じる。そして切らせるとは言っていない。
 ‥‥そして、髪切りの格闘技術、その精度はかなりのものだった。手技に限っていうのなら、覆面河童といい勝負だ。サイズ感のせいか、はたまた実力か‥‥とにかく、龍重と空中でガッチリ組み合っても動じない落ち着きが感じられる。
「このままでは負ける‥‥それなら!」
「ナンダト!?」
 がっちりと組み合った状態から、龍重が消え‥‥髪切りのすぐ背後から、すぐさま姿を現した。
 その動きについていけない髪切りは、気付いたら背中からすくい上げられ、砂をひっかぶる‥‥転がったのだ。
 かなり危険な橋を渡りつつ勝利を掴んだ龍重は、一反木綿がほどけてからよろよろと腰を落とすと、疲労の濃さをあらわに座り込む。奴もまた、油断ならぬ大敵なのだ。
「一度や二度の負けでは懲りまい。次は俺が相手してやろう」
 つづいて、禅戒が髪切りの前に身を晒す。敗北してなお好機を得られるなど、どれだけ喜ばしいことか。髪切りは奮起した。必ずやこの相手を倒し、関係ない女の髪を切ってみせよう、と。

 ‥‥そして、髪切りはまた土をつけられた。
 単純な話なのだ。禅戒の張り手は、妖怪として特殊な身体を持つその髪切りには威力としては痛くも痒くもない。地上を這い回る相手なら、避けて通れば勝てるだろう。そんな考えを、禅戒が正面から打ち砕いたからだ。
 金剛力士真言を成就させた張り手は、特殊な肉体を傷つけこそしないが、衝撃を与えることはできる。つまり、押し出しだって無理ではない。御仏の慈悲を与え、改心の機会を与えるべく、ある程度は本気でやった‥‥というか。
「グ、ググ‥‥!」
 来世人に立て続けに敗れ、巨大な髪切りは動揺を禁じ得なかった。
 空を飛んでいるから有利、髪切りとして存外の巨躯で生きられる自分は幸運、髪をいくつも奪うことは至高の娯楽‥‥そんな聖域が、今侵されようとしている。
 自分の楽しみを奪われるのは、許せない。我慢ならない‥‥そう考えるのは、髪切りの思考からすればしごく当然であったのだ。
「まだ終わらないのだよー。次は僕が相手なのだ。僕に負けたら晴れて断髪式なのだ」
 ――まずい。そう、髪切りは直感した。
 あきほは、すでに一反木綿をまとっていた。‥‥とはいえ、空を飛べるほどの数ではない。その分、金太郎の法力が宿るとされる腹掛は十分に露出され、髪切りにだって拳が、力が届く。
 そして‥‥魔法によって放たれた都合六回の投技の乱舞は、体格差ゆえにかろうじて、であるが‥‥一発だけ、見事な放物線を描いて、あきほが髪切りを砂の中に埋めたのだった。
 もはや、言い訳の一切はきくまい。
 来世人にこうも負けては、約束もなにもあったものではない。おとなしく髪を切られるばかり‥‥なのだが。
 当然ながら、というか。髪切りがその敗北を認めようとするわけがない。髪切りは、あくまで一方的に髪を切れればそれでいいのだ。道理も都合も、どうでもいいのだ。
 ゆえに暴れる。来世人と他の化身から逃れようと、素早くその姿を消そうとし‥‥その体を、周囲の面々を全力で無視した素戔嗚息吹迎えノ舞が叩き込まれたのだ。
「今日のオマエは、周りの風景すら目に入らぬほど存在が大きく見えるじょ!!」
 現実からして大きいのだ‥‥とは誰も言うまい。絶好機を逃さずに神楽法を当て、海から姿を現したブナの姿は幽鬼のように青ざめていた。
 いくら初夏の気候といえ、冷たいものは冷たい。そして、水中で、素戔嗚息吹迎えノ舞である。そりゃあ‥‥まあ。凍えてない方がちょっとおかしいのだ。
「マズイマズイマズイ‥‥!」
 声は出るが、身体は動かない。凍りついたように固まった身体、けいれんして動かないその身をひきずろうとし、しかし髪切りはまったく動かない自分の身体に違和感を覚えていた。
 もう、すでに命が十二分に削り取られていて、動くこともままならないこと。
 ブナの放った神楽法で、冷気に動きをはばまれたこと。
 それらすべて、彼が経験したことのない屈辱だ。
「もはや動くこともままなるまい。俺が成仏させてやろう」
 禅戒は慈悲深く、その難敵を大日如来真言にて成仏させる。‥‥そして後には、「俺より強いやつに会いに行く」と残された覆面河童の書き置きと、来世人達に丁重に別れを告げる一反木綿の群れだけがいたのだった‥‥。

 の、だが。
「ときにブナ殿、その鍋の中身は?」
「なんでもないじょ」
 悲劇はまだ終わっていない、のかもしれない。



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参加者

a.相撲で挑んでくるというのなら金剛力士のごとく応えてやるが御仏の慈悲よな
鋼燐坊禅戒(ka00192)
Lv169 ♂ 35歳 武僧 来世 傾奇
b.善意をないがしろにするようでは、天下無双(予定)とはいえないな。
吉弘龍重(ka00291)
Lv204 ♂ 17歳 武忍 来世 傾奇
c.……えびモドキ……ころス……
森住ブナ(ka00364)
Lv92 ♀ 15歳 神陰 来世 異彩
b.勝負してみるのだよー
藤あきほ(ka01228)
Lv95 ♀ 20歳 陰僧 来世 異彩
a.一反木綿たちの申し出、有り難く思うが、拙僧は自力で飛べるでな。
富栄弩院頼伝(ka01639)
Lv168 ♂ 36歳 僧流 来世 異彩