【SH12】江戸擾乱

担当 海月
出発2017/07/21
タイプ グランド S(Lv350以下) 冒険
結果 大成功
MVP 鈴城透哉(ka00401)
MVS 九条鰤々之進(ka00875)





オープニング

◆浪人
 牢人とは主君の扶持を離れた武士を指す。牢籠たる――すなわち落ちぶれ、困窮し、廃れた――者。これがいつしか浮浪人を指す浪人と混同されるようになっていったのだが、あながち誤用ともいえまい。
 田舎にいては到底暮せぬ、と仕官の伝を求め都会を目指した彼らを待っていたのは厳しい現実。太平の世となれば名を上げる機会も限られ、そこでも個人の実力よりも既にあるお家同士の付き合い――縁故が優先される。それどころか、仕官先を探そうにもお上の触れにより身を落ち着ける宿すら得られぬこともしばしばあった。
 幕府がそうした浪人苛めとも取れる政策を採っていた背景には、大坂の陣や島原の乱などでも敵対する者の多かった浪人に対する取締り、治安維持という側面もあったが……その巻き添えを喰ったその他大勢にとっては理不尽な話だったろう。加えて、そのような浪人は幕府の政策により大量に生み出されていたのだ。その数は十万から数十万とも言われ、養うべき一族も含めばまた膨れ上がる。
 そもそも武士としての修行は庶民の生き方とは逆行するものであり、現代のように転職も容易ではない。「切り取り強盗武士の習い」とはそうして食い詰めた浪人が生きる為に悪事を働くといった風潮への罵しりだった。


登場キャラ

リプレイ

◆無為
 江戸城本丸の一室にて。
「百鬼夜行、伊豆大島の鬼退治。瀬戸内の海戦――あの者らの働きぶりを忘れ申したか」
「だが、それとて被害は相応に出ておる。それに、善光寺では敵に裏を掻かれたそうではないか。彼奴らさえもっと上手くやっておれば、そのようなこともなかったのではないか?」
「それが、戦場(いくさば)で力を尽くした者らへの貴殿の評価か。終わった後でなら好きに言えようが。お主であれば犠牲を払わず勝利出来たとでも言われるのか」
「そ、そうは言っておらぬが」
 喧々、諤々。
 家臣たちの苛立ち混じりの言葉が踊る。
「しかし、浪人どもの対応は如何にするか」
「左様。来世人と伍するほどの力を持つとなれば、軽々とは断じられぬ」
「或いは、扶持を取らせてしまえば、礼儀を知らぬ来世人などよりも扱いやすいかも知れぬぞ」
「だからといって、無法をのさばらせておけば付け上がろうが!」
「ふん、付け上がるといえば来世人よ。上様に対してあのような態度……」
「今更そのようなことを。彼らは我らとは違う時代より参られたのは知っておろうに」
 繰り返される揚げ足取りのようなやり取り。
 どちらの肩を持つか。決断を下すべき人物がそうしない限り、彼らの言葉は不毛でしかなかった。
「――もうよい、下がれ」
 意見のまとまらぬ家臣たちを退出させて。
 家光は何事も手につかず、双眸を閉じたままただ茫洋と時を過ごしていた。
(……来世人か)
 頭を悩ませるのは敬愛する伊達の親父殿――故・伊達政宗より託された者たち。その存在は決して軽くはなく。
 先日の御前試合にて久方ぶりに目にした彼らの戦う姿が浮かんでは消え、射抜くような咆哮が反響する。
 ――思い出せ、と。
(……)
 思考に靄がかかったような不快な感覚を覚え、家光の眉間に皺が刻まれる。
 自らの意思、でありながら不協和を起こす答えを受け入れることが出来ず。
「玉響、玉響――なぜ、会えぬ」
 家光はその苦しみから逃れるように呻き、今は病の床にあるという、一人の女性を思い浮かべたのだった。

◆傀儡
 出陣を控え、独特の空気が張り詰める、とある寺の境内にて。
「――大丈夫。全て上手くいくわ」
 鈴の転がるような、心地良い声が耳朶を打つ。
 瞑想中であった由井正雪は声の主へと振り返り表情を和らげた。
「……リンリン殿か」
「ギルド上層部の腐敗を詳らかにすれば、来世人たちもきっと目を覚ますでしょう。貴方の望む、来世人との共闘も叶う筈だわ」
「そう、だな。此方の言葉をまるで信じず、ギルドの腐敗は無いと妄信する彼らは、きっと騙されているのであろうから……な」
「ええ。だから、少し痛い目を見てもらってでも目を覚ましてあげましょう。ギルドを抑えさえすれば、証拠は必ず出てくるわ。フフ……それと、頭にブーメランが刺さってますわよ」
「?」
 朗らかに嗤いながら手で払ってあげるような動作をするリンリン。正雪は首を傾げながら、かたじけない、と返す。
「浪人が来世人を力で叩きのめせば、幕府もその力を認めるわ。より優れた浪人たちの方が化身から民を守れるだろう、って」
「そうか。そうだな。そうすれば……」
 浪人たちは再び戦場を得、本来の職分を果たし、立身の機会を得るだろう。
 それは悲願。
 江戸の町で軍学を講じ先生などと呼ばれるようになっても決して満たされることのなかった虚しさを晴らし、時代に取り残され朽ちてゆく者たちの救済を果たせるということ。
「何、細工は流々。後は仕上げを御覧じろ……ね。フフフ」
「ふむ。何から何まで世話になった」
 力を授かり、舞台は整った。ならば後は実行あるのみ。
 正雪は一点の疑いも無く、澄んだ瞳で礼を告げ、出陣に向け歩き出した。

 ――背後で愉悦の表情を浮かべた女が、哀れな獲物を前にするが如く、舌なめずりしているとも気付かずに。

◆守護
 春日局と来世人の対談は長局――すなわち大奥女中たちの寄宿舎、その一室にて行われた。
「春日ちゃん葛ちゃんやっほー」
「まあ、ようこそおいでくださいました。城田さまも、相変わらずお元気そうでございますね」
 友人に向けるような気安い態度で臨む城田 真子に葛野がくすりと笑いながら返す。
「真子ちゃん護りに来たんだしぃ♪」
「はて。護りに、でしょうか?」
 スマートフォンを見せながらにっこりと笑う真子。
 てっきり玉響についての話し合いであろうと考えていた春日局は、意外そうな顔をして説明を求める。
 それに対して、口を開いたのは高杉 蘭子だった。
「ワタクシの知る中国の物語に、美女に化けた狐の誘惑に溺れた殷の紂王が、国を滅ぼすものがございます」
「この国……そして家光さまもそうなりかねない、と?」
 蘭子の示す懸念は、ともすれば愚王と家光の同列視とも取られかねない例えだったが。春日局は如何なる感情からかスッと目を細めつつも、先を促し耳を傾ける。
「ええ。そも、此度の変事はそれに似すぎてますわ」
 今さら、表面だけ取り繕っても仕方ないとばかりに、蘭子は真剣なまなざしを春日局から逸らすことなく言葉を紡ぐ。
「そして、その物語ではまず王を諌める人が次々と殺されて歯止めがきかなくなりましたわ。というのも、実は――」
「まさか。何という大それたことを……」
 そして沢庵に対してや、この大奥でも春日局暗殺の可能性があることを語ると、葛野が青ざめ呻いた。
「まったく、暗殺とは穏やかじゃないのだよー。なので、暗殺者が入り込まないように警戒しに来たのだよ」
 藤 あきほは葛野の驚愕に同意を示し、自分たちが赴いた理由を告げた。
 予知は絶対では無く、未来は不定で変動するもの。だからこそ、事が起こっても大丈夫なように備えるのだ。
「まぁそういうこったね。大奥で何も起こらなければそれでいいのさ。起こらなければね」
 ……だけどそれが危ういくらい江戸城は広いからさ、と語るのは池袋 春子だ。
 春子にはこの暗殺者に幾ばくかの心当たりもあるようだった。
 アレは確か、新免無……無……なんだったか。そもそも無とは一体……うごご。
「く、あたしゃボけたわけじゃないよ。情報を整理してる時間もなかったのさ!」
「ど、どうしたのだ春子さん!?」
(ヤバイ。ワタクシもど忘れしましたわ)
 まぁ、新免何人もいたから仕方ないね。
「コホン。……万が一、春日様がおなくなりになれば将軍はもう元の将軍に戻らなくなるでしょう。守らせて下さいませんか。大奥と幕府を守ると、葛野さまと約束致しましたゆえ――」
「高杉さま……」
「葛ちゃん、大丈夫だしぃ♪ 蘭ちゃんは強いから安心するんだし」
 真子の安心させるような言葉も重なり、葛野は感銘を受けているようだ。
「……願っても無いことです。皆さまがそうおっしゃるのならば、きっと尋常の相手ではないのでしょう」
 春日局もこの申し出を断る理由は無いと受け入れる。
 だが、蘭子の提案したもう一つの件、一時的に身を隠してはどうかという話については、はっきりと拒否を示した。
「その暗殺者がここまで来れるならば、その刃は家光さまにも届きうるのでは? 婆を狙ってくれておるならかえって都合が良いというもの。私は逃げも隠れも致しませぬ」
 とのこと。同様の理由であきほの式神による影武者の用意も実行には到らなかった。
(最悪の結果もありえるけど、しょうがないかねぇ)
 春子が溜息一つこぼす。なにせ、持ち込めた武器は精々が暗器の類のみだ。これでは来世人の能力も十全には発揮できまい。
 けれど、やるしかないのだ。
「わかりましたわ。出来る限りは手を打ちましょう。暗殺者が来たならば、ここで罠にはめ倒しましょう」
「感謝します。どうか、その暗殺者とやらを討ち果たして下さいませ」
 憂いの元を断って欲しい。そう告げる春日局に、溢田 純子は複雑な思いがした。
(大切な人が殺される。考えただけで寒気がする言葉ね。私だって旦那や息子に何かあったらって考えるだけで嫌だもの)
 決して、心中穏やかではいられぬだろうと。純子はおぼろげながら察する、春日局が今何を考えているか……。
 だから、言っておかずにはいられなかった。
「あなたも将軍の大切な人、大切な何かを奪われれば人は臆病になり……全てを疑ってしまうもの。将軍は国の要。なら、あなたが守られる事が国を守る事に繋がるのよ」
「家光さまにとって、私が守られることが? ……そうですか、覚えておきましょう」
 春日局は一瞬だけ意外そうな顔をして、どこか満足そうに微笑んで。
 その表情を見て、純子もまた決意を固くする。
(幕府とギルドの関係とか色々あるんでしょうけど。誰かのお母さんや奥さんをみすみす殺させはしないわ)

 それからやがて話題は玉響の件へと移った。
『離れたくないわ。とられたくないわ。だれにも。――そう、だれにも、だれにもわたさない……』
 春日の局が拾った呟きとそこに生まれた一片の疑念。
「もしかして玉響さんの大事な人って将軍様では無く春日局様? 今までのはただ単に春日局様をとられたくなかったから? まあ完全に推測ではありますが」
 断片的に過ぎる情報から仮定を試みるのは藤枝 梅花だ。彼女は何かに対する執着めいた感情をそこに垣間見たのだ。
「んー。でもそれなら、なんで来世人ギルドを目の敵にするんやろか? 春日局はんの取り合いなんかした覚えないけどなぁ」
「そうですね……ここで結論を急いでも仕方なさそうです。玉響さんのことはもう少し調べてみるとしましょう」
 蓑下 海里が疑問を挟むと、梅花も素直にうなずく。
 すでに、あきほや梅花の作り出した式神らが警戒と情報収集のために活動中だ。荒戸 美乃のように隠密裏に玉響の周辺を見張る来世人もいる。有用な情報があれば知らせてくれるだろう。
(場合によってはもう一度話し合って貰った方が良いかもしれませんが、さて……)
 思案する梅花。そんな時だ。にわかに城内の様子があわただしくなり始めて。
 すわ敵襲かと緊張する一同に飛び込んできたのは、来世人ギルドが襲撃を受けているらしいとの報せだった。

◆分散
 来世人ギルドへといち早く敵情を持ち帰ったのはヤズゥン・ディガであった。
 普段、あまり口を開くことのない彼が矢継ぎ早に情報を伝えてくるのは、それだけ事態が逼迫している証だろう。
「およそ300。100人程度の3隊に分かれてこちらへ向かっているが、予想以上に足が止まらない。奉行所、捕り方の動きが鈍く、中には動いてくれた者も居るようだが、別働隊と思しき武士たちに排除されていた。現状では組織だった治安活動は望めそうもない」
 何らかの根回しがあったか、将軍のお膝元とは思えないほど浪人たちは自由に動けてしまっているようだ。他ならぬ将軍自身の態度から、様子見を決め込んでいる者も多いのかもしれない。そんな中でも鎮圧に動こうとした勢力は、敵の別働隊に返り討ちにされていたという。
「おいおいおい、先日の話し合いでまとまったかと思ったら、なんだよギルド総攻撃って!?」
 剣崎 龍兵の呆れた声は、来世人の心中を代弁するようでもあった。
 ギルドの視察にも前向きに思えた正雪の変節、そして前々から準備されていたようなギルドへの攻撃はいかにも不可解だ。
「騒ぎを沈静化するには……その武士たちの排除は必要そうね」
 何とか対応策をひねり出そうとする升田 千絵代だが、状況は限りなく厳しい。
 別働隊の武士たちは屋根の上を身軽に飛び回り、錬度、連携共に非常に優れていたという。恐らくは、武者化け狐あたりの化身。それも何か上位の妖怪の指揮下にでもあるのか。
 けれど浪人と化身、いずれか一方でも明らかに手に余るほど、今のギルドには人手が不足しているのだ。
「敵の狙いはギルドで間違いないのね?」
 その時はまだ、幾分か落ち着いた様子で確認していた沖田 芽衣子だったが。
「大変だよ! 野盗みたいな連中が町の人たち襲ってる! 化け狐の妖怪が扇動してるみたいだよ」
 情報を制するモノが勝利を征す! と意気込んで偵察に飛んだマティルダ・モロアッチが戻りその窮状を伝えると、堪忍袋の緒が切れたようだ。いつもの陽気さは隠れ、代わって隠し切れない怒気があふれ出す。
「まあ舐めたまねしてくれるじゃないの……! 妖怪が混じっている以上、これって主義主張をダシにした来世人排除運動よね。良いじゃない! ここまでコケにしてくれた以上ただですむと思わないでね!」
「芽衣子さんを怒らせるなんてただ事じゃないよね! あれ? そうでもなかったっけ……」
 不穏な笑みを浮かべ、薙刀を手に飛び出していく芽衣子。マティルダもそれに付き従い。
 さらには化身への対策や浪人の進攻を遅らせるべく、来世人たちが続々とギルドを後にする。
 ただでさえ各地へ人を派遣し、人がほとんど居なくなったギルドで、醒刃 清萌はオロオロと泣きそうになりながら言う。
「……ギルドも大事ですが、町の方々はもっと大事ですの」
 助けに行きたいが、そうしたらこちらはさらに手薄になるだろう。いくら強い来世人が残ってくれているとはいえ、多勢に無勢すぎるのだ。そうなれば、残された者たちはどうなるか……。
「はは、大事なものは人それぞれだろ。行ってくりゃいんじゃねっの?」
 状況を分かっているのかいないのか、平口 工助がカラリと笑ってそう告げると。
「そうね。行ってらっしゃいな。心配しなくても時間稼ぎくらいはやってみせるわよ」
 オネエっぽい言葉づかいの春待 朔も清萌の背中を押した。包容力を感じさせる態度に一つ礼をして、清萌が走りだす。
 同じようにして何人かの来世人たちが住民たちの救出に向かうと、もはやギルドに残された人数は戦力比など考えるだけ馬鹿らしい、ごく僅かなものとなるのだった。

◆戦端
 ただ守っているだけでは勝てない。
 ギルドから打って出た来世人たちは、敵化身と思われる武者たちを認めこれに襲い掛かった。
「向こうが統率を取ってくるなら、こちらも負けはしません……と言いたいところですが。やりますね」
 仲間たちの連携を高めようと苦心する遠野 絃瑞、その負担は彼に激しい消耗を強いていた。
 とは言え、市街地でめまぐるしくも立体的に躍動する手練の敵戦力。その対応は尋常なる者の手には負えなかったろう。絃瑞であるから壊走ではなく消耗で済んでいるのだ。
「相手が化身なら問答は無用……残さず、落とさせていただきます」
 自らも与一ノ弓を付与し白狐の弓を取り戦うも、敵部隊を破る糸口はいまだ見えない。
 それでも、何とか持ちこたえているのは絃瑞の技量と戦況判断によるものが大きい。待ち伏せし、初撃にて敵を削り、押されれば引く。
 しかし敵の数はいまだ多く、帝釈天神通真言を為した莱堂 凌駕の言によれば、恐らく屋根上の敵以外に伏兵も配されているとのこと。
「くそ。指揮を執ってる奴さえどうにかすれば……」
 凌駕が呻く。現状は射手であり連携の要ともなる絃瑞の傍で、彼を狙い寄って来る敵を相手にするだけで手一杯。
 敵もまた戦上手であり、その手数は比べるべくも無く、恐らくはまだこちらを探っているだけの様子見感さえある。
(敵も、こちらが思いつくようなことは当然やってくるか。だけど、こっちの頭はやらせねえからな!)
 猿飛ノ術だけでなく韋駄天仙道真言も成就した凌駕は縦横無尽の機動力を活かし、波状に押し寄せる敵を凌ぎ続けていた。
「このっ……ちょろちょろと!」
「芽衣子さん、囲まれかけてる! 深追いせずに一旦さがって!」
「!? くっ……」
 マティルダの警告とほぼ同時、相対していた敵とはまた別の方向から複数飛来する弓矢。芽衣子は貫かれる寸前に神威ノ伎を成就し難を逃れるも、追い詰めた敵を取り逃したことに歯噛みする。マティルダが応射し牽制してくれている間に体勢を立て直すも、表情には焦りと疲労の色が見て取れた。
「これは、マズメでござるなぁ……」
 常の無表情に汗を滲ませミスト・カイザーがこぼすのは平坦な声音。けれど、状況を端的に示す言葉。
(極めて高度な連携を執る相手ならば、指揮を執る相手を潰すのが常套だが、指揮官が何処にいるか、見極めがつくか……)
 いや、見極めが付いたとて倒せるかどうかはまた別問題なのだ。しかし、長期戦となれば一層不利になっていくばかりだろう。高い回避手段を持つ者が多く、いまだ致命的な負傷による脱落者こそ出ていないが、複数を相手取り死角や不意を突かれれば無傷でなどいられない。そして来世人の回復手段は、この規模の敵を相手とするにはいささか心もとなかった。
「一発逆転にかけるしかないか、これが」
 その、唯一の癒し手であるアイナ・ルーラは敵の首魁を発見次第、賭けに出る腹積もりだ。負ければどうなるかは言うまでも無いが、もはや他に勝機があるとも思えなかった。それもそのはず、この敵は、恐らく。
(化身が裏で糸を引いていたなら……こいつらこそが敵の主力だったか。見誤ったか)
 朱雀の翼を広げ戦場を俯瞰するグレン・ギーガー。敗色濃厚な気配も漂う戦場で、彼もまた絃瑞のように勝利への糸口を模索し味方を鼓舞する。建物上で展開する戦いに、時には移動手段を手放したアイナのサポートに回りながら。
「持ち堪えるのだ! 数は多くとも私たちならば勝てない相手ではない!」
「やってやるのです。有効打は無理でも嫌がらせをしてやるのです!」
 熊鷹の機巧でアイナを屋根上に送り出した藤枝 杏花は、今はその機巧に炎を纏わせ敵の妨害に当たっていた。機巧大仏ノ法により巨大化させた熊鷹は敵を威圧するには十分に用を果たしたが、それもいつまで有効か。杏花自身が承知しているように、妖ノ体を持つ化身にとっては魔的のない機巧は実際の脅威にはなり得ないのだから。
(……見つけた。アレか――何?)
 そして情報収集に注力するヤズゥンは戦域に散らした式神の感覚に、敵の首魁と思しき人物を捉えたが。
 中華風の衣装を纏う妖艶な美女は手近にいた武者たちにいくつかの指図を下すと、忽然と姿を消してしまった。
「転移か。しかもどれほどの距離を移動したのか……アレは追って捉えるのは厳しいぞ」
 ヤズゥンの得た情報はすぐさま仲間と共有されたが、それが示すのはそもそも賭けを成立させることすら困難という事実。
 前線にて戦う来世人たちの戦況は、いよいよと手詰まりの様相を呈し始めたのだった。

◆決裂
 いまだ防衛の体制を整えきらぬギルドを、あらかじめ市中に潜んでいたと思われる浪人の小集団が襲おうとしていた。
「ギルドを守りきることさえできれば、誰が功績をあげたかなんて関係ありません。個人的名誉を求める人は大いに頑張ってほしいですが、結果が第一です」
 そんな言葉と共に味方の支援に徹することを告げた近藤 彬とは完全に相反するような、名声欲に塗れ血走った眼。その前に敢然と立ちはだかったのは工助だった。
「俺にとっては幕府よりもギルドが大事なんで。……下手に荒らしたら許さねぇぜ?」
「ふん。腰抜けばかりでは無いということか。面白い、その首頂戴いたすとしようか!」
 手柄を欲する彼らは、恐らく独自の判断で抜け駆けを図ったのだろう。到底、話が通じる相手とも見えない。来世人の今までの対応を弱腰ゆえと甘く見ているのか、手頃な獲物とでも思っているようだ。しかし気迫は十分、目を血走らせ我先にと殺到する。
「死ねぇえっ!」
「――遅ぇっ!」
 槍を、刀を手に手に踊りかかる殺気の渦。工助はそれをさらに上回る速度で前に出、重厚な造りの薙刀を一閃した。
 血煙が高くしぶき、どう、と倒れ伏したのは口上をあげた浪人衆。来世人の陣営からあっ、と小さな悲鳴が上がったのがやけに印象的だった。
(だけどな。殺意満タンで来っのに手加減やってたら壊滅一直線じゃん。鬼と同じように殺す気でやっぜ……)
「おお、その腕、さぞ名のある来世人と見た! その首、我こそが頂戴せん!」
 怯むことなく押し寄せる新たな殺意。それが一旦留まることとなるのは、十人近い浪人が血溜まりに沈んでからだった。
 彼らはそれを目にして初めて、目前の敵がたやすく葬れる弱腰の腑抜けではなく、手を出せば相応の報いを受ける恐るべき敵であると認識したのだ。
「ゆ、弓だ、弓をありったけ持って来い!」
「逃がすかよ」
 返り血に染まる工助はそれを豹の獄炎と共に追い討とうとしたが。
「平口、敵の本隊が攻め上がってきている。一旦引くぞ」
 沓ノ屋 颯樹が肩を掴み制する。僅かなりとも進攻経路を限定するため、ブービートラップや障害物の設置も進めていたようだ。あとは、橋や建物などに拠って戦い、どれだけ粘れるかになるだろう。

「おのれ~、あやつめ我らを愚弄しおって!」
「先生に対してまであのような……もはや、来世人とは分かり合える気がせぬわ!」
 正雪に率いられた浪人たちは殺気だっていた。憤懣やるかたない様子であった。
 どうやら来世人の誰かが進軍中に足止めを仕掛けたようだが、何か一悶着あったのか?
「ま、まずは話し合いましょう!」
 剣呑な雰囲気に飲まれそうな心を叱咤し、勇気を振り絞って藤枝 菫花が叫ぶ。
 同じ人同士、心をつくせば分かり合えないことはないと。そう信じたかった。自らの思いを知ってもらいたかった。
「何だね、君は?」
 正雪もまた、先走って返り討ちにあった者共を一瞥し眉をひそめるも、まずは言葉を交わす意思は持っていたようだ。
「わ、私は来世人の藤枝菫花です。代表、……なんて立場ではありませんが、その、来世人としての使命を果たす信念は……持っている、つもりです」
「使命、か。……だがそれを捻じ曲げ悪用している者が君たちの中にいるのだ。それももうすぐ終わらせる。危ないからそこをどきたまえ」
「え? あ、あの」
 続く言葉を見失う菫花。それは一方的な通告だった。正雪にとってはギルドの不正を糾すことこそが本懐。そこに菫花の主張を差し挟む余地はなく、彼にとってギルドを妄信する相手の言など考慮すべき価値もなかったのだ。
「由井正雪さまのご来訪のご予約は承っております。お待ちしておりました。お茶の用意がしてありますので、どうぞ、こちらへ」
「ほう。それは降伏しギルドを明け渡すという意味かね?」
 迎え入れる姿勢を示すカミラ・ナンゴウだが、正雪の要求はあくまでギルドの無条件降伏。それをカミラの一存で決められるはず無く。
「あ、あのね。ここは化物と戦うための組織なので、中に入れるには化物の術にかかってない事を示して貰わなきゃならないんだけど……」
「必要かね? そもそも、君たち自身が化け物の術にかかってないという証拠はあるのか?」
 霧ヶ峰 えあ子も一縷の望みを賭け正雪の状態異常の解除を試みようと提案したが、取り付く島もなかった。
「身体検査OKで、こちらが怪しい動きするか宣言以外の効果が出た時点で切り捨てて貰って構わないよ」
「そうですね。まずは落ち着いて、紅茶でも如何でしょう? もちろん、無粋な真似は致しませんし、目の前でお淹れしますよ」
 彼女たちの言を疑うような素振りも見せないが、正雪は即座に首を横に振る。
「いや、それには及ばぬ。あくまでギルドを明け渡さぬと言うなら、押し通らせていただく故」
 かくして、振り上げられた拳は戦いを望む者にも望まぬ者にも区別なく、等しく振り下ろされる。
「皆、勝利は目前。今こそギルドの腐敗を糾し、奪われた誇りを取り戻すのだ! 天誅!!」
「「天誅!!!!」」
 応、と喊声を上げ浪人たちが動きだす。ギルドへの道を阻む来世人を蹂躙すべく突き進む。

 なんら遠慮なく向けられるむき出しの悪意、殺意の目。
 それは本来、人が人に向けるようなものではなかった。
「人って怖いね。犯罪者に対するアジテータってこんな感じで扇動されちゃうんだ」
 伊地知 桃の胸中は抑えようのない恐怖であふれ、悲しみが胸を締め付ける。
(せっかくここにきて楽しかったのになんだか切ないよ……)
 怖い。そんな目で見られれば、大多数の悪意に晒されれば、誰だって怖いのだ。
 浪人たちは、桃たちを同じ人間だと看做していないかのように非情で残酷な性質を見せ襲い掛かる。
「くっそー。こりゃ、やっぱりあいつをぶん殴るとかしないといけないか?」
 龍兵は正雪目掛けての一騎駆けを狙い敵の陣容に目をやるが、泰山符を使ったとて届く前に囲まれ討ち取られる未来しか見えない。
「戦争は数とはよく言ったもんだよなぁ!」
「ぬぅっ。妖しげな術を……」
 影縫ノ術が駆けてくる浪人数名の足を止める。一人一人を相手どれる余裕はなく、龍兵一人とて欠ければ味方は崩れ兼ねなかった。
「うわぁ、見事に乗せられちゃってるなぁ、あいつら。狂信的な連中ってのはホント面倒だよなぁ」
 呆れ混じりの声。ギルド周辺の屋根上に位置取り、ルドルフ・ガーランドは見下ろす浪人たちに矢を射掛ける。
 矢が尽きれば、彼をここまで運んだ熊鷹機巧をけしかけ戦うことになるか。意外(?)と尋常な戦いぶりを見せるルドルフだ。
 その矢玉を掻い潜り接近を試みる浪人の前には、町中と言うのに何故か羆が立ちはだかった。
「あら、そんなにイクサがしたいのですかー? ではこちらも遠慮なくいきますよー?」
「クマー!? ナンデクマー?」
 チェルシー・ルブランと心を通わせる羆のテディさんだ。あまりにも多い人間に警戒心を抱いているようだが、高めた絆は主を守り戦うことに否やはないようで、浪人たちも野生の巨体の迫力の前に迂闊には仕掛けられずにいた。
 そこへ、チェルシーの舞う月読命ノ舞による光の矢が放たれ浪人を射抜く。遠慮なくといいつつ武器の持ち手などを狙っているあたり、しっかりと手加減はしているようだ。
 だが、そんな風にまだ理性を保っている者ばかりではなく。
「――ここまでいったなら、手加減はしません。相手をするのであれば切り捨てましょう」
「「グ、グワー!!」」
 シャムロック・ルブランなどはとっくにぶち切れてしまっているようで。一ノ太刀を乗せ手向かう浪人を切り捨てると、怯んだ敵集団に向け焙烙玉を投げ込んだ。至近では耳を聾する爆音が轟き、火のついた浪人が慌てて川へと転がり込んでいった。
「む、無茶苦茶やるわねぇ……」
 仲間の奮戦(?)振りに一瞬呆気にとられつつ、朔もまた気を取り直してギルド防衛の為に奔走する。
 少数で多数相手に戦う以上、囲まれてしまえばあっという間に全滅しかねない。日本橋の上では今弁慶よろしく陣取った工助が奮戦し敵を食い止めていたが、対岸に彼を狙うべく弓隊が集結し始めていた。
「させないわよ。爆弾鼠、行きなさい」
「煙幕だと!? ええい、猪口才な!」
「無駄よ、引きなさい!」
 すぐさま爆弾鼠を差し向け煙自爆させると黒煙が一帯を覆う。さらに機巧大仏ノ法で剣豪の機巧を大きく見せ、弓兵たちに向け斬り込ませた。
 爆弾鼠は一度きりしか切れない札だったが、出し惜しみをしている余裕もなく。
 朔はこけ脅しやハッタリを交え敵を牽制しながら、傷ついた仲間の回復にも手を尽くし。その自己を見失わず手を尽くす姿で荒々しい戦いを苦手とする女子らにとっては良き理解者、精神的支柱となり戦線を支えたのだった。

「今のところ化身が混じってる風では無いな。だが連中は見た限り、暴力と狂気に酔いしれてるようだな」
 村正 一刀は、久方ぶりの戦場の熱に浮かれたような浪人たちをそう評した。
 一刀の舞に天神の分霊より降る雷が浪人たちを打ち据え感電させるも、後続は途切れる気配がなく、感電した者も時間を置けばまた立ち上がり進み始める。
(夢想権之助先生が狂気に捉われなかったのは、先生の『明鏡止水』によるものだったんだろうか……)
 思うのは、協力を約束してくれた、一度はぶつかった相手。裏表無い、気持ちの良い男だった。彼が協力してくれれば心強いが、ギルドの職員に頼んだ応援要請には今のところ何の音沙汰も無く、彼の道場はその時点ではすでにもぬけの殻だったそうだ。
「兄貴、迂回されそう! 一旦、下がって立て直そう!」
 広範囲に敵の動きを抑制しうる一刀は防衛の要の一つ。その傍らには彼の妹である田中 カナタが寄り添い彼を守護していた。
 あらかじめ作り置いた太上神仙秘法道術の霊符を牽制に放ち、それを抜けてなお迫るものには大太刀を振るう。しかし化身相手でないからと峰打ちを選択した以上、敵の数は中々に減ってくれなかった。
「どけい! 邪魔立てするなら女子どもとて容赦せんぞ!」
「くぅっ。時々強い人いるし……やりにくいなぁ」
 剣戟、打ち合うこと数合。
 何とか浪人を下したカナタがぼやきながら後退する。血気に逸りがちな兄に、自身の負傷を悟られまいとしながら。

 そんな、敵だけは容赦をしてくれない歪(いびつ)で不平等な戦場。
 仲間たちは傷つき、自らにも危機差し迫るこの期に及んでさえ。
「守らなくちゃ! ギルドも浪人も」
 倉本 明日奈にとっては、浪人たちもまた憎むべき敵どころか救うべき存在だったのだろうか。
 それを咎める者は居ない。多くの来世人が同じように、なるべく相手を傷つけずに事態を収束させる道を模索していたのだ。
「ギルドは私たちにとって家みたいなものなのよ。お願い、おとなしくさがって……!」
 明日奈が月読命ノ舞で狙うのはあくまでも武器を持つ手。浪人はうめき声を上げ、落とした武器を拾って襲い掛かってくる。
 願いは届かず、虚しい繰り返しの果てに血と怒りに塗れた白刃が迫る。夢想捻転の杖で足を払い、突き倒しても敵は諦めを知らず……押し返すことなど到底出来そうもない現状に、明日奈の胸には絶望がじわじわと広がっていった。
 明日奈だけでは無い。手心を加えるもそれを解さず悪意を返す相手に、折れそうになる心。
「なんでよ! ケガだってさせたくなんてないのに……!」
「諦めないで。一人ではできないことでも、皆が力を合わせればできることも多いのです」
 武田の具足で身を包み、手にする太刀には光を帯びた彬が鼓舞する。榊樹女ノ舞による神の加護とその言葉が、か細い希望を繋ぎとめていた。
 だが、支援役であるはずの彬もすでに最前線で戦わざるを得ないという事実は、彼女たちが置かれた戦況を如実に物語っていて。
「ギルドは来世人のためだけに存在するんじゃないのに。必ず、守ってみせるよ」
 即席のバリケードを乗り越えようとする浪人に投網を絡め、必死の抵抗を示す桃。
 自信などなく、頼りない力しか持たないのを承知の上で懸命に抗うも、決意を打ち砕くように浪人の数は増え続け、暴力が止まない。
 来世人は陸続と押し寄せる浪人に疲弊し、奮戦むなしく押し込まれていくばかり。
(ああ、もうこれは……駄目、なのかな……)
 一応は手加減してくれたのか? ついに浪人に殴りつけられ倒れた桃は、その浪人らの後ろからさらに猛烈な勢いで迫る杖を持った一団を見て、守れなかった悔しさを覚え静かに涙を零したのだった。

◆東海寺
 その頃、沢庵の下へ駆けつけた牧葉 真夏らは、まったりお茶タイム中だった。
「沢庵和尚があぶねっで聞いだもんでよ。慌ててきてみだっげ。間に合って、来てよがっだー」
「いやー焦った焦った。ご先祖様(笑)に死なれると来世のカイザー家の存続の危機なんでねー」
 ごろごろと猫のようにだらしなくくつろぐミア・カイザー
 彼女が気まぐれに警戒に出かけた様は、縄張りチェックしに行く猫みたいだったという。
「全くよねぇ。家光っちゃんがあんまり放っておくもんだから」
「他の男に殺(と)られちゃっても知らないんだからもう。ぷんぷん!」
 気持ち悪い会話を交わす二人の沢庵。その片方は希有亭 波新が変装したものだが、沢庵も悪乗りするのでもうどっちが本物だったか周囲には分からない。そんな、緊張感の欠片も無い連中のおしゃべりが続き。
「ミア叔母さんから『ご先祖様のピーンチ!!』と言われ真に受けて来ましたけど。確かに性格が似てるかも……」
 アステ・カイザーがなにやら納得する。いっそ沢庵は放っておいても死ななかったんじゃないだろうかと言う気もしてくるが、浪人たちが持ち込むシリアス分が強かった場合はどうなるか分からないと思い直す。
(それも、相手はあの金井半兵衛――ボケ殺ししてきそうな恐るべき剣客……)
 ってどういう判断基準だ。
 そんな、無駄にほのぼのした空間で、海動 涼は加賀爪直澄をそれとなく見張る。
(信用したいが、念の為警戒せねばな)
「何だよ。こっち見んな」
 すぐ気づかれた。信用してないのがバレバレだよ。色目は通用しないニャ。
「……まぁしょうがないか。先に言っておくが、俺は別にお前らの仲間になったわけじゃないからな」
 レベルの低いツンデレのような発言をする直澄。彼には彼の目的があるということか……。
「けんども暗殺はよくねっぺ」
「将軍さまにいろいろ意見したのが気に障ったんでしょうかね」
 真夏の意見に、伊東 命が同意を示しつつ首を傾げた。
 そこへ、真偽不明の沢庵があくどい笑みを浮かべ顔を寄せる。思わず変な声を出す命。
「うひゃっ」
「本当に九尾の狐なら、らしくない行動も目立つわよねぇ。ここで強引な手に出たのは、向こうも追い詰められているってことかもしれないわよ?」
「そうそう。焦れて博打に打って出たなら、積ませた掛け金を全部台無しにしてやれば良いのよ」
 悪そうな顔の沢庵二人が顔を見合わせ、それはもう悪っぽい笑みを深めた。
 ギルドの不正って、あるのかも……そんな気がしてくる命だった。
 そんな折だ。
「「「「いらっしゃいませー!!」」」」
 お散歩に出かけていた猫……もとい、ミアのハンドマイク越しの大音声が境内に響いた。
 お昼寝……ではなく潜伏先で襲撃者を察知したのだろう。
「くそ、気取られたか!」
「はっはー! これぞ大音量・忍法ミラクルボイス!!」

 東海寺に緊張が走る――……走るったら走る。

◆城下町
 そこには突如として襲われて逃げ惑う人々がいた。
 汚らしい身なりの野盗らと、幾人かの僧兵が来世人のご近所である長屋の衆を襲っている。
「おいおい正気かよお前ら!」
 騒ぎを聞きつけ何事かと見にきた筒井 蔵之介は、その様子を目の当たりにし信じられないという表情。
 それも一瞬の事、蔵之介は闘志と決意をたぎらせる。 
(大切なものも、ここにはあるんだっつーの。それをこわされてたまるかよ)
「きゅー!!」
「お、マゴちゃんもそう思うよな! よっしゃ、いたっつぁん、行こうぜ!」
 マゴちゃん隠れてろよ、とゴマフアザラシに言い聞かせると、マゴちゃんは素直に聞き分け物陰に隠れた。
 蔵之助は、悲鳴のあがった方へ一心に走り出す。

(清萌たちを精神的に追い詰める為か、それとも清萌たちに取り入っていると思って許せなかったのでせうか?)
 来世人と縁のある人々が襲われてると聞き、駆けつけた清萌。
 薙刀を携えた僧兵らが、長屋に押し込み人々を切りつけていた。それに、扇動されたと思しきみすぼらしい浪人たちも倣う。
「来世人か。見よ、お前たちのせいで苦しみ、死んでいく者たちの末路をナァ!」
「清萌たちに善くしてくださる方々に出だしさせませぬ!」
 できればイタズラに命を奪う愚は避けたい……そんな思いから、清萌の刃は自然と急所を避け、腕などを狙っての攻撃。
 しかし、そうして手加減をしている間にもまたひとつ悲鳴が上がった。
 いくら清萌が体を張って彼らを守ろうとしても、害意を持つ者がなくならない限り犠牲は増え続けるのだ。
「助けてくれぇ、ぎ、ぎゃぁっ!」
「来世人などに尻尾をふる、愚物どもが。浄化してくれるわ」
「この……たとえどのような理由であれ、なんの咎もない人々を襲うなど……正義を語る者がすることではありませぬ!」
「効かぬわぁ!」
「くっ。やはり、妖怪ですの……?」
「おお、先輩か? 俺も手伝うぜぇ!」
 威勢よく駆けつけた蔵之介と共に、素戔嗚息吹迎えノ舞の魔法も駆使して僧兵化け狐らと戦う清萌。
 広範囲に渡る魔法の影響は、暴れていた浪人たちの動きを鈍らせるにも一役買い。
 やがて妖怪である化け狐を蔵之介が仕留めると、隠れて様子を窺っていた長屋の住人らも出てきて怪我人の救助や浪人の撃退に加わった。
「こいつらふざけやがって!!」
「囲め囲め! 切ない目にあわせてやらぁ!!」
 たまらず逃げ出そうとした浪人たちが、袋叩きにされ始める。
(きっと、怒りは正しいのでしょう。でも、ほんとは誰も傷ついてほしくなど……!)
 清萌は慌ててそれを止めようとして。
「だけどよ、こんな奴らは死んだ方が世の中の為なんだよ」
「そのような、悲しいことをいわないでくださいまし……」
 怒り覚めやらぬ住民たちはアンタがそういうならと、納得はせずとも任せてくれたが。
「くそう。なぜおれがこんな目に……」
 捕まった野盗は虚ろな目でぶつぶつとうわ言を呟く。
 生き残ったとしても決して軽くない罪、沙汰は追って役人に委ねることになるだろう。

 一方、敵を撃退しても蔵之介の表情は晴れない。
 戦禍に巻き込まれ怪我を負った者たち、荒らされた長屋が目に焼きついて離れない。
「俺らの事情に巻き込んじまった、すまねぇ!」
「こんのクソ馬鹿ヤロー!」
 そんな蔵之介に、顔を真っ赤にして長屋の住人らが罵声を浴びせる。困惑する蔵之介。
「水臭ぇこと言うんじゃねぇ!! 困ったときゃぁ、お互いさまだろうが!!」
「ケッ。被害だと? あんたに助けてもらえなかったら、こんなもんじゃ済んでねえっての」
「そっちの妖怪と一緒に、頑張ってくれただろう。俺らは馬鹿だが、そんくらい分かってらぁ!」
「きゅー!」
 危機が去ったことで安心したのか、マゴちゃんが出てくる。
 いたっつぁんは、蔵之介が何も言わずとも怪我人を治療していった。
「あんたら……」
「さて、いつまでもこうしちゃいられねえよなぁ!」
 やがて、元気になった者たちは何処かへと走り出した。
 ある者は粗末な武器を手に、ある者は周囲に声を張り上げながら。
「あ、あんたら一体何考えてやがる……!?」

「襲撃者の観点からするとどの店・長屋が狙われそうだろうか?」
 渋川 香が呼び出した英霊に問うた。あらかじめターゲットを絞ることで防衛の効率をあげようと考えたのだ。
(元自衛官としては、人々を守りたい。少しでも守り切れる可能性が高まるなら……)
 そんな思いに応えてか、呼び出された英霊は、このような場合には食料庫や武器庫などが狙われる可能性を指摘していた。
 来世人へのあてつけであるならその限りではないこともあるが、効果が高いのはその辺りだろうと。
「なるほど、食料は米蔵や米問屋とかか? 武器庫といえば何があるんだ?」
『ふむ。そうだな、例えば私なら……』
 総髪の英霊が答えると、元自衛官でもある香はその話に青褪め、急いで別の来世人へと連絡を取るのだった。

(何もかも気に入らない。でも、戦えない大和の人たちに、出来る限り力になるつもりだと約束したのは自分だからね)
 それは相葉 楡にとっては気乗りしない戦いだったのだろう。
 それでも自らの言葉が偽りとならぬようにと、約束を果たすべく駆けていた。
「どうやら、ギルドにも米を卸してくれている米問屋が野盗たちに襲われそうになってるようですね」
「やっぱり。商店なんかは狙われやすいのかな」
 鷹機巧を飛ばし偵察させていた空木 椋が強盗集団の動向を伝えてくる。
 おおむね金銭が絡む場所を予想していた楡は、そこに食料も絡むと聞いてちら、と後ろを走る仲間に目を走らせた。
「なんてことを。それは私の分の米じゃ~!!」
(いや、絶対に違うから!)
 森住 ブナが、息を切らせながら走る速度を上げた。

「聞けばここの主人は悪銭をたんまり溜め込んでやがるそうだ」
「飢饉が来ると知って、米や、麦まで買い占めて値を吊り上げようとしてるんだとよ。許せねえ!!」
 そんな言葉が聞こえてくる。米問屋の周りには粗末ながら武装した野盗や、痩せこけた浪人が集まって暴動になっていた。
 扇動していたのは狐っぽい顔の町人だったが、今は……。
「せんせい、わたしたちはどんなときも! たぬきだけをゆるしません!」
「ろうにんたちをゆるせるっ。ただしたぬきテメーはだめだ!」
 椋の豆狸機巧を本物と見間違ったか、狸絶対殺すマシーンと化し追いかけようとしていた。
「アレは……やっぱり」
「化け狐か。手伝う!」
 そこへ香も合流し、彼女と共にあった五百田 衛が建物に被害を出さないために壺中天道術を展開。
「けつねか……毎回毎回、おまいには随分世話になっとるのぅ! 今日こそ血祭りにあげてやんよ!!」
 殺(しゃあ)ああ! とうら若き乙女にあるまじきもの凄い形相で襲い掛かるブナ。
「な、なんだてめえらぁ」
 町人はギョッとした顔になると、その頭上にポンと耳が飛び出した。
 間違いない、あの大きなお耳とふさふさの尻尾。人をだますのが得意なフレ……化け狐だ。
「これが食べものの恨みじゃあああ!!!」
「ぎゃあああひやしちゅうかはじめましたああああああああ!!」
 遠慮なく魔法をぶっぱなすブナ。すなわち、素戔嗚につぐ素戔嗚である!
「魔法を使うような敵は居ないか……」
 香は分身しつつ大太刀で接近戦。逃げる敵は追わず、化身を潰しつつ防衛に専念する。
「無益な殺生を、止めるつもりは無いの?」
「……こいつらが集めた金も米も、不当なものだ。儂らが少しばかり奪って何が悪い」
 楡に殺気を向けられた浪人はじりじりと後退し、逃走する隙を窺っていた。
「弱い者しか相手に出来ないんだ、武士が聞いて呆れるね」
 強者と見れば逃げを打とうとするその態度が、今のささくれ立った楡の癇に障ったのだろう。挑発の言葉が口を突いて出る。
 すると、浪人はカッと眦を釣り上げ憎々しげな視線を寄越してきた。
「わ、私とて武士だ。長年扶持にもつけず浪々と落ちぶれたとて、武士に違いは無い……それを愚弄するかっ」
 浪人が刀を抜き切りかかってくる。楡が反射的に応じると、たった一合打ち合っただけで浪人は脆く仰向けに倒れた。
 楡は呆然とした。
(何だよ。まるで羽みたいに軽いじゃあないか……)
 半ばから断たれた竹光がカランと転がる。地に膝を付いた浪人はもはや逃げる素振りも見せず、暗く据わった目で「さぁ殺せ」と呟いた。
 貧すれば鈍する、とでも言うべきか。
 自身が生き恥を晒している自覚はあれど、他の生き方を見つけられない者も、浪人の中には少なからず居たのだ。

 悪いのは世の中だとか、この米問屋が悪徳だとか。
 そう言って聞く耳を持たぬのは、どう見ても最底辺に暮らす痩せこけた人間たち。
「この分からず屋が!」
 彼らの暴動を制圧しながら、梧桐 茶倉はやるせない気持ちが抑えられなかった。
 たとえ袋叩きにあってでも、と思っていた力強い意思は、茶倉相手にまるで歯が立たない者たちを見て挫けそうになる。
「何だよこれ。くっそぅ、どいつを倒せばハッピーエンドになるってんだよ!?」
「姉さん……せめて、1人でも血を流す人が少なくなるように努めましょう」
 元々、考えるより先に手が動く茶倉にとってはストレスのかかる状況か。
 そんな姉の様子を気遣う梧桐 彩葉は、彼女がそれ以上無茶をしないように気にしつつ、逃げ遅れていた人々の誘導にあたる。
(姉さん、ああ見えて純粋だから……)
 彩葉の形代のおかげで怪我らしい怪我も少なく、彼女が無茶をするのはいつものことで慣れっことはいえ……心配は心配なのだ。
「火を放とうなんて馬鹿が居なかっただけ、マシか」
 茶倉が自身を納得させるように呟く。火付けの懸念……単純に江戸という町は火事に弱いのだ。
 それに、自然の恵み豊かなこの国であっても生きていける人間の数は食べる物がある分に限られていた。もしそれらが損なわれてしまえば、必然的に生きていける人間は減ってしまうのだから……。
「まずは守って被害を出さないようにすることが重要だしな。追撃中に別戦力に襲われるのが一番怖い」
 混乱の最中、幾人かは逃げおおせた彼らを、香はあえて追わなかった。
「いや、助かりました。一時はどうなることかと……」
「少しでもお役に立てたなら良かった」
 米問屋の主人が汗を拭きながら礼を言うと、衛が薄く微笑む。
 結果として、少数ながら工夫により初期対応が早かったことや、戦闘時に居空間を展開した衛のおかげもあって、建物や物資への被害は最小限で済んだのだった。

◆リンリン
 時は少々さかのぼり。
「ギルドが降伏に応じた! 撤収!」
「な、正雪先生!?」
「馬鹿な、先生はあちらに」
 浪人らの前に現れ、撤退の指示を叫ぶその男の正体は九条 鰤々之進
 突如現れた偽正雪へとさすがに不審の目を向ける浪人たちへ、彼はおごそかに続ける。
「何だね君たち。俺が正雪では無いという証拠でもあるのか? 俺は正(ブリブリー!! ぷぅ~~!!)」
「「ぐあああああっ!?」」
 言葉の途中で彼らに尻を向けた正鰤がひねり出したのは、屁だ。
 ――弩尻烈風による強烈な放屁が浪人たちを襲う!
「おのれ、正ブリ! 何というクサさか……!」
「先生を愚弄しおって! 奴だけは許さん!!」
 ぶち切れた正雪門弟の一隊が目の色を変えて鰤々之進を追い始める。
 そんな光景が何度か繰り返され、敵の足並みを乱す。ちょっとアレだが、かく乱による遅滞戦術の成功である。
「何やってんだアイツ……」
 蓮美 イヴ は必死で追っ手から逃げる正ブリを見て、変なモノを見てしまったという顔で呟く。
(っと、今はそれどころじゃ無いな。一匹ずつでも、確実に――)
 武者化け狐討伐の一助になるべく名乗り出たイブだが、戦況はかんばしくないのだ。
 一反木綿に乗った千絵代と連携し武者化け狐を葬り続けてはいたが、いまだ大勢に影響を与えられるほどではない。
「……っ? 絃瑞さんっ!」
 その時、千絵代が何かを感じ取って声を上げた。宿曜道術により高められた直感が伴侶の危機を察知したのか。

「……ここを通りたければ、このわたくしを倒してからにしていただきましょう」
「フフン。なら、そうさせて貰おうかしら?」
 勝機を見出せぬ戦場で気を吐く絃瑞。
 その耳元でささやくような声が聞こえた時にはもう、彼の胸を白刃が貫き熱いものが溢れていた。
「……ごふっ」
 振り返ると間近で嗤う中華風の女性――リンリンか。
 絃瑞は震える腕で彼女に手を伸ばし――
「ようやく……捕まえた」
 薄く、どこか透明な微笑みを浮かべた。
「……何?」
 突如として桜吹雪が周囲を包んだ。
 水上 澄香 が血ノ代償と引きかえに起こしたものだ。
(わたしが倒れても……大丈夫)
 倒れた澄香に関わらず、彼女の意思を引き継ぐように井伊神の機巧は武者化け狐たちと戦い続けていた。
 そうでなければ、このチャンスは生まれなかったろう。
「アイナ!」
「やるでござる。だが、上手く事が運ぶかはダイス運次第……」
 グレンが自らも急降下しながら斬りかかり、ミストのどこか力が抜ける指示が飛んで。
 赤鬼武者の大太刀を携えたアイナはリンリンの背後に転移した。魔法を成就している余裕はなく、ただ渾身を篭めて一太刀を浴びせる。
「どうだ!?」
「……いいわ。ご褒美に、私直々に皆殺しにしてあげましょう」
 リンリンの形が崩れ、そこに正体を現したのは――八尾ノ尾を持つ大きな白狐。
「怒らせたでござる。女性を怒らせると怖いでござるのに……」
「言ってる場合か。どうにかしないと全滅するぞ、これが」
 攻撃が効いていない訳では無さそうだが、白狐に堪えた様子はまるで見えず。
 八尾に炎が点ると、その八連撃でもって来世人たちを蹴散らし始めたのだった。

 絃瑞が倒れ澄香が倒れ。
 そうでなくとも疲労の極みにあった来世人たちは、ほとんどなすすべなく白狐に蹂躙されていた。
(うむ。やはりこうなりますよね……)
 大虚ノ術で気配を潜め身を伏せる藤枝 桜花はこのような展開を予想していたのか。仲間たちの苦境にも冷静に敵を見極めていて。
「さて、ではやりますか」
 ここで自分1人が加わっても勝ち目は見えそうにないが、せめてと一矢報いるべく、その身を走らせた。
 一ノ太刀を加えた三鈷杵がリンリンの白い毛皮に赤い斑を作る。が――
「有象無象が……消えなさい!」
「……ぅゎぁくじょっょぃ!」
 至近で殺気に睨まれ、とっさに踵を返し距離を取ろうとする桜花を八尾が次々と襲う。
 一撃からしてすでに重い。来世人なら耐えられないほどではないが、それが雨のように降り注げば……
(まずっ。これ……っ死……)
「そのへんにしてもらえるかしら。その子、私の娘なのよね」
 断たれそうになる意識を繋ぎ止めたのは母である藤枝 藤花の声だった。
 桜花の盾になるべく飛び込んだ藤花は、光世音菩薩真言で連撃を軽減したためか、何とか立っていられるようだ。
「断る。残念ね、邪魔をしなければ死なずに済んだのに」
「……ずいぶん余裕がないみたいね。いいのかしら? こっちは、十分時間は稼がせてもらったけれど」
 藤花は一歩も引かず、表へと姿を見せたリンリンの焦りを指摘する。
「この、よくも絃瑞さんを!」
 少し離れた戦場で敵を削っていた千絵代が、般若の形相で降下し斬り付ける。
 凌駕や芽衣子らも、満身相違だが闘志は失っていない。
 これを相手にするには手間と考えたのか、白狐は憎憎しげに顔をゆがめ――姿を消した。
「あら、行っちゃった。桜花、生きてる?」
「何とか。一矢報いるくらいは出来ましたかね……」
 言いながらふところからゴソゴソと何かを取り出す桜花。
 一泡吹かせるためにとひたすら忍んだ彼女は、リンリンの所持する巻物に気付き、一撃加えると同時にそれを奪い取ったのだ。

◆援軍
 出来るだけ人(浪人含む)の被害減らすのを目標としたマリン・カイザー
 彼女は、実は開戦直後に「それじゃ1曲目、『夏☆しちゃってるGirl』、いきます!」とアイドル衣装で天から降臨し、スマホの音楽を流し歌でオンステージ、時間を稼げないかと試みていたが。
「ふむ。害がないなら相手にしなくても良い」
 正雪の指示でサックリとスルーされていた。
「な、なんて雑な扱い! こ、こら、マリンの歌を聞けー! 聞けったら聞けってばー!! ……あ、でもなんか懐かしい感覚?」
 来世でもおおむねそんな感じの枠で扱われていたマリンである。これくらいではめげずに、ならばと切り口を変えて浪人に挑んだ。
「へなちょこ浪人には負けないぞ☆」
「勝負でござるかー!」
「いざ、尋常に勝負!」
 逆切れし煽っていくスタイルに切り替えたマリン。対して、馬鹿にされれば引き下がれないのが浪人たちだ。
(やば。マジカルヤッパの出番かしら……)
 しかし何か孤立してるマリン。コレは多勢に無勢すぎるだろう。
 絶体絶命の危機――そこへ正雪が颯爽と現れた。
「正雪先生!? なぜこのような所に……」
「うむ。俺はまさブリブリ(以下略」
 それは正雪を騙り、語りの途中で屁を扱いて逃走を繰り返す男――正ブリだった。
「貴っ様ー! 名を名乗らんかー!!」
「俺は由比正ブリ! その正体は来世人の団次郎だぜ!」
 一人騙るも二人騙るも同じというのか。この時、正ブリはノリで団次郎と名乗った。それが後に恐ろしい禍根を生むとも知らずに……。
「やるねぇ。コレは負けてられないねぇ」
 開戦前から浪人たちが殺気立っていた理由を察して、マリンがいたく感心する。皆が真面目に戦ってる中どの方角向いてんですかこいつらもうヤダ。

 それはさておき、奮戦するギルドの防衛戦は、途絶えることのない浪人たちの津波のような攻勢にもはや風前の灯と思われたが。
「我こそわぁあ! 神道夢想流、夢・想・権・之・助! 来世人、約束通り助けに来たぜイェェェエ~イ!」
 敵の増援とも見間違われた、杖を持った一団の登場によって、防衛戦が変化の兆しを見せた。
「大丈夫かぁあああ!」
「……はっ?」
 目の前で浪人たちが取り押さえられもがくのを見て、桃はキョトンとしていた。
「嬢ちゃん、杖の使い方ぁ、まだまだだな! だが、よく頑張ったあ!!」
 夢想流の杖を持つ明日奈にもそう声をかけ、権之助とその一門がが大立ち回りを始める。
 突如として現れたこの集団の横槍に、浪人たちは対処が遅れ混乱に陥っているようだ。
 そして、来世人の援軍として乱入した中には、明らかに彼の弟子とは毛色の違う、武士や浪人らの姿もあった。
「助け? 味方……なの?」
「おう! 我こそわぁあ!――」
 それはもう良い。
「援軍、感謝します。さぁ、こちらへ。支援いたしますわ」
 彬が彼の弟子たちを集め榊樹女ノ舞を行う。多数に対し、支援は最大限の効果を発するだろう。
「おおっ、こいつは良いな! 美人の応援なら、なおさら力が湧いてくるってもんだ!」
「はい。どうかお力をお貸しください。皆が力を合わせれば……」
 死に体だったギルドの防衛線が息を吹き返しはじめる。彬は図らずも自身の言葉を実証する機会を得たのだった。
「ったく、先生……遅いぞ、死にかけるどころか一回死んだぜ!」
「ハッハッハ! そいつはすまんかった!」
 とは答えつつも全く悪びれない権之助に一刀も相好を崩す。
 孔雀の羽織は血塗れで魔法を繰り出す力ももう残っていないが、どこからか力が湧いてくる高揚感。
「楽しそうだなぁ。美味しいところ持ってかれちゃったねぇ、兄貴」
「ははっ。まぁ、先生こういう騒ぎは好きそうだしな……」
 呆れと共に安堵をこぼすカナタに、一刀が苦笑い。
 杖術――人を殺すのではなく懲らす技術を操る彼らの力はこの局面で、来世人の大きな助けとなるだろう。

 かくして、夢想権之助が親来世人派の大和人らを糾合しつつ援軍に駆けつけたことで、崩壊寸前だった防衛線は一時押し返し。
 浪人たちは数を頼みに押しつぶす戦術をとれず、相応に消耗していた両陣営は互いににらみ合い、膠着したのだった。

◆東海寺
「敵だー!!」
 浪人たちに追っかけられ、ミアが逃げ込んでくる。
「大丈夫か猫ちゃん!」
「ミャーミャー! って、だれが猫やねーん!」
 毒島 右京がそこにペタリと形代を貼付。
 襲撃を察知したのが早かったため、沢庵や自身の分はすでに間にあっているようだ。
「来ましたね……理不尽な暴力には正気と狂気の融合、すなわち本物の暴力を叩き込んで懲らしめてあげましょう!」
 意外と喧嘩っ早いのか、飛び出した命が迎撃体勢をとる。暴力に対抗するにはほんまもんの暴力、らしい。
 鎖鎌をぶん回し威嚇するその姿には、興奮した様子が窺える。
「おい、あんなこと言ってるが。あの姉ちゃん大丈夫か」
「言うな。あいつもアレで色々と腹に据えかねてたんだろう……」
「あっちの強面(右京)が言ってるなら違和感ないんだがなぁ」
 首をひねる直澄と会話しながら、涼が逃走の際に負ったミアの傷を癒す。
「あー。前に宿もやしたやつじゃねっが」
『……?』
 真夏は浪人衆の名かに金井半兵衛の姿を認めた。他は彼の配下の浪人が10名ほどだが、少し毛色が違う者が混じってることに気づく。
 赤兜ノ子アイアイも何かを感じているようだ。
「後ろは狐さんだべか? 大人しくけえってくんねかな」
「ばっ、だれがおれの狐だって証拠だよ!」
 動揺する青年、だが引き下がる気はないらしい。
「やるしかねっべか?」
「ご先祖様は私達が守ります~」
 沢庵波新と、実は腕も立つらしい沢庵。
 守るといいつつも、二人を遠慮なく巻き込みネコ耳アステが壺中天道術を成就した。
 ネコ耳妖怪の使う妖しげな術によってセピア色の異空間に連れ込まれてしまった浪人たち……。
 それを右京が睨みつけ、暦 紗月が連れてきた随伴――2体のぬりかべやベンガルトラ、豹などが展開し姿を見せる。
「おのれ沢庵、東海寺とはやはり魔窟であったか……」
 何を勘違いしたか、悲壮の色を浮かべながらも決死の覚悟を決める剣客たち。
「くっくっく……今頃気づいても遅い」
「見られた以上、一人も逃さないわよ」
 アステは(波新と沢庵が楽しそうで何よりです……)と思った。

 互いに戦いを求める者たちに、多くの言葉は必要なかった。
「久しぶりだな金井半兵衛」
「……小僧、居たのか」
「居たよ! ずっと居たよ! もう、そういう扱いやめろよな!」
 自分だけめちゃくちゃ意識していたようで、羞恥にもだえるのは吉弘 龍重
 龍重が悪いのでは無い。周りが色々と弾けたせいでそれに比べると半兵衛からみても印象が薄かったのだろう。
「むう……。殺したと思ったが」
「地獄から蘇ったのよ! おれはまだ負けてねえ!」
 ちょっとは悪いと思ったのか、珍しく言葉を向けてくる半兵衛。龍重は龍重ルールを適用し、彼へと再戦を挑む。
 ここで借りを返せねば、天下無双の頂きは遠ざかっていってしまうだろう。
「それに、賊を捉えるならまず王を捉えよ、ってなのが兵法だしな」
 とはいってみたが、龍重自身、本音を言えばそんな理屈はどうでも良かった。
 彼にとって戦場とは自己表現の場。己を高める為にあるもの。
(大義に寄り添って剣を振るうってんなら、見せてもらおうか)
「……」
 二人は刀を構え、やがて龍重と半兵衛が切り結ぶ。
 それを開戦の合図として、二つの勢力はぶつかり合った。

 真夏は推定七尾の狐をアイアイと共に抑えに走った。
「くっそ。なんでこんな格の高い子が来世人に……この獣さらいめ!」
「おらとアイアイは絆で結ばれてっっだ! 家族だぁ!」
 七尾の放つ阻害派に対抗し、解呪ノ誓を成就する真夏。
 そしてアイアイの激しき嵐――両爪での鋭い攻撃が七尾を襲った。
「おのれ、氣が上手く練れぬ……!」
 七尾の援護を無効化され、氣を乱された浪人たちは劣勢に陥っていた。
 それぞれは精鋭の剣客だったのだろうが、アドバンテージを的確に潰されれば、生死をかけた勝負など覚束ない。
「ぬっふっふ。影縫ノ術~☆」
 全員に抵抗されそうだけど、とミアが使った魔法にも幾人かの動きが止まる。
 肉体に重きを置くタイプの剣客たちにとっては、十分に練達しない段階では苦手とする魔法だったようだ。
「ベガ、頼んだぞ!」
 浪人たちは沢庵だけでもと機を窺うも、紗月の戦友たちはそれを許さない。
 2体のぬりかべに対し、浪人たちの刃は石ノ体に歯が立たず、虎や豹も紗月の指示の元、大きな隙を見せてくれない。
 それを抜けたとしても、右京の形代が保険となるし、そもそも沢庵自身も相応に強いという話さえあった。
 来世人はまさに鉄壁、安定感のある陣容で浪人たちを迎え撃ったのである。

「……」
(重い剣だ。しかも、あの剣筋……避けられる気が全くしないぜ)
 龍重は周囲の雑音を絞めだし、目の前の男に意識を集中させた。
 それが金井半兵衛の存在意義とでもいうのか。暗殺などという汚れ役を引き受けた狂信者は、剣でもって龍重に意地を見せる。
「……死ね」
(そうだな。負けられねえよな)
 龍重訳か、あるいは戦いの中でのみ通じ合う何かが、確かにそこにあった。
「だが! それでも! 勝つのは俺だ!」
「負けぬ……」
 自らを奮い立たせる龍重。個の戦いだったなら再び這い蹲っていたかもしれない、今はまだ格上の剣客。
 けれど、右京の地蔵菩薩慈悲真言が龍重の傷を癒し。それ以上に、背後に彼らが控えてくれている安心感があった。
「まぁ、やりたいならやってみ。ケツは拭いちゃるよ」
「ああ……!」
 腹の据わった右京ならば万が一龍重が敗れたとしても、その覚悟と機転であとは何とかしてくれるはず。
 機会に恵まれ、仲間に譲ってもらったような一騎打ち。集中し、全身全霊で応じる龍重。
 命と命、信念と信念のぶつかり合いか。忘我となるには惜しく――決着はそうなるより早くについた。
「あんたの覚悟、見せてもらったぜ」
 武蔵了戒を振るう龍重が、ついには金井半兵衛を切り伏せたのだ。
「ば、馬鹿な……あのような小僧ごときに!」
 金井が落ち、浪人たちもやがて一人二人と無力化されていった。
 負傷しても右京や涼の癒しがある来世人と比して、浪人たちは短時間で押し切れなければ傷を得た分だけ不利になっていったのだ。

「不覚、このような魔窟にて来世人なぞに屈するとは……」
「くっ、殺せ……!」
「やめろ、誰得だよ」
 捕えられた浪人たちは反抗的な態度を崩さず、その上、役目は果たしたと自勢力の勝利を信じて疑わない。
「今頃は、我らの仲間が貴様らの拠点を襲っているだろう!」
「どうせ、貴様らは滅びるしかないのだ!」
 彼らの役割はここにこれだけの来世人を釘付けにできた時点で、ほぼ達成されていたのだというが。
「果たしてそうかな? そっちの勝負も、最後には俺が、俺たちが勝つ!」
「……」
 ひとつの信念の下、身も心もささげるという点では、ある意味で金井半兵衛にさえ負けてない龍重だった。

「それって負け惜しみ?」
「悔しい? ねえ今どんな気持ち?」
「これこれ、あまり敗者に鞭打つようなことをすでない……」
 そんな浪人たちをおちょくろうとするのは三人の沢庵。
「ん? 増えたべな。っていうか、狐さんだっぺよな?」
「「「さあ、本物は誰だ!?」」」
 そんな沢庵たちを、真夏がじと目で睨むと、ポンと耳を出して頭を下げる七尾ノ狐。
「すまねぇ! 実は無理やり従わされてただけなんだ!」
「本当け?」
 真夏は戦闘中、一応七尾への解呪を試みたのだが……成功し正気に返ったのか? どうもそんな風にも見えないが。
「あー。う~ん……あの子のこともあるしなぁ。やっぱ姐さんは裏切れねえかなぁ」
「玉響って九尾の狐?」
「あ、知ってたか。姐さんただの九尾じゃないから、怒らせないほうが良いと思うぜ?」
 だから殺さないでねお願いしますなんでもしますから! そんな七尾の態度に、怒る気も失せた来世人は幾ばくかの情報を聞きだした後で、結局逃がしてあげることにした。右京や紗月のように。動物系に優しい来世人が多かったのも幸運だったのだろう。
「もう悪さすんじゃねっぞー」
「ただし何でもするとはいってない」
 ぴゅーと逃げていく七尾を、命は鎖鎌を振り回しぷんすこ怒りながら見送っていたという。

「あー、終ったな。意外とあっさりだな」
 とあくびする加賀爪直澄は、手伝ってくれなかったが裏切りもせず。
「結局何がしたかったんだ?」
 涼が話を聞くと、来世人の強さの秘訣を盗みたかっただけの模様。
 でも、色んな意味で色々ありすぎてさっぱり分からなかったという。
「何で俺、こいつらに負けたんだっけ……」
 と、遠くを見る目が印象的だった。
「かれがいたみかなしびを人しらず。……貴方たちも互いのことを何も知らないだけなのよ、きっとね」
 沢庵がいい事いった風に締める。
 が、そこは別に理解できなくても良いカナーと思わずにいられない直澄だった。

◆暗殺者
 一方、混迷する城下にて暗殺者を捜索する来世人たちは、推測と僅かな手がかりだけをもとに暗殺者の足取りを探っていた。
「ただでさえ隠密に優れ、その上通常・特殊問わずにその存在を感覚では捉えられない敵、ですか……」
「そうである。海豚ノ術の広範囲空間把握でも捉えきらなんだ」
 苦々しく語るト・アミによれば、暗殺者の正体が予想通りならそもそも発見すら難しいだろうという。
 赤井 狐弥は優れた聴覚や隠密技術を駆使し敵を探す予定だったが、相性的に利点が殺される相手。再考せざるを得ないだろう。
 だがここは博多とは違う。江戸は私たちのホームグラウンドだ、好きにはさせない――意地にも似た思いで攻略法を模索する。
「存在そのものが消えるわけではないのか。なら、広いスペースを与えずに追い込みたいが……」
 狐弥は敵の消失を状態変化によるものだけでなく自身の状態異常によって起こる可能性を考慮し、自らに仙丹ノ術を施していた。
「ああ、奴の隠密術はいまだ未知だ……それに用心深いけん」
 同じ推測に辿り着いた山之本 惨斎も神代の苦団子を持って備えるが、どちらも有効である保証もなく気休めに近かった。
(ま、まじない程度たい……)
「私も、式神や私自身の隠密能力で対抗しようと考えてましたが……難しそうですね」
 現状の成果と意見を交換しながら、富島 沙織もどう動くべきかを思案していた。
「大奥。それも春日局を狙うなんて、相手は相当なプロかもしくは化身。どっちにしろ生きて帰る気は無いのでしょうね」
 ならば歓迎してあげましょう、とクリスタル・カイザーは冷たく笑ったが、惨斎の意見はそれと異なるもの。
「いや、あれはクズやけん。自分が死ぬような仕事はしたがらん」
 おそらく、来世人が気付いて守りに入ってると気取られれば、即座に逃げを打つ可能性すらあると言う。
 予知により来世人が動いた時点で、未来はどう変動するかは分からないのだ。
「……それはまた。陽動の可能性はあるのかしら?」
 クリスタルの斑鳩占術により、必要あらば各地の仲間とも連携や情報交換は可能だが。
 今回の敵と思われる新免無頼は娘の一人を連れ歩いていたようで、そちらを捨て駒として何か仕掛けてくる可能性は大いにあった。
「協力しちゃいそうな、幕府に恨みを持ってるって人も、探せばそれなりにいそうなのよね……」
 クリスタル自身も、調査の段階で江戸城北の丸周辺で何らかの動きがありそうな情報を得ていた。
 駿河大納言。かつて家光に自刃を命じられた徳川忠長の古屋敷が存在するその一角が、何やらきな臭い。
「それなんですが、ちょっと気になる話がありまして……」
 沙織は、香から受けた連絡について話した。英霊を呼び出しそこから助言を貰ったという香の伝えた懸念によれば。
「塩硝蔵……火薬庫か!?」
 思わず、狐弥が呻いた。
「仮に、そこが狙われればどうなるのであるか」
「……控えめに言っても、地獄絵図にしかならない」
 火薬の恐ろしさを知る狐弥はトの問いに険しい顔で答える。
 蓄えられたそれらが暴発した場合、江戸城だけでなく城下町にまで甚大な被害を及ぼすだろう。
「狂気の沙汰。だが、奴らならやりかねんな……」
 惨斎が物騒な顔で呟く。その場合、無関係の人間も山のように死に、実行犯も死ぬだろうが……アレはそんな瑣末事、一顧だにしないだろう。
(新免無頼は共感しない。群衆も実子も等しく駒として遣い、生存の為に己以外は使い捨てる。そんな奴がこの状況をどう使うか……共感しろ)
 あんな男の内心など考えるのも業腹だが、だからこそ奴をこれ以上のさばらせる気は惨斎にはさらさらなかった。
「……そっちは目眩ませ、陽動たい」
 ならば、逆にいえば無頼の行動はある程度は推測が可能。
「成功してもしなくても良い。目を引く事件を起こさせて自分はその隙に……ですか。とは言え、放っても置けないでしょうね」
「……仕方ない。こちらで警戒しておくわ」
 クリスタルが告げると、沙織も手を打っておくことを請け負った。
 幕府自身にも警備を固めさせ、犯罪を未然に防ぐつもりのようだ。
「来世人は幕府に対して役に立つってアピールが不足していたように思うんですよね」
 高い隠密能力に社交術を兼ね備えた彼女なら、悪いようにはならないだろう。そして――

「狗め、しくじったか」
 江戸城の様子を見ていた無頼は、小さな炸裂音こそ聞こえた後、捕り方たちの怒声が遠くに聞こえだすと――。
 城にあっさりと背を向け、野次馬どもにまぎれるように歩き出した。化身や狗が失敗したとあらば、相手は来世人。
(逃げるに限る。狐めに頼まれた役目は十分果たしただろう)
 自分ではなく狗が、だが。
 そうして、とっとと江戸を後にしようとしていた無頼の背に――激痛が走った。
 でくの坊のように無害な大和人に偽装し、大虚ノ術によって気配を殺していた惨斎が、赤鬼武者の大太刀を使い転移と同時に斬りつけたのだ。
「……貴……様っ……!」
 咄嗟に二振りの十手に手を伸ばそうとした無頼をアサルトライフルの銃弾が貫く。屋根の上より狙撃を成功させたのはトだ。
 無頼を葬るべく来世人の――惨斎の出した結論は『見敵即断』。
 決して警戒をさせずに待ち構え、見つけた時には即座に殺す。言ってみればただそれだけのことだった。
「貴様(きさん)は、此処で死ね!」
「ぐ、ぎ! がぁあっ」
 背を向け駆け出そうとする無頼にすかさず38口径の銃撃をくわえる惨斎。白昼堂々の凶行に周囲で悲鳴が上がる。
 そして、無頼の姿が掻き消えた――。
「己から離れた痕跡は消せないのか……これなら、追える」
 逃亡を許したケースでも足跡は残っていたと聞く。狐弥は点々と地に落ちる血痕を辿り走った。
 恐ろしく速いペースでともすれば見失いかねないが、狐弥の脚力はそれを上回った。
「……っ。ぐ、ぅっ」
 全速で駆けるとやがて何かにぶつかる感触がし、頭を十手でしたたかに殴られたが。
「逃がさん、のである!」
 瞬間、姿を見せた無頼へトが銃口を向け。
 その姿が再び掻き消えるにも構わず、引き金を引いた。肉を穿つ音がして、弾けた血肉が地を汚す。
「人の痛みがわからんとな。人がどうすりゃ痛むのかもわからんけん」
「何、言ってやがる」
 痛がらせ方なんざ、良く知ってるぜ、と。
 体のあちこちに穴を空けられ、虫の息となった無頼に惨斎が刀を振り上げる。
「情を捨てた貴様(きさん)の負けたい」
「ほざけ。馬鹿が」
 ざくり。刀が刺さり、無頼は暗黒へと落ちていく――ただし、貫通したのは、耳元の地面。それがいかに、化身以上に邪悪な存在だとしても、人の命を、来世人が裁くわけにはいかぬのだ。
 だが、この国の剣客の他の誰もがなし得なかったろう暗殺をなしえた男の命運は、たしかにここで断たれた。

◆大奥
 時は遡り。
 城下での騒ぎが伝えられた際のこと。
「ついに浪人の大攻勢が始まってしまいましたか」
 梅花の言葉通り、白昼堂々と浪人たちがギルド攻撃を始めたという。
「気になるならば戻られてはどうですか。私のことならば気にされずとも構いませぬ」
 それを聞いた春日局は来世人たちにギルドへ戻るように勧めたが。
 このような事態も承知の上でここに来た、と。来世人の心は変わらなかった。
 守りたいのだと。
 春日局は来世人たちのその献身的な様子に、何かを深く考え始めているようだった。
 そして、梅花の疑いはいよいよ玉響へと移る。
「妙なのですよ。玉響に動きがない――なさすぎる」
 もし玉響と浪人側が連動しているのなら動くまたとない機会のはず。なのに全く動きが無いのはなぜか?
(実はもう動いてる、とか……?)
 美乃からの連絡では、玉響は確かに部屋に居て、ときおり咳の音も聞こえて来るそうだ。
 コンコンコン、と。
 もしかすると、化かされているのは。
「玉響さんが病床に伏せるようになった時期は、そういえばいつ頃からでした?」
 そう確認したところ、御前試合が行われる少し前という。
 ――その頃からだ。多少なりとも家光が周囲の声を聞き、沢庵の諫言を聞き入れ来世人を見る機会を持ったのは。
 そして、歩み寄りの姿勢を見せていた由井正雪が打って変わって強行な態度に変わったのは?
 二つの事実は、まるで天秤の両端のように揺らいでいるようにも思えた。
「これは確かめる必要がありそうですね」
「分かりました。どうぞこの婆にお力をお貸しくだされ」
 梅花の春日局への進言は聞き入れられ、また城下で暗殺者が討ち取られたとの報せが届くと、一行は玉響の元へと向かった。

「何だか猛烈な悪寒がするけど。弁慶あるしね。なんとか」
 越中 団次郎は正体不明の嫌な予感がしながらも、護衛として付き従い。
 来世人たちは春日局の手引きの下、玉響との対面を果たした。
「来世人、ですか? これは、一体何事……こほこほっ」
 突然の来訪にややおびえた様子を見せる玉響。
(果たして優しいという噂が本当かどうか……)
 蘭子は彼女の前で、豆狸を見せて反応を探ろうとした。人に化けていた豆狸に変化を解くよう促すと、豆狸は怯え具合が悪そうにしながらも従う。
「まぁ、狸……可哀想に、怖がってるようね。大丈夫よ、何もしないから」
 安心させるようにかける声音は優しく、凶悪な狐の妖怪が変化しているようには思えない。
 乱暴を働くわけにもいかず、さてどうしたものかと顔を見合わせる来世人。
 その時だ。
「玉響……玉響、ではないな。お前は誰だ」
「……はい?」
 春日局は、玉響の目を覗き込み、やがて確信したかのように言った。
「やはり、違……」
 瞬間、その喉首めがけ、鋭い牙が襲い掛かる。
 悲鳴が、幾つも重なった。

「厄介な婆め。だからさっさと殺しておきたかったが……あの男はしくじったか」
「玉響では無い。お前は何者です。玉響をどこへやった」
 春日局が声を震わせながら問う。
 彼女の前では、身代わりとなった純子がのど笛を食いちぎられ血を流していた。
 来世人である順子でなければ、あきほがすぐさま癒しの術を使わなければ、それだけで致命の傷となっていただろう。
「私だって玉響さ。もうろくした婆にはそれが分からないだけ」
 鋭い牙を覗かせ、玉響の表情が醜悪に歪む。
「壺を使います! 春日局は避難を――」
「間に合わません、それに奴の狙いは春日局ですわ!」
「私のことなど構いませぬ! どうか、この化け物を討ち果たしてくだされ!」
 各人の思惑も混迷の最中、壺中天道術の異空間が一帯を引きずり込みセピア色に変えた。

「くっ。近接じゃ駄目だ。魔法成就の時間を稼ぎな!」
 団次郎の攻撃がかすりもしないのを見て、春子が声を張り上げ。そう言いながらも呪禁道術を試みる。
「言われなくても。素戔ブッパするんだよねぇ」
「合わせましょう」
 異空間で遠慮無く放たれる二つの広範囲攻撃魔法が玉響を捉える。
 吹雪が晴れた時、玉響の姿は恐ろしいまでに巨大な狐と化しており、その尾の数は九つ――。
 その猛威が来世人らを蹂躙せんと襲い掛かった。
「皆、頑張るのだよ」
 死んでも復活させるから大丈夫とは言えないけど、と胸中で呟きあきほが傷ついた仲間を癒す。
「回復はこっちにも任せてええで!」
 海里もまた、攻撃に回る術者たちを援護しながらそう言った。
「武器は……これでは、あっても無くても変わりませんでしたわね!」
 蘭子が月読命ノ舞にて放つ矢は、天女の加護を得て着実にダメージを与えているようだ。
 回避に優れる敵に対して、魔法の攻撃手段を持つ戦力が揃っていたのはある意味幸運だったろう。
 癒し手も揃っており、そう簡単には崩されない布陣――それでも尚、戦闘は苛烈を極めた。
「ごめ……なさ……」
「~っ!! なぜ、そなたが謝るのです!」
 春日局を庇い続けた純子はその命を失い。春日局もまた一度は敵の牙にかかりかけたのだ。
 砕けた身代わり石の欠片があちこちに散らばっていた。
「効いた、五回目!」
「おおおおおおっ!!」
 春子の合図に、エアリオラの大剣を構えた団次郎が渾身の力で振り下ろす。
 その団次郎ごと包むように吹雪が吹き荒れ、光の矢が飛び交って。
「倒せましたの……? いえ、これは」
「どうやら、向こうは本当に此方をおちょくってくれているようですねぇ」
 どうにか討伐を果たしたと思われた九尾の骸。
 それはやがて、ただ一本の白い尾へと変じたのだった。

◆家光
「何事だ! 玉響……玉響は無事であるのか!」
 どかどか、と制止する声も置き去りに家光が姿を見せた。
 そして、その部屋の光景――惨状を目にし、驚愕に目を見開いた。
「お福(春日局)、その姿は。無事なのか、いや、一体、何があったのだ!」
 誰も彼もが、誰かの流した血で汚れていた。血染めの着物を纏う乳母の姿に、家光はさっと表情を青褪めさせた。
 ちょうどその時、死亡した純子にあきほが吉祥天慈悲真言を施し、息を吹き返した純子は激しく咳き込み溜まっていた血を吐いた。
「誰ぞ、医者を!」
 春日局は家光には応じず、まず純子の容態が落ち着くようにと手を尽くし。
「家光さま。この方たちは、私を、そして我が将軍家を守ってくださいました。将軍家への忠義とはまた違いましょう。けれど、約束を果たし皆を守ろうとその身を差し出し、やれるだけのことをやって下さったのですよ……」
 春日局の目には、どこか責めるような、哀れむような光が浮かんでいた。
 ――その時、一体貴方は何をやっていたのですか、と。
「そう、であったか。玉響は……いや、聞かずとも」
 存在感を放つ白い狐の尻尾に目をやり、家光も大方を察したのだろう。
 いや、心のどこかでは、このようなこともあるとすでに理解していたのかもしれない。
 ただ、それを認めたくなかったのだ。心地良い、幻の安息に身を委ねて……そして。
「これが、俺の無為の招いた結果か。スマヌ。スマヌ……」
 喜怒色にあらわさずを旨とする将軍は、その手で顔を覆い、肩を震わせながら去っていった。
 それから間もなく、幕府主導による事態収拾のための活動が開始されたのだった。

◆終戦
 膠着し睨み合うギルド周辺の戦場には、続々と援軍が集まり始めていた。皆、ギルドを守ろうとする者たちだ。
 その多くは江戸に住まう大和人であり、武士、浪人、町人などその立場も様々だった。
 見れば、住民の救出に向かった者たちも協力者を連れて帰って来ているようだった。
「なぜだ。なぜ彼らは来世人ギルドなどを庇い立てしようというのか?」
「あんただって、分かってるんじゃないのか?」
 理解できない事態に苦悩する正雪。
 そこへ、鈴城 透哉 が声をかけた。
「武士が化身相手にできりゃ俺らはきっといらねぇ……それはずっと前思った事で今でも敵わねぇって思う事もある」
「……そうなのか? 武士を排除し独占しようとしていたのでは?」
「そんなことはねえよ。戦いがいやって奴らの方が多いかもしれない。けど俺らはここに居て。要るだけの力があるって示してきたつもりだ」
 その結果が、必要とされているからこそ、隣に立とうとしてくれる人たちが居るのだと。
 透哉にはそんな風に思えた。
「なぁ、存在意義を奪われたら怒るのは当然かもしれねぇ。けど武士の誇りって来世人を消さなきゃ守れねぇもんなのか? ギルド明け渡せば全部うまくいくのかよ。立場だけ手に入れても、今まで傷付けた人らがあんたらを受け入れると思うのか?」
 幕府も武士も来世人も町の人も、みんなが傷ついて疑って……このままじゃ国が割れちまう。
 そう語る透哉に、正雪は静かに耳を傾けていた。そこへ、菫花もおずおずと声を届ける。
「あの……私たちはこの時代に呼ばれて、それと同時に普通じゃない力を与えられました。私はそれは化身から人々を護る為の力って思ってて。でも、私たちは外から来たから頼るものがないとうまく力を平和に役立てるのが難しくなります」
「君は、この時代の者たちを頼りにしていると?」
「はい。だから、今少し見守っていてほしいんです……! 私たちの力は自分のためだけじゃなく、みんなの為の力だから。きっといっしょに笑えるようになるって信じてください!」
 大将である正雪が話し合いを始めてから、戦場は水を打ったように静まり返っていた。
 勝てると思う戦だから乗っかっただけの者も多く、彼らは数の利がほとんどなくなった時点で戦意を喪失していた。
 来世人の言葉が、溶けるようにして響いていく。
「俺たちはあんたらの場所取りたい訳じゃねぇんだ。足りない所補って切磋琢磨して一緒に守っていきたいんだ。だから」
 透哉は、正雪だけでない。浪人たちに向けても声を張り上げ叫んだ。思いの丈をぶつけるかのように。
 そこに篭められていたのは、主義主張のぶつかりあいなどではなく――敵である者たちの身すら案じる、いたわりと友愛の心だった。
「あんたらもギルドに入れよ! 悪い所は中から見極めて変えてきゃいい。そうすりゃみんなの居場所も守れるだろ!」
「そうか。内側から変える……か」
 正雪はしばし瞑目し、やがて門弟たちへと振り向くと、停戦を申し入れる旨を告げた。
 仕出かした事を思えば、彼自身にもはやその機会は与えられまいが、せめて集った者たちへは報いねば。
「ええと、雑兵が生意気でごめんね。でも、一応……ね?」
「来訪のご予約は承っておりますので、勿論、歓迎を致しますよ」
 交渉の使者としてギルドへおもむく正雪に、えあ子は薬師如来真言を唱えた。
 カミラもいそいそと紅茶の用意を始め、こちらもついでとばかりに大日如来真言を試みる。
「かたじけない。はは、何とも……確かに、頭が少しはっきりしたような気がするよ」
 憑きものが落ちたかのように、穏やかに笑みを返す正雪。
 かたくなにギルドの悪を標榜する情報に、なぜ疑問を持たなかったのか、なぜ調べようともしなかったのか。
 ……今となっては正雪自身にも不思議で仕方がなかった。
「な、何だお主は。交渉はまだ終っておらんぞ」
「戦いは終った」
 一方、颯樹は進み出ると負傷し浪人たちの治療に当たり始めた。そう、戦いは終ったのだ。
 怒りも、痛みもすぐに忘れることなどできないかもしれないが。いずれは……。

 その様子を苦々しい表情で見届け、踵を返す女が一人――。

「ここまでお膳立てしてあげてこの体たらく。人間って、本当に使えないのね。それに……意味が分からないわ」
 しらない。うばいあうはずなのに。ころしあうはずなのに。わたしはこんなこと、しらない……。

 誰拾うことも無い呟きと共に、掻き消えた。

◆逃亡
 陽動として動いていた新免狗は突如の爆発で手傷を負い、捕り方や来世人の追っ手から逃げていた。
(なんで。ばれてた? もう、あいつら全っ然役に立たない!)
 手引きしてくれるはずの化身どもは退治されたか姿が見えず、厳重な警備に手をこまねいていたところで攻撃を受けたのだ。
 張り込む沙織がけしかけた爆弾鼠の爆発に巻き込まれ、裂傷と火傷を負っていて。
 心臓が早鐘をうつ。呼吸が苦しい。地元とも勝手は違い、こうしていても時と共に不利になっていくばかりで、死の予感がひたひたと迫る。
「見つけたわよ。観念なさい」
「お断り。……独楽姉が待ってる」
 ボロボロになりながら抵抗の意思を捨てない少女を、追い詰めたクリスタルは好ましく思う――しかし、生かしておいても極刑は免れ得まい。
「もう、観念しなさい」
「~っ!!」
 振り下ろさんとした刃は――しかし突如として現れた何者かに阻まれた。
「貴様……!?」
 そこにいたのは……狐のような耳に八尾を隠そうともせず生やした美女、リンリン。
「何? 今更助けてくれても。狗、狐不信になりそうなんだけど」
「わ・た・し、良い化身ですわ? ……死にたいならそれでも良いけど、捨てられたなら拾ってやろう」
 来るか、来ないか。何の気まぐれか問いかけてくる化身に、狗の答えは決まっていた。

◆凱歌
 こうして、正雪とその計画に乗った浪人たちは縛につくこととなった。
 事が事だけに厳しい沙汰は免れないが、家光自身も負い目があるため、来世人の意見が考慮される可能性も高いだろう。
 一方、今回の騒動でいち早く救援に駆けつけた夢想権之助はかなり名を上げ、彼を題材にした演劇なども作られているようだ。
「九尾には逃げられましたわね……尻尾一本は仕留められたましけれど、喜んでいいのやら」
 蘭子がかの狐の尻尾から作った根付をひらひらさせながら、溜息をこぼす。
 九尾ノ狐――リンリンでもあり玉響でもあった女は力の片鱗を見せつけ去っていったが、その真意は分からずじまい。
「初めから来世人ギルドを標的にしてたみたいだけどね? 誰か怨まれることでもやったのかなぁ。変態とか変態とか」
 芽衣子があははと苦笑する。心当たりのありそうな連中が居ないでもないのが、来世人ギルドであるからして……。
 逃がした九尾ノ狐の今後の動向次第では何が起きるか分からず、頭痛の種となるかもしれない。
「九尾の狐にも、子どもが生まれたりしたのかしら?」
『今思えば、私はどこか玉響に共感を覚えていたのかもしれません。彼女の所作の裏に潜む感情に……』
 純子が呟く。あの後、伝え聞いた春日の局の感想では、玉響はあるいはすでに母のようでもあったと。そう語っていたのだ。
 もし九尾の大妖に跡継が生まれたとすれば、それもまた来世人の脅威となるだろうか……。

「さすが私の娘ね!」
「さすがでござる……」
「やりました」
 身内からおだてられ、コロンビアのポーズでドヤ顔するのは桜花である。
 桜花が九尾に一撃を加えた際、パク……巧妙に奪い取った巻物は、浪人に確認したところ、リンリンが剣客たちに力を与える際に使っていたものと判明していた。
 内容は漢文で記されており難解だが、現在は沢庵和尚がその内容を調べている。ああ見えて剣の道にも通じた知識人なのである。
 そして、この漢文書が、来世人ギルドに『新たな戦力』を招きいれるきっかけとなるのだが、それはもう少し、あとの話。

 関わった浪人たちにも化身の策謀に巻き込まれていたことは周知され、悪戯に来世人を憎む者はほとんど居なくなった。
 ただ、遺恨が残らなかったわけではない。
 中には何故か「団次郎って奴だけは許せない」という者も居るようだ。
 浪人らの話によると、戦の最中、団次郎と名乗る者が正雪を始め他人の姿と名前を騙り、散々浪人を虚仮にしたらしい。
「とんでもない悪党だな」
「……鰤の字、ちょっとこっちで話を聞かせてくれないかな」

 かくして数多の傷跡を残し、幾つかを得て江戸の狂騒はようやく落ち着いた。

◆終わりと始まり
「このまま終わらせはしないわよ‥‥だって、だって‥‥」
 リンリンと呼ばれた女は、今は大和人そのものの姿で、男児を見下ろしている。男児は体をぎゅうと丸めて、すやすやと寝息を立てていた。
 寝息は穏やかだが、まるで繭に閉じこもっているようだ――狐の化身は、そう思いながら、男児の髪をそっと撫でると。
「だって‥‥この子のために、この子の幸せのために‥‥そのためなら、私の命なんて‥‥そして、何者の命だって‥‥」

 正雪は極刑にも流刑にもならず、某所に無期限で幽閉されることとなった。
 浪人たちも、凶悪犯罪に手を染めていなかった者は、おおむね釈放された。これは来世人の意見が大きい。これを機に、家光が検討していた『武断政治の転換』は早まることとなる。
 家光は、今回活躍した来世人へ印籠を贈った。将軍なりの、お詫びと反省の意味だろう、と沢庵は語った。
 こうして、幕府全体を巻き込んだ騒動はひとまず幕を下ろした。来世人の株は上がり、将軍との関係も密となり、そして、大和人の協力体制も強固になった――いろんな意味で。
 だが、それを上回る脅威が、すぐにでもやってくるかもしれない。リンリンも、鬼の大将も、どこかに潜んでいるのだから。
 そして、江戸に夏が来た。太陽は、江戸城にもギルドにも町人にも浪人にも、等しく、激しく、優しく照りつけるのだった。



 13
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参加者

b.空中戦で邪魔な奴を殴りまくるわよ!
沖田芽衣子(ka00120)
Lv192 ♀ 22歳 武忍 来世 大衆
サポート
a.防衛は大事よねえ。爆弾鼠とか使うわよ。
春待朔(ka00135)
Lv187 ♂ 20歳 傀僧 来世 異彩
a.んじゃ、こっちで。
平口工助(ka00157)
Lv299 ♂ 22歳 武僧 来世 婆娑羅
サポート
g.純粋に知覚と追跡能力で捕捉し、移動速度で対応します。(対欺瞞付き
赤井狐弥(ka00215)
Lv126 ♂ 20歳 忍僧 来世 影
d.――ゴメン、やっぱあいつ(正雪)、ぶん殴ってくる。
剣崎龍兵(ka00239)
Lv148 ♂ 17歳 陰忍 来世 傾奇
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e.俺は負けてねえ!
吉弘龍重(ka00291)
Lv148 ♂ 17歳 武忍 来世 大衆
g.ひとまず選択肢だけでも、な。さあて、どうしたもんかね……。
山之本惨斎(ka00380)
Lv118 ♂ 29歳 武忍 来世 影
d.言いたい事言って、叩きのめしてでも説得してやるぜ!
鈴城透哉(ka00401)
Lv174 ♂ 15歳 武僧 来世 傾奇
f.大奥と幕府を守ると葛野さまと約束致しましたゆえ
高杉蘭子(ka00512)
Lv259 ♀ 20歳 武神 来世 傾奇
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f.いざとなれば壺を展開しますね。気になることもありますし。
藤枝梅花(ka00566)
Lv176 ♀ 22歳 神陰 来世 麗人
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b.大虚で敵をやり過ごして全体の流れ見てボスの位置探れないかやってみます
藤枝桜花(ka00569)
Lv220 ♀ 23歳 武忍 来世 大衆
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b.とりあえずはこちらで(ぷひー)
ミスト・カイザー(ka00645)
Lv378 ♂ 24歳 武忍 来世 大衆
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b.屋根伝いに来る化身を同じく屋根の上にて迎え撃ちます。ここは通しません。
遠野絃瑞(ka00651)
Lv144 ♂ 28歳 武忍 来世 質素
サポート
e.ハンドマイクの大音量で奇襲するから、皆は注意してねw
ミア・カイザー(ka00679)
Lv165 ♀ 24歳 陰忍 来世 異彩
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b.浪人と妖怪を見分けられるといいけど
升田千絵代(ka00869)
Lv165 ♀ 25歳 武陰 来世 異彩
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f.弁慶あるしね。なんとか
越中団次郎(ka01138)
Lv280 ♂ 32歳 武僧 来世 婆娑羅
c.よろしくお願いします。
相葉楡(ka01176)
Lv216 ♂ 27歳 武傀 来世 麗人
サポート
f.事が起こっても大丈夫なように備えとくのだよ
藤あきほ(ka01228)
Lv231 ♀ 20歳 陰僧 来世 異彩
d.由井さんに薬師如来掛けさせてもらえないか頼んでみるよ。無理そうだけど
霧ヶ峰えあ子(ka01260)
Lv251 ♀ 16歳 神僧 来世 麗人
b.…………。
ヤズゥン・ディガ(ka01287)
Lv271 ♂ 22歳 陰忍 来世 質素
サポート
d.憑依の疑いもありますので、大日如来真言の用意をしておきます。
カミラ・ナンゴウ(ka01313)
Lv163 ♀ 23歳 忍僧 来世 大衆
c.清萌たちに善くしてくださる方々に出だしさせませぬ!
醒刃清萌(ka01317)
Lv203 ♀ 15歳 武神 来世 異彩
e.よろしくお願いします。
毒島右京(ka01318)
Lv212 ♂ 35歳 陰僧 来世 大衆
g.不審な人物を見つけ出し、注意を向けるためにも爆弾ネズミを爆発させます
富島沙織(ka01381)
Lv175 ♀ 25歳 陰傀 来世 異彩
a.ま、守りは必要だよな。 夢想先生、来てくんないかね。
村正一刀(ka01389)
Lv127 ♂ 23歳 武神 来世 大衆
サポート
a.ギルドを守りきるために支援魔法を使います。
近藤彬(ka01498)
Lv251 ♀ 19歳 武神 来世 婆娑羅
f.最悪を考慮して此方に。結果が最悪もあるからやってられない事変だねえ
池袋春子(ka01511)
Lv231 ♀ 34歳 神陰 来世 麗人
c.元自衛官としては、人々を守りたいな。
渋川香(ka01617)
Lv243 ♀ 25歳 忍流 来世 質素
サポート
f.斑鳩でみんなと、可能なら春日局を繋げられたらって思うわ。
溢田純子(ka01629)
Lv132 ♀ 25歳 僧流 来世 異彩
g.斑鳩占術で通信網を展開しつつ、怪しい奴を潰していきましょうか。
クリスタル・カイザー(ka01634)
Lv169 ♀ 29歳 忍流 来世 大衆
g.よろしくお願いするのである。
ト・アミ(ka01685)
Lv248 ♂ 50歳 忍流 来世 大衆
d.なんとか話し合いで解決できないものでしょうか……
藤枝菫花(ka01701)
Lv203 ♀ 17歳 神流 来世 麗人
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a.みんなー、今日はマリンのコンサートに来てくれてありがとー☆
マリン・カイザー(ka01727)
Lv212 ♀ 21歳 陰流 来世 麗人
e.よろしくお願いします。
暦紗月(ka01738)
Lv228 ♀ 29歳 流誓 来世 麗人
c.おいおい正気かよお前ら!マゴちゃん隠れてろよ
筒井蔵之介(ka01755)
Lv148 ♂ 17歳 武誓 来世 異彩
e.けんども暗殺はよくねっぺ
牧葉真夏(ka01759)
Lv268 ♀ 25歳 神誓 来世 異彩
b.人って怖いね……
伊地知桃(ka01771)
Lv118 ♀ 20歳 流誓 来世 異彩
a.守らなくちゃ!ギルドも浪人も
倉本明日奈(ka01773)
Lv88 ♀ 24歳 武神 来世 異彩