【沙羅党】歪の成就

担当 Toro
出発2017/11/07
タイプ ショート S(Lv350以下) 冒険
結果 成功
MVP 水上澄香(ka00399)
準MVP 藤枝 桜花(ka00569)
鋼燐坊 禅戒(ka00192)





オープニング

◆利害の一致
 江戸からそう遠くない、代官屋敷。奥座敷に鎮座する代官は、婆娑羅野盗の男と役人化け狐を眺めると、フンと鼻を鳴らした。
「して、貴様はおめおめと逃げ帰ったわけか、塔助(とうすけ)。この者らに礼を延べたのだろうな?」
「へェ、しかと‥‥しかし相手は来世人、あのままでは俺はもとよりこいつら全員が殺されていましたぜ、『お大尽様』」
 婆娑羅野盗、塔助は代官に平伏しつつ言い訳を並べ立てる。彼の言葉は多くが真実であり道理だ。彼の実力では来世人を抑えきれなかったし、役人化け狐の犠牲なくば足止めもままならなかっただろう。
 別働隊がそれなりの働きを見せたものの、先読みをされたのではどうしようもない。さきの夜襲を担った虎の子の忍者達はいずれも、捕らえられたというではないか。

登場キャラ

リプレイ

◆無法ノ果
 鋼燐坊 禅戒は、屋敷内の大広間で淡々と読経を続けていた。すぐそばには、不安げな表情を浮かべる商人の大旦那の姿がある。家人や小間使いのたぐいはすでに別邸や身内のもとに避難させており、一族郎党皆殺しの憂き目に遭うことはまずあるまい。
 だが、危険を冒してでも大旦那が残ったのはやはり、自らが築き上げたものを他人に任せきりにすることはできないという矜持ゆえだろうか。立派なものだが‥‥危険でもある。
「私達に邪魔されると分かってて挑むなんて、なんて往生際の悪い連中なんだ! 無駄にポジティブだな!」
 広間で警戒を続ける森住 ブナは、声のボリュームを落とすこともせず、憤懣やるかたなしという様子で愚痴をこぼす。「無駄にポジティブ」というのが適切かは別として、諦めの悪い手合いである、というのは渡会 衣依も同感だったらしく、すでに屋敷の外に式神を放ち、自身も警戒にあたっていた。
「なりふり構っていられないほど切羽詰まっているのか、それともあれこれ考える知性と手駒がないのか。どちらにしても、力押しなのはそれはそれで厄介ですが」
 藤枝 桜花は口ではこう言っているものの、その実、力で渡り合うことに不満はないようだ。類推される敵が並ならぬ強敵であることは、果たして彼女にとって喜ぶべきなのか、否か‥‥。
 だが、彼らが深く考えている暇を与えるほど、相手方は慎重に事をすすめる気はなかったらしい。その証拠に、屋敷の外から強烈な炸裂音と、うすくたなびく黒煙あがっているではないか。
「ご主人は下がっておるといい。悪しき化身を滅するのは俺達のさだめゆえに」
 禅戒は大旦那を背にかばうと、周囲に油断なく視線を飛ばす。ブナの形代札があるとはいえ、彼を傷つけさせるわけにはいかぬ‥‥決意にぎらついた視線が広間の天井に向けられた時、彼の死角を狙うように現れた敵、あり。
 次の瞬間、広間に飛び込んできた一筋の赤い軌跡‥‥朱雀の翼を背に携えた溢田 純子の一撃が、襲撃者に叩きつけられた。

「見付けたでござるぞ‥‥!」
 ミスト・カイザーは純子から付与された朱雀の力で上空を飛び回り、婆娑羅野盗を含めた襲撃者が暴れまわる、まさにその現場を視認した。おなじく偵察のために式神を操る水上 澄香と、『試作翼人』の機巧を操るマティルダ・モロアッチも彼の動きから討つべき敵がその場にいる、という事実を認識し、衣依をともなって走り出す。
 夜の街で敵を探すにあたり、相互に連絡を取る手段がなければ敵に気取られぬように『見つけた』ことを伝えあうのは簡単ではない。だが、偵察手段を複数用意すれば、その不利は覆せよう。
「派手な奴がいなかったら単なる化身の殺人だよね‥‥何が楽しくてそんなことするんだか」
 相葉 楡は呆れたようにぼやくが、以前の事件の顛末を聞き及んだ彼であれば、その背後に何者かがいることは熟知していよう。『何が楽しくてそんな外道に与しているのか』、という疑問があるのは当然であるが‥‥。
「いずれにせよ相手は人を害する化身とその小間使いだ! ならば私達来世人の出番なんだな、これが!」
 アイナ・ルーラの堂々たる宣言は、細かい理屈を吹き飛ばすくらいの勢いがあった。来世人としての立場に則り、与えられた任務と託された期待に応えるのが道理。相手方にある理屈やウラで動く策動があれど、そこは変わらない。
 なので、正面から切り伏せるだけだ。ただでさえ強敵とされる壁の化身を前に、考えている暇などない。
彼女の気迫が、襲い来る相手の悪意にまさったのか、否か‥‥とっさに振り上げられた太刀は、吸い込まれるように恐怖ぬりかべの一体を切り裂き、抜ける。
「浅い‥‥!」
「問題ないよ、一撃が弱いなら数に頼ればいい」
 思いのほか硬い感触にほぞを噛むアイナの脇から、楡が一歩踏み込み、金砕棒を腰だめに構える。月明かりがわずかにあるばかりの路地で、ぬりかべの影を探すのは容易ではない。だが、その程度の対策を衣依がしていないわけがない。電気ランタンを掲げた先で伸びた影を力強く踏んだ楡は、動けなくなったぬりかべに六連撃を叩き込んだ。
「ミスト、私たちに任せて、頭目を追え!!」
「言われずとも!」
 アイナの言葉に背を押され、ミストは朱雀の翼で空を打ち、野盗に追いすがる。ぬりかべの妨害も、空からであれば何ら関係ないのだ。
 他方、澄香も婆娑羅野盗を追うものの、彼女の行く手を阻むように2体のぬりかべが現れる。一度に現れる数としては予想外に多く、驚きに目を見開く澄香であったが、しかし恐怖に足を止めることはなかった。呪禁道術を成就させて一体の攻撃を封じると、もう一体の体当たりを避け、野盗めがけて縄を持った手を突き出した。ブドウヅルの皮をもちいたそれは、彼女の法力をうけて生きているように蠢き、野盗のもとへとにじり寄ろうとする。
「く、っそ‥‥来世人の芸の幅は底なしだってか!?」
 焦りに表情を固くする野盗の姿は、いかにも愚かで、そして哀れだ。だが、だから弱いというわけではない。迫る縄を打ち払うと、煙管を振るってぬりかべ達に「殺せ!」と一声叫び、さらに逃走すべく踵を返した。
「逃さないよ!」
 マティルダは雷上動の弓を持ち上げるが、ぬりかべ達が遮蔽物となり直接狙うことは無理だと認識。素早く翼人機巧の操縦に意識を傾けると、野盗めがけてその拳を射出させた。
 通常の格闘戦より精度を増した拳は、確かな狙いのもと、野盗へと突き進む。だが、鉄火場をくぐった彼の野盗は一筋縄ではいかぬか、ひらりとその拳をかわしてみせた。
「なるほど、小物なりに腕は立つわけでござるか‥‥しかし」
 しかし、すでに野盗の背後には緋の翼を携えたミストが回り込んでおり、死角から大太刀で突きかかる。反射的に振るわれた煙管の威力は並ならぬものだが、しかしその程度ではミストは動じない。腰から抜いた金色の銃‥‥御前試合で彼の名を轟かせる一因となったそれを突きつけると、彼は躊躇なく引き金を引いた。

◆悪意万事を塗りつぶす
 包丁下がりと切り結んだ純子は、空中に身を置きつつ、状況を冷静に認識する。包丁下がり達は天井から現れ、戦場は室内。朱雀の翼による優位性は、速度と高い生存性‥‥室内戦で飛び回るのは、却って不利になりかねないか。
 奇襲を十二分に警戒していた桜花は、包丁下がり2体を前にしてうち一体に斬撃を叩き込むことに成功した。だが、魔法を重ねがけするいとまなく現れた相手に対し、通常威力の斬撃はいかにも浅い。切り結んだ感触を思えば、事前にアイナから斬鉄ノ太刀を受けていなければまず傷つけられなかったであろう、というのもわかる‥‥だが、それ以上に厄介なのは、手の空いた側の包丁下がりだ。
 禍々しい言葉を吐き出したそれは、手にした包丁に幻の炎を宿し、切りかかってきたのだ。一部の化身が操るとされる【妖炎】の魔法を用いたそれは、妖炎包丁下がりに相違なし。
「邪まな化身よ、何を狙って現れた」
「何をォ~~~? オレ達がほしいのはいつだって人の肉! 血! 怯えるお前達の表情に決まってんだろォ!? 好きに殺していいってんだから来たんだぜェ?」
 禅戒の言葉に、包丁下がりは粘度の高い笑いをともなって馬鹿にしたように告げた。ただ、霊修のために襲撃を敢行した。何者かに『殺していい』とお墨付きをもらったがゆえに訪れた。彼らの行動原理などそんなもの。安全に食事にありつけるなら、そうするだろう、程度のものだ。
「薄暗いところにしか居られんお前達らしい発想じゃの! そんなお前達には、コイツがお似合いじゃ!」
 そしてその回答は、ブナを大いに不快にさせた。彼女ならずとも、悪しき化身を憎む者ならそのことごとくが不快感を隠さぬ言説だ。だからこそ、か。天照大御神ノ舞が照らし出した包丁下がり達に向けられた来世人の表情がいずれも険しいのは、なんらおかしな話ではない。
「あなた達の思考などそんなものでしたね。実力のほども大したものではないとわかりましたので、このまま討ち果たします」
 桜花は包丁下がりの言説を鼻で笑うと、一ノ太刀を成就させて斬りかかる。言葉では弱敵扱いしてはいるものの、実際はその厄介さを認めている。体力に乏しい仲間が麻痺波の魔法に巻き込まれれば、戦線瓦解も十分ありうる。そのまえに決着をつけねば、ジリ貧に追い込まれよう。彼女の焦りはしかし、その刃筋を鈍らせることはなかった。手負いの1体は、彼女の斬撃を受けて地面に落下し、力なく崩れ落ちる。
「如何なる理由があれど、殺生する者を野放しにはできぬな」
 禅戒は、金剛力士真言により体躯を大きく増したかのような幻影を伴って包丁下がりに殴り掛かる。返す刀で向けられた刃は妖炎ともなう危険なものだが、ブナの巫女装束で強化された光にあてられた悪しき妖怪の手管など、警戒するまでもない。拳を振り上げ、振り下ろし。至極あっけなく、彼はその個体を叩き伏せた。
 或いは、遭遇戦であればそれなりの強敵であったのだろう。だが、十分な対策をもった一同を前にしてどれほどの手強さであったものか。果たして、彼らは包丁下がりを駆逐するに至る。

 黄金の奔流が、夜闇を裂いて突き進む。ミストの黄金銃の一撃は、あやまたず野盗の足に突き刺さり、相手を悶絶させた。
「ぎっ‥‥いぃぃ‥‥!」
「まるで猿(ましら)のような鳴き声をする。おぬしはやはり、人の心など持たぬのでござるな」
 よろりと立ち上がった野盗に、ミストは視線を合わせた。装束に法力を注ぎ込むことで得た魔眼による行動阻害。さすがは婆娑羅野盗というべきか、失禁だけは免れたが動けぬことに変わりはない。ふたたび持ち上げられた黄金銃に、野盗の男‥‥塔助は悲鳴を噛み殺して睨みつけた。
「終わりだ」
 ミストはそのまま引き金を引こうとして、塔助の視線を睨み返す。‥‥信念なき襲撃を繰り返す割に、その目に宿った覚悟は本物だ。黄金銃で確実に殺せると、これみよがしにアピールしても彼は気絶どころか表情も変えまい。苛立ちを隠さずに銃を懐に収めたミストをよそに、澄香の放った縄が塔助を的確に縛り上げ、地面へと転がした。
 ‥‥そして、3体のぬりかべを前にしたアイナ、楡、澄香の3名はといえば、ぬりかべの尋常ならざる守りの前に、大いに苦戦を強いられていた。
 鋼のような肉体に金剛波の魔法による堅牢な防御力、そうでなくても一般的な化身を大幅に上回る体力は、彼らの限られた手数で削りきるにはいかにも力不足だ。澄香が攻め手を封じているとて千日手。くわえて、マティルダの雷上動はぬりかべ相手には極めて相性が悪い。彼女では、ぬりかべを打倒しえないのだ。
 互いにままならぬ状況を、はたして双方が納得づくで続けるだろうか? ‥‥回答は明白である。
 戦闘開始から5分ほどが経過しただろうか。一体のぬりかべを苦心して撃破した面々は、しかし残る2体を撃破せんとするが、地中へと逃げられたのだ。
 よしんば影を踏んで動きを止めても、呪禁道術で増援が来るまで攻撃を封じ続けるというのは‥‥当然ながら現実的ではないだろう。澄香の法力の総量では、4分と保つまい。
 ともあれ、商家の大旦那の護衛と事件の裏を知るであろう婆娑羅野盗・塔助の確保ができた時点で彼らは勝利しているのだ。それは、間違いない。

「求不得苦(ぐふとくく)という言葉を知っているか」
 禅戒は捕まった塔助に問うが、当然ながら回答は否であった。求めても得られぬものに対する苦しみ。仏教における「八苦」がひとつ‥‥それが彼を動かしたのであれば苦界に生まれた苦しみであろう、そう禅戒は諭し、理解の向きを見せた。もっとも、理解するのと許すのとは別問題だ。
 彼の説法と、強力な化身を連れた状態での完全敗北は塔助の心を千千に砕いた。彼の口から語られた真実は、ある代官の悪意ありきの話であることを裏付ける結果となり。屋敷へ役人が向かおうとも、化身に阻まれる可能性が否応なしに高まった証明とも、なった。

 解決は来世人の手で。それは、一同の共通した願いとなった。



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参加者

b.んじゃボクは後方からミストさんの援護を行うね。
マティルダ・モロアッチ(ka00124)
Lv143 ♀ 16歳 忍傀 来世 大衆
a.天井からぶら下がる化身を捕まえて引きずり下ろして懲らしめてやる。
鋼燐坊禅戒(ka00192)
Lv171 ♂ 35歳 武僧 来世 大衆
a.ゴハンなら、食うたばかりじゃろがBBA――!!!
森住ブナ(ka00364)
Lv104 ♀ 15歳 神陰 来世 異彩
b.式神で周囲の警戒と、呪禁で攻撃を封じ、捕まえ易くできたらと。
水上澄香(ka00399)
Lv103 ♀ 17歳 陰傀 来世 異彩
a.殺気感知で敵襲を警戒しましょうか
藤枝桜花(ka00569)
Lv140 ♀ 23歳 武忍 来世 大衆
b.>朱雀 拙者にお願いするでござる(ぶひー)
ミスト・カイザー(ka00645)
Lv280 ♂ 24歳 武忍 来世 婆娑羅
c.斬鉄ノ太刀の用意はしたので、武忍への付与は引き受けた、これがな。
アイナ・ルーラ(ka00830)
Lv114 ♀ 24歳 武僧 来世 傾奇
c.今のところ塗り壁で考えてるよ(移動可能です
相葉楡(ka01176)
Lv104 ♂ 27歳 武傀 来世 異彩
a.了解よ>ミスト 朱雀と摩利支天で上から狙うわ。必要なら朱雀付与するわね
溢田純子(ka01629)
Lv173 ♀ 25歳 僧流 来世 異彩
 拙速に過ぎるな‥‥何があった?
渡会衣依(kz00040)
♂ 19歳 陰僧 来世人