【開発】綺羅を磨くは

担当 午睡丸
出発2017/11/22
タイプ ショート C(Lv無制限) 日常
結果 大成功
MVP 相葉楡(ka01176)
準MVP 沓ノ屋 颯樹(ka00235)
水上 澄香(ka00399)





オープニング

◆浅草、職人町へ
「……あぁ、よく来てくれたな」
 陰気な声が来世人たちを出迎えた。
 細工職人の鏨(たがね)――それがこの男の素性である。ギルドからの依頼により彼が様々な装飾品を生み出したことは記憶に新しいところだろう。
 では、今回も同じ理由で彼の仕事場へ訪れたのかというと……少し事情が違うようだ。


登場キャラ

リプレイ

◆一尾と参尾
「うむ、これは立派な一尾ノ虎猫じゃな! 目も綺麗だし、元気で何より!」
 活発に動き回る仔猫の様子に森住 ブナが太鼓判を押した。
「一尾って……ブナちゃん、化身じゃないんだからさ。でもホントに元気いいよね」
 相葉 楡もまた鑿の仕草に目を細める。
 仕事場に上がった来客たちに興味を持ったのか、鑿は昼寝を中断して大いにはしゃいでいたが、やがて楡の愛猫、参尾ノ黒猫の『つぶ』がその遊び相手となった。
 どっしりと構えたまま三本の尻尾を使って仔猫を手玉に取る姿はさすがに年長猫の風格である。
「相手をさせてすまないな。日に日にやんちゃになるばかりでね」
 鏨はそう言いつつ限りなく薄い番茶を勧めてきた。並んだ不揃いな湯呑みは近隣から借り受けてきたのだろう。
 それでも持て成しなど皆無であった前回に比べれば、鏨の暮らしに少しは余裕が生まれた証かもしれない。
「改めまして……鏨さん、去年はありがとうございました。素敵な装飾品、使わせて頂いてます」
 水上 澄香が丁寧に頭を下げた。彼女が身に付けているティアラとブローチはいずれも前回の依頼の際に来世人たちとの会合を受けて鏨が製作したものである。
「なに、こっちも仕事だ。礼を言われるようなことじゃない。ふむ……ちょっと失礼するぜ」
 鏨は澄香の姿を四方からとっくりと眺めた。
「ああ、よく似合っているな。さすがは来世人……というか、これはお前さんの自身の器量かね」
 眼前の麗人と自作の品の調和を確かめて満足気である。
 とはいえ鏨のことだ。この『似合っている』の主体が人間と装飾品のどちらにあるか定かではないが……いずれにしても最大級の賛辞であることは間違いないだろう。
「ふふ、ありがとうございます。今年も宜しくお願いしますね……鑿さんも、どうぞ宜しくね」
 澄香が声をかけると鑿は耳と尻尾をぴょこんと立てて応えた。
「なるほど、噂通り変わった御仁のようでござるなぁ」
 ミスト・カイザーはそんな感想を抱いた。彼自身は鏨と初対面だが、前回の経緯は親しい者から聞き及んでいる。
「そうだな。しかし、優れた職人とは得てしてそういうものかも知れないぞ?」
 沓ノ屋 颯樹がフォローするが、いずれにせよ鏨が変人であることはここにいる全員が認めていた。
「ところで、私は来世人ではないし、連れてきたのは私の随伴でもないが……構わないのかな?」
 更衣 薙が鏨に問うた。
「別に構わないさ。なにしろ手探りなんでね。伝聞でも何でも聞いておきたいところだ」
「そうか。ではよろしくお願いする」
 来世人ギルドにこの時代の人間……いわゆる『大和人』が出入りするようになったという情報は鏨も聞き及んでいるとのことであった。

◆自由と支援
「んじゃ、まずは私からじゃな! ではこの二匹のアミキリに注目! こっちが『ミート君』で、こっちが『おニク』。さて鏨くん、こいつらを見てどう思う?」
 親子ほどに歳の離れたブナからのフランク極まりない言葉遣いだが、鏨は気にする様子もなく浮遊する二匹の網切りをじっくりと眺めた。
「……海老だな、それも凄まじく不味そうな」
「そう! たいへん自由でたいへん可愛いこんちくしょうじゃろう! しかも美味そうだ!」
 鏨の感想はガン無視であった。
 この不穏な発言を耳にして、二匹の網切りは怪訝な視線を向けつつブナから微妙に距離を取った。このあたりに双方の絆の程度が見て取れる。
「ほら、これ! こんな風にいつもフラフラ飛びまわるんじゃよ。だもんで、戦闘中に仲間……というより私の素戔嗚に巻き込まれる可能性が無限大なんだな、これがな!!」
 ブナはそう言って胸を張ると鏨に向かってビシっと指を差した。
「そんなわけでせっかく前におるんじゃし、私の素戔嗚を反射して増幅するような、こう……とんでもねぇキラッキラの何かをプリーズじゃよ!!!」
「熱弁は承ったが……とりあえず、その素戔嗚ってのが何のか説明してもらいたいんだがね」
 ここで魔法に疎い鏨に説明が入った。
 来世人たちが用いる魔法の『範囲』はいくつかに分類される。ブナが例えた素戔嗚息吹迎えノ舞は九十度の扇状に吹雪をもたらすものだ。
 その範囲内に随伴を先行させておいて、魔法をさらに反射、増幅させる装飾品――それがブナの要望であるらしい。
「なるほどな。お前さんの要望は解ったが……そもそも巻き込まないように言い聞かせようとは……」
「思わないよ! なぜなら自由を謳歌させることこそが私の教育方針なのじゃ!」
 高らかに宣言するブナだったが、世間一般ではこれを放任主義と呼ぶのであった。

「私が紹介するのはこれだ」
 二番手、薙の言葉で足の生えた提灯がぴょこりと進み出た。
「ギルドで世話になっている一団(パーティ)がいるのだが、その中のある青年が可愛がっている提灯の付喪神だ。名前をタンロンという」
「ほう、これが付喪神かい。お目にかかるのは初めてだが、どれ……本体の作りは元の提灯と大差ないんだな……」
 鏨は造形を観る眼でタンロンを眺めた。普通なら化身を前に尻込みしそうなところである。
「ふむ、灯りが勝手に動いてくれるとなると便利そうだな」
「ああ、実際に依頼には一番多く連れて行っているらしい。それもあってその青年が連れてくるのが筋だし、一団の頭(リーダー)もそう説得していたのだが……話すのが面倒とかでな。最終的に私にお鉢が回って来た次第だ」
「組合の内情はよくわからないが……来世人ってのは気ままな連中のようだな」
 ギルドの実情を知らない鏨にとって、そこでの人間関係の機微は理解の範疇を越えている。しかし彼らにとってこの付喪神が貴重な存在であることは理解できた。
「要望だが、戦いの場に連れて行く事が多い事から防御力向上、もしくは回避力増加の装飾品があると嬉しい。あるいは退魔法を扱えるようにならないだろうか」
 ここで鏨へと退魔法が大まかに説明された。
 薙の要望を端的に表現すれば前線での支援継続力の強化、もしくは支援能力自体を強化する装飾品――といったところか。
「確かに、場所や時間によっちゃあ貴重な光源を守りたいところだな。……しかし、付喪神になってもこれだけ重宝されてるとなれば、作った奴は職人冥利に尽きるってもんだな」
 俺の細工もそうあって欲しいね――と、鏨は小さく呟いた。

◆飛翔と愛情
 職人町の周辺を爆音をあげてオフロードバイクが疾走していた。
 バイクを駆るのは颯樹。その背後には鏨がしがみついている。さらに颯樹の随伴である四羽の鷹が並行するように飛翔していた。
 この状況は『鷹の飛翔する姿を間近で見てもらいたい』という颯樹の提案によるものだが、鏨がすんなりと了解したのは意外だった。百聞は一見にしかずということらしい。

「ふーっ……まさか馬はおろか駕籠にもまとも乗ったことがない俺が、鉄の馬に乗ることになるとはな……」
 鏨はバイクから降りると少しふらついて道端に腰を下ろした。周辺を軽く一回りした程度だが変化の少ない職人暮らしには刺激が強かったようだ。
「大丈夫か?」
 颯樹が声をかけると鏨は青い顔のまま手を上げて応えた。少し酔っているのかもしれない。
「体感してもらった通り、バイクは空(くう)を切って走る。そして鷹もまたその空を自由に羽ばたき、その翼で空を切る。あの瞬間、爽快さを感じなかったか?」
 疾走するバイクと同じ速度で飛翔し、空中に静止しているように見えた鷹たち。やがて彼らは飛翔の速度をあげて飛び去っていった。
「あの瞬間、自分も自由になったような気分を味わなかったか? 俺はいつも身体が軽くなったような気がするよ。翼のないこの身では足は地についたままだが、な」
「それがお前さんがその鉄の馬に乗る理由かい?」
 颯樹にとってバイクとは鳥に近づく為の手段なのだろう……少なくとも鏨はそう理解したらしい。
「……そうかもな。ただ、あれでなかなか手がかかってね。同時に飼い始めたにも関わらず言うことをあまり聞かないのもいる。それが面白いところだがな」
 颯樹が上空を旋回する鷹たちを見上げる。
 鏨は翼を広げて飛翔する鷹の姿を思い起こし、脳裏に焼き付けようとしていた。

「では、拙者の自慢の蝦蟇たちを紹介するでござる」
 ぷひー、と竹筒の呼吸音を響かせながらミストが愛蝦蟇たちを呼び寄せた。
「こりゃあ何というか……デカいな」
 その巨体に語彙を失う鏨。
「こちらが長い付き合いの大蝦蟇『トロンベ』。そしてこっちが黒蝦蟇から忍者蟇に進化した『ファントム』でござる。いやぁ、犬や猫ならば意思疎通も容易でござろうが、蝦蟇相手は通じ合うまで大変でこざったなぁ」
「意思疎通……できるのか?」
 信じ難い、といった表情の鏨にミストがぷひー、と応えた。
「疑問はごもっとも。しかし慣れてくるとトロンベは実は甘えん坊で、ファントムは勇猛果敢な性格だと分かったでござる。では実際にお目にかけよう……ファントム、拙者を舌で突いてくるでござる!」
 主の指示でファントムが素早く舌を突き出してきた。あえてそれを受け、後方に吹き飛ぶミスト。このまま空中でクルリと姿勢を戻し、華麗に着地する予定である。
 しかし、そこで思わぬ事が起こった。
 トロンベが飛んできたミストを反射的に咥えてしまったのである。
「のわーっ!」
 慌てて脱出を図るミストだが、一度口に入ったら飲み込みたくなるのが蝦蟇の性分というものだ。
「これは……丸呑みされているようにしか見えないが……」
「ご、ご心配は無用。これは甘えん坊ゆえの愛情表現でござる……。こ、このように二匹とも今ではかけがえのない戦友でござるよ」
 強がるミストだが、その身体がさらにグイっと引き込まれる。
「ところで、装飾品の要望でござるが……蝦蟇のように寒さに弱い随伴の為にも防寒効果の宿るものがよいでござるな……」
「ふむ、この状況でも蝦蟇の為に……見上げた蝦蟇愛だな」
 随伴に防寒効果の装飾品を――ミストは鏨にそう伝えるとトロンベの口内へと完全に姿を消したのだった。

◆猫と絆
 再び鏨の仕事場である。
 つぶを枕にして眠っていた鑿だったが、戻ってきた鏨が腰を下ろすと即座にその膝へと飛び乗った。どうやら彼が作業をしていないときはそこが定位置らしい。
「……猫ってさ、生ける芸術品じゃない?」
 楡の唐突な言葉に鏨は面食らう。
「これはまた大きく出たな」
「うん。だってさ、全体的なバランスは言うに及ばず、細部の完璧さ……見てよこの横から見た時の眼の半球。瞳の色がどんな色をしてようと、必ず透明なんだよ?」
 すごくない? と、楡の熱弁はさらに勢いを増した。
「それに場を支配する圧倒的な存在感だよ。だって、猫がいるだけでどんな絵も空気が変わるんだよ……あと何かいい匂いするよね」
「そうか?」
 思わず鑿を持ち上げ腹を嗅ぐ鏨。
「残念ながらこれを超えるものは人間には作れないと思う。猫より尊いものは、この世に存在しないもん。……きっと、人の手って猫を撫でるためにあるんだよ」
 楡の演説を黙って聞いていた鏨だが、ややあって口を開いた。
「尊いかどうかはともかくとして……職人としては最後の物言いは聞き捨てならないな。俺の手は造形の為にある。猫が自然の美の最上だというなら、それを超える人工の美の最上を……そう考えるのは当然だろう」
「できるかな? 相手は手強いよ」
「天邪鬼な性分でね。無理だと言われるほどやる気になる。……もっとも、手強い相手なのは認めるがね」
 いつの間にか膝上で眠りについた鑿の姿に、二人は顔を見合わせて微笑ったのだった。

「さて、これで猫に海老モドキ、付喪神に鷹に蝦蟇か……他には?」
「ではご紹介させて頂きますね」
 澄香の合図で控えていた随伴たちが進み出てきた。豆狸の豆次郎、一反木綿の木綿平、小白蛇の天千代といった面々である。
「これはまた多彩だな」
「獣ノ怪に妖怪に霊獣……ギルドには他にもたくさんの子がいます。みんな違う力があって違う霊修……つまり、やりたい事を持っています」
「こいつの昼寝みたいなものか」
 鏨が膝上の仔猫を指し示すと澄香は微笑って頷いた。
「ええ。でも私はこの子たちが何を望んでいるのか、詳しく知ることはできません。言葉を交わせないからこそ互いを思いやって、歩み寄る事が大切だと思うんです。鏨さんが鑿さんと出会って仕事場を明るく、温かくした様に……」
 澄香は陽光の差す窓辺を示した。
「鏨さんは鑿さんがどんな風に世界を観ているのか、興味あったりしませんか?」
「唐突だな。猫の視点……いや、もっと漠然としたことをいっているのか?」
「はい。人間と化身がもっとわかり合える願いも込めて……お互いの力を込めて貸し合える装飾品なんて素敵だなぁと思うのですが……難しいでしょうか?」
 主と随伴が結びつきを強め、互いに力を与え合うことができる装飾品――それが澄香の要望なのだと鏨は理解したのだった。

「さてね、難しいというなら全部難しいが……ま、いろいろ聞けたおかげで随伴のことが少しは解った気もするしな。当てにしないで待っていてくれ」
 またも愛想なく結ぶと鏨は仕事机に向き直って無言で作業を始めた。こうなるとテコでも動かないことは周知の通りで、来世人たちは鑿に見送られて仕事場を後にしたのだった。
 この日の成果で随伴たちの綺羅が如何に磨かれることになるのか――それが判るのは、しばし先の事である。



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参加者

c.長所のつもりが、随伴を語るが大半になったな。よろしくな。
沓ノ屋颯樹(ka00235)
Lv92 ♂ 22歳 陰傀 来世 大衆
a.自由を謳歌する、ミート君とおニクに未来を託す!?
森住ブナ(ka00364)
Lv215 ♀ 15歳 神陰 来世 異彩
z.長所とか短所でなく…叶ったら素敵だなと思う事ですね。役立つかは…(済
水上澄香(ka00399)
Lv155 ♀ 17歳 陰傀 来世 麗人
c.では、拙者の自慢の蝦蟇二匹の話を(ぷひー)
ミスト・カイザー(ka00645)
Lv266 ♂ 24歳 武忍 来世 質素
c.三尾ノ黒猫のつぶを連れて行く予定、猫の素晴らしさについて語るだけ
相葉楡(ka01176)
Lv154 ♂ 27歳 武傀 来世 異彩
b.ふむ。私の随伴ではないし、来世人でもないが、よろしくお願いする。
更衣薙(ka01865)
Lv112 ♂ 25歳 僧地 大和 大衆