【SH18】集結、関ヶ原

担当 K次郎
出発2018/11/17
タイプ グランド G(Lv無制限) 冒険
結果 大成功
MVP カーモネギー・セリザワ(ka01912)
MVS 相葉楡(ka01176)





オープニング

◆ヤバいのキタ!
「なにこれ、なんかすっごいのが出てきたわよ‥‥」
「うぐぅ‥、神眼がうずく‥‥ッ!! 間違いない‥これは、鬼神復活のしるしっ!!」
 その異変に、同時に声を上げたのは、沢庵和尚と十人ちゃん。最初に気付いたのはその二人‥‥いや。
 その瞬間、おそらく日本中の数多の『霊能者』が、何かを肌で感じたはずだった。『ヤバいのが来た』と。
 そして、それがなんなのか、ほぼ正確に理解したのが、前述の二人であった。

登場キャラ

リプレイ

◆いざ、関ヶ原
 猿が一夜にして城を構える時、強者、関ヶ原に集う。
 これぞ、来世人たちの戦いの終章の幕開けなり‥‥。

「みんな集まるっぺよ!」
 舞い、弓なりに反る肢体。
 その胸は天からすべてを受け入れるようにそそり勃ち。
 神の加護は降りる。
 牧葉 真夏が集いし強者たちのために奉せしは榊樹女ノ舞。
 これより迎えしは、終わりの始まりか。

◆中央開戦!
 秀吉率いる西軍を迎え撃つべく関ヶ原に展開した来世人ギルドの精鋭たち。その中央で近づいてくる一夜城の威容と、自分の後ろにある『それ』を交互に見やりファウラ・クルシューエグレン・ギーガーに問いかける。
「完成したのデスか?」
「ああ、仮のものだが、何とか使えるだろう。そうら、敵は近くまで迫っている戦闘配置だ」
 それの出来栄えをしっかり確認している余裕はない。グレンは仲間に戦いの準備を促す。
「‥‥やっぱりちょっと怖いデス」
 山のような大鬼に牽かれる城。展開する鬼の部隊。ファウラはそれから視線を外し肩を抱き、静かに震えた。
 決戦は目前。歴戦の戦士たちとは言え恐怖を感じぬわけではない。
「なぁに、俺様たちがしっかりサポートするんだわさ」
「ぼっすんサン」
 全力の決め顔でファウラを励まそうとするボースン・カイザー
「元は船乗り、泥船に乗ったつもりで‥‥」
「それを言うなら大船ですよね?」
 さらに続くボースンのボケに伊東 命がツッコむ。
 そんなやりとりにファウラは肩の力が程よく抜けるのを感じた。きっと、戦える。
「来るぞ!」
 グレンが叫ぶ。
 さあ、開戦。真っ先にぶつかるのは中央だ!

「どきなさい!」
 漲る気迫は力となって鬼を撃つ。戦意は東軍随一か、升田 千絵代が一番槍。先頭で突っ込んできた黒鬼を斬り捨てる。
「む!」
 その横で、先を越された、と言わんばかりの宮本 武蔵が一手遅れて鬼を斬り伏せる。
「鬼なんかに、私の夫が待つ江戸を蹂躙させはしないわ! どこなの、本多忠勝っ!!」
 千絵代、止まらず。
 先日のリベンジ、とばかりに忠勝の姿を求める。
「今度こそ、斬り捨ててくれよう」
 そして、武蔵もまた戦いを求め‥‥。
「千絵ちゃん、あんまり突出すっと、援護できねっぺよ」
「義父上、お待ちください」
 真夏と宮本 伊織が前のめりな二人を窘める。
 しかし、どうも二人の進撃は止まらない。
「!?」
 が、その二人の足元を何かが駆けて行くではないか。
「鼠?」
 確かにそんなように見えたが‥‥。
 すると、目の前の鬼の陣の真ん中あたりで。
 ドドーン!
 爆発。
「ぱんつぁーふぉーなのです!」
 更に、砲撃が藤枝 杏花のどこかで籠った感じの号令と共に。
「な、なんだぁー!」
「のごぉー!」
 着弾、そして鬼たちの叫び。
「亀甲車、前へ!」
 今度は戦場に良く響く声。
 藤枝 真沙花の鬨の声は悠然と前進する亀甲車の上から響いていた。
 刀を抜き、進行方向に突き出せば、車内の杏花がそれに応じて亀甲車を走らせる。
「あれに見ゆるは鬼将・本多忠勝。いざ、参らん!」
 見えた、鬼たちの先。ひと際大きな体。忠勝の姿。
「では、血路を拓く!」
 亀甲車に先んじて魔神 極奴が駆けだした。爆発と砲撃で浮足立つ鬼の先陣を一気に叩く。そして、目指すは敵の中枢。
「いいの、出て?」
「まだです。アイナさん、ステイ、ステイ」
 亀甲車の中にはまだ戦力が。出ていきたくてうずうずするアイナ・ルーラ茂呂亜亭 萌瑠が制す。
「やれやれ、出番はまだ先か」
 彼女らの出番はもう少し先。
「では、わたしたちも参りましょう。中央の足を止めることこそ、城の足止めをする第一歩。そして、左翼の注意を引きつけること」
 血気はやる仲間たちに続き水上 澄香もいざ、出撃。この戦い‥‥決して負けられないのだ。
「おう、今度こそ、あの鬼将を叩く!」
 鈴城 透哉の槍を握る手にも力が籠る。あの鬼将にも、武蔵にも、見せつけてやらねばならない。
「っと、キミたちあんまり突出しすぎないでねっ!」
 鬼との距離が縮まり、二人を制して前に出たのは久保 零だった。
「そぉーれっ!!」
 零が太刀を振り回せば、鬼たちの身体からどす黒い血が飛び散る。
「澄香ちゃんに危険が及ばないように、オネーさん張り切っちゃうからね!」
「は、はい。よろしくお願いします」
 戦いの激しさは、加速する
「これで左翼も動いていなければ‥‥」
 澄香は三成と戦う左翼へと視線を向けた‥‥。

◆左翼、静かに始動す
 西軍左翼の指揮官、鬼将・石田三成は慎重かつ冷静だった。
「さあ、掛かってくるんだな」
 左翼が展開する鼻先に現れた来世人は、金糸で刺しゅうされた菊が目立つ陣羽織を纏った男であった。
「やっちまぇー!」
「しねぇー!」
 それを見た鬼たちの怒りのボルテージが上がり、男‥‥海動 涼に向かって無軌道に襲い掛かっていく。あの金菊の陣羽織に何か特殊な効果があるのだろう。
「待ちなさい!」
 指揮官である三成の制止。
 しかし、それも届かない。
「ハッ!」
 短い気迫と共に涼は先頭の鬼を袈裟切りにする。
 だが、彼の動きはそこまでだった。
 突如として涼の身体が崩れ落ちたのだ。
「!」
 そして、覚醒。そう、寝ていたのだ。目を覚ましたのは痛みから。鬼に好き放題殴られた。
「ぬぅ、涼殿、後ろへ!」
 これはまずい、と割って入った御子柴 識は涼の正面に居た鬼に拳を叩き込むと反対に眠らせ返し、涼が離脱する時間を稼いだ。戸隠大助の鉄拳による、真・朧突きが決まったのだ。
「回復は任せるのだよ」
 涼の傷はすぐさま藤 あきほが真言を唱え、癒す。
「はい、任せてくださぁい♪ らみも、ケガを治したりして応援しちゃいまぁす☆」
 あきほ同様、花屋敷 らみも回復は任せろ、と胸をどーんと叩く。
「死んだらダメだけど、死んでも生き返って戦えなのだよ」
「はい、死んでも生き返‥‥って、死んじゃダメですよぉ」
「ここが崩れたら全体が持たなくなるのだよ」
「た、確かにそうですけどぉ」
 左翼に回った東軍の戦力はけして多くない。一度崩されたら、西軍左翼は中央や右翼の応援にすぐさま回ってしまうだろう。さすれば全体の勝機すら失いかねない。
 故に、彼女らの役割は大きいのだ。
「よっしゃ、行くぜ!」
 そんな彼女らの苦労を知ってか知らずか、生傷が絶えなそうな男、伍法 月天が駆けて行く。その先は‥‥三成だ。進行ルートの邪魔な敵は排す。風林火山の軍配斧を振るえば、殴られた鬼が感電したように身体を震わせる。
「とっつげき~~☆」
 更に田村 鈴鹿も軽いノリでそれに続き錫杖を振り回す。
 ぶっちゃけ、ちょっと心配だ。
「ほら、なんかさっきあの鬼将、魔法使ってたみたいだから気を付けないと」
 先ほどの涼が眠らされた様子を見て注意を促しながらも白鳳 栗花は二人のあとを付いていく。ほっとけないのだ、守らねば。
 しかし、駆け出した月天と鈴鹿は三成まっしぐら。
「って、あれっ?」
 いや、突如として三成の姿が消えた。転移か? いや、他の場所にも現れていない?
 月天がキョロキョロしているうちに鬼に囲まれてしまう。
「あー、もう、月天先輩!?」
 栗花はカバーに走るが間に合わない。
「やらせんよ」
 だが、そこへ潤賀 清十郎の声。更に、空から荒れ狂う雷光。
「うぉー!? って、ありゃ?」
 月天が巻き込まれるが、痛みも痺れもなく、周囲の鬼だけをバリバリさせる。伏姫の巫女装束の力だ。
「鬼将倒せるならそれもええけど、ヤバいおもたら退くのも大事やよ」
(可能な限り引き付けな)
 敵に悟られぬように心の中でそう付け加え、清十郎は前線の仲間へ声を掛ける。
「え、なに?」
「なんか、きっもちわる~い」
 顔をひそめる栗花や鈴鹿。なんだろう、何か精神を削られるような‥‥。
 そして、再び姿を見せる三成。その場で姿を消し、何らかの魔法を使ったことで再び現れたのか?
「姿を消す能力か、一旦下がるぞ!」
 仲間を下がらせるため、染屋 流華が前に出る。
「ここは私が防ぐ!」
 ビシッと剣を構えポーズを決める流華。なんか、そうした気分がちょーっと湧いてきている。変なもの(クモカマ様な忍者装束)を装備した影響‥‥だと思いたい。
 その間に少し下がって態勢を立て直す。
「だけどよ、退いて、なんか手があるのか?」
 特攻(ぶっこみ)を狙っていた月天が、他にいい手があるのか、と首を捻る。
「タイミング、やね」
 問われ、清十郎はチラリと後ろを見た。
 視線の先には、なにか動き回っている小冷 煌尚の姿。
 果たして、そのタイミングは来るのか?

◆右翼、激突す!
 突破するべき場所。それが右翼。敵を抑えればいい中央や左翼とは違うのだ。それもとにかく早く突破せねばならない。
 だからこそ、戦い激しく始まる。
「ぬおおお!」
 越中 団次郎の気迫、振り回した大太刀が鬼をねじ伏せる。
「善き気迫! 俺も負けていられないな」
 鬼の攻撃を捌き、恐るべき剣速で柳生 十兵衛も攻める。
「だが、もう少し手が欲しいところだ‥‥」
 とにかく攻めるしかないが‥‥意外と人数が少ない?
「それはあたしたちで埋めるよ!」
 いつも以上の迫力で池袋 春子が吠える。
 相手は赤鬼。それがわかっているならば凍えさせてやればいい。
「喰らいなっ!」
 素戔嗚息吹迎えノ舞。
 いや、舞も無く放たれた‥‥性格には超高速の舞で放たれたそれは、およそ人が放てる限界を超え、神の如き嵐が吹き荒れる。
「っとぉ!」
「ん?」
 それは団次郎や十兵衛を巻き込み‥‥鬼どもを一網打尽にする。
 これも伏姫の巫女装束の力、鬼だけを確実に仕留める。今や彼女は鬼だけを殺すマシーン。
「少しでも戦場をさっぱりさせないとねぇ」
 となると、当然敵も必死に襲い掛かる。
「あいつをころせぇー!」
 間髪を入れず鬼の群れが‥‥。
 いや、間髪入れず放たれたのはもう一つの神懸かった吹雪だ。
 そう、春子は確かに『あたしたち』と言った。
「春子姐さんだけにええとこ持ってかせんのじゃ!」
 鏑木 奈々が立て続けに放った吹雪で敵陣に大きな穴が開く。
 右翼を攻める東軍の主火力はこの二人。ならば、彼女らを守りつつ効率よく攻める必要がある。
 故に藤枝 梅花は式神を放ち戦場の分析中。
「さて、次はどう攻め‥‥あら?」
 だが、なんだ?
「急に式神との繋がりが途絶えて!?」
 何か式神からの視界が歪み、そして途絶えた。
「なんだ、どうなってるんだ?」
 心配した遠前 九郎が尋ねる。
 一体、何が?
「ふむ、偵察においては敵の気付きが早く、隠密行動も露見することがほとんどだったとか‥‥」
 そう口を挟んだのは服部半蔵だ。彼も配下を偵察に出したりしたという。確かに、透明化や地中行動も気付かれてしまったという報告があったはずだ。
「そういえば、そんなこと言ってたな。ちょっと他の連中にも忠告しとくわ」
 早速、九郎が斑鳩占術で他の戦場へ情報を飛ばす。
 ならば、その眼で戦場を確認し動くしかない‥‥。

 そんな時だ、小雨が降りだしたのは。
「ん、ああ、確か鰤の字が雨乞いしてたっけ」
 そういえば、と、団次郎は九条 鰤々之進が雪やこん子にお願いしてどうにか天気を変えようとしていたのを思い出したのだ。
 多少雨があれば、敵軍にあるという火縄銃にも影響があるかもしれない。まぁ、ちょっと気温が寒いのはご愛敬。もっとも、火縄銃は城に主に配備されているようで今のところ飛び交っていないのだが。
「雨なんてどうってことないわ」
 その点、溢田 純子が構える火縄銃は魔法着火式である。もはや火縄じゃないっていうのは置いておこう。
 しかも、今日の純子はよく着てるセクシーな朱雀装束じゃないのも残念だが、それも置いておこう。
「ねぇ、零士。もう少しスピード落とせない!?」
「あ、ちょっと待ってくれ」
 実は雫石 零士の操る三連車の上であり、照準が定まらない。
「どうどう」
 零士はかりそめの知性を得て自律起動する三連車をおとなしくさせる。機巧共心ノ法により、カラクリさえもまるで愛するペットであるかのように共闘させているのだ。
 バチュン、と放たれた弾丸はちょっと鬼からずれて着弾。
「うわっ、こっち飛んできた!」
「え、もしかして、ぎるどに始末されちゃう?」
 その辺りで戦っていたのは新免 独楽新免 狗の新免姉妹であった。
「はいはい、この子たちもいるんですから、慣れないうちはあまり突出してはいけませんよ」
「「はーい」」
 梅花は姉妹が最近手に入れたペットたちを引き合いに出しなだめる。多分、こいつら指示与えとかないと暴走しかねないという判断からだ。
「姉さまも前に出過ぎです」
 と、自身も妹である藤枝 菫花になだめられる。
「案の定、来ましたわ!」
 近づく鬼に槍を繰り出し、ヒデコ・ルーラが注意を促す。
 ヒデコが突いた鬼に、更に菫花の放った矢が突き刺さり動きを止める。
(姉さまを護らなきゃ‥‥おこがましい、かな?)
 そんな菫花の杞憂は梅花の「ありがとう」と笑顔で消える。

「さて、玉の力も必要でしょう。私たちも参りましょうか」
 激しく動く戦場。鬼の回復力を削ぐためにもグレース・マガミも動き出す。
「はっ、地獄の底までもお供します」
 うやうやしく付き従うのは真神河 絶斗
 今回も、グレースと地獄へ付き合ってもらう。
 その様子を確認し、義理の娘であるミネルバ・マガミも動き出した。
「では、私たちも」
 と、振り返り話しかけた相手は‥‥グレース?
 あれ?
 グレースが‥‥二人!?
 戦いは、どうなっていく!?

◆左翼、静かに収束す
 一旦、退いた左翼の東軍だが、そのまま睨み合いでは他の陣へ注意を向ける隙を作ってしまう。
 故に、態勢を立て直したら再び接近!
「でりゃあ!」
 月天の気迫が三成に届けば、その一撃は腕を斬り飛ばす。
「むむっ」
「簡単に再生なんかさせねぇ! ここには、お信との約束があるからな!!」
 胸板を叩く月天の身体には『信』の玉が取り込まれているのだ。それが、三成の再生を遅らせる。
「おのれ‥‥だが、貴殿らに秀吉様の邪魔はさせぬ!」
「ぬぉ」
 今度は三成の刃が月天の肩を切り裂いた。
「ん!」
 月天はそろそろヤバい。彼の背中を守りつつ戦う鈴鹿はそれに気づかぬ鈍感ではなかった。
「せーの!」
 乱棒鬼身で強化した肉体で振り回す錫杖は鬼の強靭な肉体を吹っ飛ばし、スペースを作る。頼もしい仲間を呼び込むために。
「栗花ちゃん、任せる♪」
「あー、はいはい」
 空いたスペースに飛び込むと、無造作に月天の首根っこを引っ張り入れ替わる。
 栗花は三成の目の前に立つが、この鬼将、白兵戦の能力はさほど高くは無さそうだ。むしろ、間髪入れず攻め立て魔法を使わせないことこそ肝要。

 栗花とチェンジした月天の回復には、らみが向かった。距離を詰めねばならない。
(い、行かないきゃ‥‥)
 正直怖い。らみは戦いなんかハッキリ言ってしたくない。自分が傷つけられるのも‥‥相手を傷つけるのも、泣いちゃうくらいイヤだ。
(でも‥‥)
 だけど、みんなを守護(まも)れないのは、もっとイヤだ!
「うがぁー!」
「ええっ!?」
 駆け出したらみに早速襲い掛かる試練。鬼の金棒が強烈に繰り出される。
「っ!」
 だが、その威力は彼女を苦しめない。
 代わりに、鬼将・信長が使っていた髪留めがちぎれ飛び、艶やかな髪が風にうねる。
 しかし、その効果も一度きり。次の一撃は防げない!
「う‥‥が‥‥」
 突然、鬼は呻き、倒れた。
「ふぅ、間に合ったでござるな」
 倒れた鬼の後ろに立っていたのは識だった。
「あ、ありがとうございまぁす☆」
「どうやらその調子なら大丈夫そうでござるな」
 明るく返すらみにひと安心。いや、早く月天の回復もしないと。
 そして、また、清十郎の鳴る神霊迎えノ舞が飛び。
「頃合いや」
 声も飛ぶ。
「?」
 なんです、と訝しがる三成。
 だが、そこにまとわりつくように襲い掛かったのは流華である。
「好きには動かせないぞ」
 流華は巧みな体捌きで三成の動きを阻害している。
 その間に‥‥だ。

「さぁ、今度こそ鬼さんこちら、だ」
 例のごとく涼の陣羽織に怒りの矛先を向け襲い掛かる鬼たち。
 今度は迎撃せず、軽くあしらいながら後退していく涼。
「!?」
 鬼が足を踏み入れたそこには‥‥。
「掛ったな」
 鬼が違和感を感じたその瞬間、涼は反撃に転ずる。
 動きは鈍い。鬼はその攻撃を簡単に喰らい、そして倒れた。
「これは、やり易いな」
「必死でこしらえたんだから‥‥役に立てて欲しいもんだよ‥‥」
 更にもう一匹の鬼を軽々仕留めた涼に、煌尚は疲れたような顔で告げた。
 地面に走る赤い光線。いくつも作られた小反閇道術の結界が、煌尚の苦労を物語っていた。
 確実に鬼の数を減らしてはいる。だが、倒しきれない。
「くっ、また!」
 流華の守宮ノ術。文字通りヤモリの如き体術で敵にまとわりつき動きを封じる。これで魔法を使わせまいとする流華であったが、攻撃が外れた時はすぐさま距離を取られそこから恐ろしい速さで魔法が放たれる。
「!」
 それも治癒系のもの。鬼ノ体に依らず回復されては玉の効果があっても簡単には倒しきれないのだ。
 傷の癒えた鬼の袋叩きにされ、血まみれになる流華。
「なら、こうや!」
 玉には別の使い方も、ある‥‥か?
 清十郎は取り込んでいた玉を排出し高々と掲げた。
「きみらが恐れる玉はここや!」
 あえて玉を見せ鬼を引きつける算段だ。
「待つのです、皆の者。あれは悪あがきです!」
 三成は頭も切れる、鬼どもを諭し動きを抑えてくる。
「こうなったら、切り札、いくのだよー!」
 そう叫んだあきほの背には無数の腕が、いや腕のオーラが見える。
「あきぽんソード、なのだよ!」
 阿修羅王真言から、草薙剣を振り回す。
 放たれるは烈風。恐るべき風が鬼の群れを切り裂く!
「今だ、一気に特攻(ぶっこ)むぜ!」
 敵の注目を集めるために、月天たちは烈風の後を追い突っ込む。
 激しい戦いが続く。
 一進一退の攻防。気を抜けば一気に崩れかねない戦いだ。
 故に、まだ彼らは気づいていない、右翼で大きな動きがあることに‥‥。

◆右翼、突破す?
「さてさて、あっちの方が手薄ですかね」
 式神に頼れないなら自分で歩くのみ。梅花がガンガン前に出ていく。
 そのために貧乏くじを引く者も存在するわけだが‥‥。
「あー、無理すんなよ!」
 鬼の金棒がガンガンとシュヴァルツパンツァーに当たり鈍い音を立てる。
 だが、反撃で名刀・村雨丸を抜刀すれば、鬼は水だらけ血だらけでで倒れ伏す。
「げ、まだ来るのか!」
 更に、鬼、鬼、鬼。
「そうはさせませんですわ」
 ヒデコが山姥の槍を横薙ぎ一閃すれば、槍術の達人丸橋忠弥作の外套の力もあいまって、鬼どもはゴロンと転がった。
「ありがとうございます。助かりますわ。いざとなれば菫花にもらった朱雀で復活できますから」
「だめですよ姉さま‥‥」
 復活出来るとはいえ、目の前で姉が倒れるところを想像し菫花は小さな肩を震わせる。
 朱雀で飛んでいけばいい、とも思えるが敵陣には少ないながらも飛び道具や魔法を使ってくる女鬼がいる。油断はできない。
 そう、飛び道具がガンガン飛んでくるのは明らかに厄介だと判断された春子と奈々のところだ。
「ちぃ!」
 複数の矢が殺意を持って飛来する。
「ところがどっこいしょーっ!」
 団次郎の太い腕から現れた太刀が飛んでくる矢を叩き落とす。
「って、うぉぉぉ!」
 更に飛んでくる火炎。これは叩き落とせない。
 だが、それを受けてもなお、団次郎仁王立ち。
 その間に仲間はフォローに動く。
「三連車、吶喊(とっかん)だ!」
 零士が女鬼たちの方へ三連車を突っ込ませると、そこから飛び降りた純子が斬りかかる。
「休む間なんて与えないわ。一気に行くわよ!」
 三連車上で成就した阿修羅王真言からの連撃が女鬼たちを打つ。
「ガゥゥ!」
 逃れようとした女鬼の尻に零士と行動を共にする雪狼のぎんが噛みついていく。
 一気呵成に攻めるのみ。

 そして、敵将である緋厳鬼武者は玉の持ち主であるグレースを狙っていた。彼女を潰せばこの右翼の維持も好転するはずなのだ。転移を駆使しついに、接近する。
「のこのこと、馬鹿め! もらった!!」
 剛力を込めた強烈な一撃。後衛タイプのグレースでひとたまりもない!
 ボン―――。
「!?」
 だが、突如巻き起こる爆発音。
 そして、周囲に飛び散る桃色の煙。
「残念だったわね」
「なんだと!?」
 煙が風で流れ、何者かの姿が見える。
「ある時は、礼の玉を持つグレース・マガミ」
「?」
「そして、ある時は、ナイスバディのクノイチ。また、ある時は、金髪の落語家‥‥しかしてその正体は!」
「!?」
「ええと、全裸の希有亭 波新よ!」
 KKK製の忍者装束で危機を脱したのはいいが、服も脱した。この忍者装束の転移能力は、とてもめずらしいことに(棒読み)装備品は一緒に転移してくれずその肉体のみがワープするからである。
「影武者作戦にかかりましたわね! えいえいえいっ!」
 波新が影武者だったということ。彼女を護衛していたミネルバが鬼武者に青龍雷帝剣で斬りつける。
「ぬるいわ!」
 だが、それはあっさり回避されてしまう。
 相手は鬼武者、ミネルバはちと分が悪いか。
「やはり私では‥‥」
 そうくじけそうになった時。
「いいや、ここまで誘き出せば十分だ!」
 鰤々之進の声が響く。
「とう!」
 そして、鬼武者の不意を突きタックルを成功させる。
「この程度で!」
「どうかな!」
 ドシャアアア―――。
 突然、鰤々之進と鬼武者が倒れ込んだ地面が‥‥崩れる。
 落とし穴だ。それは鰤々之進が河童たちを使い仕込んだもの。
「なんだとぉー!」
 これで、鬼武者を一時的にだが、足止めしている‥‥その間に!

 だが、鬼武者の伝心での指示で、本物のグレースも囲まれてしまっていた。
「まずいですわね」
 こうも近づかれては神楽法を使う余裕もない。
「お下がりください」
 絶斗が鬼を蹴り飛ばし距離を取りながら、グレースへも注意を向ける。既に彼の身体は無数の傷でボロボロだ。
「どこへ下がれというのかしら。今は絶斗の傍が一番安全ですわ」
「グレース様‥‥」
 無情にも集まってくる鬼の数は増える。このまま彼一人で支え切ることはできないだろう。
 そして‥‥。
「!」
「こいつで‥‥どうじゃあ!」
 吹き荒れるは切り開く力。
 奈々が吹雪を放てば、それと寸分遅れず。
「しっかり、集めてくれたもんだねぇ!」
 春子もまた吹雪を重ねる。
 それはグレースを狙い集まった敵を一網打尽にし‥‥そして。
「さあ、見えたよ、突破口が!」
 こじ開けた、右翼の一角を!
「九郎さん、一夜城強襲班に連絡を。あのお猿さんに目にもの見せてあげましょう☆」
「了解だ!」
 飛ぶ伝心。
 動き出すは力を温存していた一夜城強襲班!

 戦いは次のステージへ!
「さて、僕らはここの敵をぶっ潰すとしよう。退路も必要だからね」
 一つの仕事を終えたが、まだ終わりではない。
 団次郎は鬼武者の姿を求め駆け出した。
 右翼での戦いは‥‥続くのだ。

◆一夜城、堅牢なり
 そのサイズは、寛永で各地に残る巨大な城に比べれば小さなものである。
 だが、大鬼が牽き、地上を進むその威容は誰もが体感したことの無いものであった。
「こんな知能の低い建物作って攻めてくるなんて、やっぱり知能もお猿さん並みだったようですね」
 それを目にした根子 ナラの口から漏れる感想。
 だが、言葉とは裏腹にナラの頬を伝う冷や汗。感じるのは危険。
「大丈夫か、足が震えてるぞ」
 そんな妹の様子に根子 楤はポンと肩を叩く。
「大丈夫ですよ。はぁ、しかし、本体もあんなお猿さんだったのですね!」
 兄の手を振り払い、ナラは一夜城の最上階から顔を見せる鬼神・豊臣秀吉の姿を睨む。
「どうせ長時間戦うのでしたら、もっと麗しい殿方でしたらよかったのに‥‥これでは、お兄様の方が幾分かマシなレベルですね」
「あのなぁ‥‥」
 そんな軽口を叩いていられるのも来世人ギルドの面々が百戦錬磨だからだ。
 きっと既にこの城の攻略法も考えて‥‥。
「では、朱雀の出番じゃな」
 まずは空からということになり、富栄弩院 頼伝や楤、龍湖 多輝子が仲間たちに翼を授ける。
「めっちゃ怖いので早めにかたして下さいねー」
 多輝子は軽くそう言ってみせるが、実際怖い。
「あのような大きいだけの相手、何するものぞ! きっと止めて見せましょう」
 頼もしく応える湧口 瑞希。彼女にとっては此処こそ己の身を立てる働き場と心得ている。
「じゃあ、これ」
「なんですの?」
 渋谷 冬彦がほい、と高杉 蘭子に渡したのは何かの巻物だ。
「こいつを城中で破れば中は大わらわだ」
 冬彦には何か策があるらしい。
 では、と一気に一夜城へ飛び接近する蘭子。
 パパパパパパパン―――。
 はじける鉛弾。
「‥‥朱雀なければ即死でしたわ」
 ハチの巣で戻ってくる蘭子。
「そうか、とりあえこれ飲んどいて」
 仕方ない、と蘭子の口に聖徳丸をぶち込む冬彦。
「大袈裟なようだけど、本当にハチの巣よね」
 同じように攻撃を浴びて戻ってきたのは偵察に飛んで行ったクリスタル・カイザーだ。
「透明になっていったけど、簡単に見破られたわ。情報通りね」
 どうも、接近する存在に対して的確な対応がされているというのが現状だ。何か絶技とかいうのを与えられてこちらの動きを探知している相手がいるのかもしれない。推測の域は出ないが。
 ならば、大鬼から叩いて動きを止めるか?
「よし、蘭子。斬鉄だ」
 蓮美 イヴが今度は蘭子に斬鉄ノ太刀。
「またわたくしの出番‥‥まぁそうなりますわよね」
「あんたがやるのが一番確実だからねぇ」
 来世人ギルドの特攻隊長的なものである。
「というか、牽いている大縄を切った方がよいのでは?」
「確かにそうかもしれんが、いきなり縄に行くのも危険じゃろ」
 一反木綿で一度上空から状況を確認してきた小鳥遊 彩霞が首を振る。
「ウチが援護するけぇ、まずは鬼の角からじゃな」
「そうと決まれば、一気に行きますわよ」
 ならば、やるしかない!
「お先に失礼!」
 蘭子らよりも先に瑞希が飛び出し、手近な大鬼を狙う。
 巧みに大鬼の陰に隠れながら銃撃をやり過ごし、攻撃を狙う。
「!」
 が、今度は気づいた大鬼の巨大な掌が襲い掛かる。
「ぐぅぅ」
 捕まった。恐るべき握力で瑞希の身体が軋む。
 だが、その時すでに雫石 露花が大鬼の足元へ滑り込んでいた。
「いつだって戦いは怖い‥‥けど!」
 守らなければならない。戦う力の無い者を。
 願いを込めた必殺の裏闇仕掛が大鬼にツボを穿つ。
「グァァァァァァ!!!」
 絶叫と共に瑞希を捕らえる手の力が緩む。
 好機到来。
「これで‥‥終わりです!」
 脱出した瑞希は間髪入れず一撃を放つ。
 まずは1体、大鬼の動きを止める。だが、まだ一夜城を止めるには至らない。確実に数を減らしていくしかないのか?

 一方で一気に城へ突入を考える者もいるわけで。
「それでは~いくわよ~」
『着装!』
 いつもののんびりした感じから、一転、気合の入った掛け声を見せるカーモネギー・セリザワであった。
 着装機巧が彼女の身体を包む。フルアーマーカーモネギー誕生。
 そして、城に向けて一直線!
 従うのは『Fresh GUMI!!』の面々だ。編隊を組んで城へ。
(いいかしら? 飛び込むのはあそこの窓がいいわ‥‥手薄ではないけれど一番飛び込みやすい構造ね)
 クリスタルからの斑鳩での伝心が飛ぶ。偵察してただやられてきたわけじゃあないのだ。
「大鬼、接近!」
「大鬼は引き受けるんで、先に行って!」
 飛び出したのは土方 萌だ。大鬼の一撃を気迫と大太刀で弾き返す。
 他のメンバーも振り返らない。信じて先に進むのみ。
 だって、城は目の前に!
「!!」
 そして、銃口も近づく。
「危ない!!」
 狙われたセリザワ。
 だが、次の瞬間、彼女を庇うように身体を張った沖田 芽衣子が血を流す姿が目の前に。
「芽衣子ちゃん」
「セリザワさんにはいつもお世話になっているからねえ、恩返しみたいなものよ」
 傷つきフラフラと地上へ降りていく芽衣子。
 だが、それも振り返らず城の窓へ!
 いや、城の窓からも銃撃がセリザワに降り注ぐ。
「!!」
 だが、朱雀の力が、まだ倒れることを許さない。それを付与したくれた頼伝の笑顔が不意に浮かぶ。まだ、戦える。
「いきなりカモちゃん砲!!」
 籠手に仕込んだ大砲を‥‥発射!
 窓にいた鬼を吹き飛ばして、叫ぶ。
「御用改めである!! カナタちゃん、お願い!」
「せーの!」
 大砲の爆発に続いて田中 カナタが城内へ‥‥飛び込んだ!
 切り開くのは、ここからだ!!

◆中央、流血戦
「まだ‥‥まだよ」
 鬼の牙がフトモモに食い込む。だが、千絵代はその鬼の首を斬り飛ばすと、頭は蹴り捨てた。流れる血は多く。だが、力は失わない。
 その様子を眺めるファウラは迷っていた。
「治療は大丈夫といってマシたが‥‥」
 絶違ノ伎の効果を大きく発揮するには負傷も止む無しの姿勢だが、見ている方は心配してしまうのだ。
 そして、ファウラにはその姿がよく見えてしまう‥‥そう、そこは地上から高くなった場所。足元は、組まれた材木。
 ダン―――。
 隣で銃声が響く。
 硝煙の臭いとともにグレンが顔を上げた。
「いいロケーションだ」
 ここは彼が現地で協力してもらった大工に頼んで作った仮設の櫓。
「さしずめ、一夜櫓といったところか」
 これならある程度戦場を見回せファウラのように回復に専念もできるし、狙撃ポイントとしても機能する。
「! 下、来ましたよ!」
 更に隣で命が叫ぶ。
 櫓の足元、気付いた鬼が何体か近づいてくる。
 こちらへ来るな、と命が矢を放ち一体を仕留めるが、敵は止まらず。
 鬼の膂力ならばこんな櫓は破壊されてしまう!
「近づけさせないのね」
「ぼっすんサン!」
 だが、櫓の下にはボースンが鞭を手に仁王立ち‥‥と思ったら、直ぐに後ろに下がる。
「わうーん!」
「ガァァァ!」
 前に出るのは愉快な仲間たち。
「な、なんだこいつらぁ!」
 アイヌ犬が噛みつけば、その鬼の頭に熊が爪を降らせる。その隣ではパンダがすげー動きで鬼を撃ち倒す。功夫が足りている!
「きっちりガードするんだわさ」
 ペットの間隙を縫ってボースンも鞭を振るう。
「皆サン、ありがとうございマス‥‥私も‥‥どんなに怖くても痛くても絶対にここから一歩も下がりまセン!」
 櫓の上に逃げ場はない。だが、ファウラはその場を全うするのだ。真言を唱えれば‥‥傷ついたパンダや熊の傷も癒え、それに応えるように鬼を吹っ飛ばす。
 それを見ていたのは真夏‥‥というよりずっと寄り添うつぶらな瞳。
「アイアイ、おらたちも負けてられねえべ!」
「!!」
 赤兜の血に懸けて、普通の熊や熊猫なんかにゃ負けられない。アイアイの鋭い爪が確実に鬼を屠っていくのだった。

 そして、中央の戦場、中枢では‥‥。
「亀甲車、止まれっ! 斬り込み抜刀!!」
 亀甲車の上から真沙花が飛び降りざまに鬼を唐竹割に斬る。
「ゴーゴーです♪」
 そして、亀甲車の扉を萌瑠が開くとそこからローリングするように飛び出す影。
 抜刀したそれは‥‥巨大な太刀となり敵を断つ。
「リングイン、なんだな、これが」
 いや、ゴングはとっくに鳴っている。ほとんど乱入だ。
「ずんどこ撃ちまくるので近くの人は気を付けてください」
 と杏花が言うが早いかすでに撃ってる。
「おい、杏花、もう少しタイミングを、だな」
「ご先祖様、鬼将です」
 文句を言いかけた真沙花だが、それを遮り杏花が亀甲車の砲身を向けた先‥‥ついに届いた、忠勝に。
「はっ!」
 気迫と共に真沙花が忠勝に斬りかかるがそれは槍に受け流される。
「くっ!」」
 次の瞬間、真沙花の後ろに鬼が!
「ごめん!」
 だが、その鬼は流麗な剣閃によって切り伏せられる。
「おお、伊織殿、かたじけない」
「お気を付けを。乱戦ともなれば我らも陣を組み囲まれぬようにしなければ」
 伊織が真沙花の背中を守るように立ち、鬼を牽制する。
「伊織殿や武蔵殿と共に戦えるは武人の誉れ」
「義父と同列に扱っていただけるとはお恥ずかしい」
 そんなやりとりをしながら安心して伊織に背中を預け、真沙花は忠勝を睨む。
 と、その武蔵だが、彼もようやく忠勝に肉薄しその鋭すぎる一撃を放つが、転移で回避されてしまう。
 そこへ繰り出される透哉お槍が忠勝の脇腹を掠める。
「次、頼むぜ!」
 だが、追撃せずに声を上げる。
 以前戦った者は知っている。この鬼将に一人で何度も仕掛けるのは効果が薄いことを。
「益洲刈刃ぁっ!」
 極奴がそれに続き大太刀を振りぬけば忠勝の肩に傷が走る。
「ぬうん!」
 だが、反撃に繰り出された槍が極奴の腹を貫く。
「ごはぁ‥‥」
 恐るべき威力に大量の血を吐き出し膝を着く。
「死ねっ!」
 更に追い打ち!
 ガン―――。
 だが、それは突如として現れた盾によって防がれる。
「それ以上は‥やらせません」
 澄香の操る置盾型の機巧が転移してきたのだ。
「皆さんは攻撃に集中してください!」
 守りは自分が、と前に出てきた澄香が告げる。そして、玉の力も発揮するために、ここにいる。
「はぁい、じゃあ澄香ちゃんは守りに集中しててねっ、と!」
 周囲の鬼は相変わらず零が引き受けている。
「雑魚は近づけさせないので」
「なのです」
 亀甲車の中から萌瑠や杏花の声が聞こえる。とともに、爆発や砲撃音が響く。
 態勢は整った。ならば、忠勝を倒してしまっても構わないのだ。
 刃が鬼将の身体にいくつもの筋を走らせ。銃弾が鎧のような肌を穿つ。
「おおおおおおっ!」
 最大級の気迫が‥‥そして、槍が、忠勝の胸を貫いた。
「ほう」
 思わず武蔵が呟く。
「見事だ‥‥」
 そして、敵である忠勝もそう漏らし‥‥。
 透哉の槍が会心の冴えを見せた。
 いける。このまま一気に。
「‥‥どうやら勝負はあったみたいね。そうよね、一人で戦ってるわけじゃないのだし」
 そうぼやいたのは鬼を掻き分け現れた千絵代だ。その身はにはおびただしい血が流れている。自分の血も、鬼の血も。
 鬼が千絵代の背に襲い掛かるが‥‥意に介さない。その身は鋼。
 いろいろと仕込みをして忠勝を仕留める算段だったが、既に奴は虫の息。
「せめて、これで終わりにしてあげるわ‥‥」
 千絵代の一撃が、これでもかと言わんばかりに忠勝の命を刈り取ったのだった。

◆一夜城、停止す!
 一夜城内は侵入者によって混乱を起こしていた。いや、秀吉だけは相も変わらず余裕を崩さないのだが。
「ふぁいや~!」
 機操の火縄銃をブチかますセリザワ。敵を倒す必要はない、城内で暴れればそれだけ外への警戒は薄くなるのだ。
「危ないっ!」
 セリザワに近づく鬼の角を斬り飛ばしカナタが全力で大暴れ。だが、手が足りないか。
「な、なんだ、こいつらは?」
「おい、そいつを止めろ」
 いや、他にも頼もしい(?)、泰山符から呼び出した武者狂骨や、冬彦がこちらに渡しなおした巻物‥‥その中に入っていた火猪が飛び出して暴れ出したのだ。
「上から変な笑い声が聞こえてくるわね~。でも、もうすぐその下品な笑いを止めてあげるわ~」
 聞こえるのは当然秀吉の笑い声。だが、きっと、秀吉の首を狙う仲間たちが押し寄せて何とかしてくれる。ならば、自分たちはここで役目を果たすのみ。

 そして、外でも。
「そぉら、こいつで仕舞じゃ」
 虎の子の矢を放てば、それは彩霞の狙い通り大鬼の角を撃ち抜き‥‥そして破壊する。
「やりますわね‥‥わたくしも!」
 蘭子も負けじと隣の大鬼に一ノ太刀からの一撃を振り落とす。
 城内の混乱によって銃撃が弱まり、本来の力を発揮しやすくなっているのだ。
「角さえ折ればなんとかするよ!」
 足元ではイヴが力を落とした大鬼へ攻撃を繰り返す。
 やがて‥‥大鬼の、城の移動スピードが大幅に弱まる!

 チャンス到来、当然動き出す‥‥そう秀吉攻略班が。
 だが、まだ銃撃が止んだわけではない。
「頼んだよ」
 だが、その弾丸を受け止める何体ものぬりかべたち!
 相葉 楡が呼んできた助っ人たちだ。複数のぬりかべによる鉄壁のフォーメーションが城へ進む秀吉攻略班の壁となる。
 更に。
「ちょっと黙ってて」
 楡が放ったのは妖黄金の弓の法力を宿した矢。
 それは一夜城の一角に着弾すると‥‥強烈な閃光を放つ。
「めが、めがぁ!」
 火縄銃を構えた鬼たちが閃光に目がくらみ悶絶する。
「よし、行こう!」
「おかげでスムーズに移動できますね」
 突入までに負傷も覚悟していた空木 椋だが、思いのほか被害が少ないことに胸を撫で下ろす。これなら、秀吉との戦いでの回復に集中できる。
 いや、こちらの動きに気付いたのか、大鬼が城を牽く大縄を捨てて襲い掛かってくるではないか!
「そうはいきませぬ!」
 その動きに対し、瑞希が反応し、動く。
「忠二殿に願った力作、その力、今こそ!」
 構えた巨大な剣がジャキンジャキンと刀身の部分が切り離され‥‥そして、蛇腹状の巨大な鞭剣となる。
 その鞭剣を瑞希は迷いなく振るった。
「うがぁー!」
 その抜群の間合いをもつ先端が大鬼の顔面を穿つ。
 だが、そんな瑞希にも銃口が向けられ‥‥。
「はーい、邪魔は駄目ですよー」
 攻撃に集中する瑞希の邪魔はさせない。多輝子の放った水龍神霊迎えノ舞が幻影の水龍を伴いてその狙いを逸らす。
「助かりました、多輝子」
「今のうちですよー」
「ああ、露花、参ろう」
「うん、怖いけど‥‥行こう!」
 ここが踏ん張りどころ。秀吉攻略班の面々が城に入り込むまでなんとしても踏ん張らないといけない。
「っ!」
 萌もまた、大鬼を相手取り奮闘していた。
「あー、もう、何しやがんだこの大鬼! アイドルの顔に傷がついたらどうすんだ!」
 だが、攻撃を捌くのが精一杯。角を狙ってる余裕は無い。
 一人では無理だ。だけど。
「萌ちゃん、お待たせ!」
 戦線復帰してきたのは芽衣子。
 さぁ、オンステージ。
「萌ちゃん、合体攻撃、一気にいくわよ!」
「はい!」
 二人なら出来る。一気に鬼を追い詰める!
「うむ、拙僧の虎の子の聖徳丸を使ったのだ、頼んだぞ」
 そんな二人を眺め、手を合わせる頼伝。
 戦場の気配が変わる。それが今のタイミングだ。
「では皆様、一気に回復といきます」
 勝負所と踏んだナラは全員のダメージ回復を図り、勝負をかける。
「キビキビ働いて、美しい勝利を目指しましょう!」

 そう、今が最大の好機。
「みんな、行って!」
 楡が放った矢が一夜城の正門のような場所に突き刺さり、門番的鬼の視界を奪う。
(内部にも連絡を取ったわ。派手にここ一番の大暴れをするから、一気に突入して)
 斑鳩によりクリスタルの声が伝わる。
 そして、その合図が鳴る。
 ドゴォォォン―――。
 響くはセリザワが残してたもう一発の大砲の発射音。
「罠は無さそうだし、行って!」
 城門の辺りの罠を調べた?からゴーサインが出る。
 いざ、城内へ。
 そして、秀吉のところへ!

 だが、そこは本当の地獄だ‥‥っ!!

◆秀吉、君臨す
 ついに東軍勢が一夜城内も勢いで突破し、城の最上階へと達する。
「豊臣秀吉、お命頂戴!」
 真っ先に駆け上がったのはミスト・カイザーだ。
「‥‥っ!」
 巨大な猿。いや、ゴリラのような‥‥。秀吉の姿は、なぜか寒気すら感じた。
「なるほど、本体は地獄にあるらしいでござるが‥‥ここが地獄でござったか」
 飛び込んだのは地獄。最も危険な戦いの幕開け。
「なーに、地獄に飛び込む覚悟を決めなきゃ鬼神は倒せない‥‥ま、ちょっとした冒険だけどね」
 階段の出口で固まっていた弟を小突いてミア・カイザーも上がってくる。
 遂に、秀吉に相対する東軍の精鋭たち。さあ、どう動く?
 先に仕掛けてきたのは秀吉だった。
「ウホホホホ」
 無造作に歩いてきて、手近にいた村正 一刀に殴りかかる。
「ぐぁ!」
 回避しそこね仰け反る一刀。
「き、気をつけろ‥‥こん、なん二、三発も喰ったら‥ヤバい‥‥」
 一発であばらを何本も持っていかれている。
「心配するな、まずは小手調べだ」
 嫌な笑みを浮かべ秀吉はまたも腕を振るった。
「みんな散って!」
 藤枝 藤花の声と共に、東軍は秀吉を囲むように展開。
「こちらも小手調べさせてもらいますよ」
 いうが早いか、藤枝 桜花の攻撃は秀吉の死角からその腕に大きな傷を作る。
「オホゥ」
 だが、秀吉は痒い、とでも言わんばかりにその傷跡を軽く掻いて見せた。
「舐めないで! 傷付けられるなら‥‥倒せるはずよ。ミスト君!」
「心得た!」
 藤花が秀吉の正面から殴りかかれば、それに合わせて跳躍したミストが秀吉の頭上に刀を突き立てる。
 連携攻撃は確実に決まり、確実なダメージを刻む。
 普通の鬼将相手であればそれで少しずつでも弱らせることが出来るはずだ‥‥だが。
「なるほど、この再生能力‥‥いやはやどうしたものか」
 桜花が呟いた通り、秀吉の傷は瞬時に塞がっている。鬼の再生能力は確かに凄いが。これは異常だ。そう、かつて恐るべき再生能力を誇った敵‥‥黒田官兵衛のような再生能力である。
「どうした、ならば角でも折れば、とでも考えているか? 無駄だ無駄」
 圧倒的自信からなのだろうか、秀吉は剥き出しの一本角をガードしようとすらしない。
 どうする? 一体、どうする?
 東軍勢の動きが止まる。
「来ぬのか、では、こちらから行くぞ。切り裂け『天下平定』!」
 秀吉が声を上げれば、背中に突き出した11本の飾りのようなものが宙に射出されるではないか。確か、報告にもあった攻撃だ。天下平定、それがその武器なのか技なのか、とにかくその名称なのだろう。
「ゆけい!」
 秀吉が合図するまでもなく、天下平定は手近な相手に襲い掛かり、そしてターゲットを切り裂くのだ。
「ぬおおお!」
 11本中5本も飛んできたミストは身体を捻り、背を逸らせ、アクロバティックにすべてを回避してみせる。
「ほう、よきよき。ではこれはどうだ」
 パンパンと手を叩く秀吉は掌を構え‥‥法力の弾丸を放つ。
「な、なんとぉー!」
 ミスト、回避‥‥出来ない。それはホーミングするように曲がり、逃げた先を追ってくるのだ。
「っ!」
 だが、ダメージは無い。背中で何かが燃え尽きる。森住 ブナによって貼り付けられた除傷形代だ。
「フハハハ! このスーパーサポーターブナちゃんの力の前ではそんなショボい攻撃など無力無力ぅ!」
 挑発するかのように、いや、いつものノリなだけかもしれないがブナは勝ち誇る。
「ウホホホ! ではこれはどうだ」
 秀吉は握った拳から、人差し指を立てるとそこに法力弾が出現。更に中指、薬指、と立てればそこにも法力弾が。計三発をブナに向けて放つ!
「のわぁー!」
 二発は予め貼った形代が無効化するが、三発目は直撃し、形代を消耗させていく。
「ブナちゃん、余計なこと言うから‥‥」
 と心配する椋だったが、内心では‥‥。
(少しでも時間を稼げれば‥‥)
 そう、秀吉を引き付けている間に、放たれた天下平定を相手に皆が奮闘していた。
「どんどん撃ち抜くぞ☆」
 霧ヶ峰 えあ子が月読命ノ舞から放つ光の矢が天下平定を捉える。秀吉が自動命中させる攻撃をするならこっちもだ。
「あれ、壊れないかぁ」
 だが、未だ健在。
「では、今ダメージを受けたアレに向けて‥‥シュートよ!」
 続けとばかりにアステ・カイザーの追撃。
 流石にそれを受け天下平定の1本は砕け散る。
「よーし、こっちも! でりゃー!」
 どんどん破壊しようとミアは小手に仕込まれた大砲を向け、発射。
 どぴゅっ―――。
 なんか、変な音がした。
 しかし、しっかりと放たれる法力的熱線。
「あれっ!」
 だが、それはあっさりと回避されてしまう。攻撃はなかなか命中し難いようだ。
「意外と素早い? 参ったなぁ。って、こっち来たぁ!」
 怒ったわけでは無いが3本ほどミアの方へ飛んで来る。
 ダメージは大きくはなく、ブナの形代で無効化できる程度だが‥‥数が多い。
「さてさて、どのタイミングで回復させるか、じゃのう」
 回復を担当する毒島 右京は苦虫を噛み潰したような顔‥‥は地顔だが、眉間の皺が数本増えている。
「そのようですね。傷は治すべきですが‥‥ある程度温存しなければジリ貧になりかねません」
 カミラ・ナンゴウも右京に同意し頷く。
 地味な役目だが、彼らの動きが全体の生存を握っているといっても過言ではないのだ。
 幸い、まだ大きなダメージを受けたのは一刀くらいであるが‥‥。
「危なくなったらこっちへ。結界を張りましたから」
 一番後ろで椋が声を上げる。伊舎那天の加護により鬼門封界を発生させているのだ。少なくとも天下平定程度が入ってこれるようなことはないだろう。
 それが、早速出番を迎えた。
「その角‥‥いただきましょう!」
 乱戦の中で桜花はイチかバチか角の破壊を狙う。
 だが‥‥振り抜かれた刃に手応え無し。折れそうな気配すら無かった。
「ウホホホ、残念だったな。お仕置きだ」
 秀吉の反撃。
「桜花姉ちゃんはやらせんで!」
 そうはさせじと白鳳 桃花が着装機巧を纏い立ちふさがる。
 だが‥‥無情にも秀吉はその角で桃花の装甲ごと貫いた!
「!」
 おびただしい血を流しぐったりとする桃花。
「こいつぁ、まずいじゃろ!」
 慌てて桃花に駆け寄り担ぎ上げる朔次郎。ちょうどそこに突っ立っていたからだ。そしてすぐさま桃花を椋の結界の中へ運び込み治療を受けさせる。
「後はわしに任せ‥‥いかん、瀕死じゃ」
 右京が素早く対応しようとするが、地蔵菩薩の加護では対応し切れない。
「いや、わしが」
 と朔次郎が鬼身法を用いれば、桃花の青褪めた頬に赤みがさす。
 鬼身伝播によって鬼ノ体の効果を桃花に与えているのだ。そうさっきもただ突っ立っていたわけではなく、仲間に鬼の力を与える大事な役目があったのだ。
 ならば、後は右京の出番。キッチリと回復させる。
 しかし、秀吉の攻撃は仲間たちをどんどん傷つけていく。
「温存‥‥などとはおこがましかったようですね」
 冷静なカミラが焦り出す。消耗戦の予感がする。
「こ、これはマジヤバです」
 この事態にマリン・カイザーも方針転換。アレを使わざるを得ない!
 東軍勢の攻撃も当たりはするが、すぐに回復‥‥打つ手はあるのか!?
「玉の力も‥‥効いていないのでしょうか?」
 椋が取り込んだ玉を撫でる。相手は一本角。効果はあるのかもしれないが‥‥秀吉の再生能力が絶大過ぎるのだ!
「ウホホホ! この俺の再生能力の前には無力!」
 希望は、あるのか!?

◆幕間
 一夜城で激しい戦いが行われている、その頃。
 外では西軍残存戦力との戦闘などが行われていた。

 城門付近では楡が頑張ってくれたぬりかべたちをねぎらう。
「よし、火縄銃の弾の痕も無いようだし‥‥ありがとうね」
 笑顔でぬりかべたちが地中へ潜って帰っていくのを見送った、その時だ。
「あれ?」
 何か、空から近付いてくる。

「どうしてかしら‥‥こんな時にあの人に逢いたい」
 升田千絵代は胸の奥が熱くなり。

「わたくしは、そう立っているのですわね」
 高杉蘭子には寄って立つモノがある。

「感謝しかありませんわ。その気持ち、必ずお返しします」
 グレース・マガミは天に深々と頭を下げ。

「‥‥」
 そうなるべくして、そうなったのかもしれない。

「そういうこと‥‥なんやね」
 潤賀清十郎の鼻先に穏やかな安らぐ香りがした。

「なんだよ、急に、お前ら‥‥」
 伍法月天の脳裏に浮かぶは信じる友の姿。

「なんでしょうか‥‥この温かい感じ‥‥」
 水上澄香は優しく胸を抱き。

 光、輝く。

◆秀吉、討伐完了?
「皆さんがいてくれるから、僕がいる‥‥」
 空木椋はただ、感謝。

「ウ、ホ?」
 様子のおかしい秀吉。
 光が、満ちる。
 一体、何が起きているのか?
「のうこれはひょっとしたら‥‥」
 鬼身伝播を維持しながら秀吉を観察していた朔次郎は気づく。そして、右京に問いかけた。
「なるほどのう」
 ここは動くとき。
「今じゃあ!」
 右京の声。
 すると、階下から飛び出してくる忍者。
「ウホ!?」
 ボン―――。
 飛び出す煙幕。それは秀吉の視界を奪う。
「仕切り直しじゃ。あの猿、傷が治らんようになってる!」
 朔次郎は気づいたその事実を叫び、皆に告げるのだった。
 何かが、起きている。秀吉の再生能力を奪う、何かが!
「これで!」
「仕舞だよ☆」
 アステとえあ子が放った光の矢がついに最後の天下平定を破壊し切る。
「おっけー! これで秀吉に集中できる!」
 煙幕が晴れ、見えてきた秀吉の影に鞭剣を叩きつけるミア。
 ザクッとした感触。そして、その傷は‥‥塞がらない!
「なぜだ、なぜだ、なぜだ!? 絶対無敵、完全不死のこの鬼神の身体が、どうしてなのだ!?」
 秀吉の狼狽ぶりよ。それは滑稽さを通り越し、文字通り鬼気迫るほどの動揺ぶりだ。
「ウウウ‥‥おのれぇ!」
 焦ったかのような秀吉の雑な攻撃は‥‥しかしミアに命中?
 ドン―――。
「残念、そっちは分身さ」
「ぬおぉ!」
 分身が爆発し、更に秀吉の怒りのボルテージを上げる。
 これは‥‥好機!
 怒りと焦りで我を忘れている秀吉に、いままで回復に徹していたカミラが斬りかかった。このチャンスを逃すわけにはいかない!
「はあっ!」
 気迫と共に薙いだその真忍刀は妖黄金の輝きを放ち。
「うっ」
 秀吉の動きを鈍くする。弱体化させたのだ。超転移があるとはいえ、こちらの攻撃が当たり易くなっている!
 決めるなら冷静さを欠いている今しかない。
「行くぜ村正! 俺の血を吸って‥‥煌めけ!!」
 一刀の妙法村正が妖しく光る。これぞ妖刀の煌めき。
 血の代償を以ってその一撃を‥‥放つ。
「ウホォォォ!!!」
 強力な一撃が秀吉を切り裂き、悲鳴すら上げさせる。
 怒りの秀吉が強烈な反撃を返す‥‥がそこにはまたしても戦線復帰した桃花!
 キン―――。
 だが、その攻撃は何かによって弾かれ。
「マリンはん、バッチリや!」
「マリン、やりました♪」
 青龍雷帝占術による龍ノ鱗が攻撃を無効化してしまう。
 それがまた、秀吉の怒りを倍増させた。
「馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿なぁ!!」
 与えられたことの無い屈辱が、効率的な攻撃も、超転移での回避も頭から抜け落ちるほどに鬼神たるものを混乱させる。
「秀吉は‥‥一人で戦っているのです。そこに脆さがある‥‥だから、みんなで戦っている僕たちが負けるわけがありません!」
 どんどん光を増す玉を手で押さえ、椋は叫ぶ。
「その通りだ」
 不意に、窓の外から声がする。
「あー、おいしいとこで出てくるとかズルよね!」
 ミアは、その男、天草四郎時貞相手にぼやく。
「遅れたことは詫びよう。だが‥‥一気に仕留めるぞ」
 そう、今は四郎と問答している場合じゃない。ここでは大きな助っ人だ。
「フハハハ! やってしまえ!」
 とりあえず偉そうにしておくブナの言葉を合図に、烈火の如き攻撃が始まる。
 魔法、矢、刀。
 ありとあらゆる痛みが秀吉を翻弄する。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、たぁっ!」
 藤花の気合の入った連撃が秀吉をぼっこぼこに殴打し、ふらふらになったところに斬りかかるのはもちろんミストだ。
「これが! えーと」
「愛の力よ」
「そう、愛の力でござる!!」
 一ノ太刀にて繰り出す横一文字の一撃は、秀吉の胸をパックリと割った。
 見えた、勝利への道筋!
「どうやら芝居でもなんでもなさそうですね‥‥ならば!」
 これで仕留める。
 桜花は必殺の気合と共に、神威での跳躍から、大太刀を振り下ろした。
 その時だ。
「あ、乱入」
 真っ先に気付いたマリンが呟く。
 そこに割り込んで来た者がいた。
「秀吉様はやらせませぬ!」
 鬼将・石田三成。
「!!」
 秀吉を庇い、必殺の一撃を浴びた三成は力なく倒れ伏す。
「お逃げください‥‥秀吉さ‥‥ま」
「ウホ‥‥ウホホホ! 三成よ。なんたる忠義! 無駄にはせぬぞ、決してな!」
 その一瞬で冷静さを取り戻した秀吉は、突然、消滅する。超転移。
 ガタン。音は上からした。天井裏へ転移したのか。
「そこか」
 四郎は跳びあがって天井を斬り裂くと、そこへ軽々と身を躍らせた。ギルドの者も続く。
 狭く暗い一夜城の天井裏、その奥。そこが今、淡い光に包まれていた。秀吉の手にした銅鏡が、妖しく発光しているのだ。
「あれは‥‥まさか、八咫鏡!?」
 誰かが言った。その三種の神器は、伊勢神宮に安置されていることを確認したはずだが‥‥?
「ハァ、フゥ‥‥フフフ、フホホ‥‥お前らが神宮に行った事は知っている。だが、俺がその後、これを密かに盗ませたことは知るまい‥‥」
 言いながら秀吉、その姿が霞み、揺らめき出す。逃がすものか、と踏み出すクリスタル、だが四郎がその肩を掴む。
「様子がおかしい。転移ではなさそうだ」
「ウホホ、そうとも‥‥いま近づけば、俺と旅をすることになるぞ‥‥次元の彼方へな‥‥」
「どこへ逃げるつもりじゃ」
 朔次郎がじりじりと迫る。だが、勘が告げていた。ハッタリではない、今ヤツと接触せんとすれば、『一緒に何かされる』と。
「そうとも、ここはいったん退かせてもらう‥‥だがどこへ行くかは、この鏡に聞くんだな‥‥忌々しい玉、忌々しい聖徳太子よ‥‥だが俺は鬼神、全てを克服してみせるとも‥‥いつか必ず‥‥永劫の刻を超えて!」
 パアアアアァァァァ‥‥まばゆい光が鏡から発せられたかと思うと、次の瞬間には、八咫鏡はゴトリと天井裏に落ち、そして秀吉の姿は、どこにも見当たらないのだった。

◆秀吉、いずこへ?
 いずこかへと行ってしまった秀吉。関ヶ原周辺をパトロールしてみたが、その痕跡を見つけることは出来なかった。
 なお、天下分け目の戦いは、中央の忠勝を倒した面々が他の場所へと加勢することで、次第に東軍優勢となり西軍の鬼たちを討伐することに成功したのである。
 三成に関しては、確かに左翼で倒した、との報告があった。しかし、それは影武者だったのかもしれない。本物は、最後の最後で秀吉を助け、東軍に討たれたのだった‥‥。
 ここに『関ヶ原の戦い』は終結する。

 決戦から数日後。導師の十人ちゃんの周りに、ギルドの皆が集まっていた。
「うむ‥‥皆の話を聞き、あれからいろいろ考えてみたのじゃが」
 あくまで推測、と前置きしつつ、ある見解を述べる。
「八咫鏡は、次元や時間に強く作用する神器じゃ。そして秀吉自身も、次元や空間に関与する法力を有していたフシがある。きゃつがそれを用い、実際に何をするつもりだったかは知らぬが、フーム‥‥」
「フムフム言ってるだけじゃわかんないわよ~」
 セリザワは急かすが、十人ちゃんも自信なさげで。
「きゃつはどこか、別の次元へと向かったのじゃろう。きっとこの地上ではない、どこか‥‥それが神の世界なのか、地獄なのか、あるいは己自身を『再封印』でもしたのか‥‥たぶんじゃが、自分自身、どこへ行くかも選べなかったのではないかのう。『知らぬ場所』へ道を繋げるのは難しい、ましてや準備もなしでは。選べたとしたら、やはり封印されていた次元くらいしか‥‥」
「じ、自分で自分を封印しちまったってのかよ?」
 月天の問いにも、十人ちゃんはやはり「わからぬ」とばかり。
「わからない話が多いなかですけど、あえて聞きたいです。つまり‥‥これからどうなるのでしょうか?」
 澄香に見つめられ、十人ちゃんは、ゆっくりと、考えを整理した。

 秀吉は滅んだわけではない。だが、『この世界にはもういない』と思われ、もはや違う次元・世界にいるのでは、ということ。そこがもし、平和な世界であれば、秀吉はその世界を征服するかもしれないが、かといってそれを止める手立てはまったく思いつかないという。
 あるいは、虚無そのもののような次元で、未来永劫さまよい続けるか。このほうが可能性として高いという。そこで、秀吉が復讐心を抱き続けたとしても、八咫鏡がこちらの世界に残されている以上、秀吉がさらに次元を超える可能性は極めて低い。その復讐心を糧に、玉を持つ来世人さえも倒し、次元に穴さえ開ける能力を得ようとしても、いずれにせよそれは何万年、何億年先の話ではないか、と。
 つまり事実上、鬼神の脅威はこの世から消えた、というわけだ。
 ただし、鬼神が消えても、実は鬼全体に向けられた、千年前の封印はまだ残っており、その全解放の刻が、今か今かと迫っている。これが脅威といえば脅威だ。鬼神はおらずとも、鬼将が何十体も同時に襲ってきたら、それはそれで――

「鬼将が束になろうとも、全て殺せば同じですわ」
 蘭子は目をらんらんとさせて言った。頼もしいが、彼女の狙いは外れることになる。

◆戦国来ちゃいました、完――
 それからさらに、後日。
「フウ‥‥さすがに疲れたデス」
 ファウラはギルドに帰ってくると、縁側にふらりと座り込んだ。
「ちょっとハードな日々だったねえ、ははは」
 団次郎も自分で自分の肩を揉む――ここ数日、ギルドの皆は大忙しだった。
 ついに『鬼の封印』が完全に開放された、という報告からほぼ一週間。日本各地に大勢の鬼が出現した。もちろんギルドは、各地で鬼退治を繰り広げた。
 さいわいだったのは、数こそ多いものの、鬼将クラスは1体もおらず、鬼武者にも統率性が見られず、大鬼も子鬼も覇気が薄かったことだ。性癖の凶暴性こそ変わらなかったが、明らかにその戦意も、肉体能力さえも落ち込んでいた。これはおそらく、鬼神秀吉が消えたことによるものだろう、と。鬼神の存在が、配下の鬼の心身に多大な影響を与えていたことの裏づけであろう、と。
「話によると、来世人が来るようになって以来乱れていた気脈も、安定傾向にあるそうですよ」
 椋はお茶をすすって一息つきながら言った。
「鬼はもう出没せず、化身の出現頻度や凶暴化も沈静化していくってことだろうね」
 おかわりのお茶を運んできた春子は、ふと空を見上げた。秋晴れだが、冬はもうすぐそこのようだ。
「やれやれ、これではギルドの仕事も激減ですね」
 桜花は、副業でも探しましょうか、とぶつぶつ言いながらお茶をもらい、ずずずと飲んだ。

「俺の仕事は終わりだな。もはやこの玉は、誰が持とうと変わらないかもしれぬが」
 四郎は『智』の字が浮かぶ手の甲を掲げると、くるりときびすを返す。つまり「しれぬが、預かっておく」と言いたかったのだろう。
「もう行ってしまうのですか? もう少しゆっくりなされればいいのに」
 梅花は、無駄だろうなあと思いつつそう声をかけるが、やはり。
「急遽、ここへ駆けつけて以来、鬼の島へ戻っていないからな。皆が心配しているだろう」
「あら、仲間に心配かけないように、という気持ちは生まれたのですね」
 梅花は素直にそう褒めたが、四郎は顔も向けなかった。
「ありがとうな、四郎はん‥‥大事なときに来てくれて。おかげで、成し遂げることができた」
 清十郎が礼を言うと。
「礼を言うのはこちらのほうだ。秀吉の駆逐は俺たちにとっても悲願。それを成し遂げたのは1人の俺ではなく、大勢のお前らだ」
 背を向けたままそう答え、つかつかと一反木綿に歩み寄りまたがると、やはり背を向けたまま「また会おう」と告げて、大空の彼方へ消えていった。

 封印も解け、そしてそのほぼ全ての鬼をうち倒したことで、鬼の脅威は、去った。
 そして封印が解けると同時に、新たな来世人も、寛永にやってこなくなっていた。鬼に対抗するために現代人を召喚するための儀であったから、鬼の封印が消えたと同時に、その役目を終えたのだろう。
 寛永の世に、冬と、年の瀬と、平和が訪れつつあった。

『戦国来ちゃいました』。堂々、ここに、完け‥‥おっと、誰か尋ねてきたようだ。
「こ、ここが来世人ギルドかい? ‥‥うお、驚いたな、ほんとに現代人がいる!」
 来訪者もまた現代人の格好をしていた。ひょっとして彼は、『最後の来世人』かもしれない。
「人の顔見て驚くのは失礼よ~。ま~わかるわ、わたしも最初は驚きの連続だったんだから~。ん、それなに? え‥‥ええええええっ!?」
 ――待て次号!



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参加者

f.回復要員です
空木椋(ka00358)
Lv283 ♂ 20歳 傀僧 来世 異彩
サポート
a.こちらで。機巧の盾で攻撃に集中する皆さんを守ります!
水上澄香(ka00399)
Lv240 ♀ 17歳 陰傀 来世 異彩
サポート
d.大鬼をとめてご覧にいれます。大きければいい訳ではありませぬ故
高杉蘭子(ka00512)
Lv273 ♀ 20歳 武神 来世 傾奇
サポート
c.式神で情報収集して皆と共有しますよ☆
藤枝梅花(ka00566)
Lv215 ♀ 22歳 神陰 来世 麗人
サポート
e.この回復能力は、いやはやどうしたものか
藤枝桜花(ka00569)
Lv279 ♀ 23歳 武忍 来世 大衆
サポート
b.とりあえずこちらで。少しでも長く足止めできればと思うよ。
潤賀清十郎(ka00609)
Lv254 ♂ 27歳 神忍 来世 傾奇
サポート
e.己が心の命ずるままに、この世に仇為す悪鬼神を討ち果たすのみ!!
ミスト・カイザー(ka00645)
Lv300 ♂ 24歳 武忍 来世 質素
サポート
e.鬼神を倒すには、こっちから地獄に飛び込む覚悟を決めとかないとね。
ミア・カイザー(ka00679)
Lv189 ♀ 24歳 陰忍 来世 異彩
サポート
a.リベンジマッチいきます。私には守るものがあるから
升田千絵代(ka00869)
Lv328 ♀ 25歳 武陰 来世 傾奇
サポート
c.一人でも多く一夜城へ届けるからね
越中団次郎(ka01138)
Lv310 ♂ 32歳 武僧 来世 婆娑羅
サポート
b.死んでも生き返らせるからへーきへーき。いでおんソードなのだよ
藤あきほ(ka01228)
Lv288 ♀ 20歳 陰僧 来世 異彩
b.うろちょろされねえように、釘挿しとかねえとな!
伍法月天(ka01271)
Lv222 ♂ 17歳 武僧 来世 異彩
サポート
e.生きてる限り支えはするぞい。
毒島右京(ka01318)
Lv124 ♂ 35歳 陰僧 来世 大衆
c.赤鬼を一気に駆逐する。
池袋春子(ka01511)
Lv200 ♀ 34歳 神陰 来世 麗人
サポート
d.回復支援となります
根子ナラ(ka01549)
Lv209 ♀ 22歳 神僧 来世 大衆
サポート
c.攻撃主体だけれど多少は回復も。後三連車を出すので乗りたい人居たらどうぞ
溢田純子(ka01629)
Lv244 ♀ 25歳 僧流 来世 大衆
サポート
d.先に潜入して他の突入組に情報を流すわね。
クリスタル・カイザー(ka01634)
Lv245 ♀ 29歳 忍流 来世 大衆
c.今こそ、全ての玉の力を結び付ける時ね。
グレース・マガミ(ka01643)
Lv244 ♀ 28歳 神傀 来世 異彩
サポート
b.三成さんの足留めですかぁ?…回復でお手伝いしちゃいまぁす☆
花屋敷らみ(ka01654)
Lv156 ♀ 15歳 陰僧 来世 麗人
a.ココを突破されるわけにはいきまセン!ワタシも精一杯戦いマス!
ファウラ・クルシューエ(ka01807)
Lv134 ♀ 24歳 陰僧 来世 異彩
サポート
a.中央にこそ戦力が必要か…こちらに回るぞ!
藤枝真沙花(ka01870)
Lv153 ♀ 17歳 武火 大和 異彩
サポート
d.此方にて、主に大鬼を相手取ろうと考えておりまする。
湧口瑞希(ka01873)
Lv187 ♀ 19歳 武空 大和 大衆
サポート
d.はい、皆さん、生きてお家に帰るまでが、天下分け目の関ケ原ですからね~。
カーモネギー・セリザワ(ka01912)
Lv166 ♀ 30歳 武傀 来世 傾奇
サポート
e.
間朔次郎(ka01972)
Lv236 ♂ 27歳 流鬼 来世 傾奇
 いざ、関ヶ原へ!
宮本伊織(kz00008)
♂ 26歳 大和