坊主憎けりゃ雨まで憎い

担当 叶野山 結
出発2018/11/30
タイプ ショート A(Lv250以下) 冒険
結果 成功
MVP グレース・マガミ(ka01643)
準MVP 小冷 煌尚(ka01631)
根子 楤(ka01983)





オープニング

◆それは雨天の事件から
 前田藩が管理する領地内にて、ある事件が多発していた。
 雨天の翌日にきまって『白布に包まれ、木に吊るされた生首』と『白骨化した死体』がセットで発見される、というものだ。
 奉行所が調べた所、頭部は仏僧のものらしい。明らかに人智を超えた現象に藩は化身事件と断定。
 来世人ギルドに解決の依頼が舞い込み、その事件は既に解決したのだが‥‥。


登場キャラ

リプレイ

◆現れた鬼達
 降りしきる雨。気を付けねば体温を奪いかねない天候の中、相対する女鬼は勢いを落とす事無く来世人達に襲いかかる。
 青い肌に、一本角。蒼厳女鬼だと一目でわかる。
 サバンナ・キャメロンが眠りに落ちた事から、目の前の女鬼とは別に仲間が居るのではないかと進言する数名。
 蒼厳女鬼には人を眠らせるような力は無いのだと、誰かが白鳳 栗花に説明した。
 根子 ナラがサバンナに向けて薬師如来真言を唱える。
「‥‥すみません‥‥ありがとうございマス」
 眠くなるような、脳内に靄がかかった状態を振り払ってもらった彼女は、頭を振りながらもナラへお礼を告げる。
 鬼達と距離を取る中で、ミスト・カイザーは叔母のグレース・マガミに何事かを耳打ちした。
 頷いた彼女は、すぐに一つの魔法を成就。
 榊樹女ノ舞。巫女姿にて舞い、成就したその魔法は、来世人達に神の加護を与えた。
 ミストが数歩下がって闇夜に溶けていく。彼が着ている忍者装束が、闇の中での行動をやりやすくしてくれる。
 大虚ノ術を成就し、その場を離れたミスト。
(頼むわねぇ、ミスト)
 甥がしようとしている事を心の中で応援し、グレースは目の前の事に集中する。
 彼女の手の甲に浮かび上がる『礼』の文字。
 玉の力を発揮させている彼女。この玉の力により、鬼達を倒す事が少しでもやりやすくなるはずだ。
 サバンナが眠らされたという鬼の能力を考えると、おそらく親玉との距離はそう遠くないだろう。この力の影響も、範囲内ならば与えられているはず。
 甥が少しでも倒しやすくなる手助けにもなればと、思う。
 ミストと時を同じくして、根子 楤も、戦いの場から少し離れた。地上にて、ではなく、空へと。
 彼が来ている僧兵装束には隠密行動を手助けしてくれる力がある。彼が持つ隠密技能もあり、その姿は悪天候の中で隠れる‥‥ようで、隠れてなかったりする。
 事前に成就していた玄武水帝占術はともかく、その姿に上乗せするように朱雀炎帝占術を用いた彼の背中には朱雀の羽が浮かび上がっていたからだ。
 朱雀の翼があるぶん目立つ姿ではあるが、隠密の法力を宿す装束のおかげで、それでも注目度は下がっていた。
 気にせず、彼は空中に留まる。物事を、戦場を、俯瞰して見るのに、空中はうってつけだ。
 彼と同じように、玄武水帝占術と朱雀炎帝占術を成就しているのは富栄弩院 頼伝。彼は手に打神鞭を持ち、一度打ち鳴らす。
 眼前の鬼の調伏に、栗花も手を貸す。乱棒鬼身を成就した後、金砕棒を持って地を蹴った。猿飛ノ術による加速は、蒼厳女鬼へあっという間に肉薄する。
 グレースが成就した天照大御神ノ舞が、皆の視界を明るくする手助けをしていた事もあり、栗花は蒼厳女鬼の角めがけて金砕棒をスイングした。
 狙い通りに当たり、粉砕する。
 まずは一体の角の破壊完了。
 彼女の攻撃に助太刀するように、ナラの放った矢が後押しする。狙った矢が体に当たり、傷を負わせる。
 回復しない様子を確認し、よし、と小さく呟く二人。
 彼らが戦う横で、小冷 煌尚が唸る。
「ううむ‥‥」
 見鬼道術を成就していた彼は、鬼の能力である千里眼や浄天眼による視線を感じ取っていた。
 成就した術と着ている狩衣の効果が合わさった結果だ。
 えも言われぬ不快感が肌を撫で、ぞわぞわと悪寒が走る。
 言の葉に乗せた呟きを、近くのグレースに届ける。
「呪鬼が居るのは確かだな。こちらを見ているようだ」
「やっぱり、そうなのね」
 煌尚の言葉で確信が持てた。
 何かしらの連絡手段があれば良かったのだが、こればかりは仕方がない。向こうからの連絡を待つしかなさそうだ。
 それまで、こちらはこちらでやるしかない。
 『礼』の文字が浮かび上がった手が、巫女服の一部を掴む。
 次なる魔法はいかようにして皆を助けるか。それを考えながら、彼女は次の舞の準備をする。
「俺は女呪鬼を探しに行ってくる」
 皆に聞こえるように告げて、煌尚は地面を蹴った。
 戦う前から、猿飛ノ術は成就済み。加速した彼の体はその場を離れ、女呪鬼を探しに出かけた。
 頭上で飛んでいた頼伝にも煌尚の言葉は届いており、「頼んだぞ」と呟く。
(拙僧は拙僧でやらねば、な!)
 打神鞭を持ち、彼は飛び回る。
 鬼達に近づくように降下したかと思えば、すんでのところで上昇する。
 逆に、近づきながら鞭を振るう事もある。対象とする鬼は不規則に選ばれ、固定されることはない。
「仏ウイングは空を飛ぶ!」
 仏ウイングとは一体?
 そんな疑問が頭をもたげた者は敵も味方もだろう。
 さておき、彼が振るう打神鞭は、鬼達に当てる際、さらなる効果を与える物となっていた。
 二十一の節を持つ打神鞭は、攻撃の際に節が分かれる。それが鞭の役割となって相手に打撃を与える物となっているのだが、それにある効果が付与されている。
 正確には、彼が着ている服による効果、ではあるのだが。
 僧兵の衣服を纏う男の、打神鞭を一体の鬼の角へと振るう回数が増えた。阿修羅真言を成就した結果だ。それにより、鞭の音特有の鈍い音が五回響く。一瞬の閃光が一度だけ鞭を走り、鬼へと伝わる。甲高い悲鳴が、女鬼の口から発された。
 鞭を通じて鬼に伝わったのは雷撃。
 さらに、雷撃はこの女鬼の弱点である。
 それを見て、「うむ」と満足げに頷く頼伝。
「仏は全てを見ておられる。観念することだ」
 のたうち回る女鬼。
 他の女鬼達も、頼伝の鞭に警戒する様子を見せるが、彼以外にも警戒しなければならない。
 そう、例えば、金砕棒を持った栗花とか。
「悪い事する奴はボコボコにしてやんよ!」
 不敵な笑みを浮かべる栗花。
 彼女の力だけではまだ折るのは難しい。
 補助するため、楤が手伝いに向かう。
 朱雀の羽の幻影を纏い、彼は鬼の背後に回り込んだ。
 栗花の金砕棒が角に当たる。
 一ノ太刀を乗せた楤の短刀が、鬼の角を狙う。
 横に薙いだ短刀は、角を綺麗に分断させた。
 角を折られ、絶望に叫ぶ鬼。
 その悲鳴を聞き、栗花は鼻を鳴らし、高らかに言う。
「悪い事した罰だ! 覚えとけ!」
「倒したら覚えていないような気もするけど‥‥」
「いいんだよ、細かい事は!」
 思わずツッコミを入れた楤に返しつつ、栗花は金砕棒を持ち直した。
「次は体だ!」
 宣言し、特攻する栗花を見下ろしながら、「やれやれ」と呟く楤。
 妹のナラの様子を見やれば、彼女は地蔵菩薩慈悲真言を、攻撃を受けていたグレースに施しているところであった。
 兄の視線に気づいた彼女は、手を動かして「早く行け」のジェスチャーをしてみせる。
 相変わらずの塩対応に肩をすくめて、楤は空を飛び回るのだった。

◆晴れにしなけりゃお前を食うぞ
 時は少し戻り、ミストが親玉である鬼を探し回っている頃へ。
 屋根の上に上り、上空から探すミスト。
 蜘蛛次郎が珍しくラッキースケベとは無縁の衣装を作成したその忍者装束は、雨が降る闇の中に姿を溶け込ませてくれる。
 先ほどの女鬼達の周囲から少しずつ索敵範囲を広げ、親玉と思われる鬼の影を探す。
 視線を忙しなく動かす彼の目に、グレースが放つ天照大御神ノ舞による明かりが見えた。
 それと同時に、何かの影が光明のおかげで動いているのも見つけ、その場に静止して動きを待つ。
 やってきたのは煌尚。彼もまたミストを見つけると、近づいてきた。
 自分が得た情報を伝えるべく、口を開く。
「伝えたい事がある。親玉は女呪鬼の類で間違いなさそうだ」
「根拠は何でござるか?」
「こちらを見る視線があった。この服と見鬼道術が教えてくれた」
「なるほど。わかったでござる」
 煌尚の言葉を聞いて納得する。
 自分が探した範囲とこれから探す範囲を煌尚に話し、一緒に探索することになった。
 視力や聴覚、殺気については、ミストに利がある。彼についていくのがいいだろう。
 はぐれぬように気を付けながら辺りを探す。
 探索をしてしばらく経った頃、ミストが立ち止まった。
 場所は長屋の近く。道幅は余裕もあり、戦う事になっても大丈夫そうだ。
「‥‥居たでござる」
 小声で煌尚にだけ聞こえるように告げ、彼は持っていた真忍刀を抜く。
 眼下に見えるは、イタコのような姿をした者が一人。このような場所とは不釣り合いな出で立ち。女呪鬼と見るべきだろう。肌の色まではまだわからないが、先程相対した女鬼達が蒼厳女鬼ならば、その上位――つまり、蒼厳女呪鬼とみていいだろう。
 ミストが胸元に下げたホイッスルを取り出す横で、煌尚は止まらぬ悪寒に違和感を抱く。
 自分を見つめている視線が浄天眼もしくは千里眼であれば、服の効果で見られている事がわかる。その感覚がまだ続いているということは、答えは一つしかなく。
「ちょっと、待っ‥‥」
 制止の言葉を言い終わる前に、甲高い笛の音が響いた。
 雨の中でも音は響く。一般的な呼子笛よりも高く、大きな音が出るそのホイッスルゆえ、あの女鬼達と対峙している彼らの耳にも届くだろう。
 イタコ姿の者が振り向いた。
 青い肌に二本角の女鬼。手には大きな数珠。予想通り、蒼厳女呪鬼で間違いなさそうだ。
 口元に笑みを浮かべ振り向いたその姿に、ミストは眉をひそめ、煌尚は舌打ちした。
 向こうはおそらく煌尚の動向に注目していたのだろう。浄天眼で煌尚が何を言っているのかを見て注目し、見張っていたというところか。
 ホイッスルと同時に消えた悪寒が、彼女が浄天眼の使用をやめた事を知らせる。
 女鬼が歩を踏む。
 何の陰陽法を使用する気かはわからないが、早めに片を付けるべきだ。
 煌尚が降りるのに続き、ミストも地に降り立つ。
 数珠が動く。何かをした様子だが、サバンナの時のように、眠るような気配もない。
 代わりに襲ってきたのは脱力感。法力を奪われたようだ。
 真忍刀を持って肉薄するミスト。二メートルを超える刀身が闇夜の中で鈍く光る。
 加速している煌尚が後ろに回り込み、手裏剣を放つ。二十五センチの三方手裏剣は、鬼めがけて飛んでいく。
 当たった手裏剣に女呪鬼がうめき、少し不思議そうな顔をするも、手裏剣を外した後、その顔はすぐに痛みを忘れたかのようにケロッとした。
 傷を回復したのだとわかる。
 手裏剣だけでは決定打を与えるには心許なく、ミストに頼るしかないかと思った時、「仏ウイングは空を飛ぶ!」という声が聞こえてきた。
 頼伝の姿が空中に浮かんでいる。朱雀の力で飛んでいる僧兵衣装のその男は、鞭を脇に抱えると、籠手を嵌めた手を突き出した。
「仏ビームは熱光線!」
 しごく真面目な顔と声で、頼伝の籠手からどびゅ、という微妙な音と共に熱線が浮かぶ。
 それは女鬼に直撃したが、そこまで大きなダメージとはいかないようだった。
 すぐに癒される女鬼の傷。
 気になったミストが彼に問う。
「あちらの戦況はどうでござるか」
「うむ。安心するがよい。残り一体にまで調伏してきた」
 彼の言葉に安堵の息を吐き、ミストは改めて真忍刀を持ち直す。
 狙うは角。せめて一本だけでもと願い、突撃するミスト。
 女鬼の数珠が動く。数珠をミストに向けて放り投げようとするのを阻止するべく、煌尚が手裏剣をもう一度放つ。
 補助するように頼伝の打神鞭が唸り、女鬼の片腕を絡めとる。
 そして、ミストの刀が振るわれ、一ノ太刀を乗せた一撃が角を直撃する。
 大きさ故、必然的に角二本に触れる形となったが、片方のみ切り落とせたが、もう一本までは流石に難しく。息を吸いながら刀を引く。
 次の手を‥‥と、思った時、二筋の光が、天照大御神ノ舞による光源の方から走るのが見えた。
 一つは女呪鬼の残る角へ、もう一つはその下の体を直撃する。
 ナラとグレースが放った月読命ノ舞によるものだとわかった。
 この場にいる彼らには知る由もなかったが、実は楤がこっそり見に来て、すぐにグレース達に知らせに来てくれたのだ。
 そのおかげで、迷うことなく月読命ノ舞を放てたというわけだ。
 煌尚が叫ぶ。これを好機と見ての言葉が彼の口から出る。
「一気にたたむぞ!」
 おう、という声が頼伝とミストの二人から上がり、それぞれの武器が女呪鬼に直撃する。
 動きも力も弱まっているのを、蒼厳女呪鬼は感じ取っていた。何故弱体化しているのか、わからない。
 わからない彼女がわかるのは、自分の命が潰えるということ。
「おのれ‥‥! 雨も坊主も、消し去りたいだけであったというのに‥‥!」
 鬼の本心が、憎しみの言葉が、雨の中来世人達に届く。
 最期に受けた一撃はミストの刀。
 斬られた体の痛みを長く覚えることなく、鬼の体は雨に濡れた地面に沈んでいく。
 最期の言葉をそのまま受け取るのならば、彼女はもう雨にも坊主にも憎しみを覚えなくてよくなったのだ。

◆そして晴れを迎える朝へ
 念の為、周りを確認し、煌尚にも視線を受けていないか確認をとる。
 大丈夫だという答えを受け、安堵の溜息をこぼすミストと頼伝。
 先程、女鬼達と対峙した場所へ戻れば、ナラに地蔵菩薩真言で回復してもらったようで、全快の女達と楤が居た。
 グレースが光源を消すその近くで、サバンナが手をかざす。
「あ、雨が‥‥」
 小降りになってきた雨は、少しずつその量を減らしていく。
 迎える朝は、どうやら太陽を拝めそうだ。



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参加者

b.然らば夜目も効くゆえ、大虚ノ術を使って探索し、見つけ次第ホイッスルを。
ミスト・カイザー(ka00645)
Lv238 ♂ 24歳 武忍 来世 影
c.薬師で起きますよね? 天照を地蔵に変更しておきました
根子ナラ(ka01549)
Lv99 ♀ 22歳 神僧 来世 異彩
b.見鬼と感鬼の装束で、鬼の化けの皮を剥がしたい所…。
小冷煌尚(ka01631)
Lv120 ♂ 23歳 陰忍 来世 影
a.仏ウィングは空を飛び、仏ビームは熱光線!!
富栄弩院頼伝(ka01639)
Lv197 ♂ 36歳 僧流 来世 異彩
a.今回は支援に徹するけど、首魁は確実に潰したいわねぇ。
グレース・マガミ(ka01643)
Lv119 ♀ 28歳 神傀 来世 異彩
z.妹のナラにこき使われる、兄です。人手足りないところへ行くよ
根子楤(ka01983)
Lv138 ♂ 29歳 武流 来世 影
a.悪天候でも悪い事とする奴はボコボコにしてやんよ
白鳳栗花(ka01993)
Lv277 ♀ 16歳 忍鬼 来世 婆娑羅
 ‥‥‥‥(眠っている)
サバンナ・キャメロン(kz00003)
♀ 18歳 神忍 来世人