未来へ花は咲き続ける

担当 叶野山 結
出発2019/02/14
タイプ イベント C(Lv無制限) 日常
結果 成功
MVP 富栄弩院頼伝(ka01639)
準MVP 升田 千絵代(ka00869)
水上 澄香(ka00399)





オープニング

◆あれから
 鬼秀吉との決戦後から、一年が経とうとしていた。
 現代に残った者、寛永に戻った者。
 彼らに流れる時間はどの時代においても等しく流れている。
 季節は巡り、花も四季に合わせて咲き誇る。
 花のように、人の想いもまた‥‥。

登場キャラ

リプレイ

◆桜舞う季節に君と
 あれから一年。
 桃色の花びらが、風に吹かれて舞う。
 陸奥 熱士から話をしたいと誘われ、栄相 サイワはそれに応じて、桜咲く公園に共に来た。
 周りから、自分達はどう見られているのだろうかと思いつつも、桜の下にレジャーシートを広げ、その上にてサイワが作ってくれた弁当をつまむ。
 青い空に色鮮やかな桃色。
 現代に戻ってきてから見るこの景色が、本当に帰ってきたのだと二人に実感させる。
 少し、間が開いて。その沈黙がやけに緊張を誘う。
 頬を赤らめながら、サイワが熱士へ振り向いた。
「そういえば、お話って何かな‥‥?」
 向き直る事で、心臓が早鐘を打つ。
 正座をとり、改めてサイワを見る熱士の顔もまた赤く。
 背筋を伸ばして、彼は彼女を見る。
「サイワちゃん、今はまだ学生だけど長くゆっくりと最終的には結婚して年とってと段階進めて行こう」
 結婚前提のお付き合いを、と申し込んだ彼の言葉に対するサイワの返事は、微笑みと共に。
「うん、嬉しい‥‥私も、熱士さんの事、好きだよ‥‥。これからもゆっくりと、一緒に歩いていけたら、って、そう思っている」
 サイワから伸ばされた手は彼の膝の上の手へと。
 繋いだ手を引かれ、彼女の体は彼の胸の中へ。
 囁かれた言葉は、二人の秘密。

 姉からのお付き合い報告を受けてからさほど日は経たぬ頃。
 次は妹が幸せな様を見せてやるのだと言わんばかりに、栄相 セイワは花嫁姿となってホールの扉の前に立っていた。Aラインのドレスが、控えめな体型を強調しすぎないようにしている。
 隣には、介添え人となる男性が立っている。世話になっていた孤児院と関わりのある人だ。
 やがて扉が開き、神父が立つ祭壇の前には、夫となる東雲 凪が白タキシード姿で彼女を振り返って待っていた。
 バージンロードを歩き、凪の隣へ並び立つ。
 神父の前での誓約。誓約書への記入。そして、誓いのキス。
 一度退場し、フラワーシャワーの為の出番を待つ間に、凪がこっそり耳打ちする。
「ドレス、似合っていて綺麗だぞ」
「凪兄は格好良いよ」
 負けじと返すセイワと少しの間見つめあって、それから笑う。
「凪兄、前も、今も、これからも、ずっと大好きだよ。だから、これからも一緒に居ようね」
「俺もこれまでとこれから先もセイワの事が好きだ。これからもよろしく頼む」
 結婚するならこの時期がいいと話していたセイワの願いを聞き入れて行なった結婚式。
 参列者に混じるサイワと熱士から受けるフラワーシャワーを浴びる凪とセイワ。

 式場の柵からその様子を見ていた一人の僧が無言で手を合わせ、笑顔で去っていった。

◆未来へ紡ぐ種子
 現代はまだあちこちが復興の最中だ。
 升田 千絵代改め、遠野 千絵代もまた、夫である遠野 絃瑞と共に復興に手伝う‥‥予定でいたが、妊婦という事で周囲から止められていた。
 なので、現在は彼女の両親より提示された庭付き新居にて安静にしている最中である。
 明日から梅雨に入ると、先程天気予報が言っていた。
 つわりも収まってきており、お腹も少し膨らんできた。
 近くにて臨時のカフェを営む絃瑞は、昼休みを利用して顔を見に来る。今も傍で妻子を心配している事に苦笑しながら、彼女は思い出したように呟いた。
「そういえば、そろそろ名前を決めないとね」
「名前でございますね‥‥。千歳(ちとせ)でいかがでしょう。男女どちらでもよいでしょうし、千絵さんの字と、千年の平和を祈って‥‥」
「ふふ、いいわね。それから、貴方にプレゼントがあるの」
「エッ?」
 驚く彼に、庭を見るよう伝える。
 そこに咲いているのは、八重咲きの白い花。千絵代が寛永から持ってきたくちなしの花だ。
「綺麗でございますね」
「そうでしょう。それでね、この花をたくさん咲かせるようになったら、いつか寛永で祝福してくれた皆に分けるの。きっと会える気がするから」
 夫の顔を撫で、微笑む。
「まずは貴方に。そしてお腹の中の赤ちゃんへ。ずっと側にいてくれてありがとう」
 彼もまた微笑み返し、ありがとうの言葉を口にする。
「ねぇ、くちなしの花言葉知ってる?」
 口元を薄く伸ばし、彼は返す。

 くちなしの花言葉。
 それは、「私は幸せ者」「喜びを運ぶ」。

◆祝う花はいくつもの
 秀吉討伐から一年。
 本日はミスト・カイザー藤枝 藤花の結婚式だ。
 二人の披露宴は立食式のパーティーとなっており、知人や親族が集っている。
 料理の種類は多様に渡るが、どれも小食でも食べやすい一口サイズだ。
 その中には、希有亭 波新が持ってきた神代餃子も置かれている。寛永から戻ってきてからずっと冷凍しておいたらしい。
 和洋料理はカミラ・ナンゴウがプロデュースし、実際に作ったりもしている品々だ。
 食材がこんなに豪華なのは、ひとえにグレース・マガミの協力あっての賜物だろう。現代にて資産家な彼女が祝い品の代わりとして食材の提供をしてくれたおかげで、カミラも腕を存分に振るえた。
 当のカミラは、現在某水戸藩の子孫への押しかけメイドをしており、今日の為に二日分の料理を家に作り置きしておいたから大丈夫だという。
 グレースを上司とする真神河 絶斗は、本日サポートメインとして動いており、給仕に務めていた。そのせいか、スタッフ達にも時々指示を出したりしている。
 お酒も、寛永から持ってきて保管していた物が振舞われたりされており、普通では考えられない結婚式だ。
 壇上に上がった茂呂亜亭 萌瑠がマイクを通して呼び掛ける。彼女が今日の司会だ。
「えー、本日はミストさんと藤花さんの結婚パーティにお集まりいただきまして、誠にご愁傷さまでございます。南無阿弥陀仏」
 笑い声が湧く。
 会場の視線が司会に向いたのを見て、彼女は主役の二人に関する馴れ初めや戦いを通して結んだ絆などを要約して伝えていく。流石は落語家。時折ユーモアを交えるのも忘れない。
 メインの二人に注目してもらうべく、扇子で壇を軽く叩き声色を変える。
「そんな訳でして、藤花さんと謎の覆面レスラー魔神カイザーことミストさんのご入場です」
 扉が開き、現れた二人は教会での時と変わらぬタキシードとドレス姿。
 当然だが、ミストは覆面をつけていない。
 年齢にそぐわぬほどの若々しさと美貌を兼ね備えている藤花の体躯は、あの戦いから一年経っても衰える気配は無い。ハリも良くますます美しくなっているようだ。これが愛の力というやつか。
 Aラインで、かつ背中が開いているドレスを着ているというのに、彼女の姿は近くで見ても美しかった。
 これはいい嫁さんを貰ったな、とあちこちで囁く声がする。
 拍手が送られる中、席へと座る二人。
 見届けた萌瑠が、声を張り上げ、口上を述べる。
 妻の横顔を、ミストはなかなか見られずにいる。結婚式とはこういうものなのか、という緊張も相まって、彼の心身は固くなっている。
 ほぐすように、藤花がミストの手をそっと握る。
「ありがとう」
 御礼を聞き、藤花が微笑む。
「申し訳ない、藤花殿。拙者が不甲斐ないばかりに、結婚式を先延ばしにして‥‥」
「いいえ、ちゃんと考えてくれての事だもの。立派な事だわ」
「‥‥藤花殿。拙者は、貴殿と一緒に今日の式を迎えられた事、とても嬉しく思うのだ」
「あら、それは私もよ。まさか、この年で再び結婚できるとは。此も良き人と巡り会ったおかげね」
 さらりと言われた言葉に、照れてしまう。
 二人の様子に気付いた萌瑠が茶々を入れてきた。
「おおっと、熱々なところを見せつけてくれますね。さて、ではそんなお二人さんの内、ミストさんの仲間であるアイナ・ルーラさんに乾杯の音頭を取っていただきましょう」
 萌瑠の紹介により、前に進み出たアイナ。
 彼女は酒の入ったグラスを持ち、ミストと藤花それぞれに互いを思いやるようにと語る。
 二人が頷いたのを見て、アイナはグラスを持ち上げる。
「それでは、お二人の幸せを願って、乾杯!」
「乾杯!」
 招待客が代わる代わる主役に話しかけに行くのを横目に見ながら、藤枝 真沙花は料理に舌鼓を打っていた。
 自分も後で祝いの言葉をかけに行こうと考えていると、藤枝 杏花に声をかけられた。
「ご先祖様、楽しんでますか?」
「杏花、そのご先祖様と呼ぶの止めないか? 私はもう寛永ではなく現代の人間になったのだし」
「んー、ご先祖様はご先祖様ですし、簡単には変えられないかと」
「そこをなんとかしてくれるとありがたいんだがなぁ」
 苦笑しつつ、料理についてあれやこれやを二人でつまむ。
 なんだかんだで仲が良い二人の春は、当分先になりそうだ。

 ミストと藤花のが結婚するという事は、ミストは二人の子供の父親にもなるという事。
 だが、子供達の内の一人である藤枝 梅花は寛永の世に渡っており、この場に居る事は叶わなかった。しかし、祝いの言葉は寛永の世に渡る直前に伝えられていた。
「父様、母様をどうぞ宜しくお願いします。色々と規格外な人ではありますが一応か弱い人ですからね。一応」
 その言葉に力強く答えたのを聞いて、彼女は笑って寛永の世に行ったのだ。
 この場に居ない娘の為に、隅にテーブルと名札が置かれている。
 藤花の希望を聞いたミストが快諾し、実現した席。
 時々その席を見る藤花の手を握り返し、ミストは前を向く。
 次に顔を見せてきたのは、双子の姉のミア・カイザー。彼女はもう一人の姉であるクリスタル・カイザーの他に、従妹のアステ・カイザーミネルバ・マガミも引き連れて挨拶にやってきた。
「やっほー、一年ぶり! しっかりやれてる?」
「元気そうで何よりでござる」
「本当、まさか弟に先越されるとは思わなかったけど。ま、幸せにやんなさいよ」
「姉上達も」
「お二人とも、おめでとうございます!」
「ありがとう」
「ミスト叔父さん、籐花さん、おめでとうございます!! あれ? そうすると私とアンカちゃんは従姉妹になるんだ」
「そうなるでござるな」
 次に話しかけたい人達へと交代し、下がる三人。
 頭の後ろで腕を組みながら、「あーあ」と呟くミア。
「僕達も負けてられないね」
「ミアにだけは負けないからね」
 何やら対抗意識を燃やすクリスタルの横で、ミネルバが困ったように笑う。
「でも世界を巡り歩いても、私たちに見合うヒーローは居ませんのよねー」
「それだよ(ね)(な)」
 語尾こそ違えどほぼ異口同音に発した三人。
 果たして彼女らに見合うヒーローは現れるのか。

 波新が、グラスの代わりにジャグリングの道具を持ちながら二人の元へやってきた。
「おめでとーございまーす!! というわけで、芸でも一発してみせましょう!!」
 芸神様に喜ばれた芸をしてみせると息巻く彼女。
 ジャグリングのピンを持ち、上へ投げては流れるように円の形で流れを披露してみせる波新。
 彼女がやっていると、前に土方 萌が現れる。
 彼女の手には一振りの刀。ただし、偽物の。流石に本物を式場で使うのはまずいという理由である。
 披露されるは、萌に襲われつつもジャグリングでかわしてみせるという芸。
 もはや芸なのか? と思うようなものだが、これを実際に動画に撮ってネットに流したら有名になったのだから、芸という事で。
 攻防を終え、互いに決めポーズをしてみせれば、あちこちから拍手が贈られる。

 その後も芸を披露する者は何人か現れ。
 アイドル業を務める田中 カナタや真沙花による歌の披露や、村正 一刀によるダンスなど。
 余興には事欠かず、会場内は盛り上がりを見せる。
 プロレスの興行も是非、とアイナが息巻いていたが、流石に場所が狭いという事で我慢してもらった。
 様々な芸を見ながら、魔神 極奴が「はぁー」と気の抜けた声を小さく零す。
 現代にとどまる事を決意して一年。相変わらず見慣れないものばかりだ。料理も、景色も、結婚式も。
 気を抜けば立ち往生しそうになる彼を、絶斗はもちろん、グレースも傍で支えていた。彼女の恋人となった今では彼もマガミ家の一員だ。
 この場でも彼に寄り添っているグレースが、着慣れぬ礼服に身を包んでいる彼の緊張をほぐすべく話しかける。
「どう? 初めての結婚式に参加した感想は」
「すごい‥‥としか言えないな」
「そうね。でも、自分でやるとなると結構大変なのよ」
「寛永でも似たようなものだが、現代のはそれ以上に大変そうだな」
「もう‥‥鈍いわね」
 どこか呆れたような声に、極奴はどういう事だろうという顔で振り向く。
 憂いを帯びた赤い瞳が彼の姿を捉え、片腕だけを彼の体に密着させた。
「私たちはまだ結婚できないのかしら?」
 その言葉で、さっきの言葉の意図を知る。
「その事なんだが、グレース」
「はい」
「結婚しよう」
 真剣な顔で見つめながら言われた言葉。
 グレースはそれを見つめ返して、笑う。憂いの無い、心からの笑顔。
「ええ。その言葉を、待っていたわ」
 二度目の結婚式は、あの頃とは違う賑やかさになりそうだ。

 宴も終盤。
 萌瑠が「さぁさぁ、皆様、ご注目ください!」と呼びかけた事で、会場が一瞬にして静まり返る。
 会場が暗くなり、ライトが照らし出すは主役の二人。
「せっかくですので、ここらでお二人にお互いへの愛の言葉を囁いてもらいましょう!」
 予定にない無茶ぶりである。
 だが、こんな事は今までにもよくある事。
 意を決したミストから、先に藤花へ愛の言葉を囁いた。
「藤花殿。まだまだ未熟な拙者でござるが、藤花殿を幸せにするので、これからもよろしく頼むでござる!」
「ミスト君‥‥いえあなた、色々と訳ありな妻ではありますがこれからも宜しくお願い致します。例え運命が私たちを引き裂こうとしても二人でその運命を叩きつぶしてやりましょう」
 苦笑しながら、思う。
 なんとなく、自分は一生この相手に勝てなさそうだな、と。
 空気を察しているのかそうじゃないのか、杏花が要望という名の野次を飛ばす。
「お母さん、お義父さん、この調子で、アンカちゃんの下の妹を作るのですよ」
 キョトンとした顔から一転して笑う藤花と対照的に、頭を抱えるミストが居たそうな。

「それではブーケトスをお願いします」
 萌瑠の言葉を合図に、藤花がブーケを下から上へ、そして向こうへと放り投げる。
 未婚の女性達が、我先にとゲットしようと手を伸ばす。
 その結果、それを手にしたのはアイナ。
「うおぉぉ! 勝利したぞー!」
 プロレスの時のような勝利の雄叫びを上げてブーケを持ち上げる彼女。
 その姿は、おそらく未来のポーズかもしれない。

 式も終わりに近づいた頃、萌瑠の手元のコップには水が無くなった。
 新しい水を頼むかと思った時、恋人の一刀がソフトドリンクの入ったグラスを二人分持ってやってきた。
「よっ、お疲れ」
 司会という大役を頑張った彼女への労いと共に差し出されたグラスを受け取る。
「頑張ったな」
「そりゃあ、いい日にしてほしいもんですからね」
「‥‥今日のあんた見てたら、俺も頑張らなきゃなって思った」
「ん?」
 真面目な声のトーンに目を瞬いて、彼を見やる。
「ところで、俺達の結婚はいつがいいかな?」
 不意打ちの言葉に驚くなという方が無理で。
 それに対して正常な思考で返せなかったのも無理ない事で。
「はいっ!!」
 けれどまずは、結婚を了承した意思を、君に。

 眼帯をつけた青年とその彼に付き添う、花のような淑女からの祝いの言葉にも、主役の二人は笑顔で返す。
 様々な出席者を見送る中で、カナタは外をやたらと気にしていた。
 それを見つけた絶斗が彼女の声をかける。
「どうかいたしましたか?」
「ああ、いえ。先程お坊さんをお見かけしたように思えたので」
「お坊さんですか?」
 彼の知る限り、お坊さんの数は少ない。
 けれど、一人、心当たりがあった。上司であるグレースが「来ないのは残念ねぇ」と呟いていたのを聞いていたから。
 もし想像通りの彼であるならば、おそらくは控えめながらも祝う為だけに遠くから見ていたのだろう。
「謙虚な方ですね」
「そうですね」
 カナタも誰か心当たりがあったのか、微笑む。
「居ないといえば、寛永に行ったセリザワさん達は元気でしょうかね。今頃あちらも結婚式してそうです」
「さあ、どうでしょうね。ですが、幸せに暮らしているといいですね」
 微笑む二人は、暗くなりつつある空を見上げる。
 寛永の世も、今、同じ時間を刻んでいるだろうか。

◆異なる世なれど花は開く
 寛永の世もまた、あの討伐から一年が経とうとしていた。
 現代からやってきた者達の中で、ある二人がこの寛永の世で神前式を挙げようとしていた。
 主役たる二人はボースン・カイザーファウラ・クルシューエ
 参列するは、グレン・ギーガーカーモネギー・セリザワをはじめとする、ボースンが医者として築いた縁を持つ江戸の人々。
 元は海外の出身の二人だが、この時代で暮らす事を決めたならば様式に則ろうという事で、神前式を選んだ。
 鮮やかな色を持つ二人には、白無垢と五つ紋付羽織袴が映える。
 つつがなく式は執り行われ、退下の後の披露宴は、少しばかり広い家にて。
 ボースンに診てもらった大工達が用意してくれた新居だ。
 膳が並ぶ広間にて、改めて集う参列者達。
 振舞われる酒は、カーモネギーが寛永の世に来て作った地ビール。
 日本酒とは別の酒として用意したそれの名は「鬼喜び」という。味は江戸の人の口にも合うように苦みを控えめにしてコクを追求した優れものとの事だ。
 化身達や動物達もまた、参列してもらっていたが、酒をうっかり飲んだりしないように気を付けている。
 コホン、と咳払いをして、グレンが友人代表として改めて音頭をとる。
「二人ともおめでとう。君たちの結婚を来世にいる仲間に伝える術は無いが、きっと時空を超えて、彼らにも伝わると信じている。本当におめでとう」
 乾杯、という彼の声に呼応して返される短い言葉。
 酌み交わされる杯、飛び交う祝いの言葉と鳴き声。
 賑やかさに、ファウラが楽しそうに笑う。
 その笑顔を見て、ボースンは改めて想いを告げる。
「ファウラちゃん、一緒に幸せになるんだわさ」
「はい。今までも、そしてこれからもずっとアナタを支え続けマス! だから‥‥ずっと幸せでいられるように頑張りましょうネ♪」
「ああ!」
「もちろんお腹の赤ちゃんも一緒にデス」
 赤面しながら言われた爆弾発言を、すぐには理解できず。
 その言葉が聞こえた者から無言になっていき、その沈黙は波のように広がり。
「な、な、なんだってーーーー?!」
 ボースンだけでなく、聞こえた者達の叫びが響いた。
 ファウラの爆弾発言により、一層賑やかになった事は言うまでもない。
 ちなみに、神前式での酒は事前にファウラがこっそり告げた事で酒ではないものになっていたそうだ。

◆約束の花をこの未来(さき)も
 日も暮れ、空は青から暗い藍へと移り。
 仲間の結婚式からの帰り道。もう暗いからと渡会 衣依が申し出て、水上 澄香はそれに甘える事にした。
 あの討伐から一年。眼帯というハンデを負いながらも公務員となった衣依とは土日にしか会えていないが、その分時間を大切に過ごしている。
 恋人になってもう二年が経とうとしていた。
 今ではどちらからともなく手を繋ぐ程、打ち解けてきた間柄だ。
 少しずつ距離が縮んで、恋人らしい事も増えて。
 それから、今二人の指には対となる指輪が一つ。
 少し寄り道をしようという衣依からの提案で連れてこられたのは、藤や菫など、春の花が咲く園。常時開放されている園だからか、カップルの姿もちらほらと見られる。
 咲き誇る藤や菫の花を見上げながら、手の温もりを確かめる。
 討伐を終えたあの時から、法力は消え、代わりに体内を巡る時間が進んだ。それはゆっくりとした加齢であったが、一年経っても見た目は劇的に変化はしていない。
 温もりを感じて、澄香は一つの言葉を吐き出す勇気を貰う。
 突然足を止めた彼女へ振り返る衣依。
 澄香は一つの御守りを出した。永遠の愛を願うのみとなったそれを差し出し、口を開く。
「お願いがあります。私を、衣依さんの‥‥」
「澄香」
 御守りを持つ手を引き寄せられ、体が密着する。
 強く抱きしめられる体。耳元に衣依の吐息がかかって、鼓動が速くなるのを感じた。
「私に言わせろ。‥‥結婚してくれないか、澄香」
「‥‥‥‥はい」
 間が空いたのは、泣きそうになる声を抑えるのに時間がかかったから。
 返事を聞いて、彼が体を離す。少し赤く見えるのは気のせいだろうか。
「‥‥帰るぞ」
 手を引かれ、再び隣に並んで歩く。彼の空いた手には、澄香が差し出した御守りが握られている。
 彼の横顔を見ながら、澄香は夢見る。
 いつか二人の家で、彼の心から寛いだ笑顔を見られたら、と。
 それは、きっとそう遠くない未来に見られるだろう。

◆受け継がれる花を願う
「いや、善きかな、善きかな」
 杖をつきながら歩くのは、僧侶姿を崩さぬままの富栄弩院 頼伝
 あの討伐から一年。彼は犠牲者の慰霊と秀吉の鎮魂を続けていた。
 その矢先でもたらされた、めでたき報せ。
 出席はせず、遠くから彼らの新たな門出を祝して回っていた。
 この身が神仏に代わるかはわからないが、それでも祝いたいと思った。
 鬼神秀吉により、尊い命が数多く失われた。
 だが、今こうして人は営んでいる。現代も寛永も、新たなる家族の形が生まれ、それは未来へと続いていく。
 人の想いというものは、こうして少しずつ受け継がれていくのだ。
 数珠を持ち、彼は歩む。未来へと。たった一つの願いを持って。

 ――――人の世に幸あれ、と。



 9
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参加者

c.波新里の域も今やぴったりなんで、事故は無いでしょう、多分。
土方萌(ka00069)
Lv136 ♀ 18歳 武神 来世 異彩
a.栄相サイワちゃんに想いを伝えるぜ。
陸奥熱士(ka00071)
Lv150 ♂ 15歳 武僧 来世 大衆
c.新しい一歩を、二人で踏み出すよ!
栄相セイワ(ka00188)
Lv138 ♀ 15歳 神僧 来世 異彩
a.何か、緊張してきた・・・。
栄相サイワ(ka00189)
Lv163 ♀ 15歳 神陰 来世 異彩
c.よろしくお願いします。
東雲凪(ka00248)
Lv198 ♂ 27歳 武僧 来世 傾奇
b.こうして約束の花を見に来られて、とても嬉しいです…!
水上澄香(ka00399)
Lv145 ♀ 17歳 陰傀 来世 異彩
c.この日の為に、南米から戻ってきたのです。
藤枝杏花(ka00565)
Lv159 ♀ 15歳 傀僧 来世 異彩
c.父様&母様お幸せにですよ♪
藤枝梅花(ka00566)
Lv211 ♀ 22歳 神陰 来世 麗人
c.よし、死亡フラグは全て圧し折った!!
ミスト・カイザー(ka00645)
Lv201 ♂ 24歳 武忍 来世 質素
a.新居と…ご、ご両親へのご挨拶と…子供の名前と…双子だったら…(汗)
遠野絃瑞(ka00651)
Lv152 ♂ 28歳 武忍 来世 質素
c.以前は巨大ロボで乱入したような気がするから、今回は大人しく祝おうw
ミア・カイザー(ka00679)
Lv173 ♀ 24歳 陰忍 来世 異彩
c.ブーケだ、ブーケを確実にゲットして…!!
アイナ・ルーラ(ka00830)
Lv144 ♀ 24歳 武僧 来世 婆娑羅
a.新居を探して、あらためてよろしくお願いしますね。式はどうしようかな(笑
升田千絵代(ka00869)
Lv177 ♀ 25歳 武陰 来世 異彩
z.よろしくお願いします。
伍法月天(ka01271)
Lv235 ♂ 17歳 武僧 来世 傾奇
c.パーティーのお料理はお任せください。
カミラ・ナンゴウ(ka01313)
Lv147 ♀ 23歳 忍僧 来世 大衆
c.改めてよろしくお願いします。ミスト君…いえあなた。
藤枝藤花(ka01346)
Lv175 ♀ 40歳 武僧 来世 大衆
c.パーティーの司会進行役を致します。おめでとうございまーす!!
茂呂亜亭萌瑠(ka01356)
Lv141 ♀ 23歳 神傀 来世 麗人
b.ふむ、俺も攻め込む時かな。
村正一刀(ka01389)
Lv177 ♂ 23歳 武神 来世 異彩
c.皆さん、おめでとーございます☆
田中カナタ(ka01429)
Lv145 ♀ 18歳 武陰 来世 異彩
c.1年ぶりの日本です。
アステ・カイザー(ka01612)
Lv152 ♀ 16歳 神陰 来世 麗人
c.よろしくお願いします。
クリスタル・カイザー(ka01634)
Lv261 ♀ 29歳 忍流 来世 大衆
z.いや、善きかな、善きかな。 人の世に幸あれ。
富栄弩院頼伝(ka01639)
Lv187 ♂ 36歳 僧流 来世 大衆
c.甥の結婚式は、パーティ形式でいいかしらね?
グレース・マガミ(ka01643)
Lv126 ♀ 28歳 神傀 来世 麗人
c.本日はパーティーの給仕を担当致します。
真神河絶斗(ka01644)
Lv132 ♂ 31歳 武陰 来世 大衆
c.友人代表として、ボースンとファウラさんに祝辞を。
グレン・ギーガー(ka01653)
Lv199 ♂ 35歳 忍流 来世 異彩
c.では、芸神様に喜ばれた命がけの芸を。
希有亭波新(ka01670)
Lv181 ♀ 23歳 忍流 来世 麗人
c.ぼっすんサン、末永く、よろしくお願いしマス…!
ファウラ・クルシューエ(ka01807)
Lv175 ♀ 24歳 陰僧 来世 麗人
c.参列者ですわ。 ミストさん、籐花さん、おめでとうございます☆
ミネルバ・マガミ(ka01851)
Lv166 ♀ 17歳 武流 来世 傾奇
b.俺はこの時代で生きる。グレースと共に。
魔神極奴(ka01868)
Lv161 ♂ 17歳 武水 大和 異彩
c.我が春は未だ遠き…。
藤枝真沙花(ka01870)
Lv161 ♀ 17歳 武火 大和 異彩
c.覚悟完了…!! ファウラちゃん、必ず幸せにするからねン(キリッ)
ボースン・カイザー(ka01874)
Lv233 ♂ 28歳 僧誓 来世 大衆
c.はい、ボッスン君とファウラちゃんの結婚式に、地ビールを振舞いま~す☆
カーモネギー・セリザワ(ka01912)
Lv179 ♀ 30歳 武傀 来世 傾奇