【SH06】空に咲く、大輪の

担当 箱根空木
出発2016/07/17
タイプ ボイス C(Lv無制限) 連動
結果 大成功
MVP 田中璃来(ka00065)
準MVP 由良 紫苑(ka00953)
蓑下 海里(ka01493)





オープニング

◆祭、賑やかに
 海の山王祭。
 その名を冠した新たなる祭は、本家山王祭とは別に、品川の浜辺でも行われていた。
 会場を見渡すと、薄明るい提灯がいくつも空に渡され、様々な音を奏でる屋台が連なり。
 華やかに色付いた浴衣は祭を彩り。
 来世人も大和人も皆同じように、人々が行き交い、賑わう。

登場キャラ

リプレイ

◆全編通して再生



◆オープニング


◆賑やかの中で

 祭の中を人が行き交う。
 空を渡る提灯は淡い光を放ち、立ち並んだ屋台からは良い匂いが漂ってきて。
「うおおおお祭! 祭にょろよー!! 祭ってだけでワクワクするよな! 笛の音とか! 太鼓の音とか!!」
 桜舞う浴衣に身を包み、田中 璃来は屋台の間を駆け巡る。
 人々で賑わい、活気ある祭の中で一つ、また一つと屋台を覗き。
「林檎飴に焼きイカ、マクワウリ‥あ、あれはお好み焼きか! 全部買うにょろよー!」
 お財布はちょっぴり軽くなったけれど、両手にいっぱいの幸せを抱えて。
 気持ちの良いお嬢ちゃんだと店主に笑われつつ、満ち足りた笑顔で璃来は祭を歩く。

「屋台がたくさんなのじゃ! 賑やかだのう!」
「はい‥! 華やかですね‥!」
 ヤームル・アイマーヴィ花織 ひとひらは二人、楽しそうに祭を見回す。
 人込みに流されぬよう、はぐれぬよう、友達とぎゅっと手を繋いで。
「今年も山王祭は賑わいでおるのー。ユカタも着せてもろうたゆえ、心置きなく日本の祭を満喫できるのじゃ!」
「ふふ、可愛いです! ね、クロ、コノハ」
 ヤームルの浴衣には、涼しげな薄水色の布地に紫陽花が花開き。
 ひとひらの浴衣には水面が描かれ、その中で金魚が楽しげに踊る。
 足元には、黒柴犬のクロとコノハがはしゃぐようにじゃれあっていた。

「ふふーん、どうじゃ?」
 得意げにヤームルが取り出して被ったのは、愛する相棒の描かれたお面。
「柴犬のお面‥! 可愛いですね‥!」
「お主の分もあるぞ、ほれ」
「わ‥! ありがとうございます、ヤームルちゃん。ふふ、似合いますか?」
「うむ! お揃いじゃの!」
 しゃがみ、クロやコノハにも見せると、楽しそうに尻尾が揺れて。
 それから食べ物の屋台へ。
 お団子に甘酒、焼き鳥に飴、来世人が考えたという、ウナギの蒲焼や握り飯の出店も出ていて。
「うにー、良い匂いがするのー‥ううむ、けれどすべて買うにも‥!」
「それじゃ、違うのを買って半分こにしませんか?」
「おお! それは良い考えじゃ!」
 笑顔が咲き、楽しみながら、お祭りを回っていく。

「ここからならよーく見えるやろか。どこでも見えそやな、高い建物もあらへんし」
 牡丹の咲く浴衣に身を包み、蓑下 海里はきょろきょろと空を見上げる。
 この時代は火を扱うことに関してはことさら厳しく、職人たちの頑固な気質も手伝って、花火作りに直接的なかかわりは出来なかったけど。
 花火大会の開催を聞きつけた海里は、事前にある提供を行っていて。
「ふふん。あれが上がる時が楽しみやな~。な、キジムンはん?」
 相棒のキジムナーを抱き、今か今かと、胸を躍らす。

◆空に咲く

 花火が始まるとの報せを受け、ちらほらと浜辺に人が集まってきて。
 見知った顔を見つけると何となく集まり、共にその時を待つ。

 一つ、光の筋が昇った。
 打ち上がった花火が、夜空に大輪を咲かせる。

「おー‥! 思ってたよりもでっかいな‥! なー悠頼」
「そうだな、紫苑。色味は少ないが、かえってそれが風情に思える」
 由良 紫苑が興奮した様子で振り返ると、由良 悠頼は口元を緩めて頷く。
 波の揺れるお揃いの浴衣を着て、浜辺で同じように夜空を見上げて。
「なぁ、悠頼。昔に見た花火思い出さねー?」
「じいちゃん家から眺めたな」
「ああ。懐かしいなー。あの時も並んで見てたっけ」
 現代で過ごした景色を脳裏に浮かべ、口元に笑みが浮かぶ。
「打ち上げ花火は空の花、って。小さい頃にそう聞いたなー」
「確かに花みたいだよな。空に咲いて、美しく、一瞬だけど力強い様を見せてくれる」
「なー。現代より色や迫力は控えめだけど、俺は好きだ。だって、空に咲く花は、いつだって想い出じゃん?」
 へらりと紫苑が笑えば、悠頼も柔らかく目を細めて。
「今日のこの景色も、大切な想い出だな」
「だなー」
 また一つ、空に花が開く。

「たーまやー! ‥これで良いのかの!」
「はい! ふふ、たーまやー!」
「たーまやー!!」
「たーまーやー!」
 それは、現代では打ち上げ花火と共に見られる光景。
 日本の祭の楽しみ方を教えてもらうヤームルがひとひらに確認し、海里、璃来も続いて掛け声を。
「祭の風物詩だな! 空に向かって大声をあげるのも、気持ちいいにょろ~」
「皆でやってみるのも楽しいもんやねえ」
 わいわいと話していれば、程なくして紫苑と悠頼も合流し、屋台で買ったものを皆で分け合って。
「クロには何がよいじゃろう。どれ、一緒にウリでも食べるかの」
「コノハも頂いてみよっか。ふふ、美味しい?」
「ユオも食べてみるかー? へへー、俺と悠頼と分け合いっこなー」
「キジムンはん魚やて! あ、さっきから放っといたの怒っとるん? もう、拗ねてそっぽ向かんといてーな」
 夜空を見上げながら賑やかに、小さな宴は続いていく。

 色の少ない花火は、現代のものとはまた違った味わいがあって。
(昔に見た花火を思い出しますね‥。お母さんと、弟と一緒で。二人の笑顔も温かくて‥)
「ひとひらも、花火は好きにょろー?」
「そうですね‥とても、あたたかい光‥だと思います」
 璃来の問い掛けに、改めて空の花を見る。
「花火がぱっと開いた後の‥どーんっ、ていう音が胸に響いて、染みていくのを感じるのが好きです」
「うむ、力強い音じゃ。響く、染みるとは、こういうことを言うのじゃろうか」
「そうかもなー。なんかこう、胸がじーんと暖かくなる感じ!」
「ふむふむ! じーんとな!」
 紫苑とヤームルが盛り上がっていると、また一つ。
 空に昇った一筋の光が花開き、品川の海を、皆の顔を照らす。
「この花火と、私の心のなかの花火‥どちらも楽しめて、ちょっとお得、かもしれませんね」
「確かにな! この時代じゃないと見れないにょろなー」
「それを皆で共有できる、ということも得難い機会だな」
「ふふ、そうですね。こんなにもたくさんの人たちが同じものを見て、心を動かされてる‥。その中の一人としてここにいることが、とても嬉しいです‥」
 感じ入るように表情を和らげ、空を見上げる。
 花火の音と共に、遠くの方で歓声があがった。

「うーん‥そろそろやと思うんやけどー‥」
 海里のその言葉に応えるよう、再び空に花火が開く。
 その花びらは火の色だけでなく、赤色に、緑色に。
「にょろおー!? 今の、色がついてたぞ!」
「綺麗でしたね‥!」
「見てみい! 色付きの花火や! 今のな、ウチが手伝うたんやー!」
「なんと! 海里はすごいのう!」
「ふふん。炎色反応、化け学のド基礎やよ?」
 海里は満足げに鼻を鳴らし、肩に乗るキジムナーも自慢するかのようにぽふんと跳ねる。
 色付いた花火は実験的に一つだけ、とこの日打ち上げてもらうことが出来て。
「花火っていいモンだなー」
「ああ。こうして、人の心にも花を開かせるのかもな」
 はしゃぐ皆の顔を見れば、ほら。
 心の中も温かく。

◆地上に、光咲く

「なあなあ! 皆で手持ち花火をするのだよ!」
「璃来はん持ってるん?」
「ふっふっふ! じゃーんにょろよ~!」
 そういって璃来が砂場に広げたのは、現代でのいわゆる手持ち花火。
 地味な作りではあるけれど、それでも楽しさを連想するには十分で。
「見てるだけもいいけど飽きたのだ! やっぱこういう花火もなくてはな!」
「それは楽しみだな。ありがとう、璃来」
「お安い御用にょろよ~。あ!」
 思い出したように手を伸ばすと、束になった細い花火は別の場所へ置いておく。
「線香花火は一番最後! 年末の某番組の最後で、蛍うにゃうにゃー的な歌を歌うのと同じようなもんにょろよ! これは譲れないにょろよ~!」
「あ、それはわかります‥! 花火の締め、ですよね」
「せんこうはなびとな?」
「じっくり眺める花火やで。頑張れば普通のより長く楽しめるんや」
「ふむふむ!」
 海里が蝋燭などの準備を進めながら説明すれば、ヤームルは楽しそうに頷いて。
「ふふ、それじゃあ最後にやりましょうか」
「一番最後のお楽しみ、というやつだな」
 一人ずつ手持ち花火を持ち、蝋燭の火に近付けて。
 小さな花火大会を、さあ。

「こうして花火してると、色々思い出すな。あ、近所で花火してたら怒られたりもしたなー」
「それは、紫苑が振り回しすぎたからだろ?」
「そーだったかも! ほら、こーするとさ」
 火の付いた花火を操り、紫苑は中空に絵を描く。
「光の軌跡が残って面白いじゃん」
「まあ、そうだな。今描いたのは?」
「ユオの顔! へへー、お前にも見えたか?」
 ユオに笑いかければ、わふ、とぱたぱた嬉しそうに尻尾が揺れて。
 それを見ていたヤームルやひとひらも、クロとコノハを空へ描いたり。
「あちゃあ、ヘビ玉入ってへんのやな」
「海里さん、お好きなんですか?」
「そうやねん。ウチな、じっみーなの眺めてるの好きなんよ」
 まだ開発されていないのだろうと、海里は少し肩を落として。
「ヘビ玉1つに火をつけて、燃え尽きる頃合いにもう1つ近づけてくっつけるとな、繋がったりするんよ」
「面白そうにょろね~、あたしも見てみたいにょろよ!」
「ほんま? ううん、本格的に作り方、勉強してみよかな」
 そうすればきっと、あの楽しさを見せてあげられる。

 手持ち花火でひとしきり遊んだ後は、とっておきの。
「線香花火ならもちろん、勝負だよな?」
「ああ、望むところだ。勝ちは譲らないぞ」
「出来るだけ長く灯せるように、ですね。ふふ、私も頑張るね、コノハ」
 わん、とコノハはお利口に横へと座って。
 静かな波の音、時折空で開く花火の音の中で、花火の先に火を点ける。
「これが線香花火というものかえ? ちっちゃくて可愛いのう♪」
 線香花火に、小さな光が灯った。
 それはじじ、じじ、とかすかな音を立てて。
「このまま、消えてしもうたりしないのかの」
「大丈夫だ! 線香花火はここからにょろよ~」
 淡い光をそろってヤームルとクロは見つめる。
 しばらくすると、周りに火花が飛び散りだして。
「おおー‥!」
「面白いですよね‥!」
「変化する線香花火の姿には花の名前がついてるって、じいちゃん言ってたなー。名前、もう忘れちまったけど」
「最初は蕾、火花が散り出してからが牡丹‥だったかな」
「火花が飛び散る時が松葉、最後は散り菊。そんで、線香花火の一生はしまいや」
「そうそう! 海里もよく知ってるなー‥あ!?」
「俺の勝ちだな、紫苑」
 悔しがる弟の次に兄の火が消え、線香花火が一つ、また一つと落ちていく。
 浜辺に落ちた火は黒ずみ、寄せては返す波に火花の音も吸い込まれる。
 打ち上げ花火もいつしか終わり。
 蝋燭の揺れる浜辺には、静寂が訪れようとしていた。
「静かになっちゃったにょろね。線香花火って、どうしてもしんみりするのだよ」
「この時間の方がよっぽど侘しいやんな‥」
 波の音が聞こえる。
 一定のリズムで、変わることなく。
「一年か。早いもんだな」
「なー。あっという間だな。‥現代にも、まだ戻れないし」
 深く息を吸い込むと、潮の香りが胸いっぱいに満ち。
 吐き出せば、振り返った紫苑は微笑んでいて。
「でも、さ‥だからさ、悠頼。お前と一緒で良かったって思ってんだ」
「それは俺もだ、紫苑。お前が居てくれて心強い」
 わふ!
 二人の足元で、主張する声が聞こえる。
「ああ、ユオも一緒に居てくれてありがとな。ここで出会えて、一年を共にしてくれて」
「はは、ユオ。お前もありがとなー」
 わしゃわしゃと撫で、満足そうに寄せられた頭に、現代の愛犬も思い出すけれど。
(きっと大丈夫だよな)
 そう、信じてるから。
「これからも、頼むぞ」
「ああ。もちろん!」
 お互いの顔を見合わせ、こつんと拳同士を合わせる。
 こうすれば、ほら、それ以上言葉を交わさずとも。
(双子の弟‥紫苑。共に歩み、今もこうしているからこそ、側に在ることがこんなにも支えになる)
 明るい笑顔は悠頼を何よりも安心させてくれ。
 紫苑へ返すのは、普段よりも柔らかな笑み。

「終わってしまったのう」
「少し、寂しい気がしますね‥」
 お祭りが終われば、次には日常が待っている。
 品川の海、ここには来世人がやらねばならないことがまだ、残っている。
「これから来るという百鬼夜行、この祭を楽しんでいる民達の笑顔を守る為にも、頑張らねばな‥」
 立ち上がり、暗い海の向こうを眺め、ヤームルは静かに呟く。
 守りたいものを守れるよう、決意を込めて。
「よっしゃ青春や! いくでーキジムンはん! つっこめー!!」
「おおー! あたしもいくにょろー!」
 ぱたぱた足を動かすキジムナーを抱え、海里と璃来はばしゃばしゃと、波打ち際まで。
 楽しそうな様子に後を追った皆とも、ひとしきり海で遊ぶ。
「屋台の品ぞろえも、花火も、元の時代の賑やかさや華やかさにはかなわないけど。でも、楽しかったな」
 そういって、璃来は満足そうに叫ぶ。
「祭っていうものは、いつの時代もいいものなのだよ!」
「うむ! 璃来の言う通りじゃな。祭を十二分に堪能できたのじゃ。のう、クロや」
「また皆で、ゆっくりお祭りをまわりたいですね‥!」
「来年も参加するんやったら、そん時までにはヘビ玉作りたいなあ」
「花火もまたしたい! 悠頼、今度は負けないからなー!」
「望むところだ、紫苑。いつでも相手になるぞ」
 蝋燭の火が揺れ、空には零れ落ちてきそうなほどたくさんの星がきらめく。
 淡い光に見守られながら、賑やかな、楽しげな声はもう少しだけ、続いていった。


◆スタッフ◆

田中璃来(ka00065):天渡優里奈
ヤームル・アイマーヴィ(ka00918):鏑木はる
由良悠頼(ka00943):mugikon
由良紫苑(ka00953):mugikon
花織ひとひら(ka00978):桜月秋姫
蓑下海里(ka01493): 宮梨里愛
ナレーター:大和 稟

原作:箱根空木
編集:大和 稟
企画:才川貴也(REXi)



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参加者

c.最初に屋台には寄ってくるにょろー!VAは天渡優里奈さんにお願いしたい!
田中璃来(ka00065)
Lv112 ♀ 21歳 武忍 来世 質素
c.おー!花火じゃ!屋台も気になるのう…!ユカタを着せて貰うて楽しもうぞ
ヤームル・アイマーヴィ(ka00918)
Lv197 ♀ 15歳 忍傀 来世 異彩
a.花火に屋台、見てると色々思い出すな。mugikonVA、紫苑と一緒だな
由良悠頼(ka00943)
Lv176 ♂ 17歳 陰忍 来世 大衆
a.花火って、色々浮かぶよなー。悠頼と同じでmugikonVA希望な感じ。
由良紫苑(ka00953)
Lv151 ♂ 17歳 武忍 来世 質素
c.花火と一緒に、色んな事がうかんできそうです。/VAは桜月秋姫さん希望
花織ひとひら(ka00978)
Lv171 ♀ 17歳 神僧 来世 異彩
a.ウチは、宮梨里愛はんに…あ、花火見たあと、海に突っ込んでもええよね♪
蓑下海里(ka01493)
Lv195 ♀ 18歳 忍僧 来世 質素